JIS B 9955:2017 機械製品の信頼性に関する一般原則 | ページ 8

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附属書C
(参考)
累積破損のモデル
C.1 一般
この附属書は,主な累積破損のモデルとして,疲労のモデル及び減肉のモデルについて記載する。
C.2 疲労のモデル
C.2.1 一般
累積破損のモデルの一つである疲労のモデルについて説明する。疲労による破損は,主に次の二つの評
価手法がある。
a) 疲労寿命評価 実験に基づくデータを用いて評価する。
b) 破壊力学的評価 亀裂の発生,進展及び破壊を評価する。
C.2.2 疲労寿命評価
疲労寿命評価では,実験に基づくデータを用いて評価する。多くの試験片に対し,一定振幅の応力を破
損に至るまで与え,破損までの繰返し数Nに対する応力範囲Sをプロットすると,S-N線が得られる。機
械製品への振幅が変動する実際の荷重を扱うためには,損傷累積則を適用する。最も広く使われている方
法は,Palmgren-Minerの線形損傷則である。この方法では,次の条件の場合に破損が起こる。
ni≧
Dc (C.1)
Ni
ここに, ni : 応力範囲Siで載荷された負荷サイクル数
Ni : 応力範囲Siで破損に至る負荷サイクル数
Dc : 損傷係数の限界値
応力範囲Siは,局所的な応力集中の効果を含む(例えば,溶接部の止端)。
負荷履歴に応じて各応力範囲Siに対する作用サイクル数niを見つけるために,特殊な数え方(例えば,
レインフロー法)が必要となる。Palmgren-Minerの線形損傷則では,応力載荷順序の効果は考慮していな
い。理想的な場合は,限界値Dcは1.0であるが,一般的には,負荷履歴,環境,材料などに依存する。
C.2.3 破壊力学的評価
破壊力学的評価では,亀裂発生段階,亀裂進展段階及び破壊段階の3段階に対して,それぞれ次のa)
c)に示すモデルを用いる。
a) 亀裂発生段階はC.2.2に基づき評価し,損傷係数が限界値を超えた場合に亀裂の発生とする。
b) 亀裂進展段階は,亀裂進展モデルで支配される。亀裂の進展を評価するために必要な材料の疲労亀裂
進展速度da/dN(応力変動1サイクル当たりの深さ方向及び長さ方向の亀裂進展量)を,応力拡大係
数の変動範囲ΔKの関数である式(C.2)で算出する。
da dN C0 K (C.2)
ここに,C0及びnは,材料,試験片の採取位置,環境,試験周波数及びその他の影響する因子を考
慮して試験データから決定される定数である。試験は,標準的な試験方法に従う。
応力拡大係数Kを,一般に応力σと欠陥深さaとの関数である式(C.3)で算出する。
K F a (C.3)
ここに,Fは,無次元応力拡大係数である。各種の欠陥の形状,位置,荷重の種類,部材の形状な

