この規格ページの目次
133
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
図H.3−化学施設の例
工場施設として,H.2.1の要求事項e)を満たすため,受変電設備の低圧側にSPDを設置することが望ま
しい。化学施設(図H.3参照)は,環境に影響を及ぼす場合があるので,H.2.1の要求事項b)を満たすた
め,化学施設には,IEC 62305-2を適用することが望ましい。簡略化したリスク評価方法は,実際には,管
理棟だけに適用する。
比較のために,簡略化したリスク評価方法及びIEC 62305-2の方法を三つの建築物に適用する(表H.2
及び表H.3参照)。IEC 62305-2の方法は,経済的リスク(IEC 62305-2に規定するR4)の計算だけである。
この例では,化学施設の環境への影響は考慮しない。
表H.2−簡略化したリスク評価方法
要素 受変電設備 化学施設 管理棟
LPAL 0 0 0
LPCL 0 0.3 0.05
LPAH 0.5 0 0
LPCH 0.1 0 0
LP 0.22 0.3 0.05
NG 1 1 1
F 1 1 1
環境 農村環境 農村環境 農村環境
CRL 386 283 1 700
SPD 必要 必要 必須ではない
注記 工業活動[H.2.1のe)及び
工業活動[H.2.1のe)]の 開閉サージに対する防護のためのSPD,
ため,SPDが必要 場合によってはa)]のた 又は無停電電源装置,パソコン又は通信
め,SPDが必要 機器などの特定の機器の防護のための
SPDは,必要としてもよい。
IEC 62305-2による完全な方法では,R4の許容リスクの値は,10-3を適用する。
三つの建築物は,より小さな構造体で囲まれていると仮定する。大地抵抗率は400 Ωmとし,低圧配電
回路は,大きなループを回避する配線とする[接地(PE)導体は,充電相導体と同じケーブルで配線する。]。
低圧機器の定格インパルス電圧UWは,2.5 kVに固定し,高圧側は,IEC 62305-2で規定する最大値に固定
する。火災リスクが高い化学施設を除く,二つの建築物の火災リスクは,平均値とする。化学施設には,
自動消火システムがあり,他の二つの建築物は,手動の消火システムだけを備える。
表H.3に示す値は,この条件から計算した。表H.3に示すR4及びRBRZの説明は,IEC 62305-2に規定
している。経済的価値の損失のリスクR4は,リスクコンポーネントRBRZの全ての合計である。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 136] ―――――
134
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
注記 リスクコンポーネントRBRZは,次に示すようになる。
1) 建築物等への落雷(S1)
RB 周囲環境も危険にさらす場合がある,火災又は爆発を誘発する建築物内部での危険な火花
放電が原因となる,物的損傷に関連するリスクコンポーネント
RC LEMPが原因となる内部システムの故障に関連するリスクコンポーネント
2) 建築物等の近傍への落雷(S2)
RM LEMPが原因となる内部システムの故障に関連するリスクコンポーネント
3) 建築物等に接続した引込線への落雷(S3)
RV 引込線を通って又は沿って伝搬する雷電流による物的損傷(外部設備と,一般には建築物
等の引込線の引込口金属部分との間での危険な火花放電によって誘発する火災又は爆発)
に関連するリスクコンポーネント
RW 引込線に誘導し及び建築物へ伝搬する過電圧が原因となる内部システムの故障に関連する
リスクコンポーネント
4) 建築物等に接続した引込線の近傍への落雷(S4)
RZ 引込線に誘導し及び建築物へ伝搬する過電圧が原因となる内部システムの故障に関連する
リスクコンポーネント
表H.3−IEC 62305-2の方法
要素 受変電設備 化学施設 管理棟
RB 1.72×10-6 1.10×10-4 6.90×10-6
RC 2.30×10-6 3.67×10-5 9.20×10-6
RV 1.99×10-7 1.45×10-7 1.29×10-7
RM 1.20×10-4 1.87×10-4 9.22×10-6
RW 1.60×10-4 6.23×10-5 1.23×10-5
RZ 2.40×10-3 1.80×10-3 3.00×10-4
R4 2.68×10-3 2.20×10-3 3.38×10-4
NG 1 1 1
環境 農村環境 農村環境 農村環境
SPD 必要 必要 必須ではない
異なるパラメータに基づく計算にもかかわらず,この例では,IEC 62305-2による完全な方法と簡略化
した方法とで,経済的リスクに対しては,同じ結果となった。ただし,IEC 62305-2による完全な方法で,
人命のリスク,環境のリスク又はサービス(電源,通信などの供給)の損失を適用する場合,異なる結果
となることがある。特にLPSがある場合は,異なる結果となることがあり,この場合,異なる種類のSPD
及び追加のSPDが,必要になる可能性がある。
H.3 リスク評価中に考慮する要素
H.3.1 環境
リスク評価中に考慮する要素で,環境に関することは,次による。
− 雷の発生率及び厳しさ 落雷密度NGは,1年間の1平方キロメートル当たりの落雷発生数である(5.2.2
