JIS C 2550-3:2019 電磁鋼帯試験方法―第3部:中間周波磁気特性の測定方法 | ページ 2

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い。
3.5
実効質量(effective mass)
磁気回路を構成する鉄心のうち,実効磁路長に相当する長さの部分が鉄損に寄与するとして求めた,等
価質量(4.4参照)。単位は,キログラム(kg)。
3.6
空隙補償(air flux compensation)
二次コイルの誘起電圧から,コイル内に試験片がない状態の二次コイルに誘起する電圧を差し引くこと
によって二次コイルの誘起電圧を磁気分極Jの微分値に対応させること(4.5参照)。
3.7
鉄損(specific total loss)
正弦波磁束励磁条件によって測定したときに,試験片中で消費される単位時間当たりのエネルギーを,
試験片の実効質量で除した値(5.5参照)。単位は,ワット毎キログラム(W/kg)。
3.8
皮相電力(specific apparent power)
正弦波磁束励磁条件によって測定したときの,励磁電圧の実効値と励磁電流の実効値との積を,試験片
の実効質量で除した値(6.9参照)。単位は,ボルトアンペア毎キログラム(VA/kg)。

4 交流磁気測定の一般的原理

4.1 一般事項

  この箇条では,エプスタイン試験器を用いた電磁鋼帯の交流磁気特性測定について規定する。

4.2 エプスタイン試験法の原理

  エプスタイン試験器は,一次コイル,二次コイル及び鉄心として組み立てられた試験片で構成し,無負
荷変圧器を形成する。この無負荷変圧器の交流磁気特性を,4.34.10に規定する方法に従って測定する。
周波数範囲の高い領域では,特殊な構造のエプスタイン試験器(附属書A参照)が必要な場合がある。
この試験器では,巻線インピーダンスの容量成分が測定に影響を与えないように,巻線間の静電容量が低
く,コイルを支える巻枠材料の誘電損失が低い。
エプスタイン試験器の巻線間の静電容量を測定するには,別の測定システム(例えば,抵抗,静電容量
及びインダクタンスを測定できる市販のLCRメータ)が必要である。

4.3 試験片

  試験片は,その端部が一枚ずつ交互に重なり合うようにして(図1参照),正方形に組み,長さ及び断面
積の等しい4個の辺を形成する。

――――― [JIS C 2550-3 pdf 6] ―――――

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単位 mm
図1−試験片の長さが280 mmの場合の試験片の端の交互積層方法(double-lapped joints)
試験片は,個別の製品規格(JIS C 2552及びJIS C 2553)の規定に従って採取する。
注記 試験片の切断方法については,附属書JAを参照。
試験片は,著しいかえりが発生しない方法によって切断し,特に指定がある場合には,対応する製品規
格に従って熱処理を行う。試験片は,次の寸法とする。
− 幅 30 mm±0.2 mm
− 長さ 280 mm320 mm
試験片の長さは,±0.5 mmの許容差で切断する。
試験片を,圧延方向に対して平行又は直角に切断する場合には,電磁鋼帯の縁を基準方向とする。
指定された方向と実際に切断された方向との角度は,次の許容差内でなければならない。
− 方向性電磁鋼帯については,±1°
− 無方向性電磁鋼帯については,±5°
平たんな試験片だけを使用する。測定に当たり,試験片の絶縁皮膜以外の絶縁物を付け加えない。
鉄心を構成する試験片は12枚以上で,4の倍数の枚数とし,試験片の各厚さに対する推奨枚数を表0A
に示す。
試験片端部の重なり部に,垂直に(1±0.1)Nの力を加える。
表0A−試験片の枚数
厚さ 枚数 厚さ 枚数
mm mm
0.025 80 0.25 16
0.05 48 0.27 16
0.10 28 0.3 16
0.20 16 0.35 16
0.23 16 0.50以上 12

4.4 エプスタイン試験器

  エプスタイン試験器は,4個のコイルで構成され,これらのコイル内に,試験片を挿入し鉄心を組み立
てる(図2参照)。

――――― [JIS C 2550-3 pdf 7] ―――――

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単位 mm
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図2−エプスタイン試験器(試験片の長さ280 mmの場合)
4.5の条件下で測定を行う場合,空隙磁束の補償のために,エプスタイン試験器に空隙補償用の相互誘導
器を設置してもよい。
コイルを支える巻枠は,ポリスチレンなどの低誘電損失の硬質絶縁材料で製作する。巻枠は長方形の断
面をもち,枠内の空間幅は32 mmとする。枠内の空間高さは約5 mmを推奨する。
コイルは正方形を形成するように,非磁性の絶縁体基板に固定する(図2参照)。鉄心として組み立てら
れた試験片の内側の縁が形成する正方形の辺の長さは,22001 図1及び図2参照)。
巻枠の内側表面の過度の摩耗を防ぐため,より大きな断面積の巻枠とし,取外し可能な内枠を挿入する
構造としてもよい。
4個のコイルは,それぞれ2巻線を備える。
− 外側に,一次コイル(励磁コイル)
− 内側に,二次コイル(電圧コイル)
一次コイル及び二次コイルは,190 mm以上の長さに均一に分布させて巻き,各コイルは総巻数の1/4の
巻数とする。
4個のコイルにおける一次コイルは全て直列に結線し,二次コイルも同様とする。
高い周波領域では,一次コイルと二次コイルとの間の静電容量,及び二次コイルの自己静電容量による
損失が無視できなくなる可能性がある。この損失を最小限に抑えるように,間隔をあけて巻線を配置する。
巻線間の静電容量及び二次コイルの自己静電容量を測定する。必要に応じて,損失に補正を加える(附
属書A参照)。
一次コイル及び二次コイルの巻数は,励磁電源,測定機器及び周波数によって決まる個別の条件に合わ
せて設定してもよい。
一次コイル及び二次コイルのそれぞれの総巻数は,一般に400 Hz10 kHzの周波数範囲の試験に使用さ
れている,200ターン360ターンを推奨する。

