JIS C 6122-10-5:2022 光増幅器―測定方法―第10-5部:マルチチャネルパラメータ―分布ラマン増幅器の利得及び雑音指数 | ページ 6

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C 6122-10-5 : 2022 (IEC 61290-10-5 : 2014)
注記 曲線は,それぞれ異なる合計励起パワーに対応する。
図JA.5−1 424 nm及び1 452 nmの二波長励起後方DRAを用いた場合の
SMFのオンオフ利得及び雑音指数
JA.3 分布ラマン増幅の用途
JA.3.1 一般情報
DRAは,EDFAのような希土類添加ファイバ増幅器に比較し,特有な利点が二つある。システムOSNR
改善及び任意かつ複数の伝送帯域でも平たんな利得が提供可能なことである。これらの利点の一方で,
DRAは大きな励起パワーが必要なために高コストになるという欠点があり,さらに,箇条7に記載する運
用上の問題もある。このため,DRAは,通常,十分な利点がある用途,又は他の実行可能な選択肢がない
用途にだけ利用することが望ましい。この箇条(JA.3)では,これらの用途を記載する。
JA.3.2 全ラマンシステム
DRA及び集中ラマン増幅器の両方を含んで構成し,ラマン増幅だけを用いて増幅を行うシステムを,全
ラマンシステムという。全ラマンシステムは,DRAによるOSNR改善という固有の恩恵を受けることに
加えて,ラマン増幅だけを用いることによって,EDFAに代表される一般的な技術による増幅が不可能又
は困難である波長範囲でも,増幅を行うことが可能である。
特に,LバンドでのEDFA技術では,Cバンドに比べて効率が大幅に落ちるが,全ラマンシステムは増
幅可能である。
非ゼロ分散シフト光ファイバ(NZDSF)を用いる場合は,Lバンドシステムでは,Cバンドシステムに
比べて長距離伝送が可能なので,全ラマンLバンドシステムは,特に超長距離(>1 500 km)光リンクに
適している。
全ラマン増幅システムの典型的な構成を,図JA.6に示す。ここには三つのラマン励起モジュールがあ
り,それぞれ,後方励起DRA,前方励起DRA,及びDCFを増幅媒体とする集中ラマン増幅に対応する。
典型的なシステムでは,そのような増幅構成は,80 kmごとに置き,約20 dBのネット利得が必要である。

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前方励起及び後方励起DRAを用いて約20 dBの利得を与えて,ネット利得が0になるようにDCFを励
起することによって,これを実現する(すなわち,オンオフラマン利得がDCFの挿入損失,平均約10 dB
をちょうど補償する。)。DCFは,(その有効コア断面積が小さいことによって)比較的高いラマン効率を
もっているので,比較的低い光パワーで励起可能である。
全ラマンシステムは,コストが比較的高いほか,現在及び将来の光ネットワークの必須部分である再構
成可能形光合分波装置(ROADM)をサポートするようにシステムを増強することも困難である。この理
由は二つある。
− 第一に,追加するROADMモジュールの挿入損失を補償するために,集中増幅機能を追加する必要が
ある。追加のラマン利得を得るための一つの方法は,DCFに送出する励起パワーを増大することであ
る。しかし,これによって,二重レイリー後方散乱を原因とする多重光路干渉(MPI)の増加につなが
る可能性がある(JA.4.3.6参照)。別の方法は,更に集中ラマン増幅器を追加して用いることだが,シ
ステム全体のコストが更に増加する。
− 第二に,ROADM機能によるシステムの再構成に起因する過渡現象は,特に前方励起DRAの場合,抑
制することが困難である。
これらの理由から,全ラマンシステムの用途は,主に超長距離の2点間(すなわち,再構成不可能な)
光リンクに制限される。
図JA.6−全ラマン増幅システムの一般的な構成
JA.3.3 ハイブリッドEDFAラマンシステム
JA.3.3.1 一般事項
EDFAベースのシステムは,今日運用されている最も一般的な光通信システムである。EDFA技術は,開
発が進んだ結果,成熟の域に達しており,ほとんどの一般的な用途に対しては,費用対効果も高く,効率
的な運用形態を構築可能である。しかし,要求仕様が厳しい幾つかの用途においては,EDFAを実現でき
る性能が十分でないため,システムのOSNRを改善するために,DRA,特に後方励起DRAが必要である。
EDFAベースのシステムにDRAを追加するコストは,EDFAとラマン励起モジュールとを集積し,全体
的なシステム設計を最適化することによって低減可能である。これは,リンクの全ての中継区間でDRAを
用いる長距離及び超長距離用途(JA.3.3.4を参照)において,特に有用である。
設計の統合及び最適化は,例えば,ラマン励起光源とEDFA励起光源とを同じきょう(筐)体内に搭載
することを含み,これによって,パッケージのコスト抑制及び外形寸法の縮小化が可能となる。
また,利得等化フィルタ(GFF)は,ラマン利得のスペクトル形状及びEDFAの利得スペクトル形状の

