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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
附属書F
(参考)
協調の規則及び基準
F.1 一般
7.5.7に規定したとおり,SPD間の協調は,エネルギー協調及び電圧防護レベルの協調の両方を達成する
ために実施する。
F.2 エネルギー協調
F.2.1 一般
エネルギー協調は,2個目のSPD(SPD2)の最大エネルギー耐量Emaxに基づく。ただし,JIS C 5381-11
に規定するように,このエネルギーは,波形及び試験条件に依存する。協調は,ほとんどの場合,一つの
波形(例えば,クラスII試験では8/20)だけで実施する。この理由は,製造業者からこの値Emaxを直接入
手する方がより望ましく,しかも容易であるためである(通常,Emaxは,技術文書に明示している。)。
次の二つの値は,SPDのエネルギー耐量を正確に定義するために必要である。
− Emax S : 例えば,8/20(クラスII試験)の短い継続時間の電流波形に対する最大エネルギー耐量
− Emax L : 例えば,10/350(クラスI試験)の長い継続時間の電流波形に対する最大エネルギー耐量
これらの二つの値Emax S及びEmax Lは,技術によっては,等しくてもよい。
SPDは,エネルギー耐量Emax S及びEmax Lに関連する二つの電流波形,すなわち,短い継続時間の波形In
(クラスII試験用)及び長い継続時間の波形Iimp(クラスI試験用)で特徴付ける。1個のSPDで,クラ
スI試験及びクラスII試験に従って試験してもよい。
製造業者がImaxを明示する場合,Imaxは,Emax Sとして考慮する。
関連するインパルス波形による最大エネルギー耐量Emaxを用いて,2個のSPD(SPD1及びSPD2)の協
調を達成する必要がある。この場合,次の二つを検討する。
· 長い継続時間の電流波形での協調
· 短い継続時間の電流波形での協調
一般に,短い波形で協調を達成することは,比較的容易である。
スイッチングSPDは,立ち上がり時間の長い波形でも検討することが必要である。この問題は,IEC
SC37A(低圧サージ防護デバイス)で検討中である。
F.2.2 解析検討 : MOVで構成する2個のSPDの簡易化した協調
F.2.2.1 一般
次の検討は,電流Iに対する残留電圧Uresの特性曲線が既知である,クラスI試験及びクラスII試験に
適合した1ポートの電圧制限SPDだけに適用する。この特性曲線は,8/20電流インパルスを用いて測定
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し,製造業者によってSPDの技術文書に明示している。クラスIII試験及び2ポートSPDは,特別な注意
(検討中)が必要である。
次の場合の例は,協調問題の理解に役に立つものである。最初に,解析検討が可能な,MOVで構成する
1個目のSPD(SPD1)及び2個目のSPD(SPD2)の場合を検討する。この解析検討は,電流の分流だけに
依存することに注意することが望ましい。エネルギー協調の達成を確認するために,追加の計算(一般に
は解くことが難しい)を必要としてもよい。
a) 2個のMOVが同じ直径の場合 同じ公称放電電流Inをもち,同じエネルギー耐量Emaxをもつ[同じ
Imax(製造業者が明示する場合)及び同じIimp]場合で,異なる電圧防護レベルUp 1及びUp 2(MOVの
厚さが異なる)の場合
すなわち,In 1=In 2,Imax 1=Imax 2(製造業者が明示する場合),Iimp 1=Iimp 2の場合
この場合の電流Iに対する残留電圧Uresの特性曲線を,図F.1に示す。
図F.1−同じ公称放電電流Inをもつ2個のMOVの電流Iに対する残留電圧Uresの特性曲線
Up 1>Up 2の場合,曲線aは,1個目のSPD(SPD1)に対応し,曲線bは,2個目のSPD(SPD2)に
対応する。
この協調は,一般に短い継続時間の電流波形の場合で,長さd(SPD1とSPD2との間の配線長,図
18参照)が数m(通常は,5 m10 mの範囲)よりも大きい場合,達成可能である。
長い継続時間の電流波形の場合,SPD1とSPD2との間の減結合インピーダンス(減結合部品及び/
又は配線長)の効果が減少するため,SPD2は,侵入するサージiの全てに耐えなければならない場合
がある。このように,SPD1とSPD2とが同じ設計の場合,SPD2は,侵入するサージの全てのストレ
スに耐える必要がある。
Up 1SPD1に流れる。この場合,SPD2に流れる電流は,SPD2に影響を与える電流とはならない。
エネルギー協調は,両方のSPDが同じサージ耐量の場合,両方の場合において満足する。
この最初の場合は,同じエネルギー耐量をもつ2個のSPDを用いることのメリットは少ないが,協
調の仕組みを説明するため取り上げた。
b) 公称放電電流が異なる2個のMOVの場合 この例での実用的な場合は,In 1>In 2,かつ,Emax 1>Emax 2
