JIS B 9955:2017 機械製品の信頼性に関する一般原則 | ページ 4

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自由荷重を取り扱う場合には,空間的に異なる負荷の配置を考慮する必要がある。
空間変動による荷重を取り扱う場合には,自由荷重の中で移動しているものとしていないものを区別し
たり,移動に関する自由度の中にどのような制限が加えられているかを区別することが必要になる。これ
らは,荷重モデル自身又は使用上の規定によって区別する。
6.2.6 有界又は非有界荷重
有界荷重とは,正確に,又はおおよそ値が既知であり,限界値をもつ荷重を指す。このような限界値は,
対象とする設計条件を考慮した場合に,ある有意な確率をもって達成される。それ以外の限界値をもたな
い荷重は非有界荷重と呼ばれる。

6.3 環境的影響

  環境的影響は,物理的,化学的又は生物学的な要因があり,構造材料を劣化させ,機械製品の安全性及
び使用性に悪影響を及ぼす。
環境的影響は,荷重と多くの点で類似性があり,荷重と同じように,特に負荷期間に関して,分類する
ことができる。したがって,環境的影響においても,持続的影響,過渡的影響,偶発的影響などのような
分類が可能である。
注記1 持続的影響の例としては,海水中の塩化物が鋼製の部材に与える化学的作用がある。
環境的影響からの作用は材料に強く依存し,これらの影響は個々の材料ごとに定めなければならない。
化学的又は生物学的劣化が含まれる多くの場合は,水分が重要な因子となる。
可能な限り,環境的影響も荷重と同様に確率モデルを数値的に表現することが望ましい。多くの場合,
確率モデルの表現は困難であり,環境的影響は,特定の材料に対するその影響の大きさによって分類する
ことが多い。また,複数の環境的影響の組合せは,単一の影響の効果の和よりも影響が厳しくなる場合が
多い。このような場合,全体の環境的影響は,その影響の大きさに応じて分類することが望ましい。
注記2 環境的影響が数値的に表現でき,かつ,特定の材料への影響を表すモデルを設定できる場合
もある。そのような場合は,材料劣化の時間依存性は計算によって推定できる。

6.4 材料特性

  材料特性は測定可能な物理量によって表され,確率モデルと合致している必要がある。これらの特性は
時間によって変化し,負荷履歴,温度などのほかの影響に依存する。
一般に,こうした特性及びそのばらつきは,適切な試験体を用いた実験によって定める必要がある。こ
れらの実験は,考慮する母集団のうちからランダムに取得した試験体を用いる必要がある。
試験体から得た特性は,適切に設定した換算係数又は関数を用いて,確率モデルで用いる仮定に相当す
る特性に変換する。この換算係数の不確かさは考慮することが望ましい。可能ならば,換算は寸法効果,
時間効果,温度などの効果を考慮することが望ましい。
注記 純粋に統計的な方法だけを用いるよりも,実験に基づく詳細な分析も採用した方が,より正確
な情報を得ることができる。特に,材料中に介在物又は空孔をもっているときには,それが当
てはまる。ただし,均質材料のばらつきを取り扱ったり,実験,その物理的解釈の精度に限界
があったりするときなどには,統計的手法によって取り扱うことができる。これらの材料に対
しては,データ数が構造信頼性の重要点となる。ただし,それは定量化することが困難な場合
が多い。生産が始まっていない材料,又は機械製品に対しどの材料を用いるか定められていな
い場合,実験的方法で確率モデルを表現することはできず,相当する統計パラメータはそれに
同等と考えられる既存の母集団から推測する必要がある。これらのパラメータは品質を保証す
るために,後で見直すことが望ましい。十分同質とみなせる母集団の特定及びサンプル数は,

