JIS C 5381-12:2021 低圧サージ防護デバイス―第12部:低圧電源システムに接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 | ページ 16

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ダクタンスによって,電源供給システムを開路したときも発生する。
電源供給側では,開閉サージは,ゲート制御の動作,整流子形電動機のブラシ発弧,電気機械又は変圧
器の急激な負荷低下,力率調整用に用いるコンデンサユニットの開閉動作などの原因で発生する。
このような開閉サージの頻度及びエネルギーは,低圧設備への影響と同様に,まれに落雷で発生する雷
サージよりもかなり大きいこともある。
低圧電源供給システムで発生する開閉サージは,数kVになることがあるが,低圧電源供給網の特定の
条件によって,最大値が制限される場合がある。開閉サージを保護器によって制御する電源供給システム
の場合,使用者設備内では一般に,開閉サージは,最大値6 kVを超えることは,ほとんどないと推定可能
である。
開閉サージに匹敵するその他の現象は,高圧電源システムでの短絡事故及び地絡故障で発生する。高圧
電源システムでの地絡故障は,地絡していない高圧線と接地との間に,最大で線間(ライン間)電圧と等
しい過電圧を引き起こす。さらに,このような場合,過渡過電圧が発生する。このような過渡過電圧は,
高圧電源システムから低圧電源システムへ伝搬する。
C.3.4 ヒューズ(限流ヒューズ)の動作
過電流保護及び短絡遮断のため,配電システム及び電気設備にはヒューズを広く用いている。例えば,
配電システムで短絡を解消するためにヒューズが動作した場合,この動作で,ほぼ三角波形で比較的低い
周波数の開閉サージが発生する。開閉サージは,低圧電源システムの充電相間及び充電相と中性線間に発
生する。また,開閉サージは,中性線の接地によって,充電相と接地(PE)との間に発生する。さらに,
開閉サージは,IT系統の場合,接地間のキャパシタンスによって,充電相及び中性線と接地(PE)との間
に発生する。このように,この開閉サージは,露出導電性部分とその他の回路との間の絶縁にもストレス
を与える。ヒューズの動作による開閉サージは,ブスバー(busbar)を経由して,同一の配電システムから
供給しているその他の使用中の機器へ伝搬する。
開閉動作によるその他の開閉サージと比較して,ヒューズの動作による開閉サージの発生頻度は,非常
に少ない。ただし,短絡の遮断の場合,非常に厳しい開閉サージが発生する場合がある。これは主に,短
絡電流の上昇率,ヒューズの特性及び定格電流,並びに回路のインダクタンスの影響を受ける。
ヒューズの動作によって発生する開閉サージは,同じブスバー(busbar)に接続するその他の全ての電流
使用機器に影響を与えるため,ブスバー(busbar)の近くに設置したヒューズによる配電システムの供給線
の短絡の解消は重要な問題である。統計的な経験に基づいた場合,低圧公衆配電網では,このような短絡
事故は,非常にまれである。ただし,この種の短絡事故は,産業用配電システムを考慮すると,ある程度
の関連性があり,短絡の発生は,それほどまれではない。

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附属書D
(参考)
部分雷電流(直撃雷の分流)の計算
LPSがある建築物等への落雷を図D.1に示す。直撃雷電流ILは,建築物等の突針から接地システムへと
流れる。これは,接地電位上昇を引き起こし,結果としてフラッシオーバ及び/又は設備内のSPDの動作
によって,直撃雷電流ILの一部分は,電源システムの4線へ分流する。
a) LPSがある建築物等への落雷の例
b) a)に示す例における等価回路
c) b)において,落雷した建築物等の接地抵抗を除く全ての接地の合成抵抗をREFとした場合
記号説明
RN : 中性線接地の接地抵抗
RE, G : 落雷した建築物等の接地抵抗
RE,1E,n : No.1nの建築物等の接地抵抗
RE,E : 落雷した建築物等の接地抵抗を除く全ての接地の合成抵抗
IL : 建築物等への直撃雷電流
IM : 低圧配電システムに分流する部分雷電流
図D.1−低圧配電システムに分流する部分雷電流の合計についての簡易計算
この計算では,近隣の建築物等の接地の合成抵抗RE, Eは,落雷した建築物等の接地抵抗RE, G以下が望ま