の場合である。さらに,SPD1及びSPD2の特性は,Ures 1(In 1)ち,電流Iに対する残留電圧Uの曲線を,図F.2に示す。解析検討でインピーダンスを考慮すること
は難しいため,図F.2にはインピーダンスを示していない。図F.2から,短い継続時間の電流波形の場
合,ほとんどの電流は,SPD1に流れるため,よい協調を達成する。ただし,長い継続時間の電流波形
での協調の達成は,難しい場合がある。長い継続時間の電流波形で,侵入する電流の値が,2本の曲
線(曲線a及び曲線b)の交点(図F.2参照)での電流値よりも低い場合,協調を達成しないことがあ
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る。この電流値で,Ures 2(曲線a)が,Ures 1(曲線b)よりも低い場合,侵入する電流の大部分はSPD2
に流れるため,2個のSPDの間にインダクタンスが必要になる。
このため,製造業者の技術文書に明示するUres 1(In 1)及びUres 2(In 2)(これは,それぞれ,Up 1及
びUp 2に等しい)を単純に比較する代わりに,SPD1とSPD2との曲線が,互いに交差するかどうかを
確認するため,0.1×In 2からIn 1又はImax 1(製造業者が明示する場合)までのUres(I)の曲線を比較す
る。交点での電流値Icr(ある場合)は,可能な限り低くする必要がある。
この場合,エネルギー協調は,高い確率で達成する(Icrが低ければ低いほど,その確率は高くなる。)。
疑義が生じる場合,SPD間のインピーダンス及び長い継続時間の電流波形を考慮して,SPD2を通過
するエネルギーの計算をする必要がある。ただし,このような計算は難しい。
情報の不足のために,これらの曲線を得ることが可能ではない場合,又は簡単で迅速な結果が必要
な場合には,同じ電流値でUres 1曲線及びUres 2曲線を比較する。このような場合,容易で良好な協調
達成の条件は,Ures 1(In 2)合しているが,このようなMOVは,不必要な裕度となる可能性がある。さらに,このようなMOV
は,電力システムからの一時的過電圧に対する耐性の問題をもつ場合がある。
この場合では,SPD2に流れる電流が低い場合でも,長い継続時間のサージに対しては,エネルギー
協調を達成しないことがある。この場合,SPD2を通過するエネルギーの計算が,追加で必要になるこ
とがある。さらに,機器の防護が可能かを確認する(SPD2は,低い電流でもMOVの非線形性によっ
て,高い電圧になることがある。)。
記号説明
a : SPD2の曲線
b : SPD1の曲線(SPD2の曲線と交差する曲線)
c : 十分な裕度があるSPD1の曲線(SPD2の曲線と交差しない曲線)
d : 長い継続時間のサージ電流の範囲
e : 短い継続時間のサージ電流の範囲
図F.2−公称放電電流が異なる2個のMOVの電流Iに対する残留電圧Uresの特性曲線
F.2.2.2 結論
2個のMOVの協調が必要な全ての場合,次のa) e)に示す五つのステップの手順を用いることが望ま
しい。
a) SPDがない状態で,発生すると想定するサージを明確にし,長い継続時間の電流波形と短い継続時間
の電流波形との区別をつける。
b) このサージのストレスに耐えることが可能なSPD1を選定する。手順a)で情報を得ることが可能では
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ない場合,十分なサージ耐量(箇条4及び7.5.2.3参照)のSPDを用いて,製造業者からIn 1,Imax 1(製
造業者が明示する場合)及びIimp 1の値を入手する。次に,手順a)で得た情報とこれらの値とを比較す
る。
c) 要求する電圧防護レベルに従って,SPD2を選定する。
d) SPD1及びSPD2の,0.1×In 2からIn 1又はImax 1(製造業者が明示する場合)までのUres(I)の曲線を
比較する。次に,2本の曲線の交点Icrを決定する。この電流Icrが十分に低い場合(通常は,In 2の0.1
倍),SPD2を通過するエネルギーを計算する必要はない。この場合,SPD間の距離にかかわらず,エ
ネルギー協調を達成する。疑義が生じる場合,SPD間のインピーダンスを考慮してSPD2を通過する
エネルギーを計算し,エネルギー協調を確認する。このような曲線を利用不可能な場合,次の簡易化
した要求事項を満たすSPD2を選定する。
SPD2がSPD1と同じ公称放電電流の場合,Ures 1(In)SPD2がSPD1よりも小さい公称放電電流の場合,Ures 1(In 2) エネルギー協調の達成及び機器の防護が可能かを確認するために,SPD2を通過するエネルギーの
計算を実施することが望ましい。
e) 満足な結果が出るまで,手順c)までを繰り返す。
注記1 非常に低い電流での電圧値(バリスタ電圧VV)は,協調には適切ではない。
注記2 いずれの場合でも(MOVの有無にかかわらず),EMC(電磁両立性)の観点からは,SPD2に
流れる電流を可能な限り小さくする必要がある。
注記3 Ures(I)の曲線は,最大値である。製造上の許容差による特性のばらつきを考慮している。
