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を考慮しないかについての推奨事項を示している。
5 検査測定量
5.1 一般
検査測定量は,指示測定器の計測特性の一つである。その大きさは,検査値によって推定され,通常,
検査値不確かさを考慮に入れて,その指示測定器の受入又は拒絶を決定するために,指定された最大許容
誤差と比較される。それぞれの許容可能な検査設定は,指示測定器自身の検査測定量を定義する。
注記 検査要領で規定されている場合,同じ検査で複数の検査測定量を考慮してもよい。この細分箇条
では,単純化のために単一の検査測定量を取り扱うが,複数の検査測定量の場合,この細分箇条
に示すことがそれら検査の複数の検査測定量のそれぞれに適用される。
検査は,検査測定量と許容可能な検査設定とを指定する検査要領によって規制される。代替案は,異な
る検査設定が等しく有効であると認めているが,同時に,規定は検査を制限する。良好な検査要領は,指
示測定器の完全な計測特性を表す反復可能な検査値が望ましいので,代替案及び規定を可能な限り制限す
るのが望ましい。しかし,これは,過度に時間を要し,高価な検査を必要とするので,通常,完全には可
能ではない。訓練された評価及び経験に基づいて,検査要領は,検査の完全性と実際的な実行可能性との
間のトレードオフを提供し,その結果,実際の条件に適合する幾つかの代替案及び規定がもたらされ,検
査を合理的な量の労力及び費用に限定する。異なる検査設定が許容され,それによって異なる検査値をも
たらすことは避けられない。
一般に,全ての許容可能な検査設定,すなわち,規定のない検査は,検査測定量に関する指示測定器の
性能の完全な知見につながる。
無限の測定は実際には不可能であるので,検査要領は,測定回数などの規定がある。これを緩和するた
めに,代替案が許容されることがあり,そのうちの一つが検査時に選択される。このようにして,指示測
定器製造業者は,実際の検査設定の全ての細部を事前に知るわけではないので,許容可能な検査設定に適
合した指示測定器を作り,不合格を回避するように推奨される。加えて,代替案は実際の検査条件及び機
器に適合することを許してもよい。例えば,必要な検査条件内の実際の周囲温度であれば,その他の温度
も同様に受け入れられる。
結果として,任意の許容可能な検査設定は,任意の他の検査設定とは異なってもよいし,理想的な無限
の測定の場合と異なってもよい。任意の許容可能な検査設定においてもたらされる検査値が,任意の他の
検査設定,又は理想的な無限の測定の場合の検査設定とあまり異ならないことを保証することが,検査要
領の責任である。各許容可能な検査設定において得られる検査値は,可能な検査値の完全な母集団のうち
の一つの要素である。また,この要素が完全な母集団を十分に表すことを保証することも,検査要領の責
任である。
代表性の不足,すなわち,様々な許容可能な検査設定にわたる検査値変動性が,検査値不確かさに寄与
するか否かという問題が生じる場合がある。この問題は,通常,検査値不確かさを評価する際に最も誤解
され,実施者に最も混乱を生じさせる。
全ての考えられる検査設定からの検査値の全母集団上で,検査測定量が定義された場合,検査変動性は,
検査値不確かさの一部となることが望ましい。反対に,検査測定量は,単一の許容可能な検査設定(3.4参
照)上で定義される。これは,変動性が検査測定量の定義外に残され,すなわち,検査値不確かさに寄与
しないことを意味する。それぞれの許容可能な検査設定は,検査測定量を導く。検査要領への合意によっ
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て,関係者は,指示測定器の性能を表すとみなされる一つの測定量の検査を制限することを受け入れる。
5.2 入力量及び検査測定量の定義
この細分箇条は,特に,検査測定量の定義において,入力量(例えば,周囲温度)をどのように扱うこ
とがあるかに関係する。
検査測定量は,検査要領で定義される。良好な検査要領は,代表的な検査測定量を定義し,最小限の実
験労力及び費用でそれらを推定することが可能である。検査測定量の定義は,最終的には,検査要領の作
成者,例えば,標準化を担当する部署によってなされた業務上の決定である。この業務上の裁量は,定義
後に停止する。すなわち,一旦検査測定量が定義されると,その検査値の導出と検査値不確かさの評価と
が完全に決定される。
検査測定量の定義は,二つの異なる方法による追加入力量を含めてもよい。すなわち,必要な検査条件
内の任意の量の値を許容するか,又は正確な量の値を指定するかのいずれかである。前者の場合は,検査
要領において次のような文章が作成される。“検査は,必要な検査条件内で実施し,そのいずれもが等しく
