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3.11
A特性時間平均インパルスサウンドレベル,LAI,T又はLpAIeq,T(A-weighted equivalent continuous impulsive
sound pressure level)
時間重み付け特性I(JIS C 1509-1の附属書Cを参照)の使用によって決定されるA特性時間平均サウ
ンドレベル。
3.12
インパルス特性騒音(noise with impulsive character)
インパルス特性が認められる騒音。インパルス特性は,通常A特性時間平均インパルスサウンドレベル
(LAI,T)とA特性時間平均サウンドレベル(LAT)との差が3 dB以上である場合に認められる。
3.13
純音特性騒音(noise with tonal character)
純音成分を含んだ騒音。
3.14
暗騒音
車両が無通電又はエンジンが停止している状態で,静かな場所(例えば,深夜)又は他の車両のいない
広い車庫の中央付近に留置したときの騒音。
4 測定量
すべてのマイクロホン位置で測定する量は,形式試験及びモニタリング試験に対して,次による。
a) 周波数分析は,形式試験では必す(須)であるが,モニタリング試験ではオプションである。代表的
な1/3オクターブバンドの中心周波数の範囲はISO 266に従い,31.5 Hz8 kHzまでである。附属書
JAに,ISO 266に規定する周波数を示す。ただし,最低帯域幅の結果を保証する最低周波数を選択す
るとともに信号の持続時間が測定単位時間以上あることが重要である。
b) インパルス特性が疑われる騒音が存在する場合,A特性時間平均インパルスサウンドレベル(LAI,T)
及びA特性時間平均サウンドレベル(LAT)を測定しなければならない。もし,それらが3 dB以上違
っていれば,通常インパルス特性が認められる。
c) 純音特性が疑われる騒音が存在する場合,各々のマイクロホン位置において,a) に従って,周波数分
析を行うことが望ましい。分析によって得られた純音成分の周波数(騒音源など)を試験報告書に記
載する。
d) 定速走行している列車に対する測定値は,A特性時間平均サウンドレベル(LAT)である。さらに,A
特性短時間平均サウンドレベル(LA,1s)を,追加測定してもよい。
e) 静止車両の測定で,インパルス的な騒音の存在が疑われる場合,各マイクロホン位置で二つの測定方
法を提案する。一つは,時間重み付け特性Sを使用する方法であり,もう一つは,時間重み付け特性
I(JIS C 1509-1:2005の附属書C参照)を使用する方法である。
f) 加速試験又はブレーキ試験の測定値は,A特性時間重み付きサウンドレベルの最大値(LpAFmax)とA
特性時間平均サウンドレベル(LAT)である。測定時間Tは,箇条7で定義される。
5 測定器
マイクロホン,ケーブル及び記録装置を含む測定器システムは,JIS C 1509-1:2005で規定されたクラス
1又はクラス2の必要条件を満足しなければならない。
――――― [JIS E 4021 pdf 6] ―――――
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使用した測定器システムのクラスは,試験報告書に記載する。
注記 対応国際規格では,“クラス1”に対応する用語として“タイプ1”を用いているが,この規格
ではJIS C 1509-1:2005に合わせた用語を用いる。
マイクロホンは自由音場において,どの領域でもフラット特性をもたなければならない。
マイクロホンには,ウインドスクリーンを取り付けて使用する。
1/3オクターブバンド・フィルタは,JIS C 1514によるクラス1の必要条件を満たさなければならない。
測定システム全体の正確さを確認するために,一連の測定の前後に対象とする周波数レンジの一つ以上
の周波数について,JIS C 1515のクラス1の精度を満たす音響校正器を用いて校正信号測定値を確認する。
測定前後の,二つの校正信号測定値の差が0.5 dB以上である場合,測定結果はすべて認められない。
音響校正器は,少なくとも1年に1回はJIS C 1515に適合していることを確認する。測定システムは少
なくとも2年ごとにJIS C 1509-1:2005に適合していることを確認する。
測定システムがJIS C 1509-1:2005及び/又はJIS C 1515に適合していることを証明する最新の日付を記
録する。
6 試験条件
6.1 試験条件の要求事項からの偏差
各試験のために規定した条件は,できるだけ厳密に満たさなければならない。規定した試験条件からの
微小な偏差は試験報告書に記載することによって許容される。しかし,一般にこの場合には,再現性は低
くなる。
6.2 試験環境
6.2.1 音響上の環境
主として屋外を走行する車両の試験場所は,車両から放射された音が,軌道以外の建物,壁又は同様の
大規模な物体で反射されることがなく,軌道からの反射音だけが車内騒音に影響するような状態でなけれ
ばならない。
トンネル内を走行する車両(地下も同様)の測定は,実際の運転状態で実施されなければならない。
軌道の近傍に,付加的な吸音性の覆い(防音カバー)又は雪があってはならない。ただし,防音壁を設
けてある区間での測定は,受渡当事者間の協定によって,認められる。
6.2.2 気象条件
測定は,車内騒音に影響を与えるような風,雨及び/又は雪でない場合にだけ実施する。
