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表現する基本変数は,基準期間に基づき与えるのがよい。
例1 疲労損傷を生じる持続的状況として,定格運転時に振動又は回転曲げによって繰返し応力
を受ける状況が考えられる。このとき,荷重の大きさは応力振幅となる。継続性を表す基
本変数は,基準期間内の繰返し負荷回数である。
2) 過渡的状況 持続荷重とともに,状況に対応する過渡荷重を負荷する。過渡的状況の継続性を表現
する基本変数は,状況の発生頻度及び持続時間に基づき与えるのがよい。
例2 疲労損傷を生じる過渡的状況として,起動時の熱過渡によって大きな繰返し応力が生じる
状況が考えられる。このとき,荷重の大きさは応力振幅となる。継続性を表す基本変数は,
起動回数,言い換えればこの過渡的状況の発生回数で与えることができる。
3) 偶発的状況 偶発的状況は,累積破損の照査に当たっては考慮しないものとすることができる。特
段の要求によって考慮する場合には,2)に準じることが望ましい。
注記2 偶発的状況は例外的な状況であり,偶発的状況を経験した後に継続することを考慮する
必要がない。また,偶発的状況は一般にごく短時間であるため,多くの場合,累積破損
に先行して過負荷破損が生じる。
b) 荷重の特性値の設定 a)において負荷する荷重について,負荷期間中の任意の時点の値がこれを超え
る頻度が僅かである値を特性値として設定する。
注記3 基準期間の影響は,継続性を表す基本変数によって別途考慮している。荷重の特性値に,
基準期間による影響を含める必要はない。
9.2.3 過負荷破損及び累積破損の重畳
累積破損のメカニズムによって,過負荷破損の発生が促進される場合,設計条件は過負荷破損について
のものを基本とし,これに含まれる耐力及び荷重が累積破損によって変化するとモデル化するのがよい。
このとき,累積破損に寄与する荷重と,過負荷破損に寄与する荷重とは,明瞭に区別することが望ましい。
過負荷破損に寄与する荷重の設定は9.2.1に,累積破損に寄与する荷重の設定は9.2.2に基づく。
9.3 材料特性の特性値
材料特性は,ある体積の材料に対して定義し,その特性値によって表現する。人工材料については,特
性値は一般に,関連する材料の規格の適用範囲内で生産され,供給される材料特性の統計的分布のばらつ
きは先験的に規定された割合として与える。
既存機械製品に対しては,特性値は同様の原則に従って予測し,設計で考慮される既存機械製品の実際
の部位の体積の代表値とする。
9.4 幾何学量の特性値
幾何学量の特性値akは,一般に設計者によって規定された寸法に相当する。
9.5 荷重効果及び耐力
多くの場合,基本変数及び解析モデルの不確かさを表す係数θは幾つかのグループに分離することがで
きる。その中の幾つかのグループは,次の荷重効果を与える。
S(F, f, a, θS)
ほかのグループは,次の耐力を与える。
R(F, f, a, θR)
Sの表現の中で,例えば,二次理論に従う計算のような特別な場合だけ,材料特性fは主要基本変数で
ある。Rの表現のなかでは,非常に特殊な場合だけ,荷重Fが重要なものとなる。例えば,減肉をはじめ
とする累積破損によって,過負荷破損に対する耐力が低減する場合が挙げられる。
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設計値Sd及びRdは,式(15)及び式(16)のように定義できる。
Sd=S(Fd, fd, ad, θSd) (15)
Rd=R(Fd, fd, ad, θRd) (16)
式(10)は式(17)で表現できる。
g(Sd, Rd)≧0 (17)
式(10)の場合と同じく,式(17)は記号的記載としてみなす。各々の記号S及びRは,荷重効果及び耐力を
表している。
最も簡単な場合では,式(17)は式(18)のように表現できる。
Rd≧Sd (18)
式(17)及び式(18)は,終局限界状態及び使用限界状態に適用可能である。使用限界状態では,例えば,変
形に関して,設計条件は次の形式となる。
Sd≦C (19)
ここに,Cは使用性に関する限界値であり,例えば,許容変形である。
9.6 キャリブレーション
部分係数(γ)の値は,直接的な比較又は確率的方法を用いてキャリブレーションしなければならない。
いずれの方法による場合でも,適切な判断をしなければならない。
注記 キャリブレーションについては,附属書Eで概説する。
10 供用期間中の機械製品の評価
10.1 評価事例
供用期間中の機械製品が次のような状態となった場合,その状態に応じた信頼性を評価しなければなら
ない。
a) 従来の荷重伝達経路に新たな構造部材が追加されるような改造があった場合
b) 用途の変更,使用状況の変更及び設計供用期間の延長が行われた場合
c) 環境効果による経年劣化及び偶発荷重(地震など)によって損傷を受け補修した場合
d) 特定の荷重(地震など)に対して機械製品の信頼性が疑わしい場合
e) 公的機関,保険会社及び所有者から求められた場合
f) 供用中に設計時に予想しなかった劣化又は損傷が生じた場合
g) 予防保全を行った場合
h) 検査によって損傷又は劣化が検出された場合
i) 維持管理計画で予定されている場合
j) 継続検査において予想を上回る劣化が観測された場合
10.2 評価の原則
機械製品の評価は,箇条1箇条9に規定する一般原則に基づかなければならない。機械製品の設計時
の基準が箇条1箇条9に記載される一般原則と異なる場合,設計時の評価結果は供用期間中の評価の参
考程度に扱うのがよい。
構造変更,改造,補修及び用途変更の影響を受けない場合,並びに損傷及び劣化が発生しないと明らか