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構造信頼性を評価する上で重要である。

6.5 幾何学量

  幾何学量とは,形状・寸法,又は機械製品及び部材断面の全体の配列を指す。設計では,こうした幾何
学量のばらつきの可能性を考慮することが望ましい。
ほとんどの幾何学量のばらつきは,荷重又は材料特性に関するばらつきに比べて非常に小さく,無視で
きる場合が多い。このような幾何学量は,非ランダムで図面上の値と同一であると仮定してもよい。
ある幾何学量が指定した値を基準としてばらついており,それが機械製品の挙動及び耐力に重大な影響
を与える場合には,このような幾何学量は,ランダムな変数とする,荷重のモデルに含める又は構造特性
のモデルに含めることで考慮することが望ましい。
注記 設計上の仮定として,ある数量が許容範囲を少しでも超える場合があることを考慮することが
望ましい。
多くの幾何学量は非ランダムと考えていても,機械製品又は環境のモデル化を行う際に理想化された簡
単な値に置き換えて検証することがある(例えば,有効スパン長,有効フランジ幅)。意図しない偏心,傾
斜及び曲率は,基本変数として考慮することが望ましい幾何学量である。これらは通常,材料に関する規
定の中で値を指定する。これらの不整は“不整な形状”を表現する簡略モデルと,不整の程度を定量化す
る基本変数とによって定義することが一般的である。これらの不整はモデルの不確かさを補うために不整
の程度を大きくしたり,ある非均質な材料特性のようなほかの不確かさと等価な幾何学的形状の不整とし
て表される。
計算又は経験に基づいて定められる管理値は,機械要素の実際の測定結果に基づいて見直すことが望ま
しい。

7 解析モデル

7.1 一般事項

  解析モデルは,関連する荷重及び環境的影響を考慮したもので,考慮する限界状態に至るまでの機械製
品及びその挙動を表現しなければならない。モデルとは,一般に重要な要因を考慮し,重要でないものを
無視する簡略化と考えられる。
多くの場合,モデルは次のように区分することができる。
− 荷重モデル
− 荷重効果(内力,モーメントなど)を与える構造モデル
− 荷重効果に相当する耐力を与える耐力モデル
ただし,この区分が可能でない又は適切でない場合もある。例えば,構造システム全体の不安定状態又
は釣合いの喪失を検討する場合,荷重と機械製品の応答(挙動)との相互作用が問題となる場合がある。
構造モデルは,次のように応答の種類を考慮するのがよい。
− 動的に対する静的応答
− 弾性に対する非弾性(塑性)応答
− 幾何学的線形に対する幾何学的非線形応答
− 時間非依存型に対する時間依存型挙動(例えば,クリープ)
耐力モデルでは,次の分類が可能である。
− 局部耐力モデル,要素耐力モデル,システム耐力モデル
− 瞬間耐力モデル,累積効果を含むモデル(例えば,疲労,累積たわみ)

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設計状態に応じ,荷重特性,材料特性,及び機械製品の幾何学的形状を考慮してモデルを選択する。
解析モデルでは,荷重と荷重効果,荷重効果と耐力のそれぞれの関係を支配する個々の仮定条件が実験
的・定量的に検証されていることが望ましい。

