JIS C 5381-12:2021 低圧サージ防護デバイス―第12部:低圧電源システムに接続するサージ防護デバイスの選定及び適用基準 | ページ 7

           28
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
Itransは,JIS C 5381-11:2014の8.6.4.1に規定する短絡SPDに対する短絡容量試験のための特性変化の手
順(状態試験)に用いる。
Itransの値は,Inの推奨値の中から選定する。
6.5.3 SPDの電圧防護レベルに関する情報
6.5.3.1 測定制限電圧
a) クラスI試験及びクラスII試験 測定制限電圧は,次の二つの試験によって決定する。
− 8/20電流インパルスを用いた各電流値での残留電圧の測定
− 1.2/50電圧インパルスを用いた立ち上がり波形での放電開始電圧の測定(電圧スイッチングSPD及
び複合SPDに対してだけ)
測定制限電圧は,次のいずれかの最も高い電圧値である。
− 残留電圧。すなわち,クラスI試験の場合,Iimpの波高値の0.1倍から1倍までと等しい8/20電流イ
ンパルス,及びクラスII試験の場合,Inの0.1倍から1倍まで。
− 又は,1.2/50電圧インパルスを用いた立ち上がり波形での放電開始電圧。
電圧制限部品(例えば,MOV)で構成するSPDの代表的な残留電圧の曲線(通電電流に対する残留
電圧)を図5に示す。この曲線は,製造業者がImaxを明示するSPDの場合,Inでの残留電圧よりもImax
での残留電圧の方が高いことを示している。Imaxでの残留電圧が電圧防護レベルよりも高い場合,特
に,それが被保護機器のインパルス耐電圧よりも高い場合,SPDは,そのような雷サージのストレス
に耐えても,機器を防護しない。そのため,SPDの電圧防護レベル及びサージ耐量は適切に選定する。
記号説明
U1 : Inにおける残留電圧
U2 : Imaxにおける残留電圧
R : 数kAの範囲
In : 公称放電電流
Imax : 最大放電電流
図5−MOVの代表的な残留電圧の曲線
電圧スイッチング部品(例えば,スパークギャップ,GDTなど)で構成するSPDのインパルス放電
開始電圧は,印加する電圧インパルスの上昇率(du/dt)に依存する。ほとんどの場合,印加する電圧
インパルスの上昇率(du/dt)が高いほど,インパルス放電開始電圧は高くなる。インパルス放電開始

――――― [JIS C 5381-12 pdf 31] ―――――

                                                                                            29
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
電圧は規定したdu/dtに対する統計的な値であるため,測定値に幅がでる(図6参照)。
記号説明
a : 高い上昇率−10 kV/μs
b : 低い上昇率−1 kV/μs
δt : 放電開始時間の幅
δU : 放電開始電圧の幅
図6−スパークギャップの代表的な放電開始電圧の曲線
b) クラスIII試験 クラスIII試験の場合,測定制限電圧はコンビネーション波形発生器を用いて測定す
る。測定制限電圧は,コンビネーション波形発生器の開回路電圧がUOCの0.1倍から1倍までの試験
中に測定した中での最大値である。
6.5.3.2 電圧防護レベル : Up
Upは,製造業者が明示する。Upは,測定制限電圧の最大値以上であり,JIS C 5381-11に規定する。製造
業者が,Upを選定する場合,製造上の許容差を考慮することが望ましい。実際には,SPDの制限電圧は,
製造業者が明示するUpよりも通常は低くなる。製造業者は,インパルス電流Iに対するSPDの制限電圧
U若しくは残留電圧Ures又は幾つかのインパルス電流Iに対するSPDの制限電圧U若しくは残留電圧Ures
の表をデータシートに明示している場合がある。SPDの設置場所に流れるサージ電流が,Upを決定するた
めに用いるインパルス電流よりも小さい場合,より良い防護を達成するために,この制限電圧U又はUres
を用いてもよい。
被保護機器の過電圧カテゴリ及び公称電圧によって決まる電圧防護レベルの推奨値は,80 V,90 V,100
V,120 V,150 V,220 V,330 V,400 V,500 V,600 V,700 V,800 V,900 V,1 kV,1.2 kV,1.5 kV,1.8
kV,2 kV,2.5 kV,3 kV,4 kV,5 kV,6 kV,8 kV及び10 kVである。
MOVで構成する電圧制限SPDのUcとUpとの関係を附属書Bに示す。
6.5.4 寿命となるときのSPDの状態に関する情報
寿命となるときのSPDの挙動は,サージの大きさ,回数及び波形,並びに電源システムの短絡容量,及
び寿命となるときにSPDに課電する電圧値に依存する。この規格では,SPDの基本的な寿命となるときの
挙動は,次の二つを考慮する。
− 短絡(又は低インピーダンス)

