この規格ページの目次
9
C 60364-4-44 : 2022
一般に,開閉過電圧は大気現象による過渡過電圧よりも振幅が小さいので,大気現象による過渡過電圧
に対する保護に係る要求事項は,通常,開閉過電圧への保護もカバーしている。
大気現象による妨害に対する過渡過電圧保護を設置していない場合は,開閉過電圧に対する保護を施す
ことが必要となる場合がある。
注記2 開閉による過電圧は長く持続し,大気現象の過渡過電圧よりも大きなエネルギーを含むことが
ある。443.4参照。
大気現象の過渡過電圧の特性は,次の要因に起因する。
− 配電系統の種類(地中又は架空)
− 設備の源点の電源側において,少なくとも一つのSPDの存在の有無
− 電力系統の電圧区分
注記3 大気現象による過渡過電圧に関しては,接地系統と非接地系統との間の区別はしない。
過渡過電圧保護は,SPDを設置することによって行う。
SPDの選定及び施工は,IEC 60364-5-53:2001+AMD1:2002+AMD2:2015の箇条534に従わなければな
らない。
配電線上にSPDが必要な場合,通信線などその他の線に追加のSPDを設置することも望ましい。
データ通信システムによって伝ぱ(播)する過渡過電圧に対する保護の要求事項は,箇条443には含ま
ない。JIS C 5381-22参照。
箇条443は,過電圧によって生じる結果が影響を及ぼす次の場所の設備には適用しない。
a) 爆発の危険性がある建物
b) 損傷が環境にも影響する(例えば,化学物質又は放射性物質の放出)可能性のある建物
443.2 (空白)
この細分箇条は,将来のために設けてある。
443.3 用語及び定義
大気現象又は開閉による過渡過電圧に対する保護で用いる主な用語及び定義は,次による。
443.3.1
都会的環境(urban environment)
建物の密集度が高い地域又は高層ビルによって人口密度の高い地域
注釈1 “町の中心部”は,都会的環境の一例である。
443.3.2
郊外的環境(suburban environment)
建物の密集度が中程度の地域
注釈1 “町の郊外”は郊外的環境の一例である。
――――― [JIS C 60364 pdf 11] ―――――
10
C 60364-4-44 : 2022
443.3.3
農村的環境(rural environment)
建物の密集度が低い地域
注釈1 “田舎”は農村的環境の一例である。
443.3.4
サージ防護デバイス,SPD(surge protective device)
サージ電圧を制限し,サージ電流を分流することを目的とした,1個以上の非線形素子を内蔵している
デバイス
注釈1 SPDは,適切な接続手段をもつ完成品である。
(出典 : JIS C 5381-11:2014 用語及び定義3.1.1)
443.3.5
計算によるリスクレベル,CRL(Calculated Risk level)
過渡過電圧保護の必要性を評価するために使用するリスクの計算値
443.3.6
定格インパルス電圧,UW(rated impulse voltage)
その機器の絶縁の過渡過電圧に対する耐電圧性能を表す,製造業者が機器又はその部分に定めたインパ
ルス耐電圧値
(出典 : JIS C 60664-1:2009 用語及び定義の3.9.2を修正し,“UW”を加えた。)
443.4 過電圧抑制
過電圧によって生じる結果が次の事項に影響を与える場合,過渡過電圧保護を施さなければならない。
a) 人命。例えば,安全設備,医療施設
b) 公共サービス及び文化財。例えば,公共サービスの損失,ITセンター,博物館
c) 商業又は産業活動。例えば,ホテル,銀行,工場,マーケット,農場
その他の場合は,過渡過電圧に対する保護が必要か否かを決定するために,443.5に従ったリスクアセス
メントを実施しなければならない。リスクアセスメントを実施しない場合は,電気設備は過渡過電圧保護
を施さなければならない。
ただし,被保護電気設備の全経済的価値が,設備の源点に設置したSPDの経済的価値の5倍未満である
ような戸建住宅に対しては,過渡過電圧保護は必要ない。
注記1 対応国際規格の注記1は,我が国には該当しないため,削除した。
設備の過電圧カテゴリに従った値を超える開閉過電圧又は妨害電圧を生じるような機器の場合は,開閉
過電圧保護を考慮することが望ましい。例えば,低圧発電機で設備に電源供給する場合,又は誘導性若し
くは容量性負荷(例えば,電動機,変圧器,コンデンサバンクなど),蓄電ユニット又は大電流負荷を設置
する場合がある。
注記2 SPDを架空線上に取り付けている場合の過電圧抑制の指針を,附属書Bに示す。
独立した変圧器を経由して高圧配電網から電力供給している低圧設備(すなわち,産業用)には,雷に
