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− 使用性の要求
− 荷重変数の値の選択
− 設計計算における信頼性の程度の選択
− 耐久性の考慮
− 構造健全性(構造ロバスト性)の程度の考慮
− 周りの環境的影響の予備調査の量及び質
− 用いる力学モデルの精度
− 関連規則の厳格運用
2) 危険度を低減するための品質保証に関する方策は,次による。
− 人的ミス
− 設計
− 施工
− 維持管理
4.3 品質方針の実施
完成された機械製品が指定された品質の要求,特に基本的要求(4.1)を満足するように,機械製品の供
用期間中の全ての段階に関わる管理組織によって適切な品質方針を実施しなければならない。詳細は,次
による。
注記 品質管理に関するより詳細な留意事項は,附属書Aを参照。
a) 品質方針は,次から成り立つ。
1) 品質要求条件の定義
2) 機械製品の設計・施工の段階,及び使用・維持管理の期間の組織上の方策及び管理
b) 品質方針を実施するために選ばれる品質管理は,次の事項に十分配慮するのがよい。
1) 機械製品の形式及び用途
2) 品質低下による影響(例えば,構造破損によって生じる事故など)
3) 施工に携わる組織の管理慣習
c) 機械製品の設計において,信頼性は要求品質を達成するために最も重要なことである。設計基準は,
次に示す規定に従って信頼性を達成する骨格を提供する必要がある。
1) 信頼性の要求項目を提供する。
2) 信頼性の要求項目実現を検証するための規則を規定する。
3) 設計及び関連条件の規則を規定する。
d) 達成される条件は,例えば,構造システムの選択,技量水準,維持方法に関係し,通常は設計基準に
詳細が示される。また,材料特性のばらつき,品質管理,及び材料受入れ規範も考慮するのがよい。
設計に関する情報技術の利用,並びに材料運搬及び材料試験に関する供給組織を含む設計及び施工過
程を考慮する。
4.4 構造設計
機械製品又はその一部の破損は,次の原因による。
− 荷重,材料特性,幾何学量など,通常の使用,通常の環境に関わる全てのものの最悪の組合せ。
− 例外的だが予測可能な荷重又は環境的影響。例えば,衝突,極端な気候の影響。
− 情報の不足,怠慢,誤解,伝達不足,無知,誤使用などの人的ミス。
− 予測不能なものの影響。
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機械製品は,例外的に大きい荷重又は例外的に低い強度が存在するときは,全ての場合に適正に機能す
ることが期待できないが,予測可能な損傷であれば,元の原因に比較して結果が不釣合いにならないよう
に低減するのがよい。こうした状況を克服するためにいろいろな方策がとられ,基本的には次の一つ以上
の方策で構成される。
a) 通常の使用又はほかの通常の環境的影響に対して,4.3の品質方針に従った機械製品の設計・維持管理
b) 事故又はそのような現象によって引き起こされる規定された例外的荷重に対して,主要な機械要素の
設計
c) 予測可能な荷重からの保護及びミスの防止
d) 機械要素の損傷が直ちに機械製品の主要な機能の喪失につながらないような設計
4.5 耐久性,維持管理及び防護対策
耐久性とは,信頼性の要求を満たすのに必要な条件である。環境にさらされる機械製品及び機械要素の
耐久性は,適切な維持管理がなされ,その設計供用期間中の使用に合うようにすることである。
維持管理とは,耐久性に関する要求を満足するように機械製品の寿命のあるうちに実施する一連の総合
的活動である。維持管理には,定期点検,非常時点検(例えば,地震後),防護系の改善,機械要素の補修
などがある。
耐久性は,次のことによって確保する必要がある。
a) 維持管理計画
b) 機械製品が維持管理できないか,又は維持管理することが期待されていない場合,劣化が機械製品の
破損に至らないような設計
a)の場合には,機械製品は重大な劣化が次の点検までに生じないように,設計及び施工されているか,
劣化防護措置が講じられている必要がある。機械製品の部分が点検できるように,容易に取り外せるよう
設計することが望ましい。
適度に耐久性のある機械製品を実現するには,次の相互に関連のある要素を考えておかなければならな
い。
− 機械製品の意図された使用
− 必要とされる性能規範(外観)
− 期待される環境条件
− 材料の成分構成,特性及び性能
− 構造システム
− 部材形状及び構造詳細
− 施工品質及び品質管理レベル
− 特定の防護対策
− 設計供用期間中の維持管理
