JIS B 8672-1:2011 空気圧―試験による機器の信頼性評価―第1部:通則 | ページ 5

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知とする。
C.5.2 基本式
寿命tにおけるワイブル分布の信頼度関数は,式(C.1)で表される。ワイブル係数βは既知である。
t
R(t) xp (C.1)
両辺の対数をとり,基準寿命tpに対する値との比をとり整理すると,式(C.2)のようになる。R(tp)は指定
された信頼度である。
1
t ln R(t)
(C.2)
tp ln R(tp )
tを割増し試験時間と考えると,割増し率は式(C.2)の右辺の値となる。
C.5.3 式の展開
製品n個を時間tまで試験して1個以上が故障する確率は,最大に見積もっても1−R(t) nであるが,こ
れが1に近いある確率γより更に大きいとする仮説1−R(t) n>γを設けたとき,試験では全く故障が起こら
なければ,その仮説は否定されたことになる。すなわち,1−γ≦R(t) nと考えなければならない。γは信頼
水準である。
不等号を等号に置き換えて整理すると,式(C.3)及び(C.4)が得られる。
1 (t n
R) (C.3)
1
ln R(t) ln(1 ) (C.4)
この関係を式(C.2)に代入して整理すると,次のようになる。
1
A
t tp (C.5)
n
ただし,
ln(1 )
A (C.6)
ln R(pt )
係数Aは要求される信頼度と信頼水準とから決まる値で,これに標本の大きさn及びワイブル係数βを
加味して割増し試験時間が決まる。実証試験は,式(C.5)で決まる値以上の割増し時間について行わなけれ
ばならない。例えば,信頼水準 柿 0.95で,指定の基準寿命がtp=B10とすると,指定信頼度はR(tp)=0.90
であるから,A=28.43となる。試験時間の割増し率は,これに標本の大きさn及び既知のワイブル係数β
を考慮して,式(C.5)によって決まることになる。
C.5.4 計算例
ある空気圧シリンダ10個を用い,母集団がB10=10 000 kmを満たしていることを信頼水準95 %で実証
するためには,どの位の割増し試験が必要かを求める。ただし同様な設計の他の製品から,ワイブル係数
はβ=2.0であることが分かっているとする。C.5.3からA=28.43として式(C.5)を用いると,次の式のよう
になる。
すなわち,この場合,シリンダ10個全てが16 860 km以上の試験に耐えたならば,母集団がB10=10 000
kmを満たしていることを信頼水準95 %で実証できたことになる。

――――― [JIS B 8672-1 pdf 21] ―――――

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1 1
A 2 28.432
t tp 10 000 16 860
n 10
C.6 B10寿命に対する試験時間の割増し率
C.6.1 計算式
B10寿命を信頼水準95 %で実証することを考える。式(C.5)から試験時間の割増し率Lは次のように表さ
れる。
1
t A
L (C.7)
tp n
この場合,A=28.43なので,割増し率は表C.2のようになる。
C.6.2 計算例
ワイブル係数βを2.0とした場合,大きさ7の標本を用いて,B10=10 000 kmを信頼水準95 %で実証す
るには,どの位の試験時間が必要かを考える。
表C.2によればL=2.02であるから,割増し試験時間はt=20 200 kmとなる。
表C.2−信頼水準95 %におけるB10寿命実証のための試験時間の割増し率L
試験数n ワイブル係数β
1.0 1.5 2.0 2.5
2 14.2 5.87 3.77 2.42
3 9.48 4.48 3.08 2.12
4 7.11 3.70 2.67 1.92
5 5.69 3.19 2.38 1.78
6 4.74 2.82 2.18 1.68
7 4.06 2.55 2.02 1.60
8 3.55 2.33 1.89 1.53
9 3.16 2.15 1.78 1.47
10 2.84 2.01 1.69 1.42

――――― [JIS B 8672-1 pdf 22] ―――――

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附属書D
(参考)
試験データにおける異常値の取扱い
D.1 概要
信頼性評価において,収集したデータの中のあるものが異常値ではないかと疑われる場合がある。この
附属書では,疑わしいデータを識別する方法及びそれを異常値として解析対象から除外すべきかどうかを
判断する方法を示す。
このような判断が必要な理由は,データ収集に的確さを欠いた可能性,試験中偶然に不具合が起こった
可能性,更にその他の異常があった可能性など,何らかの理由によってそのデータが母集団に属するもの
か,疑念がもたれることがあるからである。
D.2 原理
一連の測定データの中に,あらかじめ設定したある小さな確率値pthに対し,それを更に下回る確率でし
か起こらないと予測される極端なデータが含まれている場合,それは異常値として除外する。ここで推奨
する限界確率はpth=0.05であるが,これは他のデータより極端に大きいデータ及び極端に小さいデータの
両方を含む確率である。この基準に見合うデータは信頼度評価から除外することができるが,データは異
常値として報告しなければならない。
D.3 異常値の決定方法
D.3.1 疑わしいデータの識別
まず異常値かもしれない,疑わしい寿命データを識別する必要がある。このため,大きさnの標本によ
る試験では,得られた寿命の標本平均x及び標本標準偏差sを用いて,次の式から各データに対するt値
を計算する。tの絶対値 t が異常に大きいデータは,疑わしいデータである。
i
x x
t (D.1)
s
ここに, x : 個別の標本の寿命
x : 寿命の標本平均
s : 寿命の標本標準偏差
なお,標本標準偏差は,式(D.2)で求める。
注記 式(D.1)のt値は,t分布に従うことが知られている。
n
2
xi x
i1
s (D.2)
n 1
D.3.2 異常値の判定基準
疑わしいデータが異常値であると判定する基準は,母集団からそのような極端なデータを得る確率 t
値が,ある値より大きくなる確率pexを求め,それが限界確率pth以下のときとする。確率pexは,自由度(疑
わしいデータを含む。)n−1,並びに標本平均x及び標本標準偏差(疑わしいデータを除く。)sの関数で
ある。