有効であり,有効な検査を完了するのに十分なものとしなければならない”。後者の場合では,文章は次の
ようになる。“検査測定入力量Xは,正確な量xで定義される。すなわち,Xが正確にxで発生したと仮定
する”。
必要な検査条件内で任意の入力量値を許容することは,必要な検査条件内で任意の量値を入力量がとる
場合に検査を実行するための代替案であり,各入力量は,それぞれが許容可能な検査設定を導き,したが
って,具体的な検査測定量を導く。検査要領は,これらの測定量の各々を,固有の値として扱うため,異
なる入力量での測定量の変動は不確かさの原因ではなく,異なる測定量による測定である。通常,これら
測定量(必要な検査条件内)は,全て単一の最大許容誤差で明示される。
実施例1 検査は,必要な検査条件内の周囲温度で実施される。例えば,20 ℃±5 ℃の範囲で,2 ℃/m
以下の温度勾配の場合。
実施例2 検査は,十分に訓練され,熟練した,検査実施者によって実施される。例えば,専門技術の
第三者認定を与えられた検査実施者。
注記1 実施例2は,意図的に緩くしている。検査実施者の熟練度合のしきい(閾)値を設定すること
は難しく,明確にしなくてもよい。それでもなお,この原理は,しきい(閾)値を超える任意
のレベルの技術が,検査値不確かさへの影響をもたずに,実際の検査設定を許容可能にするこ
とを明確にしている。
検査要領が,正確な入力量値を指定する必要がある場合,検査測定量の定義にこの影響による変動が含
まれないように,検査測定量はあらかじめ定義された入力量値で正確に定義される。実際の検査では,入
力量は,事前定義された入力量値と正確には一致しない。近い場合もあるが,正確には等しくない。した
がって,事前定義された入力量値に対して,実際の入力量値の偏差(小さいことが望ましい。)が生じても
よい。検査値は検査測定量で定義された正確な値に補正され,補正は検査値不確かさで考慮される不確か
さ成分を含んでいなければならない。
実施例3 検査測定量は,空間勾配を伴わない20 ℃の周囲温度で定義される。すなわち,0 ℃/mに等し
い温度勾配での値。
実施例4 検査測定量は,質量をもたない検査装置で定義される。すなわち,質量は0 kgである。
注記2 所定の入力量値が明示されていない場合,検査要領は,暗黙的に許可されたとみなしてもよい。
例えば,検査で使用される参照標準の正しい固定方法を明示する必要はない。明示的にそれを
要求する可能性のある文章は“検査測定量は,固定の緩み又は固定の不適切さによって参照標
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準に生じる揺れ又はひずみがないと定義される”が考えられる。誤解の可能性を回避するため
に,小規模な検査要領,及び自明の場合にだけ,仕様を明示しないことが推奨される。
検査要領の開発者は,検査要領を指定する前に,上記の二つの選択肢(任意の入力量値を許容する場合
及び正確な入力量値を指定する場合)の利点及び欠点を注意深く考慮することが望ましい。特に,
− 必要な検査条件内で任意の入力量値を許容することによって,検査実施者は,実際の検査条件におけ
るその入力量に対する責任,特に補正及びその不確かさの評価から解放される。一方,入力量の許容
される変動性によって,検査値は幾らかの変動性をもたらすので,検査値は不完全な再現性を生じる。
− 正確な入力量値を指定することは,入力量の影響が補正されるので,検査値の再現性が改善する。一
方,検査実施者は,補正とその不確かさとの両方を評価する必要がある。
すなわち,必要な検査条件内の任意の量の値を許容することは,検査の実施を容易にする代わりに検査
の再現性を低下させることになり,一方で正確な量の値を指定することは,検査の再現性を高めるが,検
査の実施費用を増加させることになる。いずれも将来,最大許容誤差の利用に制限を与える可能性がある。
最も概念的に簡単な状況は,入力量が検査装置関連の入力量である場合に生じる。この場合,入力量は
完全に検査実施者の責任及び制御の下にあり,検査実施者は入力量の影響を予測し,それを補正し,付随
する検査不確かさを評価することが可能であると期待される。
検査対象関連の入力量の所定の入力量値で検査測定量が定義される場合には,十分に注意を払うことが
望ましい。この場合,必要とされる補正及び不確かさは,検査中の指示測定器に対するものである。この
ため,次のような問題が発生する可能性がある。
− 検査は,指示測定器の性能を予測するのではなく,実験的にその性能を検証することである。逆に,
必要な補正は予測に基づいている。
− 検査中の指示測定器は,可能な限りブラックボックスとみなされる。反対に,予測及び補正は,必要
