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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
附属書C
(参考)
環境−低圧電源システムでのサージ電圧
この附属書は,この規格の理解を助けるためにIEC TR 62066から低圧電源システムにおけるサージ電
圧の重要な情報を要約し,記載したものである。
C.1 一般
過電圧は,次の三つの現象によって低圧電源システムに発生する。
· 電源システムへの直撃雷又は落雷によって誘導する雷サージのような自然現象
· 次のいずれかの場所での,負荷又はコンデンサの開閉のような,意図的な操作
− 電力供給業者の送電システム又は配電系統内
− 使用者の低圧電源システム内
· 電源システムでの故障及びその切離しのような意図的ではない事象,又は電源システムと信号·通信
システムとの間の相互作用などの異なるシステム間の結合
この規格の中で考慮するサージとは,最大連続使用電圧のピーク値の2倍を超え,マイクロ秒(μs)か
らミリ秒(ms)の継続時間のものである。2倍未満の過電圧は,ここでは考慮せず,電気設備の動作及び
寿命に起因して発生する開閉サージよりも長い継続時間の過電圧も考慮しない。一般に,このような低い
振幅で長時間の過電圧は,通常のSPDでは抑制することが不可能であるため,この規格とは異なる防護技
術が必要である。
C.2 雷サージ
C.2.1 一般
雷は,避けられない事象であり,種々の各種作用によって低圧電源システム(信号·通信システムも含
む)に影響を及ぼす。電源システムへの直撃雷の作用は明確であるが,その他の結合作用もまた低圧電源
システムに雷サージを引き起こすことがある。ここでは,低圧電源システムに雷サージが発生する可能性
がある三つの結合作用について記載する。これらは,雷サージに言及している一方,雷サージに関連する
電流又は最初に雷サージを引き起こす電流の考慮が重要である。三つの結合作用を,次に示す。
a) 電源システムへの直撃雷 電源システムへの直撃雷は,配電用変圧器の一次側(高圧),低圧電源シス
テム(架空及び地下埋設)及び建築物等への個別の引込線に発生することがある。
b) 近傍雷 近傍雷は,誘導性結合又は大地電位上昇によって,低圧電源システムに雷サージを引き起こ
すことがある。このような落雷に起因する雷サージ電圧及び雷サージ電流は,直撃雷に関連するもの
ほど厳しくないが,発生頻度はかなり多い。
c) LPS又は使用者の建築物等の外部導電性部材(構造用鋼,エレベータシャフト並びに水道管,暖房及
びエアコンの配管のような非電気用の部品など)への直撃雷 このような落雷は,二つの影響をもた
らす。これは,外部導電性部材に流れる雷サージ電流からの誘導結合,及び低圧電源システムの導体
と接地との間にSPDを必要に応じて設置する,又は設備の等電位ボンディングであり,この結果,建
築物等から低圧電源システムへ雷サージ電流が侵入する。落雷した場合,使用者の設備に現れる雷サ
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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
ージの厳しさは,雷撃点と使用者の設備との間の距離及び電源システムの特性,接地の実態及び接地
の接続インピーダンス,電流経路におけるSPDの存在,並びに電源システムから分岐する結合回路の
特性が影響する。
C.2.2 高圧電源システムから低圧電源システムへ伝搬する雷サージ
雷によって高圧電源システム内に発生した雷サージは,次の二つの異なる方法で低圧電源システムへ伝
搬する。
− 配電用変圧器の巻線間の容量性結合及び誘導性結合
− 接地結合
伝搬する雷サージの大きさは,次のような多くのパラメータによる。
− 低圧電源システムの接地系統の種類(TT系統,TN系統及びIT系統)
− 低圧線路及び低圧負荷の特性
− 低圧過電圧防護デバイス
− 高圧電源システムの接地と低圧電源システムの接地との間の接地結合
− 配電用変圧器の設計
高圧電源システムへの直撃雷の場合,サージアレスタ(高圧避雷器)の動作又はがい(碍)子の絶縁破
壊によって,雷サージ電流は接地システムへ分流し,高圧電源システムの接地と低圧電源システムの接地
との間の接地結合によって,雷サージが低圧電源システムへ伝搬する。接地インピーダンスの値次第では,
この接地結合による雷サージは,変圧器の容量性結合によって通過するものよりも大きくなる場合がある。
