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C 6122-10-5 : 2022 (IEC 61290-10-5 : 2014)
間のウォークオフは小さく,ラマン励起光のRINのシステムに対する影響は無視することが不可能であ
る。
ラマン励起モジュールが備える各励起レーザのRINは,そのレーザだけを動作させて励起モジュールの
出力ポートを帯域100 MHz以上の高速光検出器に接続し,さらに,その出力をESAに接続して測定可能
である。
JA.4.2.6 挿入損失
DRAは,ラマン励起モジュールの中ではなく光ファイバ伝送路中で発生するので,信号入力ポートから
信号出力ポートへの信号伝搬に関しては,ラマン励起モジュール自体は受動モジュールとみなすことが可
能である。したがって,信号が受ける挿入損失が,モジュールの重要な特性となる。後方励起DRAでは,
信号の挿入損失は図JA.8でモデル化することができ,DRA全体の雑音特性に影響を与える。前方励起DRA
では,通常,ラマン励起モジュールをブースタ増幅器の直後に配置する。したがって,モジュールの挿入
損失によって,光ファイバ中継区間への信号光入力パワーが減少する。
注記 Gon-off及びFeffは,DRAのオンオフ利得及び等価雑音指数であり,G及びFは,
ラマン励起モジュール直後の集中(定数的)増幅器の利得及び雑音指数である。
図JA.8−後方励起DRAに用いるラマン増幅モジュールの信号挿入損失(IL)のモデル
信号挿入損失に関連するパラメータに,帯域外挿入損失がある。これは,システムが伝送に割り当てた
帯域からはずれた波長における挿入損失である。例えば,システムには各中継器で増設及び減設する光監
視チャネル(OSC)があり,しばしば波長1 510 nmを割り当てる。したがって,ラマン励起モジュール中
でOSCが受ける挿入損失は,OSCリンクバジェットに直接影響する。ある場合には,OSCはラマン励起
モジュールの中で減設したり増設したりすることがあるということに気を付ける必要がある。したがって,
OSCの挿入損失又は関連する他の帯域外挿入損失は,励起モジュールの関連ポート間で測定することが望
ましく,必ずしもモジュールの信号入出力ポート間で測定する必要はない。
ラマン励起モジュールの挿入損失は,IEC 61290-7-1に記載のように,他のタイプのOAと同じ方法で測
定することが可能である。
JA.4.2.7 他の受動特性
JA.3で記載したように,ラマン励起モジュールは,モジュールの入出力ポート間を伝搬する信号にとっ
ては,受動モジュールとみなすことが可能である。したがって,PMD,反射率などの受動モジュールの様々
な動作特性を考慮することが望ましい。これらの特性は,関連する試験方法とともにJIS C 6121-1で規定
している。
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JA.4.3 システムレベルの特性
JA.4.3.1 一般事項
この箇条では,DRAに関連する主なシステムレベルの動作パラメータを考える。これらのパラメータは,
本来,DRAを配置した実際のシステムと関連付けることで規定し,測定することが可能である。しかし,
多くの場合,伝送光ファイバの種類など,あるシステム条件の下で,ラマン励起モジュールから予想され
る典型的な動作特性を決めることができ,システムに依存しない適当な測定法を規定することが可能であ
る。
JA.4.3.2 オンオフ利得
ラマン励起モジュールの主な動作パラメータは,励起出力パワーレベル及び伝送光ファイバの種類など
の異なる動作条件の下で予想されるオンオフ利得である。オンオフ利得は次のように定義する。まず,ラ
マン励起モジュールを非稼動状態にして,DRAとして機能する光ファイバ伝送路の出力信号レベルSoffを
測定する。次に,所望の動作条件(励起パワーレベル)でラマン励起モジュールを稼動状態にして,同じ
場所で信号レベルSonを測定する。このとき,オンオフ利得を,Gon-off(dB)≡Son(dB)−Soff(dB)で定義す
る。
前方励起DRA及び後方励起DRAについて,オンオフ利得の典型的な測定系を,それぞれ図JA.9 a)及
びb)に示す。信号源は,単一波長又は多重化した多波長の信号を出力する。多重化した多波長信号とOSA
とを用いることで,異なる波長におけるオンオフ利得を,波長ごとに同時に測定することが可能である。
さらに,OSAを用いると,DRAによるASEの連続スペクトル及び信号パワーを分離して,実際の信号パ
ワーだけを測定することが可能である。Sonが非常に小さい場合,信号波長におけるASEパワーを外挿な
どの方法によって求め,これを差し引いて信号パワーを求めてもよい。
a) 前方励起DRAの場合
b) 後方励起DRAの場合
図JA.9−DRAの典型的な利得測定系
オンオフ利得を測定する場合,次の事項に注意するのがよい。
− オンオフ利得測定の目的は,特定の種類の光ファイバで得られる利得を測定することである。この場
