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御)条件では光出力低下,APC(Automatic Power Control,自動パワー制御)条件(モニタ光出力一定
条件)では駆動電流増加を引き起こし,その他にも,しきい値電流の上昇,スロープ効率の低下,劣
化したところでの発熱などによって,半導体レーザの様々な特性変化を引き起こす。これらの変化は,
発振波長の変化,発振不安定性,雑音特性の悪化などである。特性変化の大きさは,半導体レーザの
材料に大きく依存する。
発振波長の変化は,高密度波長分割多重(DWDM)の光通信システムにおいて,重大な意味をもつ。
この波長変化は,半導体レーザ共振器内の屈折率変化,バンドフィリング効果及びジュール発熱の影
響である。屈折率の減少及びバンドフィリング効果は発振波長を短くする。ジュール発熱は,屈折率
の増大及びバンドギャップの縮小によって,発振波長を長くする。屈折率の減少及びバンドフィリン
グ効果は,活性層への注入キャリア密度の増加で起こる。劣化における発振波長の変化は,これらの
要因が支配的である。ファブリペロレーザでは,バンドフィリング効果及びバンドギャップ縮小効果
が最も有力であり,分布帰還形レーザでは,回折格子の有効間隔を決める屈折率変化が最も有力であ
る。劣化において,ジュール発熱の増加が最も有力である場合,発振波長は長くなる。この場合は,
APC条件で光出力を維持するために駆動電流が高くなるのでしばしば観察される。ジュール発熱の影
響を無視できる場合,劣化した場合の発振波長は短くなる。材料の見地から,InGaAsP/InP系レーザ
の方が,AlGaAs/GaAs系レーザと比較して,劣化による特性の変化は,より安定な傾向にある。その
理由は,レーザ共振器の劣化は,暗点欠陥,暗線欠陥などの発生による光の吸収の増加であるが,
InGaAsP及びInP材料のそれらは非常にゆっくりと発生するからである。
JA.2.2 モニタ用フォトダイオード
数種類のフォトダイオードが,半導体レーザの後端面出力モニタとして使用されている。波長850 nm
領域ではシリコンpinフォトダイオードが使われており,長波長領域では,ゲルマニウムフォトダイオー
ド又はIII−V族系pinフォトダイオードが利用できる。利用されるInGaAsP/InP系フォトダイオードの主
な種類は,メサ構造又はプレーナ構造の2種類である。
フォトダイオードの故障の主な原因は,暗(漏れ)電流の増加である。メサ構造は,表面側のp-n接合
が露出しており,特に表面の漏れ電流増加の影響を受けやすい。パッシベーション酸化膜を作製すること
によって,メサ形pinフォトダイオードの安定性は改善されたが,最高の信頼性はプレーナ形デバイスで
達成されている。
JA.2.3 電子冷却素子及びサーミスタ
電子冷却素子は,幾つかのp及びnドープのビスマス・テルル電子冷却素子で構成されており,この電
子冷却素子は,セラミックプレートで挟まれた金属電極にはんだ付けされている。この電子冷却素子は,
比較的破損しやすく,パッケージ内への取付け及び他のパッケージ材料との熱不整合によって生じる機械
応力に影響されやすい。はんだ材又は電極材料から電子冷却素子へ金属イオンが拡散する場合,冷却効率
が悪くなり,はんだ材内部の合金反応によって接合部が弱くなって,電子冷却素子にクラックが生じる。
金属電極とはんだ材との反応によって,サーミスタ抵抗が変化する。意図したよりも高いサブマウント
温度に制御されると,レーザ駆動電流は増加する。
JA.2.4 パッケージング及び光ファイバ
光ファイバピッグテールからの光出力を一定に保つには,光ファイバの先端と半導体レーザ端面との間
の厳しい位置調整が必要である。半導体レーザがシングルモード光ファイバに結合されている場合は,許
容値内に調整する。
光ファイバ調整が不安定で光ファイバ光出力の低下が生じる場合,半導体レーザモジュール寿命試験に
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おいて,極めて早期に故障が起きてしまうことが観測されている。温度サイクル試験においても,光ファ
イバ出力の低下による故障が観測されている。温度サイクル試験では,光ファイバピッグテールの収縮に
よる光ファイバの破断性も明らかになる。金属電極の腐食などの問題を回避するためには,他の密閉パッ
ケージと同様に,パッケージ内を乾燥不活性ガス雰囲気にする必要がある。したがって,密閉性及びガス