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しい。
低圧配電システムに分流する部分雷電流IMは,電源システム及び設備に雷サージを発生し,絶縁及び接
続機器へのストレスとなる。したがって,落雷した建築物等だけでなく,近隣の建築物等及び設備も危険
を被る。
簡略化した回路[図D.1のb)及びc)]で,低圧配電システムに分流する部分雷電流IMを,簡易計算して
もよい。
注記 この計算は,エネルギーの分配(雷サージ電流の波形の波尾長に関連する。)だけに有効である。
雷サージによってSPDが受けるストレスは,次に示す多くの複雑で相互に関連する事象に依存する。
· 建築物等内でのSPDの設置場所 SPDの設置場所は,主分電盤内,設備の分電盤内,又は使用者の機
器の手前か?
· SPDの上位(電源側)に設置する機器 例えば,ヒューズ,配線の断面積などは,電源システム全体
のサージ耐量を制限する場合があり,この場合,SPDが受ける最大ストレスも制限する。
· 建築物等への落雷の結合方法 例えば,建築物等のLPSへの直撃雷による雷サージ,又は近傍への落
雷による建築物等内の配線への誘導による雷サージ
· 建築物等内での雷サージ電流の分流 例えば,接地システムに流れる部分雷電流と,低圧配電システ
ム及び等電位ボンディング用SPDを経由して遠方の接地極に流れる部分雷電流との割合
· 低圧電源システムの接地系統の種類 中性線の接地は,低圧配電システムにおける雷サージ電流の分
流に強い影響を及ぼす。例えば,中性線を複数箇所で接地するTN-C系統では,TT系統よりも,より
直接的に,より低いインピーダンスをもつ大地への経路の方へ,雷サージ電流が流れる。
· 建築物等に接続する付加的な導電性配管 これらは,直撃雷電流の一部を分流するため,等電位ボン
ディング用SPDを経由して低圧配電システムに分流する部分雷電流を減少させる。このような配管
は,非導電性部品へ置き換える可能性があり,恒久的ではないことに注意を払うことが望ましい。
· サージ波形の考慮 SPDに流れる雷サージ電流のピーク値だけではなく,雷サージの波形も考慮する。
建築物等内でのSPDの異なる設置場所での実績に対する電気的環境及び脅威レベルの定量化について,
これまで多くの試みを実施してきた。JIS Z 9290-4は,雷保護レベル(LPL)に基づきSPDが受ける可能
性がある最も高い雷サージの大きさを規定している。例えば,JIS Z 9290-4は,雷保護レベルI(LPL I)に
おける,建築物等のLPSへの直撃雷の大きさを,10/350で200 kAと仮定している。この大きさの落雷は,
可能性があるが,統計的な発生確率は,1 %にすぎない。いい換えれば,99 %の直撃雷は,仮定するピーク
電流200 kA未満である。
さらに,この直撃雷電流の50 %が,建築物等の接地システムに流れると仮定する場合,残りの50 %は,
配電システムの3線及び中性線に接続した等電位ボンディング用SPDを経由して低圧配電システムに流
れる。また,追加の導電性配管がないと仮定した場合,200 kAの直撃雷電流の一部が,各SPDに25 kAず
つ分流する。
電流の分流の簡易計算は,SPDが受ける可能性のある脅威レベルを検討する場合に役立つが,想定した
状況を維持することが重要である。上記例の200 kAの直撃雷電流で検討する場合,等電位ボンディング用
SPDの脅威レベルは,99 %の割合で25 kA未満になることを示す。さらに,SPDを流れる雷サージ電流の
波形は,初期の通電波形と同じと仮定しているが,実際の波形は建築物等内の配線などのインピーダンス
によって変わる場合がある。
多くの規格は,むしろSPDが動作中に受ける脅威レベルの検討が,長期間収集した現場経験に基づいて

