JIS B 9955:2017 機械製品の信頼性に関する一般原則 | ページ 10

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Y : モデルの測定可能な出力パラメータ
θ : 実験によって決められる未知係数(ほかの情報がない場合は,
θは対数正規分布と仮定)
一連の実験(i=1, ···, n)が実施されたとすると,次のようになる。
− Wの値は,wiと設定される。
− Xの値は,xiと測定される。
− Yの値は,yiと測定される。
これらの結果から,未知係数θの観測値の集合が次のようになる。
yi
θi (D.18)
g xi, wi
θ'=lnθの平均値及び標準偏差は,次のとおりである。
n
1
m θ' θ'i(D.19)
n i1
n
2 1 2
s θ' θ'im θ' (D.20)
n 1 i1
ここに,θ'iは,
yi
θ'i ln (D.21)
g xi, wi
統計的不確かさを含んだ設計値θdは,式(D.22)で与えられる。
1
θd exp
exp m θ' 1
tνds θ' (D.22)
n
係数exp[{m(θ')}]は,偏り係数として参照されることがある。m(θ')=0ならば,exp[{m(θ')}]=1.0となり,
そのモデルは不偏といわれる。
tνdの値は表D.3に従う。表D.3では,ν=n−1,βR=αdβである。βは目標信頼性指標,αdはFORMの影
響係数αの設計値である。特に指示がない限り,Rの不確かさが支配的な場合にはαd=0.8,その他の場合
にはαd=0.3を採用する(附属書E参照)。
試験によって設計される構造要素の設計強度Rdは,次のように計算できる。
d 1
R (D.23)
ηd g xd , w
γd
ここに,γd=1/θdであり,ηdはモデルの不確かさの設計値である。

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附属書E
(参考)
信頼性に基づく設計の原則
E.1 一般
この附属書は,信頼性に基づく設計の原則について記載する。この附属書の目的は,次のとおりである。
− この規格の背景を示す。
− 箇条8に関する原則及び手法のより詳細な解説をする。
− 確率的手法の適用方法を紹介する。
ランダムな事象がある場合,その中の数学的な関係式で記述される全ての検証問題は,一般に確率的手
法を使うことができる。そこには,大きく二つの使用方法がある。一つは,安全性の要素(例えば,部分
係数)のキャリブレーションであり,もう一つは,設計のための直接適用である。設計に適用する場合は
一般的に,通常の検証方法では取り扱えないような高度な問題を取り扱うことになる。実験に基づく設計
及び既設機械製品の評価は,確率的手法で取り扱うことが受け入れやすい問題である。
この附属書は,主として次の人のためのものである。
− 基準及び勧告の作成者
− 信頼性に基づく設計に関する情報を必要とする設計者
− 確率に基づく設計の分野の研究者
この附属書には,確率的手法に基づく設計の幾つかの一般的な考え方が示されている。E.4E.7は,主
として終局限界状態に適用されるが,多くの場合,非可逆的使用限界状態にも適用可能である。可逆的使
用限界状態を含む問題には,一般に適用はできない。
E.2 不確かさのモデル化
E.2では,基本変数(例えば,荷重,材料特性,幾何学データ)の不確かさを取り扱う。ここでは,解
析モデルの不確かさを表すと考えられる確率変数θも基本変数に含むことにする(7.3参照)。
E.2.1 不確かさの原因
6.1によれば,基本変数の不確かさは,次のいずれかのタイプに分類される。
− 本質的にランダムな変動及び不確かさ
− 不適切な知識に起因する不確かさ
− 統計的な不確かさ
これらのタイプは,更に次のように分類できる。
a) 本質的にランダムな変動及び不確かさ 人間の行動に影響されるものと影響されないものとに分類で
きる。ランダムな変動を受ける荷重パラメータの多く(積雪重量,風速,地震動強度など)は,後者
の分類に属する。前者の分類は,例えば,鋼及びコンクリートの強度,及び鋼製はり寸法の不確かさ
などである。これらの不確かさは,進歩的な生産方法及び品質管理によって減少させられるが,一方
ではコストアップにつながる場合もある。このように,ある限界の中で,不確かさのレベルは,経済
性を考慮しながら選択することができる。したがって,経済性を考慮した最適化を行う場合は,この
二つの分類の区別は重要であろう。
b) 不適切な知識に起因する不確かさ 二つのカテゴリーに分類できる。そのうちの一つは,例えば,荷