とされる範囲で,ブラックボックスの公開及び開示を必要とする。
− 最大許容誤差に対する指示測定器の検証は,指示測定器が検査中の入力量の影響について補正された
ときにだけ有効である。これは,(検査中の)検査実施者にとっても,(通常使用時の)使用者にとっ
ても負担となる。使用者が指示測定器への入力量の補正方法を準備していない,又は補正を実施した
くない場合,(例えば,簡単な手持ち式指示測定器を用いた場合)実際の指示誤差は,検証された最大
許容誤差によって予測されるよりも(はるかに)大きくなる場合がある。
上記の問題の重要性は,検査中の指示測定器が複雑になるにつれて増大する。例えば,検査対象関連の
入力量に起因する指示誤差及びその不確かさを予測することは,ノギスについては十分に容易であるが,
レーザトラッカ又は座標測定機については,妥当と考えられる検査労力を,はるかに超える可能性がある。
実際,前者は単に二つの均一な部品の固体片から作られ,後者は自動制御機能をもつ電子機器及び空気圧
設備,及びリアルタイムに補正を行うソフトウェアをもつ幾つかの開示されていない構成要素の集合であ
る。
検査対象関連の入力量で検査測定量を規定することを,当事者が望む場合,その構造の詳細が自明であ
るか,又は補正及びその不確かさを評価するのに十分な開示がなされている,簡単な指示測定器に限定す
ることを推奨する。
6 検査実施者の責任基準
実際に検査値不確かさを評価する場合,個々の候補の入力量について,検査値不確かさ成分として含め
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るかを決定しなければならない。理論的背景は,箇条5に記載されているが,決定の根拠となる簡単で実
用的な基準をもつことが有用である。
判定基準の一般原則は,不確かさの責任は常に測定を実行する当事者にあるということである。この理
由は,検査値不確かさが,事実上検査値に影響を与えるからであり,検査実施者は,検査値不確かさを最
小限に抑え,検査結果と関連する作業とをリスクにさらさないように動機付けられるからである。
言い換えれば,検査実施者は,検査中に発生する可能性のあるあらゆる不完全性に対して責任を負い,
検査値不確かさに関して責任を負う。このことから帰結されることは,検査実施者は自らに起因する検査
入力値だけに責任を負うということであり,検査値不確かさ成分として計上される。
これは,検査実施者の責任基準を構成する。任意の入力量は,それが直接的又は間接的に検査実施者に
よって管理される場合にだけ,検査値不確かさ成分とみなされる(3.15の注釈1及び注釈2を参照)。
実施例1 検査において参照標準は固定する。例えば,半球を真円度測定機に,又はステップゲージを
座標測定機に固定する。検査要領で定義された検査測定量は,指示測定器に対して参照標準
に位置ずれがないと仮定している。この固定は,検査要領で認識された代替案にはない。結
果として,検査測定量の不完全な実現に対して,検査値不確かさ成分は,(不十分な)固定に
ついて考慮するのがよい。検査実施者の責任基準に照らしても,固定が検査実施者によって
完全に管理され,検査実施者が適切な検査値不確かさ成分を介して責任を負うという同じ結
論につながる。
実施例2 指示測定器は,周囲温度20 ℃±5 ℃の定格動作状態で指定され,使用者が提供する量値は必
要とされない。検査要領は,要求される検査条件を定格動作条件と同一に設定し,その中で
単一の温度で許容可能な検査を実行する。この規定は,この区間内の任意の温度での検査を
許容可能な検査設定とし,対応する検査測定量が定義される。その結果,実際の温度は,検
査測定量がその温度で定義されるので,検査値不確かさ成分を生じない。検査実施者の責任
基準に照らしても要求される検査条件内の任意の温度を許容する検査要領であることから,
検査値不確かさ成分に含まれない,という同じ結論が導かれる。
実施例3 実施例2と同様であるが,機器ソフトウェアは,熱膨張を補正するために,使用者が提供す
る量値として測定物のCTEを要求する。実施例2と同様に,実際の周囲温度(要求された検
査条件内)については,検査値不確かさ成分を考慮しない。しかし,CTEによる検査値不確
かさ成分が考慮されてもよく,その感度係数は,測定物の温度に依存する。CTEを検査値不
確かさに含める場合は,実際の周囲温度を測定して記録し,CTEに対する感度係数を評価す
る。
検査実施者の責任基準は,次に示す二つの特殊な状況のいずれかが発生しない限り,入力量が検査値不
確かさ成分であるかどうかは,検査測定量(箇条5参照)の定義と同じ結論になる。
− 検査要領が,正確な検査対象関連の入力量で検査測定量を定義する場合,検査実施者は補正とその不
確かさとを評価する必要があり,検査測定量の定義によれば,この入力量は検査の不確かさ成分であ
