JIS C 5948:2017 光伝送用半導体レーザモジュールの信頼性評価方法 | ページ 4

14
C 5948 : 2017
命が短くなる潜在的な損傷が発生する。半導体レーザ及びモニタ用フォトダイオードの静電破壊損傷感度
は,適切な予防措置を講じることで損傷が避けられるような値に設定しなければならない。
半導体レーザモジュールに対する最小限の推奨試験は,5個の半導体レーザ及び5個のモニタ用フォト
ダイオードをウェーハ単位でJIS C 61340-3-1に規定する“人体モデル”試験に供することである。ただし,
合格−不合格だけを決定する試験条件を1回だけ適用することではなく,電圧を徐々に増大し故障が発生
するしきい値を決定することが望ましい。
故障は,次の項目の特性変化として定義する。
− フォトダイオード暗電流又はレーザしきい値電流
− スロープ効率
− 順方向電圧
− 逆方向漏れ電流又は光出力スペクトル
判定基準の例を表JA.3に示す。
A.10 残留ガス分析(表1及び表2の試験No.7)
パッケージ内の水分量が多いために半導体レーザモジュールに信頼性問題が生じることがあるが,これ
らは,表1及び表2に規定する試験では検出が難しい。半導体レーザモジュールのパッケージ内がその動
作寿命全体にわたり乾燥した不活性雰囲気であることを実証するには,気密性試験及び残留ガス分析が必
要である。高温寿命試験だけでは,このパッケージ内の水分量が高いことに関連する信頼性問題は検出で
きない。A.1,A.2,表1及び表2の試験No.7を参照。
注記 MIL-STD-883,方法1018の残留ガス分析用プリベーク温度は,100 ℃である。これは,大半
のオプトエレクトロニクス構成部品の保存温度Tstg maxよりも高い。したがって,残留ガス分析
の背景レベルが一定にとど(留)まるまで,より低いプリベーク温度であるTc=Tstg maxで長期
間ベーキングを行うことを推奨する。これによって,この背景レベルは除去できる。

――――― [JIS C 5948 pdf 16] ―――――

                                                                                             15
C 5948 : 2017
附属書JA
(規定)
半導体レーザ及び半導体レーザモジュール故障メカニズム
この附属書は,半導体レーザ及び半導体レーザモジュール故障メカニズムについて規定する。
注記 この附属書は,IEC/TR 62572-2の箇条4箇条7を翻訳したものである。
JA.1 概要
公表されている半導体レーザの信頼性データ(及び半導体レーザ製造業者からのデータ)の多くは,サ
ブマウント又は特殊ヘッダに接着されている半導体レーザチップの寿命試験からのものである。その結果
によると,通常,しきい値又は動作電流が高くなると,最終的には故障となる。しかし,その他のレーザ
特性も劣化するので,寿命試験中,例えば,光出力スペクトルなどを監視するのがよい。
光ファイバ送信システムに使用されている実際の半導体レーザ送信機には,故障しやすい他の重要な単
体部品及び構成部品が幾つか含まれている。例えば,光ファイバと半導体レーザチップとのアライメント
不安定性によって生じる光ファイバ出力パワーの減少は,半導体レーザモジュールの代表的な故障メカニ
ズムである。レセプタクルパッケージからの出力の安定性に関する情報は少ない。
代表的な半導体レーザモジュール全体の概略断面図を,図JA.1に示す。この図では,半導体レーザチッ
プは光ファイバピッグテール付きのデュアルインラインパッケージ内のサブマウントに取り付けられてい
る。サブマウントの温度は,サーミスタが温度センサの役割を果たす電子冷却素子を使って制御すること
が多い。高ビットレート光ファイバシステム用の分布帰還形レーザは,光アイソレータを内蔵し,反射光
パワーが半導体レーザの動作に悪影響を与えないようにしている。機能制御用集積回路を内蔵した最新半
導体レーザモジュールも,利用されるようになった。
図JA.1−代表的な半導体レーザモジュールの断面図