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どに対して文献などでKの算出式が導かれている。一般に用いられている計算式は,板,円筒などの
一般形状についての式である。
c) 破壊段階は,許容応力σcritの概念を用いてモデル化する。σcritは,亀裂深さa及び材料定数によって評
価される。ある破損モードにおいて,σapp>σcritならば,破壊につながる。破壊に対する限界状態関数
g(x)は,式(C.4)で定式化できる。
gx σapp
σcrit (C.4)
ここに, σapp : 負荷応力
σcrit : 亀裂深さa及び材料定数によって評価される許容応力
C.3 減肉のモデル
累積破損のモデルの一つである減肉のモデルについて説明する。ここでは管で減肉した場合の評価方法
を例に説明する。
減肉が発生する場合,管の厚さは時間とともに減少する。この場合の破損モードは複数あり,各モード
で許容される厚さのうち最も薄いものを許容厚さとする限界状態関数g(x)は,許容厚さを用いて,式(C.5)
で定式化できる。
gx PcritPapp (C.5)
ここに, Pcrit : 限界圧力
Papp : 負荷圧力
C.4 部分係数法における照査方法
C.4.1 一般
健全性の照査形式は,評価の種類に依存する。
C.4.2 疲労のモデル
疲労寿命評価では,部分係数を用いて照査則を式(C.6)で定式化できる。
ni Dc
(C.6)
Rfk γd
Ni γFf,
Si
γMf
ここに, ni及びSi : 負荷履歴の最良推定値
Rfk : 疲労耐力の特性値
γFf : 荷重レベルと荷重モデルの不確かさとを扱う部分係数
γMf : 材料モデルの不確かさを扱う部分係数
γd : 損傷累積則,設計供用期間及び破壊過程における不確か
さを扱う部分係数
Dc : 損傷係数の限界値
Ni : 応力範囲Siで破損に至る負荷サイクル数
破壊力学的評価では,式(C.4)による簡略法を仮定すると,σcritは亀裂深さ及び強度から求まるため,評
価式は式(C.7)で定式化できる。
Rk
a(t),
σcrit γFσapp
(C.7)
γM
ここに, a(t) : 時刻tにおける亀裂深さ
Rk : 強度特性[破壊じん(靱)性,降伏強度]
γM : 強度の不確かさを扱う部分係数
γF : 荷重の不確かさを扱う部分係数

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C.4.3 減肉のモデル
減肉のモデルでは,式(C.5)による簡略法を仮定すると,評価式は式(C.8)で定式化できる。
Rk
h(t),
Pcrit γFPapp
(C.8)
γM
ここに, h(t) : 時刻tにおける管厚さ
Rk : 強度特性[破壊じん(靱)性,降伏強度]
γM : 強度の不確かさを扱う部分係数
γF : 荷重の不確かさを扱う部分係数
C.4.4 部分係数
部分係数は,次の事項に依存する。
− 確率変数の不確かさ及び感度
− 機械要素の損傷許容度,すなわち,亀裂の生じた機械要素にほかの荷重経路がある可能性
− 検査間隔及び亀裂発見確率
− 補修可能性

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附属書D
(参考)
実験モデルに基づく設計
D.1 一般
この附属書では主に,確率に基づく設計及び部分係数設計の概念と整合するような,試験結果の統計処
理の方法について記載する。定義された部材及び材料について,強度特性の設計値を設定する手法として,
実験モデルに基づく設計(すなわち,試験による設計)がある。
適用範囲は,次のとおりである。
a) 適切な理論モデル及びデータがないために,従来の知見での取扱いが困難な場合
b) 製造方法などに特殊な条件があることで,一般的に用いられるデータが実態を反映していない場合
c) 現行の設計式が過度に保守的な結果を与えるため,試験によって限界状態を直接確認することでより
現実的かつ経済的な結果が得られることが期待される場合
d) 新しい設計式を導出する場合
この附属書は,供用中に実機に対して実施する非破壊検査,及び材料の品質管理試験は適用範囲外であ
る。こうした場合,詳細な検討及び更なる制限を課すことが適切となる。
D.2 一般的な考え方
適切な試験計画を策定するためには,対象とする要素が限界挙動を示す範囲を,定性的な事前解析によ
って予測するのがよい。さらに,想定する限界状態を明確に定義するのがよい。
供試体は,同一の寸法かつ同一の方法で作成した上で,試験目的に沿ったランダム性をもつ適切な状況
下で製造及び据付けを行うのがよい。
最終結果だけ記録するような試験手順は望ましくない。境界条件だけでなく,考慮する限界状態を超過
する際に生じる現象,それによって附随する状況,限界状態の機構にも注意するのがよい(例えば,その
負荷条件に対して,実際の機械製品に期待されているものとどの程度異なるのかということなど)。
考慮する限界状態を超過する際の状況,特に破損モードは,いつも明確であるとは限らない。試験プロ
グラムを開発したり,試験結果を評価するには,適切な理論的裏付けと,試験の経験及び工学的判断とが
必要である。
試験から設計値を導出するための方法は,試験が(一般に)限られた数しか実施されないということを
考慮するのがよい。評価は,既存の解析モデル(D.6参照)に基づいて行うことができる。そのようなモ
デルがない場合は,直接評価(D.5参照)によることができる。このような統計的な考え方に加えて,機
械製品の挙動に関する一般理論及び一般に受け入れられている一連の設計則は,試験による設計を行う場
合でも,依然有効である。
特別な調査から導かれた結論は,その調査範囲と関連する特性及び生産技術と切り離せない。その結論
を拡大解釈するためには,理論解析に基づき試験結果を別の要素へ拡大して適用することが可能である場
合を除き,新たな試験が必要である。
D.3 実機条件と試験条件との差の考慮
試験の際の条件が,対象機械製品の実際の環境における条件とは異なる場合には,設計者は実機条件と