車内騒音に影響を与えるおそれのある気象条件の中で測定するときは,その状況を試験報告書に記載す
る。
6.2.3 暗騒音レベル
測定に著しい影響を与えないことを保証するため,他の音源(例えば,他の車両,産業プラント及び/
又は風)からの騒音に注意しなければならない。
暗騒音の状況を明確にするため,測定に先立って,測定する車両の状態を受渡当事者間で協定し,試験
報告書に記載することが望ましい。
形式試験では,A特性背景サウンド(暗騒音)レベルは,暗騒音中で車両内の騒音測定で得られたA特
性サウンドレベルの測定値より,10 dB以上低くなければならない。周波数分析については,この差が個々
の対象とする周波数帯において10 dB以上低くなければならない。
モニタリング試験では,A特性背景サウンドレベルは,暗騒音中で車両からの騒音測定で得られた,A
――――― [JIS E 4021 pdf 7] ―――――
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特性サウンドレベルの測定値よりも5 dB以上低くなければならない。この差が10 dB未満である場合,測
定値を表1によって修正する。
表1−モニタリング試験のための暗騒音修正
単位 dB
暗騒音がある状態で測定した,車内騒音測定から
暗騒音がある状態で測定した,車内騒音測定から
得られた騒音レベルに加える補正値
得られた騒音レベルと単独で測定した暗騒音レベ
ルとの差
10以上 0
69 −1
5 −2
6.3 マイクロホン位置
6.3.1 一般
測定される車内騒音レベルは,測定位置によって大きく異なる。特に,輪軸又は床下補機の上などは音
圧レベルが高い。したがって,車内の音響レベル分布が十分現れる測定箇所を決める必要がある。
一般的に,車両の中央及び両端を含む57か所の測定点が条件を満足する。
正確なマイクロホン位置は,試験計画段階で,受渡当事者間で協定する。
6.3.2 座席
マイクロホンは,コンパートメントの中央,客室の中央ライン及び2列の座席の中間1) で,車両の床面
から1.2 mの高さに置く。
縦形腰掛(ロングシート)の場合は,腰掛の奥行きの中心で,床面から1.2 mの位置に置く。
注1) 2列の座席の中間とは,横形腰掛(クロスシート)のようなレールと直角方向に配置された腰
掛2列の中間をいう。
6.3.3 立席
マイクロホンは,乗客が立っている可能性のある場所の中心で,車両の床面から1.6 mの高さに置く。
6.3.4 運転室内及び業務用室
マイクロホンは,次の位置に置く。
a) 運転室又は業務用室内の中央で,作業位置の床面からの高さ1.6 mの位置。
b) 耳の高さ。通常,運転室にいる運転士などの耳から0.10.2 m離れた位置。この場合,マイクロホン
の方向は,任意とする。
6.3.5 寝台車
寝台車では,マイクロホン位置の一つは,まくら(枕)から0.2 m上方の位置。
6.4 車両条件
6.4.1 一般
車両は運転整備状態にあり,定速走行試験では,車輪の状態は通常の運転条件で3 000 km以上(路面電
車及び地下鉄では1 000 km以上)通常の軌道上を走行した状態を標準として,受渡当事者間の協定による。
踏面ブレーキを備えた車両では,ブロック(制輪子)及び車輪踏面の表面状態は十分なじんだ状態(研
摩状態)にあるものとする。車輪踏面は,フラットのような不規則形状であってはならない。
付随車を試験する場合,隣接した車両の動力源など,列車の他の部分からの騒音による影響を受けない
ようにするために,あらゆる努力が必要である。
――――― [JIS E 4021 pdf 8] ―――――
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注記 この規定の前半部分は,車輪の状態についての規定であり,試験車両が3 000 km走行した後で
測定を行うことを規定したものではない。
6.4.2 荷重状態
測定する車両内には,車両の運行及び車内騒音測定に必要な最小限の人員以外は,乗車してはならない。
動力装置(例えば,機関車)については,稼働状態(けん引力発揮)での正常荷重が使用されなければな
らない(運転整備状態)。
6.4.3 ドア,窓,補助機器及び可変設備
車内騒音レベルへの影響を調査する場合を除き,客車間の貫通扉,側扉,中間扉及び側窓は,閉じて測
定する。
試験車両の,通常走行中に運転している補機は,そのまま運転させておかなければならない。ただし,
補機の騒音が,短期間(運転時間の2 %以下)に不規則に生じる場合,又は他の音源からの音圧レベルに
対して5 dB以上小さい場合には,測定において考慮しなくてよい。
試験報告書に,試験中の補機の状態を記載しなければならない。
寝台車のたな(棚)式寝台などのように,車内設備の配置換え(格納してある寝台のセッティングなど)
が行われる場合には,測定を異なる設備条件ごとに行わなければならない。
6.5 軌道条件
6.5.1 一般
通常の車両の測定は,各種材料のまくらぎのバラスト軌道,又は列車が通常用いている軌道で行われな
ければならない。軌道は乾燥していて,凍結していてはならない。測定は,それぞれの鉄道網で共通に使
用されているレール断面及びまくらぎが使用されている軌道で行わなければならない。もし,ほかの構造
の軌道が車両の運行に不可欠ならば,それらを試験に使用することが望ましい。
軌道はよく整備されていなければならない。
こう配は,3 ‰(パーミル)以下でなければならない。
曲線半径は,次による。
a) 列車速度が70 km/h以下のとき,曲線半径は1 000 m以上。