分析の試験が必要である。汚染,例えば,クリーニングが不適切であることから起こる溶剤残留物からの
残留塩素がある場合,腐食の問題が悪化する。
JA.3 試験の手引
JA.3.1 寿命試験の概要
半導体レーザモジュールの長期安定性を実証するには,加速寿命試験が必要である。部品の信頼性デー
タを適切な期間の試験によって得る方法として,熱加速試験が最も広く使用されており,これは半導体レ
ーザ,フォトダイオードなどの単体にも有効である。
熱加速の場合,寿命と温度との関係はアレニウス関係式(JA.1)によって導き出される。
exp[(Ea / k)(/1 T1
t1 / t2 /1T2 ) ] (JA.1)
ここに, t1 : 温度条件1の場合の寿命
t2 : 温度条件2の場合の寿命
T1 : 温度条件1の場合の絶対温度(K)
T2 : 温度条件2の場合の絶対温度(K)
k : ボルツマン定数(eV/K)
Ea : 故障メカニズムに依存する活性化エネルギー(eV)
半導体レーザモジュールとしての信頼性の推定値を求めるには,半導体レーザだけの寿命試験では十分
ではない。市場故障を発生させ得る多種の故障メカニズムがあり,これらがパッケージングと関係してい
るため,半導体レーザモジュール完成品での寿命試験及び環境試験が不可欠である。サブマウント上の半
導体レーザ,モニタ用フォトダイオード,その他の内蔵部品などの各寿命試験結果から,これら能動デバ
イス自身の信頼性確認に必要なデータが得られる。複合部品を扱う場合でも,パッケージングに使う材料
からの制限なしに,この方法でより広い温度範囲にわたり寿命試験を実施できる。このような寿命試験を
部品製造業者が実施するのは容易であるが,システム供給者はそれとは独立に半導体レーザモジュール完
成品での試験を実施することが望ましい(例えば,試験当たりの試料数は10以上,内容は,表2の試験
No.2,No.3及び/又はNo.5を参照する。)。
有効な結果を得るには,全ての寿命試験用部品が,バーンイン,スクリーニング試験(個別仕様書に該
当する場合はそれを参照する。)などを含めて適用する標準的生産プロセスから作製されたものでなければ
ならない。
JA.3.2 試験の規模
信頼性試験の実施規模は,システムの仕様及びシステムオペレータの使い方によって,また,特に故障
率(又は寿命)及び要求される信頼水準によって決まる。試料数は,総故障率(摩耗+偶発故障率)がシ
ステムの構築のために十分な精度をもって決定できる量のものを使用するのがよい。総故障率が低く,信
頼水準が高いことを実証するには,何百という部品についての積算コンポーネントアワーが必要となる
(JA.5参照)。市場データ,ウェーハ検査及びバーンインの結果を寿命試験結果に加えれば信頼度を高め
ることができる。これらの予測が有効であることを更に確認するには,少ない試料数でもよいので定期的
試験が必要である。
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JA.3.3 構成部品のスクリーニング(バーンインを含む。)
スクリーニング試験方法は,半導体レーザモジュール製造業者が各自の技術内容に見合うように設計す
ることが望ましい。他の製造業者が実施するものと類似のアプローチをとることは比較のためにはよいが,
実際のスクリーニング目標を達成するには効果がないことがあり得る。特に技術が未成熟であり,供給者
間でもそれが大幅に異なるファイバオプティクス構成部品にはこれが当てはまる。
製造業者が構成部品及びプロセスの安定性を実証できる場合は,スクリーニング手順を改定してもよい。
JA.3.3.1 半導体レーザ
半導体レーザがサブマウント上又は光ファイバのない適切なサブモジュール中にある場合,加えられる
ストレスは,温度,及び光パワー又は駆動電流の組合せとなる。最も広く使用されているスクリーニング
手順は,いわゆるAPC(Automatic Power Control,自動パワー制御)バーンインである。この場合,光パ
ワーはフォトダイオード及び帰還回路によって一定に保たれている。別の手順にはACC(Automatic Current
Control,自動電流制御)バーンインがある。この場合は高電流ながら高温のためレーザ発振することがで
きないようになっている。短いACC試験はデバイスの寿命を短くすることがないため,スクリーニング
には理想的である。
最新の半導体レーザ技術の多くの場合,2ステップのバーンインを使用し,その間に半導体レーザの劣