――――― [JIS C 5381-12 pdf 32] ―――――

           30
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
− 開回路(又は高インピーダンス)
注記1 6.5.4の内容は,JIS C 5381-11:2014の5.12に規定するSPDの分類及びSPDの故障モード(SPD
の特定の技術に関連する)の概念に対応していない。ただし,JIS C 5381-11:2014の5.12.2 b) の
短絡回路(短絡形SPD)に分類するSPDは,定義によって,寿命となるときには短絡になる。
SPDは,ある期間に中間的な状態となってもよい。この状態は,エネルギー吸収を伴い,最終的にSPD
は,開回路[SPD自体,分離器の動作又はSPDの上位(電源側)にある過電流保護器の動作によって]又
は短絡となる。この規格では,この状態が一時的なものと想定する場合は,取り扱わない。
注記2 中間的な状態とは,製造業者が指定するSPDのパラメータが想定よりも低く(悪く)なるが,
SPDはまだ寿命ではない状態である。
SPDの特性の変化は,必ずしも寿命とは考えない。このことは6.5.7に記載する。
6.5.5 定格短絡電流ISCCR及び続流遮断定格Ifi
SPD単体又は,分離器及び/若しくは過電流保護器を接続したSPDは,製造業者が明示する定格短絡電
流ISCCRに耐えなければならない。JIS C 5381-11で規定するISCCRは,SPDに製造業者が指定する分離器及
び/又は過電流保護器を接続して試験する。SPDは,燃焼,焦げ,溶融した材料の放出又は外郭の破損に
よる充電部の暴露なしで試験に合格することが望ましい。SPDは,電源の推定短絡電流IpがISCCRよりも
大きい場所では用いてはならない。さらに,製造業者が推奨する適切な分離器及び/又は過電流保護器が
正常に動作するように設置する。ISCCRは,製造業者が指定する分離器及び/又は過電流保護器を接続した
状態のSPDの定格値である。外部分離器の定格及び特性と同様に,必要な場合,この値は,出荷時の製品
に添付する製造業者の書類に明示する。
続流Ifは,電圧制限SPD以外のSPDにおいて,インパルス電流印加後のSPDに電源システムから流れ
る,ピーク電流である。続流遮断定格Ifiは,SPDが分離器の動作なしで遮断可能な推定短絡電流である。
Ifiは,電圧制限SPD以外のSPDを選定する場合,考慮することが望ましい。この情報は,出荷時の製品に
添付する製造業者の書類に明示する。設置規則によって,SPDの保護のために用いる外部分離器又は過電
流保護器は,関連するJIS(又はIEC規格)に適合しなければならない。
6.5.6 定格負荷電流IL及び電圧降下率ΔU(2ポートSPD又は個々の入力端子と出力端子とをもつ1ポ
ートSPD)
2ポートSPD又は個々の入力端子と出力端子とをもつ1ポートSPDは,機器の負荷電流が,定格負荷電
流IL以下であることを確認しなければならない。
注記 負荷の種類も考慮することが必要である。例えば,ある負荷は,突入電流が実効値の3倍になる
場合がある。突入電流のピーク値は,2ポートSPDの直列インピーダンスに追加の過熱を引き起
こすことになる。
さらに,2ポートSPDの設置によって,SPDの負荷側の機器に対し,許容不可能な電圧降下が生じない
ことを確認する。この電圧降下率ΔUは,任意のパラメータである。
6.5.7 SPDの特性の変化に関する情報
特定のSPDは,JIS C 5381-11に規定する試験よりも大きいストレスを受けた場合,中間的な状態とな
ってもよい。この場合,例えば,Up,In,Icなど,SPDの特性の幾つかは,製造業者が明示した値から変化
してもよい。具体的には,これは,並列接続したサージ防護部品をもつSPDにおいて,それらのサージ防
護部品の一つがサージ通過後に分離する可能性があるためである。この場合,使用者は,SPDの特性の変

――――― [JIS C 5381-12 pdf 33] ―――――

                                                                                            31
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
化に気づかなくてもよい。中間的な状態に対する表示がない場合,このような中間の状態をSPDの設計に
おいて回避することが望ましい。