に判断できる場合,又は信頼性が十分に高い部分については,設計時の評価に代わる供用期間中の評価を
必要としない。
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10.3 基本変数
信頼性評価には,次のような基本変数を用いなければならない。
a) 実際の運転状況に応じた荷重を定めなければならない。過去に設計で考慮されていない過負荷が生じ
た場合,それに応じて想定荷重を見直すこととなる。荷重が低減された場合又は完全に除かれた場合,
それを適切に反映することができる。
b) 材料試験結果が存在する場合,その材料特性を用いなければならない。設計図面が存在し,経年変化,
設計ミス及び施工ミスがない場合,設計時の材料特性を用いてもよい。材料試験結果がない場合,規
格値(中央値及び分散)を用いてもよい。
c) 機械要素の寸法は,設計図面が存在する場合,変更の有無にかかわらず設計図面に示された公称寸法
を用いてもよい。これらの寸法は,適切な検査によって確認しなければならない。
d) 機械製品の供用期間中の挙動(特に,劣化及び損傷)が予想どおりの場合,モデルの不確かさは設計
時と同様としなければならない。試験又はモニタリングが行われている場合,その結果を適切に反映
することができる。
10.4 検査
機械製品の状況(状態)に関する情報を多角的に得るために検査を実施する。検査には,定性的な検査
もあるが,より適切な評価を行うためには構造要素の特性及び状態を適切に把握することが可能な定量的
検査が有効である。検査の方法によらず,損傷状態を検出できる確率などの,検査の精度に関する情報が
必要となる。
検査結果に基づいて機械製品の特性又は信頼性を更新する必要が生じる場合は,次のいずれかの一つに
よる。
a) 各変数の確率分布の更新。更新された確率分布は,部分係数法を用いて更新される設計値の評価,及
び亀裂又は変位量の限界値と荷重の影響とを直接比較するために用いられる。
b) 機械製品の破損確率の更新
10.5 信頼性評価
10.5.1 一般
供用期間中の機械製品の信頼性は,次の手順に従って評価する。
10.5.2 検査
機械製品の状態を把握するため,目視検査,表面検査,体積検査などを行う。検査によって重大な損傷
が検出された場合は,取替えなどの措置を講じる。
10.5.3 損傷原因の分析
機械製品のモデル化を行い,荷重の推定及び破損モードを確認し,機械製品の挙動を把握し,損傷原因
を分析する。この分析には,設計,解析及び施工資料が用いられる。設計時の評価結果と検査結果との差
が大きい場合,設計上のミス,施工ミスなどの要因分析を行うことが重要である。
10.5.4 評価
供用期間中の機械製品に関する情報に基づき,詳細評価法又は部分係数法を用いて信頼性を評価する。
供用期間中の機械製品のモデルは設計時のものと違う場合もあるので,注意が必要である。
評価によって十分な信頼性が確認された場合(設計で許容されるものより信頼性が大きい場合),これ以
上の評価を必要としない。
評価された信頼性が目標信頼性に対して十分な余裕がない場合,又は評価条件のばらつきが大きい場合,
評価期間の適切な時期に継続検査を実施し,評価の妥当性を確認する。継続検査によって評価の妥当性が
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確認された場合,継続検査を打ち切る。
目標信頼性に達成しない場合,詳細な構造モデル,追加検査,計測及び実荷重の評価から追加情報を取
得し,再評価を実施する。再評価においても目標信頼性に達成しない場合,次の対応を選択する。
a) 荷重の低減
b) 補修又は取替え
c) 廃棄
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附属書A
(参考)
品質管理及び品質保証
A.1 一般
この附属書は,本文4.3に従って品質方針の実施を行うときに,品質管理において留意すべき一般的事
項について記載する。
一般に,設計,施工,使用及び維持は,次の項目を満たすことが望ましい。
a) 決められた要求性能,利用法又は目的に合致する。
b) 顧客の期待を満足する。
c) 適切な基準と仕様に従う。
d) 我が国の法令などによる要求に従う。
A.2 用語及び定義
この附属書で用いる用語及び定義は,次による。
A.2.1
顧客
契約関係における機械製品の受取人。
A.2.2
品質
あるもの(例えば,機械製品)の,明示された又は暗黙のニーズ(すなわち,全ての種類の明示された
又は暗黙の要求事項)を満たす能力に関する特性の全体。
A.2.3
品質要求事項
あるものを具体化し評価できるようにするため,そのものの特性に対するニーズを表現したもの,又は
これらのニーズを定量的又は定性的に述べた一組の要求事項の形で表したもの。
A.2.4
適合,適合性
規定要求事項を満たすこと。
A.2.5
品質方針
トップマネジメントによって公式に表明された品質に関する組織(すなわち,契約者及び顧客)の全般
的な意図及び指示。
A.2.6
品質管理
品質方針,目標及び責任を定め,それらを品質システムの中で実施する全般的な経営機能の全ての活動。
A.2.7
品質ループ
ニーズの把握から,これらのニーズが満たされているかどうかの評価に至る様々な段階における,品質
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JIS B 9955:2017の国際規格 ICS 分類一覧
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