る。しかし,検査実施者が入力量を制御していない場合があり,検査実施者の責任基準に従うと,代
わりに含まれるべき検査の不確かさ成分を除外することになる。
実施例4(誤除外) 5.2の実施例3と同様の検査を,検査依頼者の現地で行う場合,検査測定量の定義
によれば,実際の周囲温度のために必要とされる補正は,検査値不確かさ成分に
含まれる。しかし,検査依頼者の現地における周囲温度は,検査実施者によって
管理されていないため,これを検査不確かさ成分に含めることは,検査実施者の
責任基準と矛盾する。
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実施例5(正しい計上) この例は,実施例4とは対照的に,5.2の実施例3と同様の検査を検査実施者
の管理する現場で行う場合である。これは,手持ち式指示測定器が販売され
る前に製造業者の検査室で検査される通常の事例である。この場合,周囲温
度は検査実施者によって管理されているため,これを検査不確かさ成分に含
めることは検査実施者の責任基準と矛盾しない。
− 検査要領が,必要な検査状態内の任意の検査装置関連の入力量で検査測定量を定義する場合,検査装
置の代替案によると,検査実施者が特別な検査の不確かさ成分を考慮しなくてよい。しかし,通常,
検査装置は検査実施者によって提供され,検査実施者がその責任を負う。その結果,検査実施者の責
任規準に従うと,除外されるべき検査の不確かさの成分を含めてしまうことになる。
実施例6(誤混入) この例は,5.2の実施例2と同様の検査を行う場合である。これは,例えば,多関
節アーム座標測定機のような手動操作式指示測定器を検査する通常の事例である。
検査測定量の定義によれば,検査実施者の技能に関する代替案は,具体的な検査
値不確かさ成分に含める必要はない。しかし,検査実施者の技能は,検査実施者
の責任において管理されているため,これを検査不確かさ成分から除外すること
は,検査実施者の責任基準と矛盾する。
入力量を検査値不確かさ成分として考慮するか否かを決定する際には,検査実施者の責任基準だけで一
般的に十分である。しかし,上記二つの状況(誤除外及び誤混入)のいずれかが発生したときには,検査
実施者の責任基準では不十分であるため,検査測定量の定義が優先されなければならない(表1参照)。
表1−様々な状況における入力量の検査実施者の責任基準の信頼性
入力量に対して定義された検査測定量
必要な検査条件内で任意の正確な入力量値を指定する
入力量値を許容する場合 必要がある場合
入力量 検査装置関連(3.12) 完全な信頼性が保証されて信頼性が保証される。
いない。 実施例1
(誤混入の可能性) 実施例3におけるCTE
実施例6(誤混入)
検査対象関連(3.11) 信頼性が保証される。 完全な信頼性が保証されて
実施例2 いない。
実施例3における周囲温度 (誤除外の可能性)
実施例4(誤除外)
実施例5(正しい計上)
疑わしい,又は議論がある場合では,箇条5で規定した検査測定量の定義による基準が優先であり,参
照することが望ましい。
7 指示測定器の検査における具体的な問題
7.1 一般
7.27.4では,検査値不確かさの評価において生じ得る具体的な疑問について記載する。
7.2 指示測定器の誤差
指示測定器の誤差(例えば,系統誤差,ヒステリシス,完全でない繰返し性など)は,検査値不確かさ
の要因であるかという疑問がある。
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JIS B 0641-5:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 14253-5:2015(MOD)
JIS B 0641-5:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.040 : 線及び角度の測定 > 17.040.40 : 製品の幾何特性仕様(GPS)
JIS B 0641-5:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISB0641-1:2020
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―製品及び測定装置の測定による検査―第1部:仕様に対する合否判定基準
- JISB0642:2010
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―測定器の一般的な概念及び要求事項
- JISB7440-1:2003
- 製品の幾何特性仕様(GPS)―座標測定機(CMM)の受入検査及び定期検査―第1部:用語