TN系統において,使用者設備で中性線も接地している場合,発生する雷サージは小さい。配電用変圧器
の低圧側で分離接地システムを用いることによって,この種の接地結合は避けることが可能であることに
注意することが望ましい。
配電用変圧器の二次側(低圧側)への容量性結合及び誘導性結合によって伝搬する雷サージの代表値は,
高圧電源システムのラインと接地との間の電圧に対し,低圧電源システムの充電相と中性線との間では
2 %であり,また,充電相と接地との間では8 %である。これらの値は,負荷のある低圧電源システムの代
表値である。配電用変圧器の低圧側が開放又は非常に負荷が軽い場合,この値は,低圧電源システムによ
っては非常に高くなる場合がある。
高圧電源システムに誘起した雷サージは,直撃雷に比較してかなり小さい雷サージ電流(一般に1 kA未
満)となるため,実際には容量性結合だけで伝搬し,低圧電源システムでの雷サージ電圧は,数kVを超
えることはない。このような場合,低圧電源システムに直接誘起する雷サージ(雷撃点からさほど遠くな
い地点)は,高圧電源システムから伝搬するものに比べ一般に高い。低圧電源システムでSPDが動作又は
絶縁が破壊した場合,電流は少なくなり,抵抗性結合による伝搬は無視することが可能である。
C.2.3 低圧電源システムへの直撃雷による雷サージ
雷放電路(雷道)の実質的なインピーダンスは高いため,直撃雷電流は,理想的な電流源とみなすこと
が可能である。したがって,発生する雷サージは,直撃雷電流と瞬間的な実効インピーダンスとによって
決まる。
低圧電源システムの線路への落雷では,雷サージ電圧は,初期の時点で線路の特性インピーダンス(サ
ージインピーダンス)によって決まる。雷サージ電流Iは,最初に2方向に分流するため,発生する雷サ
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ージ電圧Uは,次の式で求める。
U=Z×2I
ここで, U : 雷サージ電圧(kV)
Z : 線路のサージインピーダンス(Ω)
I : 雷サージ電流(kA)
雷サージ電流を10 kA,サージインピーダンスを400 Ωとした場合,発生する雷サージ電圧は,2 000 kV
となる。したがって,低圧電源システムの線路では,フラッシオーバは,通常全ての線路間で発生するが,
ほとんどの場合,接地との間で発生する。フラッシオーバ後,実効的なインピーダンスは,関係する接地
抵抗によって低減する。ただし,実効的なインピーダンスが,例えば,10 Ωというかなり低い値の場合で
も,例えば,雷サージ電流10 kAを想定したとき,線路上の雷サージ電圧は,50 kVになる。
架空線路及びケーブルの複合する低圧電源システムでは,架空線路と比較してケーブルのサージインピ
ーダンスが低いため,雷サージ電圧の値は,低くなる。この値は,雷サージ電流の継続時間及び電源シス
テムの接地に対する浮遊容量に依存する。ただし,通常,この値では,低圧電源システムでの一般的な絶
縁レベルの値を超えるような雷サージ電圧を回避することは不可能である。したがって,ほとんどの場合,
直撃雷は,このような電源システムで,損傷を引き起こすこととなる。
C.2.4 低圧電源システム内の誘導による雷サージ
落雷中の電磁界の変化によって,落雷点からかなり離れていても,あらゆる種類の架空線路に雷サージ
が発生する。その線路で推定する雷サージ電圧Uは,近似的に次の式によって求めることが可能である。
U=30×k×hd×I
ここで, U : 雷サージ電圧(kV)
I : 雷サージ電流(kA)
h : 導体の大地からの高さ(m)
k : 雷放電路のリターンストロークの速さの係数(1.0≦k≦1.3)
d : 落雷地点からの距離(m)
中規模の雷サージ電流30 kA,導体の大地からの高さ5 m,落雷地点からの距離1 km以内の落雷による
雷サージ電圧は,5 kVを超える。雷サージ電流100 kA,導体の大地からの高さは同じ,落雷地点からの距
離10 kmの場合でも,落雷による雷サージ電圧は1.8 kVとなる。
C.2.5 雷保護システムLPS又は建築物等の近傍への落雷によって発生する雷サージ
低圧電源システムを共有している一つの建築物等に落雷があったとき,接地へ流れる雷サージ電流は,
各種経路に分流する。この雷サージ電流は,ローカル接地(建物の接地)及び全ての金属性経路(主に,
電源ケーブル)を通り,遠方の接地にまで至る。
サージ電流は,二方向以上に分流し,一方は,建築物等のローカル接地へ流れ,他方は,電源ケーブル
を経由して遠方の接地へ流れる(雷サージ電流は,金属管及びその他の導電性部品のような経路を流れる
