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ばならない。
注記2 耐力を低く見積もることはいつも安全側になるとは限らない。例えば,せん断破壊の検証は,
望ましくは部材両端の曲げ耐力を高めに見積もることによって行う。
7.4 実験モデルに基づく設計
適切な解析モデルが存在しない場合には,実験に基づいて設計が実施されることがある。設計された機
械製品が全ての関連する限界状態及び負荷条件に関して,その解析モデルに基づく設計と少なくとも同等
の信頼性をもつように,実験の実施及び評価がなされなければならない。実験では取り扱えない条件(長
周期間の挙動など)は別途考慮するのがよい。
実験モデルは,次を評価するために用いる。
a) 機械製品に負荷される荷重(例えば,風洞実験)
b) 負荷時又は偶発的状態における機械製品の応答
c) 機械製品及び機械要素の耐力及び剛性
注記 材料特性の確認及びほかの実験は,実験モデルに基づく設計とは考えない。
実験に先立って,可能な限り変数のとり得る範囲をカバーする解析モデルを準備しておくのがよく,実
験から評価される未知の係数及び数量を明確に示しておく必要がある。可能でなければ,一連の予備実験
を実施しなければならない。
荷重,材料特性及び幾何学的特性のような基本変数は,解析モデルでは明確になっていないが,多大な
影響がある場合,全ての実験で直接的又は間接的に計測しておくことが望ましい。確率変数の値が測定さ
れていれば,必ずしもサンプルを代表する必要はない。すなわち,この場合の推定した設計値の近傍に値
がくるように設定方法を選ぶことができることが多いからである。確率変数の値が実験で測定されていな
い場合,それらが代表的サンプルに従うことを確認するのがよい。
実験結果の評価は,統計的方法に基づいて実施するのがよい。一般に実験は,基本的に統計的不確かさ
を伴いながらも,ある選ばれた未知の数量の確率分布を求めることである。この分布に基づいて,設計値
及び部分係数を導くことができる。
実験結果が経験と合わないときは,その差が生じた詳細な理由付けを考え,記録しておく必要がある。
8 確率に基づく設計の原則
8.1 一般事項
この箇条では,基本変数を確率変数とみなし(6.1参照),確率的手法で扱う。
構造及び荷重が与えられていれば,確率的手法によって,明確に定義された信頼性の確率的尺度(例え
ば,破損確率)が得られる。ほとんどの場合,この値は参照値としてだけ扱うことが望ましい。ただし,
この値は,種々の設計状況間の整合の取れた比較のために使うことができ,したがって,規定された信頼
性に対するキャリブレーションのために使うことができる。
確率に基づく設計とは,例えば,ある期間において破損確率Pfが,規定された値Pfsを超過しないよう
に機械製品を設計することである。
Pf≦Pfs (6)
破損とは,箇条5で規定したように,望ましい状態から望ましくない状態へ遷移することに対応する。
式(1)及び式(2)を参考にして,望ましくない状態は,限界状態関数によって式(7)のように定義できる。
g(X)≦0 (7)
ここに,Xは,対象となる問題に関係する基本変数である。
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一般に,ランダム荷重及び環境的影響を記載する基本変数は,確率過程を用いて記載することが望まし
い。ただし,対象期間内での最大値の確率分布関数をもつ確率変数として記載すれば十分な場合もある。
ほかに,例えば腐食する材料の特性など,基本変数が時間依存する場合もある。
7.3のモデルの不確かさθは,一般に基本変数と同様に確率変数として扱う。
ほとんどの終局限界状態及び幾つかの使用限界状態に対しては,破損確率は式(8)で表される。
Pf=P[g(X)≦0] (8)
変数が時間依存する場合は,経時的なg(X)の最小値を考えるのがよい。
幾つかの特殊な終局限界状態及び多くの使用限界状態に対しては,限界状態の初通過は破損を意味しな
い。すなわち,幾つかの追加条件が当てはまり,その破損基準が各々の場合に対し定式化されているとき
だけ,5.1に従って破損が起こる。
破損確率Pfは,前もって規定された期間(基準期間)に関連付けるのがよい。
破損確率Pfは,次の定義によって信頼性指標βに変換される。
β=−Φ−1(Pf) (9)
ここに,Φ−1は,標準正規分布関数の逆変換である。
注記 式(9)は一つの定義である。詳細は,附属書E参照。
確率的手法は基本的に,箇条9で規定する部分係数形式のキャリブレーションのために用いる。8.5に示
す特殊な状況下では,確率的手法は,規定信頼性に対する直接設計に適用する場合もある。
8.2 システム信頼性及び要素信頼性
確率的手法では,一つの要素は一つの支配的な破損モードをもつと考える。一つのシステムは一つ以上
破損モードをもつか,又は各々単一の破損モードをもつ二つ以上の要素で構成される。
確率に基づく設計では,まず部材の挙動と限界状態(使用限界及び終局限界)とを取り扱う。機械製品
破損の最も重篤な結果は,大抵はシステムの破損であるため,最初の部材破損からシステムの破損に至る