化を測定することが望ましい。表JA.1を参照。
表JA.1−半導体レーザのスクリーニング及びバーンイン条件の例
条件 ステップ1 a) CC ステップ2 b) PC
温度 最低100 ℃c) Top max
時間d) 96 h 96 h
故障判定基準e) ΔIth/Itho>x % y %<ΔIth/Itho注a) ステップ1のレーザバーンインは,初期劣化の飽和を達成するのに十分に厳しいものが望ましい。
b) ステップ2は最終パッケージ(モジュール)における半導体レーザについて実施されることがある。
しきい値電流以外の特性も監視できるが,ステップ2の劣化速度がステップ1よりも大幅に低く,結
果としての特性が個別仕様書の要求事項を満足することが重要である。
c) 一部の埋込み形ヘテロ構造(BH)レーザの場合,比較的低温動作条件の下で観測されるメカニズムと
比較したとき,高温動作条件では異なる劣化メカニズムとなることがある。したがって,ステップ1
のバーンイン温度は,上記のBHレーザについては,100 ℃の推奨値を下回るように設定してもよい。
d) 継続時間は温度に依存する。
e) 必要な故障判定基準x %及びy %は,特定の半導体レーザ技術の状況,特に初期に飽和する劣化によ
って決まってくる。
ACC条件の例としては,96時間の100 ℃,150 mA,又は24時間の125 ℃,100 mAが挙げられる。広
く使用されているAPC条件は,70 ℃にて最大定格出力で動作するものである。
JA.3.3.2 モニタ用フォトダイオード
モニタ用フォトダイオードは半導体レーザモジュール中にあり,外部フィードバックによって光パワー
を制御するためにある。速度及び感度において高性能が要求されていないため,通常,800 nm900 nm用
のSi及び1 300 nm1 550 nm用のInGaAsによる大面積pinダイオードである。
pinフォトダイオードの標準バーンインは,固定逆バイアス(例えば,Vr=規定降伏電圧の0.8倍又は降
伏点におけるIr)かつ非常な高温(125 ℃200 ℃)で実行するいわゆる高温逆バイアスである。再度強
調するが,特に製造時に生じたと思われる表面の汚染の影響を受けやすいデバイスでは特性の安定性が重
要である。
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モニタ用フォトダイオードのスクリーニング条件は,表JA.2を参照。
表JA.2−モ二タ用フォトダイオードのスクリーニング条件の例
バイアス条件 Vr=降伏電圧(規定)の0.8倍
温度 Ts=125 ℃200 ℃の範囲
時間 48 h96 h
故障判定基準 ΔIr/Iro>100 %
JA.3.3.3 半導体レーザモジュールのその他の構成部品
その他の構成部品も十分な信頼性をもたなければならない。
組立前にスクリーニングができるその他の部品は次のとおりである。
a) 電子冷却素子 : パワーサイクリング
b) 能動部品 : 高温,逆バイアス
c) 光部品 : 挿入損の再現性
特に,電子冷却素子は,短期信頼性に与える影響が明確でないため,重要である。
JA.4 試験時の故障判定基準に関する指針
半導体レーザ,フォトダイオード及び半導体レーザモジュールの試験中に適用する故障判定基準は,個
別仕様書に指定することが望ましい。この故障判定基準は,システム供給者と半導体レーザモジュール製
造業者との間で合意するアプリケーションによって決まるものであり,指定された特性及び故障判定基準
として定義されているその特性値の両方から決まる。同じように,測定方法及び測定条件もアプリケーシ
ョン及びデバイス仕様書によって決まる。
半導体レーザモジュール中又はサブマウント上のデバイスについて実施できる大半の耐久又は環境試験
は,完全な故障ではなく特性の変化をもたらす。したがって,個別仕様書で指定された故障が発生する時
点を決定するために特性の変化,例えば,レーザしきい値電流,発振波長又は光ファイバ出力パワーを外
挿推定しなければならない。例外としては,個々のデバイスの高温寿命試験中に暗電流仕様限界の故障が
直ちに得られるフォトダイオードがある。
寿命試験中に頻繁に測定し(必要であれば,推定によって)寿命を決定できる特性を,表JA.3に示す。
測定技術が寿命試験データを損なう特性はこれを省略してもよい。
表JA.4は推奨する,追加の故障判定基準である。
表JA.5は推奨する,温度サイクル試験及び高温保存試験後の半導体レーザモジュールの故障判定基準で