合,ラマン実効長よりも十分長い光ファイバ長でオンオフ利得を測定することが望ましい。市場で流
通する代表的な光ファイバは,75 kmより長ければ,無限に長いとみなすことが可能である。
− オンオフ利得は,励起モジュールと光ファイバとの間の過剰損失の影響を著しく受ける。すなわち,
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過剰損失があると,光ファイバ中の励起パワーが減少し,結果として利得が低くなる。代表的なオン
オフ利得を測定する場合,過剰損失が最小になるように注意することが望ましい。現場で実際に測定
するオンオフ利得と比較する場合,過剰損失の影響を応分に考慮するのがよい。
− 後方励起DRAの場合,光ファイバの末端では信号パワーが弱く,通常,オンオフ利得は小信号利得と
みなすことができ,信号レベルそのものには大きく依存しない。そうであるためには,光ファイバ入
力端での信号源は励起光減衰を生じるほど強くしない方がよい。一般的に,信号源の強度は,ラマン
WLsS
励起オンの状態で,総信号出力光パワー '
onが,励起モジュールの出力端におけるラマン励起パ
ワーに比べて−20 dB以下となるように設定することが望ましい。
− 前方励起DRAの場合,光ファイバ入力端における信号レベルは,通常,励起光減衰を生じるほど十分
に高い。したがって,どの波長でも,オンオフ利得は全ての波長を合わせた信号光入力パワーに依存
するので,それ相応に特性を求めるのが望ましい。
JA.4.3.3 利得平たん性
利得平たん性は,考慮すべき規定の伝送帯域,例えば,Cバンド(波長1 529 nm1 564 nm)における
オンオフ利得の偏差を示し,JA.4.3.2に記載の測定法によって求められる規定の伝送帯域中のオンオフ利
得の最大値と最小値との差として定義する。
利得平たん性は,ラマン増幅に用いるラマン励起モジュールの励起波長配置及び励起光量の影響を受け
る。このため,伝送路で用いる各種の光ファイバに対して利得平たん特性を実現するためにはラマン励起
モジュールの励起波長配置及び励起光量を各々の光ファイバに対して最適化したラマン励起モジュールを
用いる必要がある。
JA.4.3.4 偏波依存利得変動(PDG)
PDGは,規定の波長における入射信号の偏波状態によるオンオフ利得の偏差であり,入射可能な全ての
偏波状態におけるオンオフ利得の最大値と最小値との差を表す。PDGは,図JA.9に示す典型的な利得測
定系で用いる信号源に偏波制御器を付加して,偏波制御器で信号光の偏波状態を変化させ,Sonの最大値及
び最小値を測定することで評価が可能である。
PDGは,ラマン励起モジュールが出力する励起光の波長配置,各波長のDOP及び伝送光ファイバの偏
波特性に依存する。ラマン励起モジュールから出力するラマン励起光の励起波長数が多い場合,励起波長
全体の中で多少の励起光成分が偏光していてもラマン増幅器全体におけるPDGの劣化は少ないという特
徴をもつ。
また,PDGは,伝送光ファイバを設置する環境に依存する。このため,PDGの測定は,伝送光ファイバ
を敷設する環境が変化する状況で,長時間(例えば,24時間)にわたって評価することが望ましい。
JA.4.3.5 等価雑音指数
等価雑音指数は,後方励起DRAにおいて,雑音特性を示す重要な特性の一つであり,JIS C 6122-3に規
定する信号光−ASE間雑音指数に対応する値である。等価雑音指数は図JA.8に示すように,分布ラマン
増幅によって光ファイバ中継区間の出力端において生じるのと同じオンオフ利得とASE特性とをもつ,モ
デル化した集中増幅器と考えて取り扱うことが可能である。
このモデル化した集中増幅器の出力端での単一偏波状態のASE光量密度をρASEと定義すると,等価雑
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音指数はNFeq=10 log10(2ρASE/Gon-off hν)となる(JIS C 6122-3参照)。ここで,hはプランク定数,ν(ν=c/λ)
は信号光周波数を示す。
ρASEの測定は,JIS C 6122-3-1に規定する方法が適用可能である。実際のρASE測定は,図JA.9に示すよ
うにOSAを配置して行う。
なお,図JA.9 b)で示す測定では,ラマン励起モジュールの挿入損失が付加された測定結果となるため,
この挿入損失を考慮して,ラマン励起モジュールの入射端でのρASEを算出する必要がある。別の方法とし
て,励起モジュールへの信号光入力パワーの一部を分岐させて,それをOSAに入力してもよい。この場合
には,分岐に対応した適切な校正係数を,測定結果に乗じる。
図JA.5で示すように,EDFAの一般の雑音指数が約5 dBであるのに対して,オンオフ利得10 dBの後
方励起DRAの等価雑音指数は,約−1 dBである。この等価雑音指数を伝送システムのOSNR改善値に変
換するには,図JA.8に示すように付加的な集中増幅効果を加味する必要がある(JA.2.6参照)。
JA.4.3.6 多重光路干渉(MPI)
DRA内のMPIは,ラマン利得によって増幅される二重レイリー後方散乱(DRB)に起因する。