劣化速度は,理論的又は実験的調査及び経験に基づいて推定可能である。
5 限界状態設計の原則
5.1 限界状態
5.1.1 一般事項
機械製品又はその部材の性能は,限界状態を基に表現する。限界状態を次のa)又はb)に区分する。
a) 終局限界状態 耐荷重能力又は最大ひずみ(歪)若しくは最大変形に相当する限界状態
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b) 使用限界状態 通常使用に関する限界状態
限界状態の超過過程には不可逆過程と可逆過程とがある。不可逆過程において,損傷及び機能喪失は,
機械製品又はその部材が補修又は取替えされるまで残存する。可逆過程において,損傷及び機能喪失は,
超過した限界状態の原因が存在する間は残存する。この原因が取り除かれれば,要求する状態へ回復する。
5.1.2 終局限界状態
終局限界状態の例を,次のa) e)に示す。
a) 機械製品又はその部材の破壊,若しくは過度の変形
b) 機械製品又はその部材の安定性の喪失
c) 仮定した構造システムから新しい構造システムへの急激な移行
d) 機械製品又はその部材のメカニズム状態への移行
e) 剛体と考えたときの機械製品の釣合いの喪失
終局限界状態の超過は不可逆過程となり,その状態を最初に超えるときに破損に至る。
5.1.3 使用限界状態
a) 使用限界状態の例を,次の1)3)に示す。
1) 機械製品の供用期間を低減させる損傷
2) 機械製品又はその部材の,有効性,機能性又は外観に影響を与える,損傷又は変形
3) 機械製品の機能性に影響を与える過度の振動
b) 損傷又は変形が継続的に残存し,使用限界状態の超過が不可逆過程となる場合には,その状態を最初
に超えるときに破損に至る。損傷,又は変形が一時的で,使用限界状態の超過が可逆過程となる場合
には,次の1)又は2)のときに破損に至る。
1) 使用限界状態の超過が許容されない場合に,その状態を最初に超えるとき
2) 使用限界状態の超過が許容される場合に,次の2.1)2.3)のいずれかのとき
2.1) 使用限界状態にある時間が規定された時間を超えるとき
2.2) 使用限界状態状態を超える回数が規定された回数を超えるとき
2.3) 2.1)及び2.2)の組合せが,規定された条件を満たすとき
5.2 設計
5.2.1 設計の手順
設計の手順は,次による。
a) 手順1 限界状態の定義(5.1参照)
b) 手順2 限界状態を表す基本変数の設定(箇条6参照)
基本変数は,次の1)3)を特徴付ける変数である。
1) 荷重及び環境的影響
2) 材料特性
3) 幾何学量
c) 手順3 解析モデルの構築(箇条7参照)
機械製品の挙動を表す解析モデルを構築する。解析モデルに基づいて,限界状態は,基本変数X=
X1, X2, ···, Xnの関数gによって,式(1)のように表現できる。
g(X1, X2, ···, Xn)=0 (1)
ここに,望ましい状態を式(2)で表す。
g(X1, X2, ···, Xn)>0 (2)
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解析モデル構築の際に設定された仮定は,構造規定及び構造細目によって製図及び仕様に組み込む。
d) 手順4 設計計算
次の1)又は2)の方法で設計計算を行う。
1) 確率的手法(箇条8参照)
2) 部分係数法(箇条9参照)
部分係数法は,通常の設計計算に供するよう配慮された手法である。確率的手法は,詳細な設計
に適用するほか,部分係数法のキャリブレーションに用いる。
5.2.2 設計状況
設計は,規定する設計状況に応じて行う。設計状況は,次のa) c)に区分される。
a) 持続的状況
b) 過渡的状況
c) 偶発的状況
持続的状況及び過渡的状況は,ほぼ確実に生じる。偶発的状況は基準期間中には,比較的低い確率で発
生する。
6 基本変数
6.1 一般事項
限界状態に対応する解析モデルは,種々の基本変数(荷重,温度などの環境的影響,材料特性及び設計
パラメータを定める物理量)を含む。
例えば,経験又は感度解析によって,その不確かさが重要であると判断される基本変数である場合,こ
れらの基本変数は確率変数として表現するのがよい。
不確かさは,一般的に系統的な部分(バイアス)とランダムな部分とを含む。
こうした不確かさは,次に起因する。
a) 予測できない時間的変動又は機械製品が本質的にもつランダムな不確かさ
b) 不十分なデータ又は不完全な知識
確率変数は確率分布によって規定することが望ましく,これを条件付き確率として考慮することが望ま
しい場合がある。多くの場合,これらの確率分布は平均値,標準偏差及びひずみ(歪)度,また,多次元