ある。特定のシステム要求事項に適合するために必要であることを示すことができれば,表JA.3,表JA.4
及び表JA.5に示すこれらの特性及び値は変更を認められる。その故障判定基準は,個別仕様書に記載する
のがよい。
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表JA.3−寿命試験の故障判定基準の例
デバイス 特性 故障判定基準 測定条件
半導体レーザ しきい電流又は動作電流 50 %増加a)又は10 mA増加 25 ℃又は寿命試験温度
ただし,Ith<20 mAのとき
スロープ効率 10 %変化a) 25 ℃又は寿命試験温度
順電圧 10 %変化a) 25 ℃又は寿命試験温度
光−電流曲線のキンク Top min,25 ℃,Top max
標準動作出力の1.2倍の範囲でキン
クフリー(線形性変化10 %以下)a)
波長 個別仕様書及びアプリケーション個別仕様書参照
を参照
フォトダイオード 暗電流 USL又は10 nA増加a) 25 ℃
導体レーザモジュ しきい電流又は動作電流 50 %増加a)又は10 mA増加 25 ℃又は寿命試験温度
ール ただし,Ith<20 mA
光ファイバ出力パワー 10 %変化 寿命試験温度
Imon初期値
光−電流曲線のキンクb) Top min,25 ℃,Top max
標準動作出力の1.2倍の範囲でキン
クフリー(線形性変化10 %以下)
波長 個別仕様書及び適用を参照 個別仕様書参照
トラッキング比(Imon/Pfibre)T op min−T op max
フォトダイオード暗電流 USL又は10 nA増加 25 ℃
サーミスタ抵抗 5 %変化 25 ℃又はサブマウントの
寿命試験温度Ts
電子冷却素子電流 10 %変化 寿命試験中ΔT一定
電子冷却素子電圧 10 %変化
注記1 USL : 上限規格値,LSL : 下限規格値
注記2 追加の特性は,寿命試験の開始及び終了時並びに長期の寿命試験中に定期的に測定する。ただし,これら
の測定が寿命試験データを損なわない場合に限る。これらの測定のうち,例えば,光−電流(L−I),電流
−電圧(I−V)など一部の測定は直ちに実施できるが,比較的時間がかかるため全ての寿命試験及び試料
(個別仕様書に指定されている)について実施できない測定もある。表JA.4に特性例を示す。特定のシス
テムアプリケーション(コヒーレント,線形システムなど)に必要なその他の特性としては,光ノイズ,
光出力直線性,チャープ幅,スペクトル幅などがある。ここに示すリストは,完全なものではない。
注記3 反射光パワーの影響を受けやすい測定(例えば,スペクトル性能及びノイズ)はシステムアプリケーショ
ンで実現される(個別仕様書に指定されている)反射減衰量をもって終端された半導体レーザモジュール
で実施することが望ましい。
注a) 個別仕様書における試験前及び試験後の値の変化。
b) 図JA.4を参照。
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JIS C 5948:2017の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 62572-3:2016(MOD)
JIS C 5948:2017の国際規格 ICS 分類一覧
- 31 : エレクトロニクス > 31.260 : オプトエレクトロニクス.レーザー設備
JIS C 5948:2017の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC60068-2-1:2010
- 環境試験方法―電気・電子―第2-1部:低温(耐寒性)試験方法(試験記号:A)
- JISC60068-2-14:2011
- 環境試験方法―電気・電子―第2-14部:温度変化試験方法(試験記号:N)
- JISC60068-2-17:2001
- 環境試験方法―電気・電子―封止(気密性)試験方法
- JISC60068-2-2:2010
- 環境試験方法―電気・電子―第2-2部:高温(耐熱性)試験方法(試験記号:B)
- JISC60068-2-27:2011
- 環境試験方法―電気・電子―第2-27部:衝撃試験方法(試験記号:Ea)
- JISC60068-2-6:2010
- 環境試験方法―電気・電子―第2-6部:正弦波振動試験方法(試験記号:Fc)
- JISC61340-3-1:2010
- 静電気―第3-1部:静電気の影響をシミュレーションする方法―人体モデル(HBM)の静電気放電試験波形