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両者を考慮して設計することが可能であり,これを用いることによって,EDFA及びラマン利得の利得等
化に対する要求を緩和している。さらに,恐らく必要なラマン励起光源の数も減少する。ラマンのプリア
ンプ機能によって,ハイブリッドモジュールの全体の雑音指数を大幅に増大することなく,EDFAの前に
GFFを置くことが可能となる。これによって,必要なEDFA励起光パワーが減少可能である。
以降の細分箇条では,ハイブリッドEDFAラマンシステムの応用について説明する。
JA.3.3.2 長距離無中継リンク
長距離(>150 km)無中継リンクは,離島又は油田を結ぶリンク,紛争地域又は立ち入り不可能な地形
を横断するリンク,及び安全性又は補給の問題によって,中継点の設置が困難なリンクなどの多くの適用
範囲がある。
励起光パワーによって異なるが,後方励起DRAを利用することによって,システムのOSNRは,標準
で5 dB7 dB改善する。例えば,700 mWのラマン励起モジュールを用いてCバンド帯域でオンオフラマ
ン利得約15 dBを得る構成の場合,伝送光ファイバの種類に応じて,約6 dBのOSNR改善が実現可能で,
伝送距離を約30 km延ばすことが可能である。
さらに,伝送距離が長い場合,後方励起DRAと同時に前方励起DRAを用いることによって,良好な特
性が得られる。例えば,光出力が20 dBmのEDFAブースタを用いたシステムの場合,700 mWの前方励起
DRAモジュールを追加すれば,約7 dBのOSNR改善に対応する約8.5 dBのオンオフラマン利得が得られ
る(ラマン励起モジュールの挿入損失を考慮する。)。
したがって,励起光パワー約700 mWの前方励起及び後方励起DRAを併せて用いることで,EDFAだけ
のシステムと比較してOSNRを約13 dB改善可能で,無中継リンクシステムの伝送距離を延ばすことが可
能である。
JA.3.3.3 DRAによる多中継リンクの中継間隔長延化
通常,ほとんどの多中継リンクは,80 km100 kmの中継区間ごとにインラインEDFA中継器を配置す
る。しかし,地理的な制限によって個々の中継間隔を長くする,又は実用性を考慮して中継区間数を減ら
して中継間隔を長くする必要がある。いずれの場合でも,DRAは,中継間隔を長くするために必要なOSNR
マージンを提供することが可能である。さらに,インラインEDFAが利得の平たん性を維持しながら,限
られた利得範囲をサポート可能なように,種々のシステム構成が既に設計されてきた。この場合,DRAを
用いることで,OSNRの改善だけでなく,システムで標準的なEDFAを用いつつ,中継間隔をより長くす
ることが可能である。これによって,システムの柔軟性及び有用性が向上する。
JA.3.3.4 大容量長距離,超長距離システム
大容量(高ビットレート及び/又は高密度のチャネル間隔)システムでは,中継数の増加につれて,OSNR
が重要な問題になる。システム内の全ての中継区間で後方励起DRAを用いて,OSNRを十分に増加する
ことが可能である。このようにして,より多くの中継区間及び/又はより大容量のサポートが可能である。
例えば,各中継区間で10 dBの後方励起DRAを用いることによって(約500 mWの励起光パワー),等価
なEDFAだけのシステムに比べて,システムのOSNRを約5 dB改善することが可能で,少なくともSNの
観点では,システムの伝送距離を3倍に延長可能である。

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JA.4 特性及び試験方法
JA.4.1 概要
この箇条では,DRAに関係する重要な動作パラメータ及びパラメータの測定方法について示す。既に示
したように,DRAの特性は伝送光ファイバに依存するため,デバイスレベルではなくシステムレベルで増
幅器の特性を考えなければならないということが,DRAと集中増幅器との基本的な差異である。しかし,
ラマン励起モジュールの動作パラメータについては,モジュールを設置したシステムとは無関係に測定可
能である。さらに,数種類の伝送光ファイバにわたる平均的な特性として,システムに依存するパラメー
タを測定可能である。それによって,システムで期待できる特性が予測可能である。まず,デバイスレベ
ルの特性を議論し,次に,システムレベルの特性を考える。
JA.4.2 ラマン励起モジュールの特性
JA.4.2.1 一般事項
代表的なラマン励起モジュールは,複数のラマン励起レーザ及び励起レーザの出力と光信号とを多重化
する光受動部品で構成する。モジュールは,励起光パワー及び信号光パワーをモニタするための光パワー
メータ,増幅器を制御する回路及びソフトウェアを備えることもある。後方励起DRAに用いるラマン励
起モジュールの構成例を,図JA.7に示す。この構成例では,励起モジュールは,偏波ビームコンバイナで
偏波多重する波長λ1の二つのレーザダイオード及び波長λ2のレーザダイオード,合計三励起レーザダイオ
ードから成る。
図JA.7−後方励起DRAに用いるラマン励起モジュールの構成の代表例
JA.4.2.2 励起波長
ラマン励起モジュールから出力する励起光のスペクトルは,モジュールに接続する光ファイバを伝搬す