――――― [JIS B 8672-1 pdf 23] ―――――

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D.3.3 疑わしいデータの生起確率
疑わしいデータの生起確率をpexとすると,大きさnの標本に疑わしいデータが全く含まれない確率は (1
−p) nであるから,標本に1個以上の疑わしいデータを含む確率は1−(1−p) nである。すなわち,pexは式(D.3)
のように表すことができる。
pex 1 1( p) n (D.3)
ここで,pは累積確率であるから,疑わしいデータの t の値を累積確率pに換算する必要がある。
注記 この計算は,t分布に関する市販のソフトウェア等を用いて行ってよいが,この場合pは両側確
率であることに注意する。
得られた疑わしいデータの生起確率pexが推奨の限界値pth=0.05より小さければ,これを異常値と判定
して信頼性評価対象から除外することができる。ただし,データは異常値として報告しなければならない。
なお,np<0.01の場合は,式(D.3)を級数に展開してpの高次項を無視することによって,式(D.4)のよう
に簡略化することができる。
n nn 1 nn 1n 2
pex 1 1 p 1 1 np p2 p3 np (D.4)
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D.4 適用例
D.4.1 例1(異常値と判定されない例)
D.4.1.1 試験から得られたデータ
表D.1の10個の測定値は,実験室で得られた試験結果である。平均x,標準偏差s及び t 値も示して
ある。疑わしいデータは番号10に関するもので, t =2.111と他より大きい。
表D.1−例1のデータ
番号 試験結果 t
1 53.785 0.393
2 52.367 0.668
3 55.684 0.026
4 57.251 0.278
5 50.203 1.087
6 61.085 1.021
7 49.226 1.277
8 55.577 0.046
9 56.267 0.088
10 66.712 2.111
平均x 55.816 −
標準偏差s 5.162 −
D.4.1.2 異常判定のための検討
次に,疑わしい値を除いて平均及び標準偏差を再計算する。その理由は,残りの9個の値を用いるほう
が,母平均及び母標準偏差のより良い推定値が得られると考えられるからである。
表D.2では,データは再計算した t 値の降順に並べ直し,対応する累積確率pの値を示してある。この
確率は,適当な統計ソフトウェア等によって計算してよい。

――――― [JIS B 8672-1 pdf 24] ―――――

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表D.2−異常判定のため再計算した例1のデータ(並べ直し)
順位 試験結果 再計算した t 累積確率p
1 66.712 3.297 0.009 3
2 49.226 1.465 0.177
3 50.203 1.199 0.261
4 61.085 1.765 0.111
5 52.367 0.610 0.557
6 53.785 0.223 0.828
7 57.251 0.721 0.489
8 56.267 0.453 0.661
9 55.577 0.265 0.797
10 55.684 0.294 0.776
新しい平均x 54.605 − −
新しい標準偏差s 3.672 − −
D.4.1.3 結果の判定
表D.2から,疑わしいのは順位1のデータで,平均値から3.3シグマ(標本標準偏差の3.3倍)ほど上に
外れているが,それは累積確率として0.93 %であることが分かる。大きさ10の標本の中にこのような極
端なデータを少なくとも一つ含む確率を式(D.3)から求めると,次のようになる。
pex=1−(1−0.009 3)10=0.089
すなわち,大きさ10の標本にこのような極端なデータが起こる確率はpex=8.9 %であり,これは判断基
準とするpth=5 %より大きいから,異常値ではないと判定される。したがって,これは信頼性評価に含め
なければならない。
注記 同じ計算を式(D.4)の簡略計算で行うと,pex 0.089となる。
D.4.2 例2(異常値と判定される例)
D.4.2.1 対象とするデータ
表D.3に,大きさ10の標本による別のデータ例を示す。解析の手順は,D.4.1と同じである。
表D.3−例2の元のデータ(左)及び再計算したデータ(右)
元のデータ 再計算したデータ
番号 試験結果 t 順位 試験結果 再計算した t 累積確率p
1 56.241 0.253 1 79.057 6.424 0.000 122
2 57.177 0.137 2 48.658 2.035 0.072
3 56.120 0.269 3 59.800 1.065 0.315
4 57.361 0.114 4 51.841 1.150 0.280
5 48.658 1.196 5 59.688 1.034 0.328
6 59.688 0.175 6 57.361 0.387 0.708
7 56.864 0.176 7 57.177 0.335 0.745
8 59.800 0.189 8 56.864 0.248 0.809
9 51.841 0.800 9 56.241 0.075 0.942
10 79.057 2.582 10 56.120 0.041 0.968
平均x 58.280 − 新しい平均x 55.972 − −
標準偏差s 8.048 − 新しい標準偏差s 3.593 − −

――――― [JIS B 8672-1 pdf 25] ―――――

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JIS B 8672-1:2011の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 19973-1:2007(MOD)

JIS B 8672-1:2011の国際規格 ICS 分類一覧

JIS B 8672-1:2011の関連規格と引用規格一覧