よる過電圧に対する追加保護手段を変圧器の高圧側に施すことが望ましい。
――――― [JIS C 60364 pdf 12] ―――――
11
C 60364-4-44 : 2022
443.5 リスクアセスメントの手法
注記1 雷及び大気現象によるサージに対する建物及びその電気設備の保護に関しては,JIS Z 9290規
格群が適用される。
大気現象による過渡過電圧に対する保護が必要か否かを決定するために,計算によるリスクレベル(CRL)
を使用する。CRLは,次の式で求める。
CRL=fenv/(LP×Ng)
ここで,
− fenvは,環境に関する要素であり,fenvの値は,表443.1に従って計算しなければならない。
表443.1−fenvの計算
環境 fenv
農村的環境及び郊外的環境 85×F
都会的環境 850×F
係数Fの値は,全ての設備に対して1とする。ただし,住宅については,係数Fの値を13の間で調
整してもよい。
注記2 住宅に関するFの値の選定に当たっては,住宅の構造,規模,収容人員などが考慮される。
− Ngは,電力線及び接続する建物の場所に関連する大地落雷密度(雷撃回数/km2·年)である。
注記3 IEC 62305-2:2010のA.1によると,年間雷雨日数25日は,落雷密度が2.5回/km2·年に
等しい。このことは,式Ng=0.1×Tdから導かれる。ここで,Tdは年間雷雨日数(ケラウ
ニックレベル)である。
− リスクアセスメント長LPは,次の式で示される。
LP=2LPAL+LPCL+0.4LPAH+0.2LPCH
ここで, LPAL : 低圧架空電線路の長さ(km)
LPCL : 低圧地中電線路の長さ(km)
LPAH : 高圧架空電線路の長さ(km)
LPCH : 高圧地中電線路の長さ(km)
全体の長さ(LPAL+LPCL+LPAH+LPCH)は,1 km又は送配電網に取り付けた最初の過電圧保護装置から,
設備の引込口までの距離のどちらか短い方に限定する。
配電網の長さが全体的に又は部分的に不明な場合,LPALは,全長の距離が1 kmに到達する残りの距離に
等しいと考えなければならない。
例として,地中電線路の距離だけが既知(例えば,100 m)の場合は,LPALは,900 mに等しいと考えな
ければならない。考慮が必要な長さを示す設備の説明図を図443.1に示す。
――――― [JIS C 60364 pdf 13] ―――――
12
C 60364-4-44 : 2022
記号説明
1 : 設備の源点
2 : 低圧·高圧の変圧器
3 : SPD
図443.1−考慮が必要な長さを示す設備の説明図
CRLが1 000以上の場合,大気現象による過渡過電圧に対する保護は必要ない。
CRLが1 000未満の場合,大気現象による過渡過電圧に対する保護が必要である。
注記4 CRLの計算例を,附属書Aに示す。
443.6 定格インパルス電圧(過電圧カテゴリ)の分類
443.6.1 定格インパルス電圧(過電圧カテゴリ)分類の目的
443.6は,機器の過電圧カテゴリについての情報を示す。
注記1 過電圧カテゴリは,絶縁協調の目的で電気設備の設置場所で定義し,定格インパルス電圧の機
器に関連する分類を規定する(IEC 60364-5-53:2001+AMD2:2015の表534.1参照)。
定格インパルス電圧は,低圧電気設備から直接電圧を印加する機器を過電圧カテゴリに分類するために
使用する。
公称電圧に従って選定した機器に対する定格インパルス電圧は,運転の継続性及び損傷の許容リスクに
関して,機器の有効性の様々なレベルを区別するために規定する。
JIS C 60664-1に従った機器のインパルス耐電圧だけに基づく固有の過電圧抑制では,十分でないことが
あるため,次の事項に注意する。
− 配電系統によって伝ぱ(播)する過渡過電圧は,多くの設備において,負荷側で著しく減衰すること
はない。分類した定格インパルス電圧に対応する機器の過渡過電圧保護によって,損傷の危険性を許
容レベルにまで低減し,設備全体の絶縁協調を達成する可能性がある。
− 架空線を含まない,完全に地中埋設した低圧系統によって電力供給する設備において,サージ電流及
び部分的な雷電流が,地中ケーブルを経由して流れる。
− 機器はしばしば二つの異なるサービス(例えば,電力線,データ線など)に接続する。このような種
類の機器で過電圧に関する多くの被害が発生している。
――――― [JIS C 60364 pdf 14] ―――――
13
C 60364-4-44 : 2022
システムにおいて最も敏感な被保護機器の定格インパルス電圧UW(JIS C 60664-1参照),又は機器の機
能の一時的喪失が重大な場合には,イミュニティレベル(JIS C 61000-4-5参照)を高くするように考慮す