及びI.1.1.2参照)。
· 建築物等の雷保護システムLPS又は引込線(電源線及び通信線)への直撃雷
――――― [JIS C 5381-12 pdf 137] ―――――
135
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
· 抵抗性結合又は誘導性結合
リスク評価は,全ての種類の直撃雷及び落雷によって誘導するエネルギー(雷サージ)が,LPS,電
源引込線,電話引込線,信号線,アンテナケーブル,導波管及び水道管などの非電気用の導体を経由
して侵入することを考慮する必要がある。光ファイバケーブルは,雷保護ゾーンへ侵入する(一つ又
は複数の)金属導体がない場合,ほとんど雷の影響を受けない。
− スイッチング電源による過渡現象及び開閉サージの発生率及び厳しさ モータ制御用インバータの
ようなスイッチング電源機器と同じ回路内又は近くに設置する電子機器は,負荷によって発生する過
渡現象によって,損傷又は劣化する場合がある。さらに,過渡現象(開閉サージ)は,電源設備の開
閉,システムの事故又は負荷の内部障害によって発生する場合がある。
− 周囲の建築物等のLPSとの露出及び結合 損傷は,雷電流による接地電位上昇を含め,近くの建築物
等又は施設のLPSに流れる雷電流からの過渡的な結合によって発生する。このようなエネルギーの拡
散は,通常,電源設備の配線を経由して発生し,使用者が直接制御することは可能ではない。エネル
ギーの分流は,各建築物等又は関連設備のそれぞれ異なる接地抵抗の大きさに関連する。
− 施設又は建築物等の立地
· 地形
· 隣接する建築物等及び樹木による遮蔽
高い丘若しくは山の,頂上又は中腹に立地する施設は,低地又は自然への露出が小さい場所に立地する
同様の施設よりも,直撃雷の影響を受けやすい。同様に,高い通信タワーがある設備も,落雷のリスクが
増加する可能性がある。小規模及び低層の施設は,隣接する高い建築物等及び樹木によって,直撃雷から
遮蔽可能な場合がある。ただし,この遮蔽は,施設への引込線から侵入するエネルギー(雷サージ)には
影響しない。
H.3.2 機器及び施設
リスク評価中に考慮する要素で,機器及び施設に関することは,次による。
− 機器の定格インパルス電圧UW(又は過電圧カテゴリ)及びサージイミュニティ試験レベル 製造業
者は,電気機器及び電子機器を,各種の定格インパルス電圧UW(又は過電圧カテゴリ)で設計しても
よい。定格インパルス電圧UW(又は過電圧カテゴリ)が低いほど,リスクはより高くなる。製造業者
から特に情報がない場合,その機器は特定のサージイミュニティを備えていないと仮定することを最
良としてもよい。正しく設計した防護を備える場合,ケーブルの引込口におけるエネルギー(雷サー
ジ)の分流が最大となり,機器へのエネルギー伝搬は最小となる。
− 接地システム
· 接地抵抗及びインピーダンス
· 配置及び近さ(距離)
· 他の接地システムとの接続
最も重要なことは,直接又はSPDによるボンディングで,接地の等電位ボンディングを実施するこ
とである。
分離した接地システムは,特に注意する。
− 配電線の配置
· 架空
· 地下ケーブル
――――― [JIS C 5381-12 pdf 138] ―――――
136
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
· 両方
地下埋設の低圧電源ケーブルは,架空の電源ケーブルよりもリスクは低いが,地下埋設ケーブルの近傍
で直撃雷が生じた場合,特に,高い大地抵抗率の土壌では,地下埋設ケーブルに,かなりの過電圧が発生
する場合がある。設計者は,地下埋設ケーブルの長さ,施設からある程度離れた場所の配電線は架空か,
及び高圧(中圧)配電線は架空かを考慮する必要がある。低圧及び高圧(中圧)の配電線の合計の長さ,
及び架空配電線の地上からの高さは,関連するパラメータである。より長く,より高くに位置する配電線
では,落雷のリスクが増大するため,雷エネルギーが,施設又は建築物等へ伝搬するリスクが,増大する。
H.3.3 経済及びサービス(電源,通信などの供給)の中断
リスク評価中に考慮する要素で,経済サービスの中断に関することは,次による。
− サービスの劣化又はサービスの停止 サービスの停止及び損傷は,ビジネスに大きな影響を与える。
サービスの劣化は,直接的な経済的損失に加えて,品質的な要素を含む場合がある。例えば,大規模
な自動化又は電子化が含まれる場合,手動操作に戻すことは,事実上,不可能な場合がある。
− 業務の停止 業務の停止は,機器,コンピュータ,通信及び情報技術システムが稼動停止した時間に
伴う直接的な収入の損失,並びに運用収益及び/又は企業の生産性に関する間接的な損失が発生する。
救急サービス,特定の中央情報システムのような重要なシステムの場合,業務の停止に関連する直接
的及び間接的な費用は,非常に大きくなる場合がある。
営利企業では,稼動停止によって直接収入を失う。修理及び再稼動に要する推定時間は,人員,予
備品,手順及び情報の可用性に依存する。
− 機器又は施設の修理又は交換 これは,機器の交換並びに再設置に伴う直接的及び間接的費用を含む,
物的損傷に対する費用である。機器内の部品の段階的な劣化は,繰り返して発生する小さなパルスで