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試験条件との差異を,適切に設定された変換係数又は修正係数によって考慮すべきである。
変換係数ηは,経験的に与えるか,又は一般の構造理論及び実験に基づいて理論的に与えるのがよい。
このとき,ある程度の任意性が生じることは避けられない場合が多い。
次による影響は,変換係数ηに含めることによって考慮できる。
a) 寸法効果
b) 時間効果(短時間の試験で長時間使用時の影響を調査するための加速条件)
c) 負荷条件の差異(供試体の支持条件,集中荷重か分布荷重か,又は時刻に対する変動など)
d) 材料特性に影響を与える環境の有無(湿度,内部流体の水質,照射量など)
実際の条件でなく実験室条件で作成した供試体は,実際の機械製品と比較して特性が大きく異なること
も考えられる。このような施工条件による影響が大きいと考えられる場合は,係数による修正を行うか,
実際に生産される品質で供試体を作るのがよい。
D.4 計画
試験実施に先立ち,設計者及び試験機関は試験計画を策定するのがよい。試験計画には,試験の目的の
ほかに,供試体の選択又は製作,試験の実施,及び試験の評価に必要な,全ての仕様を記載するのがよい。
特に,試験計画は,次の項目を含むことが望ましい。
a) 試験から得られる情報の範囲(例えば,必要なパラメータ及び有効な範囲)
b) 考慮する限界状態時の挙動に影響を与える全ての特性及び条件の記載(例えば,幾何パラメータとそ
の許容値,材料特性,製作・製造手順から影響を受けるパラメータ,寸法効果,環境条件)
c) 破損モード,及び適切な変数を使った解析モデル
d) 個々の供試体についての,関連する特性の試験実施前の計測値。例として,環境的影響,材料特性,
幾何学的諸量がある。
e) 供試体の特性の仕様(例えば,寸法,試作品の材料及び製造法,サンプリング方法,制限事項に関す
る仕様)
f) 供試体の数及びサンプリング方法
注記1 解析モデルが用意され全ての確率変数が計測されていれば,設計値の近傍のデータが活用
できるため,サンプリング方法はあまり重要ではない。それ以外の場合には,供試体が偏
った抽出となっていない,すなわち代表的母集団から選ばれていることを保証するのがよ
い。供試体のサンプリングが特定の生産者に偏っている場合,異なる生産者によって作ら
れた機械製品については,その母集団の違いを,重み係数などで考慮する必要が生じる。
注記2 サンプル数が少ない場合及び破損モードが基本変数の関数として変化する場合は,“設計
点”近傍のサンプルを用いることが望ましい。一般に,寸法については特に推奨される。
強度パラメータについては,この考え方には注意を要する。強度が等しかったとしても,
平均的な強度が高い鋼種の中で強度が低いサンプルを用いることと,強度が低い鋼種の平
均的なサンプルを用いることとは異なる。このため強度については,供試体のサンプル数
に応じた統計的不確かさを含む確率分布の推定が望ましい。
g) 試験における載荷条件及び環境条件についての仕様[例えば,載荷点,時間的・空間的載荷経路,温
度,制御方式(変形量制御又は荷重制御)]。載荷経路は,考えられる望ましくない経路の原因を探る,
又は類似ケースの解析での説明を実証することができるように,対象の部材が代表的なものとなるよ
うに選択するのが望ましい。

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