この規格ページの目次
78
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
低圧電源システムに接続するSPDは,変電所内の高圧電源システム側で地絡故障が発生している間,交
流ストレス電圧を受ける場合がある。このときに発生する交流ストレス電流は,選定したSPDの寿命とな
るときの挙動に対して重要である。低圧電源システムには,異なる接地系統があり,その種類によって,
異なるストレス電圧(U1及びU2)及び異なるストレス電流が発生する場合がある。IT系統では,最初の
地絡故障が,変電所内の低圧電源システム側,又は使用者の低圧電源システム内のいずれかにあることを
考慮する。関連する情報及び高圧電源システムでの故障によって発生する一時的過電圧値UTOV(HV)を計算
する方法を,次に示す。
注記1 我が国の電源システムにおける一時的過電圧は,E.8.3参照。
注記2 対応国際規格のE.1の最後の段落の内容が重複している誤記のため,まとめ直した。
E.2 高圧電源システムと接地との間の故障によって低圧電源システムに発生するTOVに参考となる文
献
参考文献は次による。
− IEC 60364-5-53
− IEC 60364-4-44
− JIS C 60364-1
− IEC 61936-1
E.3 この附属書で用いる記号
次の記号を用いる。
− IE : 変電所の接地設備を通して流れる高圧電源システムの地絡故障電流
− RE : 変電所の高圧機器用接地設備の抵抗
− RA : 低圧電源システムの機器の露出導電性部分へ接続する接地設備の抵抗
− RB : 変電所の接地設備と低圧電源システムの中性点の接地設備とが電気的に独立している低圧電源シ
ステムにおける,低圧電源システムの中性点へ接続する接地設備の抵抗
− U0 : 低圧電源システム(TN系統及びTT系統)の充電相と接地との間の公称交流電圧
注記1 IT系統の場合,U0は,充電相と中性線との間の公称交流電圧,又は適用によっては,充電
相と中間点導体との間の公称交流電圧を示している。中性線のないIT系統の充電相間の電
圧は,通常,記号Uを用いている。
− Uf : 故障の継続時間中に,低圧電源システム内の露出導電性部分と接地との間に発生する交流故障電
圧
− U1 : 故障の継続時間中に,変電所の低圧電源システム側の充電相と高圧電源システム側の露出導電性
部分との間に発生する交流ストレス電圧
− U2 : 故障の継続時間中に,低圧電源システムの充電相と低圧機器の露出導電性部分との間に発生する
交流ストレス電圧
注記2 交流ストレス電圧(U1及びU2)は,低圧機器の絶縁部分,並びに低圧電源システムに接続
するSPDの充電相及び中性線と接地(PE)との間に発生する電圧である。
次の追加記号は,IT系統に対して用いる。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 81] ―――――
79
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
注記3 対応国際規格の“低圧機器の露出導電性部分を,変電所の接地設備から電気的に分離している
接地設備に接続している”は,誤記のため削除した。
注記4 対応国際規格の“Ih : 高圧電源システムの故障及び低圧電源システム内の最初の地絡故障の継
続時間中に,低圧機器の露出導電性部分に接続する接地設備を介して流れる故障電流”は,誤
記のため削除した。
− Id : 低圧電源システム内の最初の地絡故障の継続時間中に,低圧機器の露出導電性部分に接続する接
地設備を介して流れる故障電流
− Z : 低圧電源システムと接地設備との間のインピーダンス(例えば,絶縁監視機器の内部インピーダン
ス,中性線と大地との間の十分に大きいインピーダンス)。中性線のないIT系統,及びデルタ結線の
IT系統では,インピーダンスを接続する導体は,充電相の導体である。
E.4 高圧電源システムでの地絡故障の継続時間中に発生する低圧電源システムの一時的過電圧
変電所の高圧側の地絡の場合,次の種類の過電圧が,低圧電源システムに影響を与える可能性がある。
− 交流故障電圧Uf
− 交流ストレス電圧(U1及びU2)
低圧機器及びSPDで想定する交流ストレス電圧を,表E.1に,変電所及び低圧電源システムでの地絡故
障によって発生する過電圧の代表的な回路を,図E.1に示す。