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る信号光のオンオフラマン利得スペクトルを決定する上で重要である。通常,励起光スペクトルは,一つ
以上の励起光源が出力する幾つかの離散波長から成る(図JA.7の構成では二つの波長)。励起光源の出力
をOSAに接続して励起光スペクトルを測定すると,スペクトルを構成するピークに対応する波長が分か
る。このとき,励起光パワーが高いので,通常は減衰器を介して励起光源の出力をOSAに入力する。他の
パラメータとして,FWHMで表す各ピークの波長幅がOSAで測定可能である。現在,市場に流通する大
部分の波長1 400 nm代のFBG波長安定化励起レーザダイオードでは,FWHM波長幅は1 nm2 nm程度
である。
JA.4.2.3 励起出力光パワー
ラマン励起モジュールの各励起波長における励起出力光パワーは,オンオフラマン利得スペクトルを決
める重要なパラメータである。大部分のラマン励起モジュールでは,各励起光源の励起パワーは,波長ご
との励起光パワーの割合とともに,モジュールの総励起出力光パワーを変化させて制御する。励起出力ポ
ートをOSAに接続して,ある与えられた動作条件で励起モジュールの励起出力光パワースペクトルを測
定すると,各励起波長に対応する励起光パワーが測定可能である。このとき,励起光パワーが高いので,
通常は減衰器を介して励起出力をOSAに入力する。全ての励起波長成分を合わせた総励起出力光パワー
は,例えば,励起モジュールの出力ポートに高出力光用光パワーメータを接続して測定することが可能で
ある。
JA.4.2.4 励起光の偏光度(DOP)
JA.2.2に記載したように,各励起波長の偏光度(DOP)は,DRAのPDGに影響を与える。ある励起波
長のDOPの影響は,正確には,他の励起波長の相対光パワー及びDOPとともに,前方励起又は後方励起
といったDRAの励起形態及び伝送光ファイバの種類及び状態に依存する。
ある励起波長のDOPを測定するために,励起モジュール中の対応する励起光源だけを動作させてモジ
ュールの励起光出力を偏波解析装置に接続する。偏波解析装置で最大出力Pmax及び最小出力Pminを測定す
ると,DOP(パーセント表示)は次の式で求められる。
DOP≡100(Pmax−Pmin)/(Pmax+Pmin)
ここで, Pmax : 偏波解析装置の最大出力
Pmin : 偏波解析装置の最小出力
DOPが100 %であるということは,励起波長で完全に偏光している(直線偏波である)ことを意味し,
0 %のDOPは,完全に無偏波状態にあることを意味する。
JA.4.2.5 励起光相対強度雑音(RIN)
励起レーザのRINはレーザ出力の強度ゆらぎを表し,単位dB/Hzで表す。与えられた帯域Bにおいて,
レーザパワーの強度ゆらぎの相対分散は,σ2/P2≡RIN×Bによって定まる。JA.2.2に記載したように,ラマ
ン利得は励起強度に比例するので,励起強度のゆらぎは信号の強度ゆらぎとして現れる。
ラマン励起光源のRINがシステムに及ぼす効果は,RINの大きさ及び信号光と励起光との間のウォーク
オフに依存する。ウォークオフは,励起光から信号光に転移する揺らぎの帯域を決める。現在,市場に流
通する大部分の波長1 400 nm代の励起レーザダイオードでは,RINの値は約−115 dB/Hzである。ウォー
クオフを考慮すると,信号光と励起光との相対群速度差がΔvのとき,転移するRIN揺らぎの帯域はB
c2/LeffΔvとなる。ここで,Leffはラマン実効長,cは真空中の光の速度を表す。後方励起DRAではウォーク
オフは極めて大きく,Δvはcのオーダーになる。したがって,帯域Bは狭くなり,励起光のRINの影響
は無視することが可能である。前方励起DRAでは光ファイバの分散に依存するが,信号光と励起光との

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