DRBは,レイリー散乱によって後方散乱した信号光のごく一部が,信号源に向かって伝搬し,その光が
再度,レイリー後方散乱して,信号光と同じ方向に伝搬する現象であり,この現象の結果によってMPIが
発生する。
一般的な光ファイバ伝送路において,DRBのレベルは非常に低く(−60 dB),伝送システムへの影響は
無視することが可能である。しかし,ラマン利得がある場合,レイリー散乱によって散乱した信号光は光
ファイバ中で信号光の伝搬方向及び反伝搬方向の両方向で増幅され,MPIが増強される。MPIのレベルは,
伝送光ファイバのレイリー散乱係数,ラマン実効長及びオンオフ利得に依存する。例えば,オンオフ利得
が15 dBのSMFのMPIのレベルは,約−45 dBである。
DRBに起因するMPIの評価は,JIS C 6122-3-2に規定するように,光ファイバ伝送路の中継区間の出力
端に設置するESAを用いて実施可能である。
JA.5 運用上の注意事項
JA.5.1 概要
JA.3で示したように,DRAを用いることで伝送システムのOSNRを大幅に改善することが可能である。
しかし,この技術を利用する場合に考慮すべきDRA特有の運用上の注意事項がある。
これら注意事項は,伝送光ファイバに入射する非常に高いラマン励起パワーに関連しているとともに,
光増幅を分布的に行い,ラマン増幅を適用する伝送光ファイバのファイバ種類及び製造ロットに依存する
というラマン増幅特有の性質に関連している。
JA.5.2 伝送光ファイバの種類によるラマン利得依存性
JA.2.2に記載したように,ラマン効率(CR)及びラマン実効長(Leff)は伝送光ファイバの種類に依存す
る。すなわち,オンオフ利得スペクトルの大きさ及び形状は,図JA.10に示すように,同一の運用条件に
おいても伝送光ファイバの種類によって異なる。
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したがって,DRAを用いて実用的な伝送システムを実現するためには,用いる伝送光ファイバに対する
事前調査が重要である。この調査によって,用いる伝送光ファイバによって実現できるラマン利得が予測
可能となり,より正確な伝送システム設計が実現可能になると同時に,平たんなラマン利得スペクトルを
実現するためのラマン励起モジュールの微調整が可能となる。
実際,同じ種類の伝送光ファイバにおいても製造ロットによって10 %程度のラマン利得の差異があり,
伝送路に敷設した光ファイバの種類からだけでは正確なラマン利得の予測は不可能である。伝送システム
設計では,この不確定さを考慮した設計を行うか,又は伝送システムで実際に配置する伝送光ファイバに
対する測定から得た正確なラマン利得を用いるかする必要がある。
注記 光ファイバ長 : 75 km,励起光パワー : 290 mW(波長 : 1 424 nm),410 mW(波長 : 1 452 nm)
注a) IEC TR 61292-6では,図の凡例を, : SMF(ITU-T G.652), : LEAF(ITU-T G.654)及び
: DSF(ITU-T G.653)と記載されているが,それぞれのITU-T勧告に対応したJIS C 6835
に従い,それぞれ,SSMA-9.3/125,SSMD-9/125及びSSMB-8/125と記載する。
図JA.10−伝送光ファイバの種類に対するオンオフ利得の差異
JA.5.3 伝送路の品質
伝送光ファイバの接続点及びラマン励起モジュールの周辺部での接続などを含めた伝送路の品質も,
DRAの適用において考慮すべき重要事項である。ラマン励起モジュールと伝送光ファイバとの接続損失が
増加すると,ラマン利得は大幅に低下する。例えば,ラマン励起モジュールと伝送光ファイバとの間の総
接続損失が1 dBの場合,オンオフ利得はdB値で約20 %低下する。
損失の他に,接続部の反射を低減することも重要である。特にラマン励起モジュールに近い位置にある
光コネクタでの反射特性が重要である。高い反射をもつ場合,ラマン励起モジュールが出力する励起光の
一部が光源に戻り,性能を劣化させる。このため,一般的に各接続部での反射率は−23 dBを超えないこ
とが望ましい。
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JIS C 6122-10-5:2022の引用国際規格 ISO 一覧
- IEC 61290-10-5:2014(IDT)
JIS C 6122-10-5:2022の国際規格 ICS 分類一覧
- 33 : 電気通信工学.オーディオ及びビデオ工学 > 33.180 : 光ファイバ通信 > 33.180.30 : 光増幅器
JIS C 6122-10-5:2022の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC6121-1:2021
- 光増幅器―第1部:通則
- JISC6123-4:2015
- 光増幅器―性能仕様テンプレート―第4部:マルチチャネル用光増幅器
- JISC6802:2014
- レーザ製品の安全基準