――――― [JIS C 5948 pdf 17] ―――――

16
C 5948 : 2017
JA.2 半導体レーザ及び半導体レーザモジュールに影響を及ぼす主な故障機構の説明
JA.2.1 半導体レーザ
二つの代表的なリッジ導波形レーザ及びInGaAsP/InP埋込み形ヘテロ構造レーザの断面図を,図JA.2に
示す。半導体材料中の材料欠陥,端面の劣化,p及びn両方に作製された金属電極,並びに放熱板へのボ
ンディングに関する広範な分野で故障メカニズムが確認されている。これらの故障メカニズムを次に示す。
a) 代表的なリッジ導波形レーザの断面図
b) 代表的な埋込み形ヘテロ構造レーザの断面図
図JA.2−代表的な半導体レーザの断面図(ジャンクションアップダイボンディング)
a) 材料の欠陥増大による劣化 初期の半導体レーザの中で急激に故障するものに共通する原因は,暗線
欠陥(DLD: Dark Line Defects)及び暗点欠陥(DSD: Dark Spot Defects)の成長であった。転位網によ
って,強力な非発光再結合領域が局所化され,その結果,しきい値電流が増大したり,光出力が完全
に失われることもあった。このような欠陥は,カソードルミネセンス(CL)又は電子ビーム誘起電流
(EBIC)を使用している走査形電子顕微鏡で活性層を観察した場合,暗線又は暗点として観測できる。
この欠陥は初期のAlGaAs/GaAs(850 nm)系レーザでは特に問題であった。この場合,欠陥は基板か
ら成長層を通る欠陥と関連があった。転位網及び転位ループは非発光再結合誘起の欠陥運動で成長す
る。別のタイプの欠陥の増大は,半導体レーザ内の応力によって加速される。例えば,ボンディング

――――― [JIS C 5948 pdf 18] ―――――

                                                                                             17
C 5948 : 2017
が原因となる。二つのタイプの転位は成長方向で区別できる。<100>は非発光再結合,<110>は応
力が原因である。ここで<100>及び<110>は立方晶半導体の結晶方位を示す。電極材料に銅を使用
してなくても,銅サブマウントからの銅の拡散も,暗点欠陥アレイの成長に寄与していることが判明
している。発振波長が1 300 nm1 550 nmのInGaAsP/InP系レーザでは,InP基板と電極材料との間,
レーザチップとヒートシンクとの間,その他の熱膨張差による応力によって,転位網が成長する。DSD
及びDLDの模式図を,図JA.3に示す。
注記 図中のDLDは暗線欠陥,DSDは暗点欠陥を表す。
図JA.3−(001)面基板を垂直側から観察したDSD及びDLDの模式図
ひずみ量子井戸レーザには量子井戸層に大きなせん断応力が存在する。量子井戸層の合計膜厚が臨
界膜厚以上の場合,応力によって転位が成長する。
暗線欠陥及び暗点欠陥による急激な故障は,低欠陥密度基板の使用,並びに大幅に改善されたエピ
タキシャル材料の応力の少ない成長及び構造によって,ほぼなくなってきている。厳格なバーンイン
及びスクリーニングは,この点について問題のある一つ一つの半導体レーザを取り除く上で効果があ
る。材料の問題に起因する急激な故障はほぼなくなったが,一般に,半導体レーザは通常の動作条件
の下で長期にわたり徐々に劣化し,しきい値電流の立上がりが遅くなったり,効率が悪くなったりす
る。劣化の生じ方は半導体レーザの構造によって決まり,半導体レーザの寿命は結晶成長の品質及び
バッチ間の処理変動に依存することが大きい。
埋込み形へテロ構造レーザでは,ブロッキング層の成長段階において空気に表面がさらされる活性
層の側壁に沿って,欠陥が増大していく傾向がある。これらの欠陥は,非発光再結合を増大させるた
め,しきい値電流は増加するが,ある一定の供給電流の下では,一般にスロープ効率は不変である。
劣化は2段階で起こることが報告されている。飽和する急激な第1段階及びその後の速度がはるかに
遅い長期の劣化である。短期間の高い温度及び電流応力は,バーンインとして適用され,第2段階の
劣化を飽和させる。したがって,使用者が観測するのは,しきい値電流又は動作電流の長期にわたる
緩やかな増加である。
リッジ導波形レーザの場合,プロセス時に活性層をエッチングしないので,再成長のときに側壁表
面を空気にさらさないで済む。したがって,一般にリッジ導波形レーザでは,埋込み形ヘテロ構造レ
ーザに見られるような2段階劣化は観測されず,速度の遅い緩やかな劣化だけを示す傾向がある。
しきい値電流が徐々に長期にわたり増加する原因は,第1段階が飽和した後でも続行し,明確には
判明していないものの,非発光再結合が増加する活性層領域内に点欠陥が蓄積又は発生することに関
連があると思われている。埋込み形へテロ構造レーザでしきい値電流が長い期間で徐々に増大するの

