JIS C 5381-12:2021 低圧サージ防護デバイス―第12部:低圧電源システムに接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 | ページ 31

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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
J.1.2 防護距離での振動現象の影響(7.4.2参照)
一般に,防護は,被保護機器に近接してSPDを用いるだけでは不十分である。EMCの理由(サージ電
流による電磁障害を回避するため,建築物等の引込口で,適切に電流を分流する方がよい。)から,設備の
引込口にSPDを設置する方がはるかによい(導体間のフラッシオーバなどを回避するため)。引込口に設
置したSPDの防護距離外に機器があり,必要な場合,機器に近接して別のSPDを設置する。この場合,
協調の検討が必要である(7.5.7を参照)。
追加のサージ防護(SPD)が必要な理由は,サージ電流によって発生する振動又は進行波は,被保護機
器で想定する電圧より高い電圧を引き起こす場合があるためである。このようなSPDと機器との構成及び
等価回路の例を,図J.8に示す。
u u=ku
d
サージ (L,r) サージ
L r
C
D
D
Eq
P
P
S
S
(C)
a) SPDと機器との構成例 b) SPDと機器との構成の等価回路例
記号説明
d : 配線長
L : 配線のインダクタンス
r : 配線の抵抗
Eq : 機器
C : 静電容量
u : SPDの残留電圧
u : 機器に加わる電圧
k : 係数(1 図J.8−被保護機器がSPDの防護距離外の場合の構成及び等価回路例
機器に加わる電圧uは,サージの周波数及び配線長dに依存する。LとCとの間の振動は,rの値によ
って決まり,機器に加わる電圧uを,SPDの残留電圧uのk倍まで増加する。kの値は,多くのパラメー
タに依存する。機器が高インピーダンスの負荷の場合,実際,kの値は2未満である。
図J.9に,5 nFの静電容量負荷をもつ機器から10 m離れた位置に設置した,MOVで構成するSPDに,
8/20で5 kAのインパルスを印加するためのインパルス発生器を接続した回路を示す。この回路でのシミ
ュレーション結果を,図J.10に示す。これは被保護機器に加わる電圧が,SPDの残留電圧の2倍に達する
可能性があることを示している。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 151] ―――――

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10 m
U
5 kA
C= 5 nF
8/20
図J.9−MOVで構成するSPDと被保護機器との間の振動の可能性
電圧
(V) Veq
VSPD
VSPD
2 000
1 000
0 5 10 15 20 25 時間(μs)
記号説明
VSPD : SPDの残留電圧
Veq : 被保護機器の端子と接地との間に加わる電圧
図J.10−2倍電圧の例
J.1.3 雷保護ゾーン(LPZ)の概念(7.4.6参照)
建築物等の電源システムにおける雷保護ゾーン(LPZ,直撃雷に対する保護の概念で,JIS Z 9290-4に規
定する。)及びSPDの配置例を,図J.11に示す。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 152] ―――――

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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
記号説明
LPZ : 雷保護ゾーン
PDS : 低圧配電システム
SPD : サージ防護デバイス
RA : 設備の接地極
図J.11−建築物等の雷保護ゾーン及びSPDの配置例
雷保護ゾーン(LPZ)を,次のように定義する。
· 雷保護ゾーン0A(JIS Z 9290-4参照)
直撃雷の危険があり,直撃雷の全電流が流れる可能性があるゾーン。このゾーンでは,減衰のない
電磁界が発生する。
· 雷保護ゾーン0B(JIS Z 9290-4参照)
直撃雷の危険はないが,減衰のない電磁界が発生するゾーン。このゾーンでは,伝搬する減衰のな
い雷サージ電流及び開閉サージが発生する。
· 雷保護ゾーン1(LPZ 1)
部分雷電流(直撃雷の分流)の影響を受けるゾーン。伝搬した雷サージ電流及び/又は開閉サージ
は,LPZ 0A又はLPZ 0Bに比べ,減少する。
· 雷保護ゾーン2(LPZ 2)
LPZ 1との境界に設置したSPDによって,伝搬した雷サージ電流及び/又は開閉サージは,LPZ 1
に比べ,減少するゾーン。
· 雷保護ゾーン3(LPZ 3)
振動現象で生じたサージ,電磁結合及び内部開閉サージは,LPZ 2に比べ,減少するゾーン。
伝搬し脅威を与えるパラメータ(雷サージ電流,開閉サージなど)は,LPZの境界にSPDを設置するこ
とで減少する。複数のSPD間の協調は,7.5.7に規定する方法を実施することが望ましい。このSPDの特
性パラメータは,SPDの設置場所に伝搬する脅威を与えるパラメータに適したものとする(7.5.2及び7.1
参照)。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 153] ―――――