可能性を評価することが関心事となる。特に,偶発的事象に対する損傷許容性及び構造健全性に応じてシ
ステムの特性を決めることが望ましい。部材信頼性の要求は,システムの特性に依存する。
そのため,システム解析を行い,次の事項を明らかにすることが望ましい。
− 冗長性
− 機械製品の状態及び複雑さ(複数の破損モード)
注記 システム信頼性解析は,現在使われている手法には不確かさがあることを認識して実施するこ
とが望ましく,そのためには,十分注意して使用するのがよい。
8.3 要求信頼性レベル
要求信頼性レベル(破損確率の規定値)は,破損の結果及び原因,経済的損失,社会的不便性,及び破
損確率を減少させるために必要な費用と労力との総計を考慮して規定することが望ましい。これらは,過
去の経験から適切な信頼性をもつことがよく分かっているケースに対して,キャリブレーションするのが
よい。したがって,破損確率の規定値は,信頼性の区別に応じて規定することが望ましい(4.2参照)。
終局限界状態及び使用限界状態設計に使用する破損確率の規定値Pfsを規定するときは,実測された破損
の頻度を直接参照しない方がよい。限界状態の基準はヒューマンエラーを考慮していないが,実測された
破損の頻度はヒューマンエラーに起因する破損を含む。
時間に依存する特性を扱うときは,検査及び補修作業が破損確率に与える効果を考慮することが望まし
い。これは,検査結果に応じて規定値を調整することにつながる。破損確率の規定値は,常に,用いる計
算方法と,確率モデル及び信頼性の評価方法との関係を考慮して規定することが望ましい。
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破損確率の規定値は,常に,ある基準期間に対して定義する。限界状態の種類に応じて,この期間は,
設計供用期間,1年間,任意の期間などになる。
回復可能な使用限界状態については,限界状態の通過頻度に対する条件も存在する(5.1.3参照)。
注記 詳しくは附属書E参照。
8.4 破損確率の計算
8.4.1 概要
重要な特別のケースとして,全ての変数Xが時間に依存しないような限界状態関数[式(7) ]について考え
る(8.4.2参照)。この場合,変数Xは,確率変数であって確率過程ではない。
信頼性の問題が時間に依存する場合,確率変数を用いて時間非依存問題に変換できる場合が多い(8.4.3
参照)。
8.4.2 時間非依存の信頼性問題
Xが時間に依存しない変数のときは,Pfの計算には一般に次の三つの方法がある。
a) 解析的方法,例えば,FORM又はSORM(一次近似信頼性手法又は二次近似信頼性手法)
b) モンテカルロ法
c) 数値積分法
8.4.3 時間依存問題から時間非依存問題への変換
時間依存する問題として,次の2種類が考えられる。
a) 過負荷破損 過負荷破損の場合は,一つの荷重の負荷過程を,その対象基準期間での期待最大値を平
均値とする確率変数に置き換えてもよい。複数のランダムな荷重の負荷過程があれば,それらは,全
ての荷重について負荷過程のばらつきの程度を考慮して組み合わせることが望ましい。
b) 累積破損 累積破損(疲労,腐食など)の場合には,破損に至るまでの荷重の負荷履歴が重要である。
注記 破損は,累積損傷過程と比較的大きな荷重負荷とが重なった結果の場合もある。詳しくは9.2
参照。
8.5 確率に基づく設計の実施
設計の実施は,次による。
a) 確率的手法は,規定値に近い信頼性をもった設計を達成するために直接適用してもよい。
そのようなアプローチは,次の二つが標準化されている場合に使うことができる。
1) 不確実性に関する尺度
2) 信頼性の評価手法
b) 確率的手法を直接適用する代わりに,次の二つの簡略化した手法を使ってもよい。
1) 設計値を用いる方法
2) 部分係数法
b) 1)及びb) 2)の両手法とも,ある範囲の構造の形式,荷重などに対して,直接的な確率的手法によって
得られた設計に十分近いような設計となるように,キャリブレーションする。
注記 設計値法及びコードキャリブレーションについては,附属書Eで概説する。部分係数法は,箇
条9で扱う。
9 部分係数法による設計
9.1 設計条件及び設計値
部分係数法では,基本変数に割り当てられた設計値を用いて,異なった原因によって生じる不確かさ及
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び変動性の影響を分離している。5.2.1を参照して,設計条件は式(10)のように設計値を用いて表現できる。
g(Fd, fd, ad, θd, C, γn)≧0 (10)
ここに, Fd : 荷重の設計値
fd : 材料特性の設計値
ad : 幾何学量の設計値
θd : 式(5)によるモデルの不確かさを表す変数θの設計値
C : 使用性に関する限界値
γn : 破損形式の重大さを含めて,機械製品の重要度及び破損の影
響度合いが考慮される係数。γnは実際の機械製品又は部材の規
定された信頼性レベルに依存するようになっている。
式(10)は設計の原則の記号的表現としてだけ扱われるべきである。式(10)中の各々の記号は,単一変数又