――――― [JIS C 5948 pdf 19] ―――――

18
C 5948 : 2017
は,活性層の側面にできる欠陥が増加することが主な原因である。
b) ブロッキング層でのリーク 埋込み形ヘテロ構造レーザのブロッキング層でのリーク電流が増加する
とき,しきい値電流が増加することが報告されている。しかし,ブロッキング層の劣化は一般的には
問題にならない。
c) 端面の劣化 半導体レーザ端面は瞬間的な大電流による光出力増大によって決定的な光学損傷
(COD)を受けやすく,僅かな過渡的損傷でもAlGaAs/GaAs系レーザでは劣化率が増加し,その結果,
半導体レーザの寿命が短くなることが判明している。一般に,AlGaAs/GaAs系レーザよりも
InGaAsP/InP系レーザの方が端面損傷を若干受けにくい。あらゆる種類の半導体レーザにおいて,そ
の端面は組立時の取扱中に損傷を受けることがあり得る。
端面の酸化は,しきい値電流を増加させ,初期のAlGaAs/GaAs系レーザ(850 nm)では問題である
ことが観測されたが,Al2O3などの被膜を使うことによって大幅に抑制された。
InGaAsP/InP系レーザは,正常な動作ではこの問題に対してはるかに耐性があり,一般に,端面の
劣化は重大でない。
半導体レーザモジュールのパッケージ内が汚染される場合,汚染物質(炭素,塩素,銅など)が端
面上の活性層境界線に沿って蓄積し,その結果,光出力が減少することになる。この端面汚染物質は
レーザ光を吸収し,この吸収が大きい場合には光学損傷に至る。例えば,エルビウムドープ光増幅器
の励起用に使用されるInGaAs/GaAs系レーザの端面についた炭化水素の吸収は大きい。
d) 半導体レーザの電極形成及びボンディング 初期のAlGaAs/GaAs系レーザに共通する故障原因は,半
導体レーザダイボンドにおけるIn/Auの合金が形成されてしまうことによる熱抵抗の増加にあった。
これは,金電極又は金めっきサブマウントとの接着にインジウムはんだを使用したためであった。こ
の問題は,金電極の厚さを慎重に制御すれば極力抑えられるが,レーザ動作を50 ℃を超える温度で
行う場合,このボンディング方法による半導体レーザの作製は,依然としてリスクがある。InGaAsP/InP
系レーザでは,このボンディングシステムによる半導体レーザの作製は,ほとんどみられなくなった
が,低応力はんだの使用が欠かせないAlGaAs/GaAs系レーザでは必要になることがよくある。
電極からの金又は銅マウントを含め,活性層への金属の拡散による半導体レーザの故障はよくみら
れる。したがって,半導体レーザ及びサブマウントの両方に有効なバリア金属が不可欠である。例え
ば,半導体レーザのp側電極形成におけるバリア金属,Si基板,セラミックなどで形成されたサブマ
ウントにおけるバリア金属にはTi/Pt/Auが不可欠である。
ホイスカ(ひげ状金属)の成長による短絡が原因で半導体レーザが突然故障することが観測されて
いるが,このような故障は適切なはんだに変えることで解消できる。InGaAsP/InP系レーザでは,
AuSn(80:20)のような高融点はんだが信頼できるはんだ材である。
e) 電気サージ及び静電気放電 取扱中又は測定中に劣化したほとんどの半導体レーザは,電気サージ又
は静電気放電の影響を受けている。半導体レーザの中で最も弱い部分が,電気サージ又は静電気放電
で破壊される。電気サージ及び静電気放電でダメージが加えられた半導体レーザは,取扱中又は測定
中に故障が観察されない場合でも,長い期間の使用で大きな劣化率を示す傾向にある。電気サージ及
び静電気放電に対する耐性が,使用中に徐々に低下している。順方向の電気サージでは,GaAlAs/GaAs
系レーザなどの短波長帯レーザでは光学損傷が起こる。また,InGaAsP/InP系レーザなどの長波長帯
レーザでは,金属と半導体との界面で半導体の融解が起こる。逆方向の電気サージでは,通常pn接合
の破壊が起こる。
f) 半導体レーザ特性の変化 半導体レーザの緩慢劣化は,ACC(Automatic Current Control,自動電流制

――――― [JIS C 5948 pdf 20] ―――――

次のページ PDF 21

JIS C 5948:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • IEC 62572-3:2016(MOD)

JIS C 5948:2017の国際規格 ICS 分類一覧

JIS C 5948:2017の関連規格と引用規格一覧