こともある。)。これらの雷サージ電流は,それぞれインピーダンスの逆比によって分流する。インパルス
電流の初期段階(波頭部)では,電流の分流は,インダクタンスの比率によって決まる。波尾部では,電
流の変化率が小さいため,抵抗の比率によって決まる。
数軒の建築物等が電気的に接続している場合,実効的な抵抗値が減少するため,より多くの建築物等が
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連続して接続している場合,落雷を受けた建築物等から低圧電源システムに流出する雷サージ電流が,増
加することになる。
中性点の接地に関しては,国によって異なる方法が取られており,その結果,雷サージ電流を分流する
経路に若干の差異が出てくることがある。システムの設計者は,これらの差異を考慮することが望ましい。
分流する経路への雷サージ電流によって,主に導体とローカル接地との間に,雷サージ電圧が発生する。
これらの雷サージ電圧は,低圧電源設備の構成及びSPDの設置の有無によって,大きくもなり又は低減さ
せることも可能である。経験的には,引込口での中性線接地の接地抵抗低減が有効であり,抵抗性結合,
誘導性結合及び相互結合の影響を,考慮することが重要であることを示している。
建築物等への直撃雷によって発生する接地電位上昇は,一般に低圧電源機器の耐電圧を超え,その結果,
等電位ボンディング用SPDを設置していない場合,同一の低圧電源システムに接続する隣接の建築物等
(設備)へ波及し,フラッシオーバ及び雷サージが発生するため,注意することが望ましい。
したがって,落雷を受けていない建築物等であっても,低圧電源システムの配電網に沿って伝搬する雷
サージを被る可能性がある。さらに,その地域での落雷密度にも関連するが,高層建築物がある場合,た
とえ近隣の低い建築物等への落雷の確率が低い場合でも,伝搬する雷サージの確率が高くなる。
導体とローカル接地との間の雷サージは,接続する機器の絶縁にストレスを加えるが,通常,機器は,
JIS C 60664-1が推奨する十分な定格インパルス電圧を備えている。一方,電気機器の動作部品も,導体間
に発生する雷サージのストレスを受ける。一見,電気機器の動作部品に加わる雷サージが,最も脅威にな
るように見える。ただし,導体と接地間との間の雷サージが,電源機器の絶縁ではなく,電源システムと
電源システムに接続する通信システムとの間の電位差に変わることが,問題となる可能性がある。
C.3 開閉サージ
C.3.1 一般
開閉サージに対する防護は,開閉サージを発生する可能性が高い機器がある場合,又は設備の過電圧カ
テゴリに応じた値を超える開閉サージが発生する場合に,検討することが望ましい。これは,低圧発電機
が給電する設備,誘導性若しくは容量性負荷(モータ,変圧器,コンデンサバンクなど),蓄電装置又は大
電流負荷を設置する場所などである。この場合,このような開閉サージの発生源に近接した場所へのSPD
の設置を検討することが望ましい。
開閉サージのストレス(電流,電圧及び継続時間)は,雷サージのストレスに比較し一般に小さい。た
だし,建築物等内の奥まった場所又は開閉サージ発生源の近くでは,開閉サージのストレスが,雷サージ
のストレスよりも大きくなる場合がある。適切なSPDの選定を可能にするために,これら開閉サージのエ
ネルギーを知る必要がある。事故及びヒューズの動作による過渡現象を含む開閉サージの継続時間は,雷
サージの継続時間よりもかなり長くなることがある。
多くの場合,電気設備内での開閉動作,事故発生,遮断などは,開閉サージを発生するような過渡現象
となる。システムが再び復旧し,新たな定常状態に安定するまでは,システムの急変によって,高周波(回
路の共振周波数によって決定)の減衰振動が発生することがある。
開閉サージの大きさは,回路の種類,開閉動作の種類(閉路,開路及び再閉路),負荷,回路遮断器,ヒ
ューズなど,多くのパラメータに依存する。
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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
開閉動作中の振動周波数は,電源システムの特性によって決まり,ときどき共振現象が発生することが
ある。このような場合,非常に高い開閉サージが発生することがある。電源システムの電源周波数に同期
した共振の可能性は,一般に低い。ただし,電源システムの開閉部分の周波数特性が,システム内の一つ
以上の共振周波数に近い周波数の場合,過渡的な共振状態が発生することがある。