7.2 モデルの種類

7.2.1  荷重モデル
荷重を表す完全なモデルとは,荷重の大きさ,部位,方向,作用する時間などの種々の特性を表し得る
ものである。考慮する特性の間に相互作用が存在する場合もある。荷重と機械製品の応答時間とに相互作
用がある場合があり,例えば,風による振動及び地盤と機械製品との相互作用などは考慮する必要がある。
一般に,ある荷重の大きさFは,形式上,式(3)で表現できる。
F=φ(F0, ω) (3)
ここに, φ( ) : 適切な関数
F0 : 基本荷重変数と呼ばれ,時間・空間依存型の変数(確率変数
又は確定値)であり,一般に機械製品とは独立である。
ω : 機械製品の特性に依存したランダム又は確定な変数でF0を荷
重Fに変換するもの。
例えば,変数F0は,次のように定義できる。
− 自重の場合には,寸法,材料及び密度
− 地震荷重の場合には,解放基盤の加速度
変数ωは,次のように定義できる。
− 地震荷重の場合には,解放基盤の加速度を機器に作用する加速度に変換する換算係数
荷重モデルの詳細化は設計で必要となるが,用いる解析の種類に依存する。時間依存もなく,累積効果
もないような静的解析の場合,ある基準期間中に生じる最大又は最小の値だけが重要となる。複数のラン
ダム荷重を組み合わせる必要がある場合についてだけ,より詳細なモデル化が必要となる。
動的荷重の中には,衝突のように,材料特性及び機械製品の剛性に依存するものもある。この場合でも,
保守的な条件を考えることによって(例えば,機械製品を剛体と仮定することによって),動的荷重を等価
な静的荷重に変換することもできる。
多くの場合,最終結果が安全側になるように荷重パラメータの数値を前もって選ぶことができるとは限
らない。したがって,荷重パラメータが明確に定義できない場合には,荷重モデルに関して異なる仮定で
複数の種類の計算を実行する必要がある。
ある荷重が機械製品内に重大な疲労を与える場合,荷重効果(局所応力)を次のような特性で表現する
必要がある。
− 応力変動の全ての履歴(多くの場合,統計的な記述)
− 一連の応力振幅の特定及びそれに相当するサイクル数
これらの荷重の大きさに関する不確かさは,その他の荷重と同様の方法で考慮する。
7.2.2 機械製品の幾何学的特性を記述するモデル
機械製品は,一般に一次元要素(はり,柱,ケーブル,アーチなど),二次元要素(床,壁,シェルなど)
及び三次元要素からなるモデルによって表現できる。
このモデルに含まれる幾何学量とは一般に公称値すなわち図面に記載された数値である。通常,実際の
機械製品の幾何学量はこれらの公称値とは異なっており,すなわち,機械製品は幾何学的不完全さをもっ
ている。機械製品の挙動がこれらの不完全さに敏感であれば,モデルに含めなければならない。
多くの場合,機械製品の変形は幾何学量の公称値とは著しくかけ離れたものである。このような変形が

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機械製品の挙動に重要となる場合,これらは不完全さと同様,設計で考慮されることが一般である。
7.2.3 材料特性及び静的応答を記述するモデル
ほとんど全ての設計計算において,力又はモーメントと変形(変形率)との間の関係に関する幾つかの
仮定が必要である。これらの仮定はいろいろあり,計算の目的及び種類によって変わるものである。設計
で仮定される最も一般的な関係は,負荷が小さい場合(機械製品全体の応答が弾性範囲内と考えるとき)
は弾性挙動に従い,負荷が大きい場合は機械製品が部分的に塑性変形に至るということである。機械製品
内の他の部位ではこれらの中間的段階が生じている。ただし,非弾性又は臨界点後の挙動を考慮できる理
論を用いる場合は,時刻に対し変動する荷重の繰返し負荷を考慮しなければならないであろう。
弾性理論は,理論の簡略化とみなすことができ,力及びモーメントがある値以下であるという仮定の下
に使用できる。ある値とは,機械製品の挙動が弾性と考えられる限界値とする。ただし,弾性理論は,安
全側の近似であるとして用いられることもある。
塑性理論は,完全塑性化が,機械製品のある限られた領域(はりの塑性ヒンジ,床板の降伏線など)に
生じるとする仮定の下で利用できる。ただし,塑性挙動を保証するのに必要な変形量が,終局限界状態に
達する以前に生じているという条件が必要である。二番目の条件として,これらの変形を生じさせる負荷
が頻繁に繰り返されないことが必要である。機械製品の耐力が次によって制限されている場合は,その耐
力を決定するのに十分注意して塑性理論を使用しなければならない。
− ぜい(脆)性破壊
− 不安定による破壊
設計計算で荷重効果モデルと耐力モデルとが別々に適用される場合,これらのモデルは通常相互に独立
していなければならない。ただし,この原則は修正されたり,簡略化されることが多い。例えば,連続は
りの曲げモーメント(荷重効果)を弾性理論に基づいて計算し,塑性論によって耐力を計算することがあ
る。ほかの場合として,二次的効果すなわちほかの非線形効果に対し,このような独立した計算は特別な
配慮をしない限り適用してはならない。
7.2.4 動的応答のモデル
多くの場合,機械製品の動的応答は荷重の大きさ,位置及び方向の急激な変動によって生じる。ただし,
構造要素の剛性及び耐力の突然の変化(低下)も動的挙動を起こすことがある。例えば,4.3 d)で述べた局
部的な損傷は動的効果を生じさせる可能性がある。
動的解析は,時間領域と周波数領域とで実行することができる。荷重が統計的に記載されている場合に
は,求めようとする機械製品の応答も統計的に表される。この記載に基づくと,与えられた基準期間に,
ある限界状態を超過する確率を計算することができる。
機械製品の特性は,時間依存である場合と,時間依存でない場合とがある。完全な確率的手法では,こ
れらの効果を考慮する。
動的解析に用いられるモデルは,次の要素から成り立っている。
− 剛性を表すモデル
− 減衰を表すモデル
− 慣性を表すモデル
剛性を表すモデルは,一般に静的解析で用いるモデルと同様である。動的効果は,多くの場合,繰返し
劣化の促進,剛性の低下などをもたらすが,剛性の増大をもたらす場合もある。非線形材料のモデルに対
しては,降伏耐力のひずみ(歪)速度依存性があることが一般的である。
慣性力は,部材の質量,非構造質量,及び取り巻く流体(空気,地盤)の付加質量に作用する加速度に