は幾つかの変数からなるベクトルを表している。
基本変数は,次の変数に分類できる。
− 主要基本変数
− ほかの基本変数
主要基本変数とは,その値が設計に最も重要と考えられるものである。それらは荷重又は特定の材料か
らなる機械製品を扱う設計法で規定されている。
注記 例えば,内圧による管の破裂であれば,内圧が主要基本変数となる。疲労損傷であれば,荷重
の変動幅及び変化の頻度が主要基本変数となる。
主要基本変数F,f,a及びθの設計値は,式(11)式(14)によって求める。
Fd=γfFk (11)
fk (12)
fd=
γm
ad=ak±Δa (13)
θd=γD又は1/γD (14)
ここに, Fk : 荷重の特性値(9.2参照)
fk : 材料特性の特性値(9.3参照)
ak : 幾何学量の特性値(9.4参照)
γf : 荷重の部分係数
γm : 材料の部分係数
Δa : 付加的幾何学量
γD : モデルの不確かさを表す部分係数
γfは,次の事項を考慮する。
− 荷重がその特性値から不利な状態になる可能性
− 荷重モデルの不確かさ
γmは,次の事項を考慮する。
− 材料特性の特性値から不利な状態になる可能性
− 変換係数の不確かさ
Δaは,次の事項を考慮する。
− aの変動の重要性,aに関する精度,及びaとの隔たりの制御を含む幾何学量の特性値(規定値)の不
利な状態になる可能性
− 幾つかの幾何学的隔たりが同時に生じる組合せ効果
γDは,実測又は比較計算から特定できるモデルの不確かさを考慮する。
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主な変数以外の基本変数に対して,部分係数は1.0とし,付加的誤差は0とする。すなわち,設計値が
特性値に等しくなる。平均値を用いる場合もある。
荷重に関する部分係数は,荷重モデルの不確かさの影響も含んでいる。同様に,耐力に関する部分係数
は,幾何学量又は耐力モデルの不確かさの影響を含んでいる。そのような場合,記号γf及びγmに代えて,
γF及びγMを用いる。
部分係数の値は,設計条件及び考慮している限界状態に依存するものである。
変形能力が設計を決めてしまう場合,式(10)を異なった形式で与えなければならない。さらに,幾つか
の変数はほかの変数によって置き換えられなければいけない。このことは,例えば地震時状況の設計で起
こり得る。
9.2 荷重の特性値
9.2.1 過負荷破損に対する荷重
過負荷破損に分類される破損メカニズムについては,基準期間内で最も破損に近い時点における基本変
数の組合せを用いて,式(10)の設計条件を与えることが必要となる。このとき,次のa)及びb)に基づいて
荷重を設定することができる。
a) 設計状況による負荷荷重の決定 5.2.2の設計状況に基づき,6.2.2に規定した荷重のうち負荷されるも
のを明確にする。
1) 持続的状況 持続荷重だけを負荷する。
2) 過渡的状況 持続荷重とともに,状況に対応する過渡荷重を負荷する。
3) 偶発的状況 持続荷重とともに,状況に対応する偶発荷重を負荷する。
b) 荷重の特性値の設定 a)において負荷する荷重について,基準期間中の最大値が好ましくない側に超
過する確率が,所定の値となるように,特性値を与える。また,空間的分布に多様な与え方がある荷
重については,考慮している限界状態に対し最も好ましくない効果を生じさせるように設定する。
限界状態関数に複数の荷重が含まれる場合,これらの荷重の特性値は,基準期間内で現実的に生じ
る組合せのうち,考慮している限界状態に対し,最も好ましくない効果を生じさせるように設定する
のがよい。
注記 物理的な理由などから同時に起こらない荷重がともに負荷される状態,及び相関のない複数の
荷重が全て基準期間内の最大値をとる悲観的な想定は,現実的には生じないとすることができ
る。
9.2.2 累積破損に対する荷重
累積破損に分類される破損メカニズムについては,基準期間に含まれる全ての設計状況について損傷量
を評価し,この総和が限界値を超えるか否かを判定するのがよい。損傷量の評価のためには,それぞれの
設計状況における荷重の大きさだけでなく,その状況の継続性を表す基本変数を用いる。
注記1 疲労損傷を評価する場合,荷重の大きさは応力振幅の大きさ,継続性を表す基本変数は繰返
し負荷回数と読み替えることができる。
次のa)及びb)に基づいて荷重の負荷履歴を与えることが望ましい。6.3にある環境的影響による有意な
劣化が考えられる場合には,環境的影響を荷重と同様に分類し,その影響を考慮することが望ましい。
a) 設計状況による荷重の負荷履歴の決定 5.2.2で分類できる設計状況のそれぞれについて,1)3)のい
ずれかの手順に基づき,6.2.2に規定した荷重のうち負荷されるものを明確にする。また,継続性を表
現する基本変数を与え,これに基づいて損傷量を評価する。
1) 持続的状況 持続荷重だけを負荷し,過渡荷重及び偶発荷重は負荷しない。持続的状況の継続性を
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