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いることを求めてきた。例えば,IEEE C62.41.1及びIEEE C62.41.2は,SPDの設置場所において,それぞ
れ異なる脅威レベルを示している。
上記から,SPDの適切なIimp,In又はImax(製造業者が明示する場合)の選定は,多くの複雑で相互に関
連する事象に依存することが分かる。使用者は,建築物等及びその低圧配電システムに侵入する雷サージ
電流がどのように分流するのかを検討するだけでなく,この雷サージ電流の大きさ及び波形に関して統計
的確率を考慮する必要がある。
電力線,電話線及び信号線を経由して侵入する雷サージによって,建築物等内の電子システムへ損傷を
与える確率は,建築物等への直撃雷よりもはるかに大きいということを認識することが重要である。
多くの建築物等は,LPSを設置していない,又は必要としなくてもよい。また,サージ耐量の大きなク
ラスI試験に適合するSPDは,低い電圧防護レベルUpで,正しく設計したクラスII試験に適合するSPD
ほど,必要としなくてもよい。
上記のような複雑な事象に対応する場合,SPDの選定で最も重要な要素は,SPDに流すことが可能なサ
ージ耐量(Iimp,In,UOC又は製造業者が明示する場合Imax)ではなく,サージ侵入時のSPDの電圧を制限
する性能である。低い制限電圧のSPDは,適切に機器を防護するが,高サージ耐量のSPDは,動作寿命
を単に長くするだけである。

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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
附属書E
(参考)
高圧電源システムと接地との間の故障によって
低圧電源システムに発生するTOV
E.1 一般
IEC 60364-4-44で規定するように,次の事象は,最も厳しい一時的過電圧(用語及び定義はIEC 60050-
614:2016の614-03-13による。)を引き起こす。高圧電源システムでの地絡故障,及び低圧電源システムで
の故障によって発生する一時的過電圧は,次の条件を考慮することが望ましい。
− 低圧配電システムに電力供給する変電所内での,高圧電源システムと接地との間の故障(地絡),これ
は,低圧電源システムの接地系統の種類(TN系統,TT系統及びIT系統)並びに高圧電源システム及
び低圧電源システムの各種接地設備の違いによって異なる。
− 低圧電源システム又は設備内での中性線の欠相
− 低圧電源システム又は設備内での短絡
− 低圧電源システムのIT系統での充電相の偶発的な接地(地絡故障)
注記 E.8では,TN系統及びTT系統での充電相の偶発的な接地(地絡故障)も考慮している。
1 kVを超える変電所の接地設備に関する要求事項は,IEC 61936-1を参照。
IT系統では,充電部は,接地から絶縁するか,又は十分に大きいインピーダンスを介して接地へ接続す
る。偶発的な接地(最初の地絡故障)の間,電源の開路が必要ではないため,最初の地絡故障の間も,電
源の継続性を要求する場合,IT系統を用いる事例が増えている。
この場合,次の条件を満たさなければならない。
Uf=RA×Id≦50 V
ここで, Uf : 故障の継続時間中に, 低圧電源システム内の露出導電性部分
と接地との間に発生する交流故障電圧(V)
RA : 低圧電源システムの機器の露出導電性部分へ接続する接地
設備の抵抗(Ω)
Id : 低圧電源システム内の最初の地絡故障の継続時間中に,低
圧機器の露出導電性部分に接続する接地設備を介して流れ
る故障電流(A)
絶縁監視機器は,最初の地絡故障の発生を検知するために設置する。最初の地絡故障は実用上最短時間
で解消することが望ましい。これが低圧電源システムにおける,TT系統及びTN系統とIT系統との違い
であり,IT系統を採用する理由である。IT系統では,低圧側での地絡故障時間に規定がないため,高圧電
源システムでの地絡故障が同時に発生する可能性がある。
IT系統の低圧電源システムでは,中性線及び/又は充電相と接地(PE)との間に接続するSPDは,低
圧電源システムでの最初の地絡故障(地絡故障時間に規定なし)を考慮し,Ucは,充電相間の最大電圧以
上とする。
この附属書は,低圧配電システムに電力供給する変電所内で,高圧電源システムでの地絡故障を想定し,
低圧電源システムにおいて,正しいSPDを選定するための特定の情報を提供する。

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JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61643-12:2020(IDT)

JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