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重効果モデル又は耐力モデルの不確かさであり,研究活動などによって知識が増加すれば,不確かさ
は減少する。測定誤差も,このカテゴリーに属する。もう一方のカテゴリーは,将来の状況に依存す
るような不確かさである。例えば,新たな知見を取り入れたことによる運用変更などである。研究活
動などによって,これらの不確かさを減少させられる可能性は少ない。
c) 統計的な不確かさ 試験又は観測の結果を統計的に評価することに関係する。この不確かさは,次に
起因する。
− 異なった統計的母集団の特定及び分離ができない。
− 試験結果の数が限られていて,統計パラメータ(平均値,標準偏差など)の推定に不確かさが生じ
る。
− 観測値(例えば,気象変数)の長期的な変動を無視する。
− 統計情報を無理に外挿する。
− 相関を無視する。
− 統計的特性で部分的に又は全く表すことができない不確かさを,統計分布で記述してしまう(E.2.2
と比較)。
統計的不確かさは,一般には,試験又は観測を増加していくことによって減少させることができる。
E.2.2 基本データを得るための種々の方法
モデル及びその不確かさを特徴付けるパラメータの値は,次のような種々の方法によって得られる。
a) 観測又は測定
b) 解析
c) 決め事
d) 推量
多くの場合は,基本データはこれらの方法を組み合わせることによって得られる。
簡単な例としては,次がある。
− コンクリートの引張強度は,しばしば,(圧縮強度の)測定と(変換関数を用いた)解析とから決めら
れる。
− クレーンの最大つ(吊)り上げ重量は,意思決定によって決められる。動的な付加力は別の方法で決
められる。
− 橋の交通に伴う積載重量は,観測及び将来予測についての判断を組み合わせて決められる。意思決定
もまた重要である。
不確かさを記述する基本変数は,平均値,標準偏差,ほかの変数との相関性などのパラメータ及び確率
分布によって特徴付けることが望ましい。a)及びb)によってパラメータの値を決める場合には,その方法
は,一般に統計データの解析を含み,その結果は統計的な表現となる。基本変数の値を,主として決定又
は判断で決める場合には,一般にその結果は直接的には統計的な表現とはならない。しかし,全ての基本
変数を確率的手法で扱えると仮定すると(8.1参照),統計データとなり得ないような基本変数にも,統計
的パラメータ(平均値,標準偏差など)を与える必要がある。その際には,確定値を選ぶという場合も含
めて,かなり主観的に与えざるを得ない。したがって,例えば倉庫の床の許容重量を超える重量は,許容
重量を平均値とし,予想される過載重量を標準偏差として扱うことによって考慮する。
測定に関するグロスエラー,寸法効果などに起因するような不確かさは,品質保証の方法によってでき
る限り除外するべきである(附属書A参照)。これらが除外できたとすると,二つの不確かさが残ること
になる。すなわち,モデルの不確かさ及び統計的不確かさである。可能であれば,これら二つの不確かさ