表E.1−IEC 60364-4-44に規定する許容交流ストレス電圧
高圧電源システムでの地絡故障の継続時間 低圧機器の許容交流ストレス電圧
t U
5秒間を超える U0+250 V
5秒間以下 U0+1 200 V
中性線のない接地系統の場合,U0は,充電相間の電圧とする。
注記1 表の1行目は,遮断時間が長い高圧電源システムでの故障に関連する。例えば,中性点非接地及び消弧
リアクトル接地の高圧電源システムである。表の2行目は,遮断時間が短い高圧電源システムでの故障
に関連する。例えば,高圧電源システムの低インピーダンス接地への地絡である。これらは共に,低圧機
器に要求する一時的過電圧に対する絶縁設計の基準である(JIS C 60664-1参照)。
注記2 中性線を,変電所の接地設備に接続する接地系統で,低圧機器が建築物等の外にあり,接地したきょう
(筐)体内に収納していない場合,このような一時的過電圧が機器の絶縁に加わることも考慮する。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 82] ―――――
80
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
図E.1−変電所及び低圧電源システムでの地絡故障によって発生する過電圧の代表的な回路
分離した,高圧電源システムの接地設備(RE)と低圧電源システムの接地設備(RB)とが互いに近接し
ている場合,現在,次の四つの方法を用いている。
− TN系統及びTT系統の場合,全ての高圧電源システムの接地設備(RE)と低圧電源システムの接地設
備(RB)との相互接続
− IT系統の場合,全ての高圧電源システムの接地設備(RE)と低圧電源システムの接地設備(Z及び/
又はRA)との相互接続
− TN系統及びTT系統の場合,高圧電源システムの接地設備(RE)と低圧電源システムの接地設備(RB)
との分離
− IT系統の場合,高圧電源システムの接地設備(RE)と低圧電源システムの接地設備(Z及び/又はRA)
との分離
一般的に用いる方法は,相互接続である。高圧電源システムの接地設備によって低圧電源システムの接
地設備を保護している区域内の場合,高圧電源システムの接地設備と低圧電源システムの接地設備とは,
相互に接続する(IEC 61936-1参照)。
注記 低圧電源システムの各種接地系統(TN系統,TT系統及びIT系統)は,JIS C 60364-1を参照。
この附属書では,以降,“RE(RB)”と表現する場合,変電所の高圧機器用接地設備REと低圧電源システ
ムの接地設備RBとを共通接地(相互接続)する場合を示す。
E.5 TT系統の例−想定する一時的過電圧の計算
E.5.1 高圧電源システムでの地絡故障によって低圧電源システムの機器に加わるストレス
高圧電源システムでの地絡故障は,配電用変圧器の低圧側の中性線を接地する[RE(RB)に接続する]
場合,低圧電源システムの機器の電圧に影響を与える(図E.2参照)。高圧電源システムの中性線と配電用
変圧器の低圧側の中性線との間に共通の接地導体がない場合,高圧側の地絡故障(例えば,配電用変圧器
の避雷器用ブッシングの絶縁破壊又は変圧器内部の故障)は,低圧側の中性線接地の電位上昇を引き起こ
す。配電用変圧器低圧側の中性線接地が電位上昇する理由は,高圧側の地絡によって,地絡電流が抵抗RE
(RB)に流れるためである。このため,RE(RB)の値及び地絡電流の値は,低圧電源システムの一時的過
電圧値を決定する。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 83] ―――――
81
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
記号説明
ZEHV : 高圧電源システムの接地設備のインピーダンス(高圧電源システムの中性点の処理による)
ZLV : 充電相のインピーダンス
ZN : 中性線のインピーダンス
図E.2−変電所のREと低圧電源システムの中性点の接地RBとを共通接地としたTT系統の例
E.5.2 高圧電源システムの特性
E.5.2.1 地絡電流を制限した高圧電源システム
アークの自己消弧を保証するため,消弧リアクトル(ピーターセンコイル)で高圧電源システムを接地
することによって,地絡電流IEを,50 A60 Aに制限する。