注記4 F.2.2の解析検討は,3個以上のSPDの場合も適用可能である。
F.2.3 解析検討 : スパークギャップで構成するSPDとMOVで構成するSPDとの協調
F.2.3.1 一般
スパークギャップで構成するSPD1とMOVで構成するSPD2とを用いる例を,図F.3に示す。この例で
は,SPD2が過度なストレスを受ける前にSPD1が動作(放電)する場合,協調は達成する。
SPD1が放電する前では,次の関係式になる。
U1=Ures 2(i)+L×ddit
このUres 2(i)の値は,一般に分からないため,適切な結果を得るために,次の式を用いる。
U1=VV2+L×ddit
ここで, U1 : SPD1に加わる電圧(V)
Ures 2 (i) : 電流Iに対するSPD2の残留電圧(V)
L : 2個のSPD間のインダクタンス(H)
i : サージ電流(A)
VV2 : SPD2のバリスタ電圧(V)
VV 2は,SPD2のMOVのバリスタ電圧である。このバリスタ電圧は,MOVを特徴付けるパラメータで,
これは,電圧−電流特性曲線(U−I特性)の屈折部分に非常に近い。
U1が,SPD1のスパークギャップの放電開始電圧(この附属書FではUdynとする。)を超えると直ちに,
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協調は,達成し,SPD2には,僅かな電流しか流れなくなる。これは,MOV(SPD2)の特性,スパークギ
ャップ(SPD1)の放電開始電圧,侵入するサージ電流iの上昇率及び大きさ並びに2個のSPD間の離隔距
離dに依存する(この場合,抵抗成分は無視することが可能とみなし,インピーダンスZのインダクタン
ス成分Lを用いる。)。
F.2.3.2 スパークギャップとMOVとの間に製造業者が要求する減結合インピーダンス(減結合部品及び
/又は配線長)の推定値を考慮して計算する例
例えば,無線基地局のような狭い場所では,負荷側に設置したMOVで構成するSPDが,サージ電圧を,
上位(電源側)に設置したスパークギャップで構成するSPDのトリガ電圧よりもかなり低い電圧に,制限
することがある。この場合,MOVで構成するSPDは,スパークギャップの動作を妨げ,流入する全ての
エネルギーを負担する。広い場所の場合,SPD間の配線長が十分に長いため,スパークギャップが動作を
開始するための十分なインダクタンスとなることがある。
スパークギャップの放電開始電圧よりも低い電圧のサージが侵入する場合,並列接続するSPD2にサー
ジ電流の全てが流れる可能性が常にある。この場合,負荷側のSPDは,全エネルギーを単独で負担するの
に十分な定格を備えていなければならない。
より高いエネルギーレベルで,スパークギャップが動作しない場合,過度なエネルギーが,負荷側のSPD
に加わり,負荷側のSPDを破壊する。負荷側のSPDに,限界を超えるレベルの全てのエネルギーが加わ
る前に,スパークギャップが確実に動作するのに十分な減結合インピーダンス(減結合部品及び/又は配
線長)がある場合,協調は,達成する。
協調を達成するために必要なインダクタンスの値は,簡単に計算することが可能である。最初に,スパ
ークギャップのパラメータを知る必要がある。スパークギャップは,一般的に,4 kV未満で200 ns以内に
放電を開始する。
次に負荷側のSPDのパラメータを知ることが望ましい。代表的な交流定格電圧275 VのSPDは,1 mA
でのバリスタ電圧が430 V±10 %で,約800 Vから電圧制限を開始する。また,クラスIIに適合するSPD
の公称放電電流Inは,8/20電流インパルスで10 kA20 kAである。
なお,スパークギャップは,10/350又は同等の長い波尾長のインパルスを仮定したクラスI試験の定格
であることを忘れてはならない。負荷側のSPDのピーク電流値を,クラスI試験のインパルスのエネルギ
ーにも耐えるように軽減する。この軽減係数は,0.1と仮定する。したがって,ピーク電流の定格(10/350
μs波形)を例えば,12.5 kAから1.25 kAに軽減する。10 μsの立ち上がり時間のdi/dtは,125 A/μsとなる。
スパークギャップが確実に動作するのに必要なインダクタンスLの値は,次の式を用いて計算が可能で
ある。
di
U L IR
dt
ここで, U : スパークギャップのトリガ電圧(図F.3のU1と等しい。)
(V)
L : インダクタンス(H)
di
t : 電流インパルスの立ち上がりの傾き(A/s)
d
I×R : 負荷側のSPDの電圧降下(Rが非線形の値であることに
注意する。また,この値は図F.3のU2と等しい。)
I(A)×R(Ω)
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JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61643-12:2020(IDT)
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