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指示測定器は測定に有効であるが,誤差を生じる。測定量が測定物の特性であるような通常の動作にお
いて,これらの誤差は測定結果の精度に影響を及ぼし,したがって,測定物の測定に付随する測定不確か
さにおいて考慮する必要がある。
指示測定器が検査されるとき,指示測定器は依然としてこれらの誤差を受ける。しかし,検査要領によ
って定義される検査測定量は,指示測定器に関係する。したがって,生じ得る誤差は,(検査要領において
異なって規定されない限り)検査測定量の一部であり,検査値に付随した検査値不確かさには含まれない。
7.3 使用者が提供する量値の誤差
使用者が提供する量値が正確でないことによる誤差(例えば,気温及び気圧だけを測定する気象測定装
置を備えた干渉計の空気湿度)は,検査値不確かさの要因であるかという疑問がある。
指示測定器は,設計のとおりに使用されるために,使用者が提供する量値を必要とすることがある。こ
れらの量値は,測定量に影響を及ぼす量,例えば,測定物のCTEである。指示測定器は,推定された系統
的な影響,例えば,測定物と指示測定器の目盛とのCTEの差を補正するために,使用者が提供する量値を
使用する。使用者が提供する量値に誤差があると,指示測定器の指示値に誤差が生じ,又はその指示測定
器が検査されているときには,検査値に誤差が生じる。
注記 指示測定器は,例えば,センサの非直線性の補正又は座標測定機の幾何学的誤差の補正のように,
使用者の操作を必要としない自動的な補正を行うことがある。
検査実施者が指示測定器を検査するとき,指示測定器の取扱説明書又は一般的な慣行において使用者が
提供する量値を要求していれば,検査実施者が使用者が提供する量値を与える。この場合,指示測定器の
仕様は,使用者が提供する量値に誤差がないことを前提とする。したがって,検査不確かさの成分は,使
用者が提供する量値を使って検査値不確かさを計算する。これは,検査実施者が使用者が提供する量値に
対する責任を負うことによる,検査実施者の責任基準である。
指示測定器には,例えば,ソフトウェアインタフェースにおいて,あらかじめ定義された値又は事例の
一覧から選択することによって,実際の使用者が提供する量値を選択する際に使用者を支援するものもあ
る。使用者が提供する実際の量値を入力するオプション(例えば,“その他”)が利用可能である場合,検
査実施者は,量値が事例の一覧に記載されている場合であっても,実際の数値を使わなければならない。
そうでない場合でも,最も近いオプションが選択されなければならない。いずれにせよ,検査値不確かさ
に関連する入力する不確かさ成分は,量値に関する検査実施者の知見に基づいて評価され,オプション一
覧表に記載されている情報によって評価してはならない。
例 指示測定器は,使用者が所定の材料の一覧の中で被測定物のCTEを選択することを要求することが
ある。検査実施者は,検査に使用される参照標準がCTE10.9×10−6 K−1をもつ鋼鉄で作られていて,
その標準不確かさが0.2×10−6 K−1であることを知っているとする。実際の量値を入力するオプシ
ョンが存在する場合,検査実施者は,10.9×10−6 K−1を入力し,そうでなければ,オプション“鋼”
を選択する。両方の場合において,検査値不確かさへの入力不確かさは,0.2×10−6 K−1である。
使用者が提供する量値を必要としない自動補正は,指示測定器にはなくてはならないものであり,自動
的な補正を含むとみなす。そのような構成要素は,検査値不確かさに含めてはならない。この場合,検査
実施者は責任を負わないが,これも検査実施者の責任基準の条件の一つである。
指示測定器は,ソフトウェア,又は他の調節可能な打ち消し合う系統的な影響によって,推定された系
統的な影響を補償する。使用者が提供する量値の入力不確かさを伝搬させるために,基礎となる式は,補
正ソフトウェアにおいて実施されるか,又は打消し合う系統的な影響を記載するかのいずれかで,解析的
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なモデルとして使用することが望ましい。また,式は,単純かつ自明な場合,すなわち,広く認識されて
いるモデルが補正のために利用可能である場合に,検査実施者の経験及び知識に基づいて仮定してもよい。
これは,例えば,既知の熱膨張の線形モデルのような場合である。
7.4 代替検査装置の使用
検査依頼者は,測定器の受入検査において検査装置を提供することが許可されるか,その場合に,検査
値不確かさはどのように扱われるかという疑問がある。