そのため,高圧電源システムの残留接地インピーダンスZEHVは,100 Ω500 Ωの範囲になり,地絡電流
は,ZEHVだけで決まる。短絡容量並びに接地抵抗RE(RB)及びRAは,ほとんど影響しない。
地絡電流を制限した高圧電源システムから給電する低圧電源システムでは,変電所の接地設備REは2.5
Ω5 Ωの範囲が望ましい。地絡電流IEが50 Aの場合,低圧電源設備の中性線と接地との間の電圧UTOV(HV)
は,約125 V250 Vの範囲まで上昇する。TT系統では,このTOVは,低圧機器の絶縁及びSPD(設置す
る場合)にストレスを与える。UTOV(HV)によって,中性線と接地との間に設置するSPDに流れる最大電流
は,50 A未満となる。このため,中性線と接地との間に設置するSPD(スパークギャップ)は,小さな交
流電流を遮断可能なことが望ましい。
注記 幾つかの国では,接地抵抗REが10 Ωと高い場合があり,UTOV(HV)が500 Vと高い場合がある。
E.5.2.2 中性線を低抵抗で接地する高圧電源システム
完全な地下埋設システムの場合,地絡電流(ケーブルの絶縁故障)を制限しても,接地電流を自己消弧
することは困難である。このため,中性線を低抵抗で接地する高圧電源システムが増加している。この場
――――― [JIS C 5381-12 pdf 84] ―――――
82
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
合,一般に,接地抵抗ZEHVは,地絡電流IEを2 kA程度に抑制する値とすることが望ましい。
定格電圧Unが20 kVの高圧電源システムでは,接地抵抗ZEHVを約5 Ωとすれば,この要求事項を満た
す。小さな変電所の変圧器は,高価な過電流保護を,あまり実施していない。そのため,ヒューズを用い
て短絡電流を遮断する。遮断時間は,ヒューズの定格電流値に依存し,約100 msである。
代表的な20 kV高圧電源システムの条件を,次のように仮定する。
ZEHV=5 Ω[Un=20 kV(L−L),短絡容量100 MVAの場合]
また,低圧電源システムは,次の条件となる。
RE(RB)=1 Ω,Un=230 V
RA=5 Ω,ZLV=ZN=150 mΩ
RE(RB)上のTOV,すなわちUTOV(HV)は,約1 200 Vとなる。
中性線と接地との間に設置するSPDを流れる最大電流は,RE(RB)とRAとZNとの和によって決まり,
TT系統のこの例では,計算の結果,電流は約200 Aとなる。
E.6 低圧電源システムの接地系統の種類による一時的過電圧
E.6.1 一般
高圧電源システムでの地絡故障の間,低圧電源システムに発生する交流ストレス電圧(U1及びU2),及
び交流故障電圧(Uf)を,表E.2に示す。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 85] ―――――
次のページ PDF 86
JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61643-12:2020(IDT)
JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 29 : 電気工学 > 29.240 : 送電及び配電網 > 29.240.10 : 変電所設備.サージ防止装置
JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC0920:2003
- 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
- JISC5381-32:2020
- 低圧サージ防護デバイス―第32部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準
- JISC60364-4-41:2010
- 低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
- JISC60364-4-43:2011
- 低圧電気設備―第4-43部:安全保護―過電流保護
- JISC61000-4-5:2018
- 電磁両立性―第4-5部:試験及び測定技術―サージイミュニティ試験
- JISZ9290-4:2016
- 雷保護―第4部:建築物等内の電気及び電子システム