分布の場合は相関係数のような統計的パラメータで特徴付けられる。これらの確率モデルは,入手可能な
データの解析結果に基づき統計的パラメータを設定し作成する。誤った確率分布形を用いないようにする
ために,異なった統計的母集団を分離し,区別することが重要である。確率分布を決定するために入手し
たデータは,可能ならば,測定誤差,寸法効果などが除去されているかを吟味することが望ましい。
基本変数の確率モデルは,確率に基づく設計(箇条8)で直接用いることができる。部分係数形式では,
可能ならば基本変数の確率モデルから導かれる設計値(箇条9)を用いる。
注記 詳細は,附属書Eを参照。
6.2 荷重
6.2.1 定義
荷重とは次を指す。
a) 機械製品に集中的に又は分布して作用する力の集合
b) 機械製品に対する強制又は内部拘束による変形の原因となるもの
ある荷重が,構造部に作用するほかの荷重と,時間・空間的に独立であると仮定できる場合は,ほかの
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荷重と別に扱わなければならない。
注記 実際には,同時に生じる荷重は,統計的に従属である場合が多い。このような統計的従属性は,
個別の規定によって考慮する場合が多い。
荷重は,複数の基本変数によって表現することが多い。例えば,ある荷重の大きさとその方向は,両方
とも基本変数となる。
荷重は,それぞれがある物理的特性を表す基本変数の関数として与える場合がある。この関数を荷重モ
デルという。例として,部材の塑性崩壊がある。これは,負荷荷重,設計寸法及び材料強度に依存する。
温度などの環境の変動によって荷重がばらつく場合もある。また,通常の人間活動又は人的ミスによっ
て荷重がばらつく場合がある。
6.2.2 負荷期間の割合による荷重の分類
荷重は,基準期間のうち荷重が負荷されている期間に応じて次のように分類できる。
注記1 持続荷重,過渡荷重及び偶発荷重の例を附属書Bに示す。
a) 持続荷重(長期荷重) 与えられた基準期間の全期間又は大半にわたって連続的に作用する荷重。持続
荷重は,持続的状況を含めおおむね全ての状況で負荷される。
b) 過渡荷重(短期荷重) 与えられた基準期間内に負荷されることがほぼ確実であるが,負荷を受ける期
間は基準期間と比較して短期間となる一時的な荷重。過渡的状況のそれぞれに対して,対応する過渡
荷重を定義する。
c) 偶発荷重 与えられた基準期間内ではほとんど生じないが,負荷された場合には大きな値となる例外
的な荷重。偶発的状況のそれぞれに対して,対応する偶発荷重を定義する。
注記2 偶発荷重は,多くの場合,短時間のうちに発生する。
6.2.3 機械製品の応答による荷重の分類
荷重は,機械製品の振動などに対する応答の仕方によって次のように分類できる。
a) 静的荷重 機械製品又は機械要素に大きな加速度を生じさせないもの
b) 動的荷重 機械製品又は機械要素に大きな加速度を生じさせるもの
多くの場合,動的荷重は準静的成分の荷重の大きさを適切に割り増すことによって,又は等価な静的力
に置き換えることによって,動的効果を考慮した静的荷重として取り扱うことができる。これが困難であ
る場合,動的モデルを機械製品の応答評価に用いる。慣性力は荷重モデルには含まれないが,解析によっ
て定められる。
6.2.4 時間的な変動による荷重の分類
荷重は,経時的変化の有無及び変化の特徴に応じて次のように分類できる。
a) 一般荷重 負荷中における経時的変化が平均値に対して無視できる荷重,又は変動の上限について物
理モデルに基づく予測が可能である荷重。
b) ランダム荷重 その大きさに時刻に対するランダム性を多く含み,上限値について統計的予測を要す
る荷重。ランダム荷重の極値の確率モデルは,与えられた基準期間と対応していることが望ましい。
6.2.5 空間変動による荷重の分類
荷重は,空間的変動に応じて次のように分類できる。
a) 固定荷重 機械製品に対して固定した分布をもつ荷重。
b) 自由荷重 機械製品全体にわたって,ある制限内で任意の空間分布をとることができる荷重。
a)又はb)に属していると定義できないものは,固定部分と自由に移動する部分とから荷重が成り立って
いると考えられる。
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JIS B 9955:2017の国際規格 ICS 分類一覧
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