原理的には,適切に校正された検査装置は,その校正不確かさ内において他のものと同等である。した
がって,検査依頼者は,検査の透明性の更なる保証として,検査に使用される特定の検査装置の使用を望
むことがある。
注記 この状況は,定期検査では検査実施者と検査依頼者とが一致するので,起こり得ない。
たとえ名目上物理的に同等であっても,当事者によって提供される検査装置は,異なった校正不確かさ
をもつことがある。検査依頼者の不確かさが検査実施者のものよりも大きい場合,これは,判定基準に従
って,検査の結果を変更してもよい。
検査依頼者が代替検査装置を提案する場合,使用時における検査値不確かさ成分の値を,検査装置ごと
に評価する。関連する場合,実際の状況を表すと考えられる温度及び他の環境パラメータの値は,相互の
合意によって推定される。さらに,検査実施者は,関連する検査値不確かさが検査実施者のそれよりも大
きくない場合にだけ,検査依頼者の検査装置を使用することを義務付けられる。いずれにせよ,実際に選
択された検査装置に関連する検査値不確かさを使用しなければならない。
代替検査装置を使用しようとする検査依頼者は,検査に必要な範囲でのその装置の校正,及び特に校正
の不確かさを文書化しなければならない。
検査実施者は,通常,自分自身の検査装置で検査を実行する準備ができているので,検査依頼者の装置
の使用は,追加の時間及び労力を必要とする場合がある。追加費用及び検査値不確かさ成分の値は,契約
交渉中に合意することが望ましい。具体的な指針については,附属書Aを参照。
全ての場合において,検査実施者は,たとえそれが検査依頼者によって提供されたとしても,検査装置
に起因する不確かさ要因を含めて,検査値不確かさの責任を負う。
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附属書A
(参考)
代替検査装置の使用に関する指針
7.4では,透明性を高めるために,検査依頼者が検査における代替検査装置を提案した事例を扱ってい
る。この附属書は,その事例における追加の指針を示す。
検査装置の複雑さは,極めて単純なもの(例えば,ノギスを検査するための数個のブロックゲージ)か
ら非常に複雑なもの(例えば,大型の座標測定機の検査のための角度運動誤差測定及び環境測定器をもつ
レーザ干渉計)までの範囲であり得る。特に,後者の場合では,検査実施者は,検査で使用する参照標準
について最適化した固定ジグ,ソフトウェア,手順などを含む“ツールボックス”によって検査実施者の
業務を準備することがある。
一般的な規則は,代替検査装置を使用したい検査依頼者が,十分に正確な装置を提供することを含めて
これらを準備する複雑さに対処し,次の費用を負担することである。
− 校正文書をもつ代替参照標準(検査で必要な場合)。
− 検査実施者が代替参照標準を正確に固定しない場合,適切な支持及び固定。
− 検査実施者の検査装置との差異が避けられない場合の詳細な手順。
− 検査において何らかのソフトウェアが必要であり,検査実施者が代替検査装置を管理できない場合に,
検査を実行するための適切なソフトウェア,又はその一部。
− 検査実施者の通常の手順からの差異を補完する労力,特に,おそらくは検査依頼者の現場で,標準の
手順だけのために訓練され,資格を与えられたオペレータが検査を実行するときの労力。
実施例1 マイクロメータは,一組のブロックゲージ及びプラグゲージから得られた測定された検査指
示値に基づいて検査される。この場合は,特殊な固定具は不要で,手順は簡単であり,おそ
らく標準化されていて,その測定器はコンピュータによるデータ取込機能をもたず,検査を
実行する検査実施者によって使用されるソフトウェアは,手動入力(例えば,スプレッドシ
ート)をもつ。検査依頼者の代替ゲージが適切な寸法であり,十分な精度で校正されている
場合は,代替検査装置を使用する際に特別な障害とはならない。
実施例2 座標測定機は,ブロックゲージを用いてJIS B 7440-2に従って検査される。ブロックゲージ
の長さ及び等級は,JIS B 7506で規格化されているため,検査依頼者がもつ同じ呼び値·等
級のブロックゲージに代えて使用する場合には,特段の支障はないと考えられる。
実施例3 実施例2と同様に,ブロックゲージの代わりにステップゲージが使用されることもある。ス
テップゲージを規定する国際規格はなく,あるステップゲージの支持装置及び固定装置が他
のステップゲージに不適切又は使用不能である場合があるという点で,それぞれの製品は,
幾何学的に大きく異なる。さらに,ゲージ座標系を設定するために使用される基準部位は,
製品に依存し,検査を実行するために使用される座標測定機のパートプログラムをそれ専用