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は,統計的手法によって分離することが望ましい(附属書D参照)。
E.2.3 確率分布関数の選択
入手できるデータで確率分布関数がはっきりと決められることは,ほとんどない。多くの場合,対象と
している基本変数に関して合理的な分布となるように,よく知られた分布形の中から選ぶことになる。実
際の適用に当たっては,次のような点に注意するとよい。
− 一般荷重及び任意時点の荷重については,負になる確率がほとんど影響を与えない場合は,正規分布
が扱いやすい。対数正規分布,ワイブル分布,ガンマ分布及び極値分布も,選択された基準期間内に
おける最大値の分布を表現したい場合には特にふさわしい。
− 材料特性及び寸法については,正規分布及び対数正規分布が扱いやすい。正規分布を選ぶと負になる
確率が無視できず不都合が生じる場合には,対数正規分布又はワイブル分布が望ましい。
確率分布関数の選択には注意が必要である。可能な偏りも考慮すべきである。実際の分布が多峰性の特
性をもてば,唯一の分布(よく知られた解析的分布から)を選択することは顕著な誤差をもつことになる。
E.3 破損規範
E.3.1 終局限界状態
機械製品の破損規範は,基本変数Xの関数g(X)で次のように表すことができると仮定する。
− g(X)>0 望ましい状態(安全)
− g(X)=0 限界状態
− g(X)<0 望ましくない状態(不安全)
図E.1に,二つの基本変数X1とX2との場合について示す。ここに,X=(X1, X2)となる。
望ましくない状態
限界状態
現在状態
望ましい状態
図E.1−関数g(X)の概略図
基本変数Xは,時間に依存する場合もある。例えば,外部環境荷重は時間とともに変動する。構造材料
は腐食などの現象によって時間とともに劣化していく。耐力は,疲労によって時間とともに減少すること
もある。一般には,基本変数Xのうち幾つかは,確率過程によって表現できる。特に,Xの時間変動性と
は,Xの複数の成分の最大値又は最小値は同時には起こらないことを意味している。時間依存性とは,破
損確率がある基準期間t0に対して関与していることを意味している。
機械製品の信頼性(破損しない又は残存確率)は,式(E.1)で定義する。

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Ps=1−Pf (E.1)
一つの要素又は要素の一つの断面の信頼性を,ある特定の破損機構と特定の荷重組合せとに対して検討
する場合,関数g(X)は,その力学的挙動から導き出される一つの式で表すことができる。したがって,そ
の解析は,要素解析と呼ばれる。
一つの要素の複数の破損機構又は複数の要素について同時に検討する場合,関数g(X)は,幾つかの関数
g1(X), g2(X), ···の組合せと考えられる。図E.2に,基本変数がX1及びX2の二つの関数g1(X1, X2)及びg2(X1, X2)
の例を示す。図E.2では,二つの極端な例を示している。
図E.2 a)では,破損領域(望ましくない状態)が式(E.2)で表される。
g1(X1, X2)<0又はg2(X1, X2)<0 (E.2)
図E.2 b)では,破損領域が式(E.3)で表される。
g1(X1, X2)<0及びg2(X1, X2)<0 (E.3)
破損領域
破損領域
a) b)
図E.2−二つの極端な破損領域(斜線部)
幾つかの条件gi(X)<0を同時に考慮する解析のことをシステム解析と呼ぶ。例えば,最弱リンクシステ
ム[図E.2 a)],冗長システム[図E.2 b)]又はこれらの組合せのように,システム関数g(X)の定義は,シ
ステムの特性に強く依存する。
E.3.2 使用限界状態
幾つかの使用限界状態では,望ましい状態から望ましくない状態への限界状態の通過は極めて明確な条
件のもとで発生する。このことは,その限界状態が,合理的な近似のもとで,力学的実現象として考えら
れることを意味する。しかし,ほとんどの使用限界状態では,望ましい状態から望ましくない状態への遷
移はより様々な条件のもとで発生する。この遷移とは,徐々に使用性が低下していくことを意味している。
すなわち,一般に使用性の程度μ(0≦μ≦1)を定義することができ,ある使用性パラメータλの関数(例え
ば,はりのたわみ又は床の振動強度)となる。図E.3では,機械製品が完全に使用性を満足する状態λ1と
機械製品が使用性を全く満足しない状態λ2という二つの限界値λがある場合を示している。場合によって
は,使用性の程度が経済用語で表現されることもある。

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JIS B 9955:2017の国際規格 ICS 分類一覧