7 低圧電源システムへのSPDの適用

7.1 一般

  リスク評価の実施によってSPDの必要性を決定し(箇条4参照),電源システムに発生するストレスを
把握した(箇条5参照)場合,機器を防護するSPDの特性(箇条6参照)は,図7に示す手順を用いて特
定することが可能である。
電源システムに接続するSPDは,7.27.4に示す基準を用い,7.5に示す手順でSPDの特性を選定して
もよい。
試験クラスの選定(7.2参照) 引込口では,クラスI,クラスII及びクラスIII試験に適
合したSPDを用いてもよい。機器に近接した場所では,ク
ラスII及びクラスIII試験に適合したSPDを用いてもよい。
雷サージ及び開閉サージから機器を防護するためには,
クラスII試験に適合したSPDを用いる。
LPSがある建築物等の場合,クラスI試験に適合したSPD
を用いる。
LPSがない建築物等の場合,及び最後の引込柱と設備の
引込口との間の架空の引込線への直撃雷を考慮する場合,
電気設備の引込口又はその近傍には,クラスI試験に適合し
たSPDを選定してもよい。
必要な防護モードの決定(7.3参照)
追加防護の必要性(7.4参照) SPDは,電気設備の引込口に可能な限り近接した場所へ
− 振動現象 設置する。また,SPDは,必要に応じて被保護機器に近接し
− 設備に誘導する電圧 て設置する。
− SPDの接続リード線長 全てのSPDは協調することが望ましい(7.5.7参照)。一
− 電圧防護レベルの影響 般に,SPDは,制限した防護距離をもつため,振動を考慮す
− 雷保護ゾーン(LPZ)の概念 る必要がある。
一般に,設備に誘導する電圧は,無視してもよい(7.4.3
参照)。
SPDの接続リード線は可能な限り短くする。
雷保護ゾーン(LPZ)の概念を用いる場合,SPDはゾー
ンの境界に設置することが望ましい。
図7−SPDの適用のためのフローチャート
SPDの適用例を附属書Gに示す。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 34] ―――――

           32
C 5381-12 : 2021 (IEC 61643-12 : 2020)
実際のSPDの設置例を附属書Lに示す。

7.2 SPDの試験クラスに応じた設置場所の考慮(図7の試験クラスの選定)

  引込口に侵入するストレスなどのリスク評価(箇条4参照)の結果によって,クラスI試験又はクラス
II試験に適合したSPDを用いてもよい。SPDの設置場所よりも負荷側に設置した機器(例えば,計器,端
子台,保護器,開閉器など)へ流れるサージ電流を減らすため,SPDは,電気設備の原点に可能な限り近
接した場所へ設置する。雷サージを含む電気的ストレスを考慮することは,正しいSPDを選定するときの
重要な要素である。設備内で発生する開閉サージによる過電圧,又は電話回線,インターネット回線若し
くはその他の建築物等への引込線などから侵入するその他の過電圧に対して,SPDは,このような脅威の
原点に可能な限り近接した場所へ設置することが望ましい。LPSがある建築物等に対する追加の情報は,
JIS Z 9290規格群で確認が可能である。クラスII試験及びクラスIII試験に適合したSPDは,被保護機器
に近接して設置することにも適している。

7.3 SPDの防護モード及びSPDの接続(図7の必要な防護モードの決定)

  被保護機器が,十分なインパルス耐電圧をもつ,又は引込口の主分電盤に近接する場合,SPDは,設備
の引込口に可能な限り近接して設置することが望ましく,この場合,SPDは一つでもよい。このSPDは,
設備の引込口における十分なサージ耐量をもつことが望ましい。図L.1図L.5に,異なる電源システム
に対する設備の引込口に設置するSPDの代表的な接続例を示す。また,図L.5は,TN-C-S系統の特別な
場合を示す。
設備の引込口又はその近傍に設置するSPDは,少なくとも次に示す箇所に接続する。
a) 電気設備の原点又はその近傍で,中性線と接地(PE)との間に直接接続がある場合,又は中性線がな
い場合,各充電相と主接地端子又は主保護導体との間でいずれか配線が短くなる方
注記1 IT系統における,中性線と接地(PE)とを接続するインピーダンスは,接続とはみなして
いない。
b) 電気設備の原点又はその近傍で,中性線と接地(PE)との間に直接接続がない場合,次のいずれかと
する。
− 接続タイプ1(CT1) 各充電相と主接地端子又は主保護導体との間でいずれか配線が短くなる方,
及び中性線と主接地端子又は主保護導体との間でいずれか配線が短くなる方(図8参照)
− 接続タイプ2(CT2) 各充電相と中性線との間,及び中性線と主接地端子又は主保護導体との間で
いずれか配線が短くなる方(図9参照)
注記2 充電相を接地している場合,この細分箇条では,中性線と同等とみなしている。

――――― [JIS C 5381-12 pdf 35] ―――――

次のページ PDF 36

JIS C 5381-12:2021の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 61643-12:2020(IDT)

JIS C 5381-12:2021の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5381-12:2021の関連規格と引用規格一覧