にする必要がある。この場合,無駄な時間を最小限に抑え,そご(齟齬)を防止するために,
検査前にこれらの詳細に全て合意し,明確にすることが非常に重要である。代わりに,検査
実施者と検査依頼者とのステップゲージが同一の製品であり,名目上同一であり,より大き
な校正不確かさをもたない場合,特別な支障とはならない。
実施例4 実施例2と同様に,ブロックゲージの代わりにレーザ干渉計が使用されることもある。レー
ザ干渉計は,多くの点でブロックゲージとは大きく異なっており,角度調整機構による固定,
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環境測定器による空気の屈折率補正,ラム又は専用スライド装置に(回転式)反射器を取り
付けるための装置,例えば,ブロックゲージのような追加する標準器,専用のデータ処理ソ
フトウェア,及び特有の機能を含む。検査実施者が非常に柔軟で適格である特別な場合を除
いて,検査実施者は,検査を実行することは容易ではない。検査依頼者が直接操作を行い,
自分自身で検査を実行するならば,これは検査実施者と検査依頼者との役割を逆転させるこ
とになり,JIS B 0641-1に従った判定基準における検査値不確かさの使用に影響を及ぼす。
検査の前に非常に詳細な合意がなされない限り,検査装置におけるそのような大幅な変更は,
実用的ではない。
全ての場合において,検査実施者の標準手順のいかなる変化も,検査値不確かさ成分の大きさを更新し,
追加又は削除によって,検査値不確かさに反映され,影響する。
僅かな不一致のリスクを最小限に抑えるために,検査に先立って,代替検査装置を使用する検査依頼者
の意図が開示され,合意されることを推奨する。これには,上記の考えられる実際的な障害,検査値不確
かさ成分の値の更新,及び発生し得る経済的な影響に関する全ての詳細事項が含まれる。
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附属書B
(参考)
GPSマトリックスとの関係
B.1 一般
GPSマトリックスモデルに関する詳細は,JIS B 0661を参照。
JIS B 0661に規定するGPSマトリックスモデルは,この規格がその一部であるGPSシステムの概要を
示している。JIS B 0024に規定するGPSの基本原則は,この規格に適用され,JIS B 0641-1に規定する既
定の判定基準は,特に断りのない限り,この規格に従う仕様に適用される。
B.2 この規格の使用法に関する情報
この規格は,JIS B 0641-1の判定基準を適用するための指針を提供するものであり,検査値不確かさの
評価を説明するものである。
B.3 GPSマトリックスモデルにおける位置
この規格はGPS基本規格であり,表B.1に示すように,GPSマトリックスの全ての規格チェーンのチェ
ーンリンクFに影響を与える。
表B.1−GPSマトリックスモデル
チェーンリンク
A B C D E F G
記号及び 形体に対す 形体の特性 適合及び 測定 測定機器 校正
指示法 る要求事項 不適合
サイズ
距離
形状
姿勢
位置
振れ
表面性状
(輪郭曲線)
表面性状
(三次元)
表面欠陥
B.4 関連規格
関連国際規格又は日本産業規格は,表B.1に示す規格チェーンに含まれる規格である。
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JIS B 0641-5:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 14253-5:2015(MOD)
JIS B 0641-5:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.040 : 線及び角度の測定 > 17.040.40 : 製品の幾何特性仕様(GPS)
JIS B 0641-5:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0641-1:2020
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―製品及び測定装置の測定による検査―第1部:仕様に対する合否判定基準
- JISB0642:2010
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―測定器の一般的な概念及び要求事項
- JISB7440-1:2003
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―座標測定機(CMM)の受入検査及び定期検査―第1部:用語