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よって生じる。これらの付加的質量効果は,環境と機械製品との相互作用の結果生じるものである。こう
した種々の異なる質量の寄与を考慮して動的解析を実行することが必要である。
減衰効果は,様々な種類の機構によって生じるものである。最も重要な減衰機構を次に示す。
− 材料減衰,例えば,弾性挙動又は塑性材料強度が原因であるもの。
− 接合部の摩擦による減衰
− 非構造要素の減衰
− 幾何減衰
− 地盤の材料減衰
− 空力又は水力減衰
材料減衰のうち特別な例としては,大地震時の動的挙動に関するものがある。この場合,繰返し劣化及
び履歴エネルギー散逸を考慮する必要がある。
空力又は水力減衰は,機械製品と環境との相互作用の一例である。これらの減衰項は負の値をとること
もあり,それは環境から機械製品へのエネルギー流失につながる。例としては,ギャロッピング,フラッ
タ,渦がある。
実際の設計では,重大な動的効果が存在する場合においても,厳密な動的解析を必ずしもいつも必要と
はしない。多くの場合,単純化することが可能である。最も一般的な方法は,準静的応答を計算し,これ
に動的応答倍率を乗じることである。動的応答倍率は支配的固有周期と減衰定数との関数である。
7.2.5 疲労のモデル
機械製品が疲労の原因となる荷重を受けるとき,疲労による信頼性が十分なことを確かめる必要がある。
疲労耐力の計算に用いられるモデルは,機械製品で使用する材料の種類に強く依存する。このモデルは耐
力と荷重負荷繰返し数との実験的に知られた関係に基づいたり,又は破壊力学に基づくことが多い。点検
及び維持管理の効果には注意を払う必要がある。
注記 附属書Cを参照。

7.3 モデルの不確かさ

  ある解析モデルは関連する変数間の物理的又は経験的な関係であり,その変数は一般に確率変数となる。
Y =f (X1, X2, ···, Xn) (4)
ここに, Y : モデルによる予測値
f( ) : モデルを表す関数
Xi : 基本変数
モデルf( )は,Xiの値が特別の実験又は測定から既知であるなら,完全であり正確である。すなわち,出
力Yは,誤差を伴わずに予測することができる。多くの場合,モデルは不完全で不正確なものである。こ
のことは知識不足の結果に起因するもの,又は設計者の利便性のために簡略化したモデルによるものであ
る。実験から得られる真の出力Y'は,式(5)で表現できる。
Y'=f'(X1, ···, Xn, θ1, ···, θn) (5)
θiはモデルの不確かさを含むパラメータであり,確率変数として扱われている。これらの統計的特性は
実験又は観測結果から導かれる場合が多い。耐力モデルに関して,これらのパラメータの平均値は,一般
に解析モデルが実験結果の平均を正しく予測するように決めるのがよい。
注記1 より詳細には附属書Dを参照。
多くの場合,設計目的のために特別に作成されたモデルは,実際の条件を反映していない仮定(通常は
安全側)に基づくこともある。この場合,モデル不確実性の評価は,上述した原則に従って考慮しなけれ

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