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注記 JIS Z 9290-4の規定によって,クラスI試験に適合したSPDを用いることが望ましい場合,この
SPDは,LPZ 1とLPZ 0Bとの境界に設置することが望ましい。
7.4によって追加のSPDを設置するごとに,新しいLPZを設定する。
J.2 SPDの選定
J.2.1 Ucの選定(7.5.2.1参照)
ほとんどのSPDでは,5秒間以上継続する一時的過電圧は,永久ストレスとみなす。したがって,Ucは,
正常状態及び5秒間以上続く故障状態(一時的過電圧)を考慮して,次に従い選定する。
a) 正常状態
1) 充電相と中性線との間 充電相と中性線との間に接続するSPDのUcは,Ucs以上とすることが望ま
しい。一般に,Ucsは,U0の1.1倍(電圧変動10 %),又はSPDの劣化の可能性及びその他の電源シ
ステムの異常によるマージンとして5 %を考慮する場合,Ucsは,U0の1.15倍である。
2) 充電相と充電相との間 充電相と充電相との間に接続するSPDのUcは,Ucs以上とすることが望ま
しい。一般に,三相のスター結線の場合,Ucsは,U0の√3倍の1.1倍(電圧変動√3倍の10 %)であ
り,三相のデルタ結線の場合,Ucsは,U0の1.1倍(電圧変動10 %)である。
注記1 幾つかの実例では,電圧調整の制限(例えば,電圧変動をメータ部だけで設定する非常
に大きなビル)によって,Ucsは,上記に示す一般的な電圧変動(10 %及び√3倍の10 %)
以上となることがある。
ある例では,電圧変動は,より小さい場合がある(例えば,5 %)。この場合,電圧変動を小さく
してもよい(例えば,Ucは,U0の1.05倍以上,又はU0の√3倍の1.05倍以上でよい。)。
3) 充電相と接地との間,又は中性線と接地との間 この場合は,次による。
· TT系統及びTN系統の場合,充電相と接地との間,又は中性線と接地との間に接続するSPDの
Ucは,Ucs(一般に,U0の1.1倍)以上とする。
· IT系統の場合,次の異常な状態を参照する。
注記2 二次側にセンタータップがある変圧器から給電する電源システムでは,Ucは,二つの値
となる。Ucの一つの値は,Ucsであり,もう一つの値は,Ucsの√3/2倍である。
高調波が発生する場合,供給電圧の最大値が上昇する場合があるので,高調波がない場合に選定す
ることが望ましいUcの値と比較して,高い値のUcとしてもよい。
b) 異常な状態(故障状態) 充電相と接地との間に接続するSPDのUcの選定は,特定の故障状態を考慮
してもよい。これは,電源システムに故障が起きた場合,多くのSPDの損傷を避けるために実施する。
IT系統の場合,電源システムの故障状態を考慮することが重要である。
TT系統及びTN系統で,地絡故障が発生した状況下では,充電相と接地との間の電圧が,Ucsを超
える場合がある。これは,高圧電源システム又は低圧電源システムでの故障状態に依存し,電圧の最
大値は,接地系統の種類に依存する。追加の情報は,5.2.4.2を参照。Ucの選定は,このような故障状
態による実際の電圧値に依存する。電源システムの故障によって発生するSPDの損傷を避けるため,
Ucの値を十分に高くすることは,電圧防護レベルも高くなるため,現実的ではない。一般に電源シス
テムの構成とは関係なく,Ucは,U0の1.5倍よりも高い値とすることが適切である。
IT系統で,地絡故障が発生した状況下では,充電相と接地との間の電圧は,ほとんどの場合,U0の
√3倍(三相のスター結線の場合)となる。低圧電源システムでのこのような故障は,十分に長い継続
時間になる場合があり,これは,永久状態とみなす。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 154] ―――――

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C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
この場合,充電相と充電相との間の電圧よりも高いUcとすることが望ましい。
SPDのUcと電源システムの公称電圧との間の関係の例を,附属書Bに示す。
J.2.2 協調の問題(7.5.7.2参照)
この問題について,よりよく説明するため,図J.12に,インダクタンスで分離した,2個のMOVの代
表的なエネルギー協調の例を示す。負荷側のSPD(SPD2)は,上位(電源側)のSPD(SPD1)よりも低
いUp及び小さいInをもつ。サージの立ち上がり部でのインダクタンス効果によって,ほとんどの電流は,
SPD1に流れ,SPD2の電流は,SPD2の特性及びインダクタンスによる時定数で徐々に増加する。このよ
うに,SPD2に流れる電流は,時間の経過とともに増えていく。
全体の電流,SPD1及びSPD2を流れる電流,並びにSPD1及びSPD2の残留電圧を,図J.12に示す。
· この規格では,最大エネルギー耐量Emaxを,SPDが劣化しないで耐えることが可能な最大のエネルギ
ーとして定義する。Emaxは,試験結果から得る(クラスI試験の場合,Iimpで,又はクラスII試験の場
合,Inで動作責務試験中に測定したエネルギー),又は製造業者の情報,すなわち,In(クラスII試験),
Iimp(クラスI試験)又はUmaxを考慮し計算することが可能である。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 155] ―――――

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  • IEC 61643-12:2020(IDT)

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