b) 列車速度が70 km/hを超え,120 km/h以下のとき,曲線半径は3 000 m以上。
c) 列車速度が120 km/hを超えるとき,曲線半径は5 000 m以上。
測定区間の軌道は,継ぎ目のないロングレール区間とし,レール表面には車輪が踏みつけた介在物質,
へこみ又はでっぱりなどの目に見える欠陥があってはならない。ただし,試験区間の線路条件によって,
この規定によれない場合には,受渡当事者間の協定によって軌道条件を規定することができる。この場合,
軌道条件を試験報告書に記載しなければならない。
トンネル内での試験については,トンネルを特定できる情報(例えば,キロポスト)を試験報告書に記
載しなければならない。
注記1 車両が走行するときに発生する騒音は,レールの表面の粗さ及び軌道の動的な特性(ダイナ
ミックス)によって影響を受ける。ISO 3095:2005を用いて測定区間の軌道表面の粗さを測
定する方法はあるが,軌道の動的な特性はまだ研究中である(ISO 3095:2005のAnnex C参
照)。
注記2 対応国際規格ではAnnex A(規定)にレール粗さ測定仕様書を規定し,Annex B(参考)に
軌道力学を考慮した軌道騒音に影響する重要なパラメータを示しているが,我が国では,一
般的にこの方法は採用されていないため,この規格には採用していない。
――――― [JIS E 4021 pdf 9] ―――――
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6.5.2 レール粗さ
測定区間が通常の営業運転を行っている路線であるときは,レール粗さの測定については,受渡当事者
間でその必要性を含め,協定する。
レール粗さの測定は,我が国では一般的には行われていないが,必要とする場合は,ISO 3095:2005の
Annex Aによって行う。
6.5.3 特殊条件
一般車両とは異なる車両が,その車両用の軌道上で試験されたときは,軌道構造を試験報告書に記述し
なければならない。
7 試験方法
7.1 一般
形式試験では,少なくとも3回の測定をしなければならない。各測定の算術平均値は,試験結果として
採用し,最も近い整数のデシベル値に丸める。3回の記録のばらつきが3 dBより大きい場合には,新たに
一連の測定を行わなければならない。
定置試験を除き,同一場所での3回の測定ができない場合には,受渡当事者間の協定によって,走行中
にデータレコーダなどで連続して記録した測定結果を使用し,ほぼ同一条件とみなせる測定値によって,3
回の測定結果に代えることができる。
モニタリング試験では,1回の測定で十分である。
7.2 定速走行車両での測定
一定速度で走行する列車上での測定は,各マイクロホン位置及び各測定条件で,20秒間測定を行わなけ
ればならない(T=20 s)。20秒より短い[最小5秒(T=5 s)とする。]測定時間及び走行中のノッチ扱い
については,受渡当事者間の協定による。
試験速度は,追加試験を含めて,受渡当事者間の協定による。
測定区間全体にわたって,試験車両は選択した速度の±5 %で安定した走行をしなければならない。速
度は,精度が3 %よりもよい測定器によって測定しなければならない。もし,列車の速度計が3 %よりも
よい精度をもつならば,列車の速度計を用いてもよい。
7.3 静止から加速する車両での測定
静止から加速する車両での測定は,空転しない最大けん引力で加速する列車において,静止から最高速
度に達するまで行わなければならない。もし,試験列車が固定編成でない場合には,試験荷重を決定する。
試験荷重は,通常の運用を代表するものでなければならない。
箇条4のf) のA特性時間平均サウンドレベル(LAT)を求めるための測定時間Tは,静止から速度が30
km/hに達するまでに必要な時間とする。
7.4 減速車両での測定
減速中の車両での測定は,最高速度からの通常の停止ブレーキ中に行わなければならない。
箇条4のf) のA特性時間平均サウンドレベル(LAT)を求めるための測定時間Tは,速度30 km/hから
停止までのブレーキ時間とする。
7.5 静止車両での試験
すべての静止車両の試験は,各位置での連続した3回の測定は必要ない。
すべての静止している車両では,20秒以上測定を行わなければならない。ただし,例外として,騒音源
をその最大のレベルに20秒間維持することが不可能な場合,測定時間Tは最低5秒に短縮することがで
――――― [JIS E 4021 pdf 10] ―――――
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JIS E 4021:2008の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 3381:2005(MOD)
JIS E 4021:2008の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.140 : 音響及び音響測定 > 17.140.30 : 輸送に伴って発生する騒音
JIS E 4021:2008の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISC1514:2002
- オクターブ及び1/Nオクターブバンドフィルタ
- JISC1515:2020
- 電気音響―音響校正器
- JISE4001:2011
- 鉄道車両―用語
- JISZ8106:2000
- 音響用語