る必要がある。
443.6.2 機器の定格インパルス電圧及び過電圧カテゴリ
次の点を考慮して機器の設置場所を選定し,絶縁協調を達成する。
a) 過電圧カテゴリIVに該当する定格インパルス電圧の機器は,設備の源点又はその近傍,例えば,主分
電盤の電源側での使用に適している。カテゴリIVの機器は,必要とする高い信頼性を提供する非常
に高いインパルス耐量があり,表443.2に示す値以上の定格インパルス電圧をもたなければならない。
注記1 このような機器の例としては,電力量計,一次側過電流保護器,リプル抑制ユニットなど
がある。
b) 過電圧カテゴリIIIに該当する定格インパルス電圧の機器は,高い利用性を備えていて,主分電盤自体
から負荷に至るまでの固定形設備に使用するものであり,表443.2に示す値以上の定格インパルス電
圧をもたなければならない。
注記2 このような機器の例としては,固定形設備の分電盤,遮断器,配線設備[電線,母線,接
続箱,開閉器及びコンセントを含む(IEC 60050-826:2004,定義の826-15-01参照)。],及
び工業用機器並びにその他の機器,例えば,固定形設備に常時接続している据置形電動機
がある。
c) 過電圧カテゴリIIに該当する定格インパルス電圧の機器は,電気使用機器に通常要求する利用性を備
えていて固定形設備に接続して使用するものであり,表443.2に示す値以上の定格インパルス電圧を
もたなければならない。
注記3 このような機器の例としては,家庭用電気器具及びこれに類する負荷がある。
d) 過電圧カテゴリIに該当する定格インパルス電圧の機器は,規定したレベルまで過渡過電圧を制限す
るために,機器の外側にSPDを設置した固定形設備内での使用にだけ適しており,表443.2に示す値
以上の定格インパルス電圧をもたなければならない。過電圧カテゴリIに対応する定格インパルス電
圧をもつ機器は,設備の源点又はその近傍に設置しないことが望ましい。
注記4 このような機器の例としては,コンピュータ,家電用電子製品などのような電子回路を含
む機器がある。
――――― [JIS C 60364 pdf 15] ―――――
次のページ PDF 16
JIS C 60364-4-44:2022の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 60364-4-44:2007(MOD)
- IEC 60364-4-44:2007/AMENDMENT 1:2015(MOD)
- IEC 60364-4-44:2007/AMENDMENT 2:2018(MOD)
JIS C 60364-4-44:2022の国際規格 ICS 分類一覧
- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.100 : 電磁両立性(EMC) > 33.100.20 : イミュニティ
- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.100 : 電磁両立性(EMC) > 33.100.10 : エミッション
JIS C 60364-4-44:2022の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC60364-4-41:2010
- 低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
- JISC60364-4-41:2022
- 低圧電気設備―第4-41部:安全保護―感電保護
- JISC60664-1:2009
- 低圧系統内機器の絶縁協調―第1部:基本原則,要求事項及び試験
- JISC61558-2-1:2012
- 変圧器,電源装置,リアクトル及びこれに類する装置の安全性―第2-1部:一般用の複巻変圧器及び複巻変圧器を組み込んだ電源装置の個別要求事項及び試験
- JISC61558-2-4:2012
- 入力電圧1 100V以下の変圧器,リアクトル,電源装置及びこれに類する装置の安全性―第2-4部:絶縁変圧器及び絶縁変圧器を組み込んだ電源装置の個別要求事項及び試験
- JISC61558-2-6:2012
- 入力電圧1 100V以下の変圧器,リアクトル,電源装置及びこれに類する装置の安全性―第2-6部:安全絶縁変圧器及び安全絶縁変圧器を組み込んだ電源装置の個別要求事項及び試験
- JISX5150-1:2021
- 汎用情報配線設備―第1部:一般要件
- JISZ9290-3:2019
- 雷保護―第3部:建築物等への物的損傷及び人命の危険
- JISZ9290-4:2016
- 雷保護―第4部:建築物等内の電気及び電子システム