――――― [JIS C 2550-3 pdf 8] ―――――

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波形のひずみを避け,内部電圧降下を最小限に抑えるために,巻線のインピーダンスを十分小さくする。
磁気回路の実効磁路長lmは,0.94 mを既定の値とする。
試験片の磁気的に等価な質量である実効質量maは,式(3)から算出する。
lm
ma m (3)
4l
ここに, ma : 試験片の実効質量(kg)
lm : 実効磁路長(m),lm=0.94
l : 試験片の長さ(m)
m : 試験片の合計質量(kg)

4.5 空隙補償

  1 000 A/m以上の磁界の強さでは,空隙磁束の補償を実施する。低い周波数領域(1 000 Hz以下)の場合
は,空隙磁束を補償するために,相互誘導器を使用してもよい。
相互誘導器の一次コイルは,エプスタイン試験器の一次コイルに直列に接続し,相互誘導器の二次コイ
ルは,エプスタイン試験器の二次コイルに,逆極性で直列に接続する(図3参照)。
相互誘導器の相互インダクタンスの値は,エプスタイン試験器のコイルに試験片を挿入していない状態
で励磁コイルに交流電流を流し,エプスタイン試験器と相互誘導器とが連結された二次コイルの両端電圧
がエプスタイン試験器単独の二次コイルの両端電圧の0.1 %以内となるように調整する。
これによって,エプスタイン試験器と相互誘導器とが連結された二次コイル内に誘起される電圧が,試
験片の磁気分極の波高値に比例する。
より高い周波数領域では,相互誘導器の線間静電容量結合によって二次電圧の位相が著しくシフトし,
鉄損測定に誤差をもたらす可能性がある。相互誘導器によって二次電圧の位相が著しくシフトしていない
ことを確認する。相互誘導器の二次巻線を,線間間隔をあけて配置するなど,適切に設計することで,位
相シフトを低減できる。高い周波数領域で,上述の方法で位相シフトが避けられない場合は,相互誘導器
を除き,演算処理による空隙補償を行う(B.4参照)。

4.6 励磁電源

  励磁電源は,内部インピーダンスが低く,電圧及び周波数の安定性の高いものを使用する。測定時にお
いて,電圧及び周波数の変動は,±0.2 %とする。
鉄損,皮相電力及び磁界の強さの実効値を測定する場合には,二次電圧の波形率は1.111の±1 %とする。
注記 二次電圧の波形率の制御には,幾つかの方法がある。例えば,電子的に制御された電源,負帰
還制御が行える電源増幅器の使用などがある。
二次電圧の波形率は,二次電圧の実効値の整流平均値に対する比率である。波形率の測定には,実効値
交流電圧計及び平均値形交流電圧計を使用する。負帰還制御が行える電源増幅器を使用する場合,二次電
圧の波形をオシロスコープで観察し,基本周波数の正しい波形となっていることを確認することが望まし
い。

4.7 交流電圧測定

4.7.1  一般事項
エプスタイン試験器の二次電圧は,1 MΩ以上の入力インピーダンスをもつ交流電圧計を使用して測定
する。
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書B参照。
4.7.2 平均値形交流電圧計

――――― [JIS C 2550-3 pdf 9] ―――――

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±0.5 %の確度の整流平均値に応答する電圧計を使用する。
注記1 この種類の計器は一般に,整流平均値の1.111倍で目盛られている。
二次回路の負荷は,できる限り小さくする。平均値形交流電圧計の入力インピーダンスは,1 MΩ以上
とする。
注記2 デジタル電圧計が望ましい。
4.7.3 実効値交流電圧計
±0.5 %の確度の,実効値に応答する電圧計を使用する。
注記 デジタル電圧計が望ましい。
4.7.3A 波高値交流電圧計
±2.5 %の確度の,波高値に応答する電圧計を使用する。

4.8 交流電流測定

  次のいずれかの電流測定器で,励磁電流を測定する。
− ±0.5 %の確度の,低インピーダンスの電流計
− 一次コイルに直列に接続した無誘導精密抵抗器両端の電圧降下を測定する。抵抗器及び電圧計の総合
的な不確かさは,1 %以下とする。
二次電圧を調整し,損失を測定する場合には,電流測定器を短絡する。
注記1 デジタル電流計,又はデジタル電圧計が望ましい。
注記2 デジタルサンプリング法の適用は,附属書B参照。

4.9 周波数測定

  ±0.1 %の確度の周波数計を使用する。
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書B参照。

4.10 電力測定

  電力は,実際の測定時の周波数,力率及び波高率において±0.5 %の確度の電力計で測定する。レンジの
1/4以下での読取りは,可能な限り避ける。
また,電圧回路のリアクタンスを補償している電力計を除き,電力計の電圧回路の抵抗は,そのリアク
タンスの5 000倍以上とする。
注記 デジタルサンプリング法の適用は,附属書B参照。

5 鉄損測定の手順

5.1 一般事項

  この箇条では,400 Hz10 kHzの周波数領域での電磁鋼帯の鉄損を測定する電力計法について規定する。
鉄損は,磁気分極の波高値及び周波数を指定して測定する。
互いに比較可能な鉄損値を得るため,磁束正弦波励磁条件で測定する。

5.2 測定の準備

  図3に示すように,エプスタイン試験器と測定装置とを接続する。

――――― [JIS C 2550-3 pdf 10] ―――――

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  • IEC 60404-10:2016(MOD)

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