も発生する場合があり,任意の確率で機器の故障につながる。この事象によって,機器の故障が,す
ぐに又は直接的に雷雨又は開閉サージと関連しない場合がある。このような累積効果のため,定期点
検又は予防的な維持管理の費用が増加する場合がある。
− 救急サービス 機器の損傷又は人の負傷は,企業,人又は社会が費用負担する,消防,救急車,警察
などの救急サービスを必要とする場合がある。火災警報システム及び救急サービス通信の故障は,こ
のようなサービスの効率が低下する。通常,救急サービスには,高いレベルの防護を必要とする。
H.3.4 安全
人体の安全は,設計者及び施工者の主要問題である。労働衛生及び労働安全は,各国の関連する法令を
守る必要がある。
絶縁破壊によって,人体への安全上のリスクがある場合,SPDを用いることを考慮することが望ましい。
H.3.5 防護の費用
リスク評価中に考慮する要素で,防護の費用に関することは,次による。
· 設備の設計
· 材料及び機器
· SPDの設置
防護の費用は,SPD,技術設計及び管理,並びに電気工事を含む。
――――― [JIS C 5381-12 pdf 139] ―――――
137
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
附属書I
(参考)
システムストレス
注記 この附属書は,箇条5を補足している。情報が,この規格の特定の細分箇条に関連する場合,箇
条番号を()内に示す。
I.1 雷サージ電圧及び電流(5.2.2参照)
I.1.1 SPDの必要性に影響を及ぼす配電システムの様相
I.1.1.1 一般
IEC 60364-4-44:2007+AMD1:2015+AMD2:2018の箇条443は,リスク評価の結果及び内部のスイッチ
ングによるサージのリスクがない場合,SPDは必要としなくてもよいと規定している(H.1参照)。
これらは,通常の設備を想定している。検討する設備の固有要因が他とは異なる場合,サージ防護の必
要性が大きくなる場合がある。これらの固有要因の幾つかを,I.1.1.2及びI.1.1.3に示す。
サージ侵入の可能性,及び機器の防護と結果との間の経済的なバランスに基づいたリスク評価を実施す
ることが望ましい。
I.1.1.2 雷活動
設備に加わる雷サージストレスのリスクを決定するために用いる最も有用な数字は,地域の落雷密度NG
である。
地域の落雷密度NGは,1年間の1平方キロメートル当たりの落雷発生数である。世界の多くの地域で,
NGは,IEC 62858:2015に適合する落雷位置標定システム(LLS)が提供するデータから得ることが可能で
ある。落雷位置標定システムがない地域では,NGの地図を用いてもよい。
落雷位置標定システム又はNGの地図がない地域では,IEC 62305-2を参照する。
I.1.1.3 設備の被雷
特にIEC 60364-4-44:2007+AMD1:2015+AMD2:2018の箇条443で考慮しない,直撃雷又は近傍への落
雷の場合,地下ケーブルで電源供給する場合でも,設備を十分に防護しないことがある。これが,地下ケ
ーブルによる電源供給だけでは,SPDの必要性を決定することが可能ではない理由である。
I.1.2 建築物等内のサージ電流の分流
追加の情報は,JIS Z 9290-1及びJIS Z 9290-4を参照。
注記1 雷サージ電流は,二つの重要なパラメータを組み合わせている。一つは,傾きが急しゅん(峻)
な立ち上がり時間で,誘導性結合による電圧値を決定するために用いている。もう一つは,長
い継続時間で,基本的に落雷のエネルギーを表している。この長い継続時間には,高周波効果
がないため,サージ電流の分流の計算では,抵抗値(Ω)を用いている。
LPSがある建築物等内にSPDを設置する場合,SPDへの雷サージのストレスを決定するためには,接地
――――― [JIS C 5381-12 pdf 140] ―――――
次のページ PDF 141
JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61643-12:2020(IDT)
JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧
- 29 : 電気工学 > 29.240 : 送電及び配電網 > 29.240.10 : 変電所設備.サージ防止装置
JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC0920:2003
- 電気機械器具の外郭による保護等級(IPコード)
- JISC5381-32:2020
- 低圧サージ防護デバイス―第32部:太陽電池設備の直流側に接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準
- JISC60364-4-41:2010
- 低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
- JISC60364-4-43:2011
- 低圧電気設備―第4-43部:安全保護―過電流保護
- JISC61000-4-5:2018
- 電磁両立性―第4-5部:試験及び測定技術―サージイミュニティ試験
- JISZ9290-4:2016
- 雷保護―第4部:建築物等内の電気及び電子システム