C.3.2 一般的記載
開閉サージの代表的な波形は,低圧電源システムの特性で決まる。これは多くの場合リンギング(振動)
波形となる。周波数は,一般に数百kHz程度である。電圧上昇率の最大値は,数kV/μs程度である。開閉
サージの継続時間は,非常に広い時間範囲に分布する。ヒューズの動作による開閉サージを除いて,代表
的な継続時間(波尾長)は,1 μs50 μsである。統計的な評価では,より長い継続時間(100 μs超過)の
開閉サージの大きさ及び発生確率は,低くなる。
C.3.3 配線用遮断器及び開閉器の動作
C.3.3.1 一般
配線用遮断器及び開閉器は,過負荷若しくは短絡時に遮断して電気機器を保護するために,又は開閉に
よって機器の動作を制御するために,各設備において広く用いている。開閉動作頻度は,適用する分野に
よって決まり,産業分野ではかなり高く,家庭環境では比較的低い。
抵抗負荷の場合,投入電流は,機器の定格電流の範囲内にある。ただし,スイッチング電源付きの機器
の場合,投入電流は定格電流よりも非常に大きなものとなる。例えば,100 Wのテレビの場合,定格電流
は,0.4 Aであるが,突入電流は約20 Aで,その50倍となる。
手動又は電動操作によって開放する機械式開閉器は,各開閉過程で電気的なアークを発生する。開閉環
境におけるインダクタンス及びキャパシタンスの相互作用で,電圧の急変によって高周波振動が発生する。
この振動は,充電相間,充電相と中性線との間,及び充電相と接地との間の電圧に重畳し,合計の電圧が,
電気機器の露出導電性部分及びその他の回路の絶縁にストレスを与える。公衆配電網を経由して使用者の
設備内へ伝搬する開閉サージに比べ,使用者設備内の配線用遮断器及び開閉器によって発生する開閉サー
ジは,比較的大きく,大きな減衰なしに電気機器に影響を及ぼす。
C.3.3.2 使用者の設備内での配線用遮断器及び開閉器の動作
一般に,開閉器の閉路時よりも開路時に,大きな振幅の開閉サージが発生する。開路時の負荷側での開
閉サージは,上位(電源)側に比べてより大きな振幅及びエネルギーをもっている。ただし,これは,主
にこの種の機器の設計,特にその絶縁に対して考慮しなければならない問題である。その他の機器を並列
に接続している場合,同じストレスを受ける。上位(電源)側への開閉サージは,全体的な電源システム
及びそれに接続している機器にとって,負荷側よりも重要性が高い。
C.3.3.3 電源供給システム(低圧及び高圧)での遮断器及び開閉器の動作
電気機器へストレスを与える開閉サージは,全ての電源供給システムで観測が可能である。地下埋設ケ
ーブルを用いた電源供給システムでは,ほぼ全てのサージは,電動操作開閉器及び類似の機器の動作によ
って発生する。
高圧及び低圧設備では,供給電源に並列に接続した変圧器,インピーダンスコイル,接触器コイル,リ
レーコイルなどのインダクタンスの開閉は,数kVとなる開閉サージを発生する場合がある。同じ現象は,
導体ループ及び直列インピーダンスコイルのような直列インダクタンスがある場合,又は電線の自己イン
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JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61643-12:2020(IDT)
JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 29 : 電気工学 > 29.240 : 送電及び配電網 > 29.240.10 : 変電所設備.サージ防止装置
JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC0920:2003
- 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
- JISC5381-32:2020
- 低圧サージ防護デバイス―第32部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準
- JISC60364-4-41:2010
- 低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
- JISC60364-4-43:2011
- 低圧電気設備―第4-43部:安全保護―過電流保護
- JISC61000-4-5:2018
- 電磁両立性―第4-5部:試験及び測定技術―サージイミュニティ試験
- JISZ9290-4:2016
- 雷保護―第4部:建築物等内の電気及び電子システム