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B 0160 : 2015
2.3.6
干渉摩耗(interference wear)
歯車の歯が正規のかみ合い以外に接触する場合を干渉といい,干渉したときに発生する摩耗。
一般には,ギヤの歯先とピニオンの歯元の間で見られるトロコイド干渉が多く,単純に干渉というとき
はこのトロコイド干渉のことを指す。この場合,歯元ではくぼみが生じ,歯先は丸くなる。
運転中にバックラッシがなくなり,裏歯面がしゅう動する場合は背面干渉と呼び,プラスチック歯車の
ように熱膨張又は膨潤の大きい材料を用いた歯車でしばしば見られる。ピッチ点周辺でも摩耗,又は強当
たりしている場合が多い。
ここに含まれる損傷形態は,次による。
− トロコイド干渉摩耗
− 背面干渉摩耗
――――― [JIS B 0160 pdf 26] ―――――
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B 0160 : 2015
2.3.6.1
トロコイド干渉摩耗(trochoidal interference wear)
歯車がかみ合うときに,歯元と相手歯車の歯先との間に生ずるトロコイド干渉による損傷。
多くは被動歯車の歯先と駆動歯車の歯元とが干渉する。このとき,駆動歯車の歯元はえぐられて半径方
向に明瞭なきず跡を残し,ときには過酷なしゅう動のために白層又はピットを発生させることもある。相
手歯車の歯先りょう(稜)はこの干渉が生じても意外なほどに丸くならないが,歯先近くの歯面はトロコ
イド干渉でえぐられた非インボリュート歯面とかみ合うため,歯たけ方向に引っかいたような跡若しくは
塑性流動が見られ又は明らかに摩耗していることもある。
かみ合い終わり時に駆動歯車の歯先が被動歯車の歯元と干渉するのが強く,同様の損傷を起こすことも
ある。
干渉摩耗が歯元応力の最も高くなる付近で生じるため,歯の曲げ強度を低下させるおそれがある。さら
に,最も懸念されるのは,その領域にマイクロピッチングが発生し,その疲労亀裂が進展し,フレーキン
グ又は歯の疲労折損を発生させることである。
干渉部
図21−トロコイド干渉の例 [1]
図21は,トロコイド干渉の例を示す。歯面にはシェービング加工目がきれいに残っており,その歯元部
の黒い帯状のところがトロコイド干渉摩耗部である。摩耗部は,鏡面状になっているため写真では黒く写
っている。この歯車では,歯にかかる力が大きく,歯のたわみのために相手の被動歯車の歯先りょう(稜)
がこの駆動歯車の歯元と干渉したものである。
干渉部では加工目が消滅しており,よく見ると,その領域内の左側半分に白い斑点の小ピットであるマ
イクロピッチングが並んで発生し,右端の“干渉部”と記入された文字のすぐ左側にやや大きなピットで
ある接触端部ピッチングの発生が認められる。こうしたピットは別の損傷に発展する可能性をもっており,
干渉摩耗と同時に発生するこうした異なった損傷の発生にも細心の注意を払うことが大切である。
――――― [JIS B 0160 pdf 27] ―――――
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B 0160 : 2015
2.3.6.2
背面干渉摩耗(non-backlash interference wear)
運転による歯の温度上昇又は環境による膨潤などによってバックラッシ不足に陥り,負荷を受けるはず
のない裏歯面までしゅう動することによる摩耗。
この摩耗は,プラスチック歯車でしばしば見られる。微小モジュールの歯車では歯車の偏心又はランア
ウトによって背面干渉が起こり,回転不能又は歯の折損に至ることもある。
なお,軽負荷で激しい歯打ち振動を起こす場合にも背面にきずが付くことがあるが,これは該当せず,
背面の損傷だけを見て背面干渉が起こっていると判断することはできない。
a) 非作用歯面
b) 作用歯面(参考)
図22−背面干渉摩耗の例 [1]
図22 a) は,プラスチック歯車(ポリアセタール)が無潤滑で運転されたときの背面干渉を生じた歯面
の例で,非作用歯面である。歯末に見られる白い線条傷はスクラッチングで,厳しい接触をしていること
を示している。ピッチ点付近はほとんど変化せずに残っているが,そのすぐ歯元側では凝着摩耗によって
減肉している。
図22 b) は同じ歯の作用歯面で,比較参考のために掲載したものであり,歯末側,歯元側ともにスクラ
ッチングが見られる。
この歯車はバックラッシのほとんどない状態で運転されており,歯の温度が上昇するにつれて,熱膨張
による歯厚の増大のためにバックラッシがなくなり,裏歯面も表歯面に近いくらいに摩耗したものである。
――――― [JIS B 0160 pdf 28] ―――――
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B 0160 : 2015
2.3.7
腐食(corrosion)
周辺にある環境物質との化学作用によって表面に発生する劣化。
それに関係する表面の変化,化学反応を伴わなくとも環境物質との物理的作用による変化なども含める。
歯面はしゅう動によって活性化し,かつ,温度も上昇するために,雰囲気によって潤滑剤の構成物質と化
学反応しやすい。その反応によってできた物質が容易に摩耗粉として脱落したり,摩耗粉が更なる摩耗を
促す。こうした化学反応を伴う歯面の変化を腐食として扱う。
また,化学反応を伴わなくとも,流体の衝突,油中に含まれる気体成分との物理的反応などもこの腐食
に含まれる。
なお,腐食はその雰囲気に置かれている間中,歯車の運転とは別に,絶えず進行するのに対し,腐食摩
耗は歯車が作動しているときにだけ発生する。したがって,厳密に言えば,腐食と腐食摩耗とは異なる用
語であるが,一般に“摩耗”の文字を省略する。
ここに含まれる損傷形態は,次による。
− 化学腐食
− フレッチングコロージョン
− キャビテーションエロージョン
− 流体エロージョン
− 電食
− スケーリング
− 焼け
――――― [JIS B 0160 pdf 29] ―――――
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B 0160 : 2015
2.3.7.1
化学腐食(chemical corrosion)
化学反応で生じた表面の劣化。
化学腐食した歯面は一般にしみが付いたように見えたり,赤茶けたさびが浮いたりする。そのさびたも
のを取り除くと腐食孔が現れる。腐食は普通歯全体に生じ,結晶粒界を酸化し,粒状に進展する。
こうした表面層の劣化は,負荷運転すると摩耗を促進させやすい。しかも一旦生じた摩耗は収まること
なく,一層進行する。
図23−化学腐食の例 [1]
図23は,車両用のはすば歯車に見られたさびの例である。歯面が腐食を受け,赤い斑点となっている(図
の写真では白い斑点)。
――――― [JIS B 0160 pdf 30] ―――――
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JIS B 0160:2015の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 10825:1995(MOD)
JIS B 0160:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 21 : 一般的に使用される機械的システム及び構成要素 > 21.200 : 歯車
- 01 : 総論.用語.標準化.ドキュメンテーション > 01.040 : 用語集 > 01.040.21 : 機械的システム及び構成要素(用語集)