JIS F 0600-1:2015 船舶及び海洋技術―船舶の防汚方法に関するリスク評価―第1部:船舶の防汚方法に用いる殺生物性活性物質の海洋環境リスク評価法 | ページ 4

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F 0600-1 : 2015 (ISO 13073-1 : 2012)
附属書A
(参考)
防汚塗料からの殺生物性活性物質の溶出速度推定方法
A.1 はじめに
この附属書では,防汚塗料から海水への殺生物性活性物質の溶出速度を推定するための主な既存の方法
を記載する。
A.2 溶出速度の推定方法の例
表A.1に船舶に塗布した防汚塗料からの殺生物性活性物質の溶出速度を推定するための主な方法及びこ
れらの方法の特徴を示す。
A.3 推定方法
同じ殺生物性活性物質であっても,求められた溶出速度は推定方法によって異なることがある。したが
って,推定方法の選択が重要となる。異なる方法で推定した値が,どの排出シナリオにおける代表的溶出
速度とどのように関係するのかについて,参考文献に掲載されている標準を参照されたい(Finnie, 2006:
IPPIC, 2009)。
通常,直接現場で測定する方法によって環境に応じた溶出速度の最良の推定値が得られるが,日常的に
使用できる実際的な標準化された手法は今のところない。計算法又はラボ試験法から求められる溶出速度
は,環境に応じた条件下での真の溶出速度を反映していない可能性がある。
溶出速度の推定のための最初の選択は,“マスバランス計算法”である。同法は,環境リスク評価に用い
るために,溶出の現実的な最悪ケースの推定値を,船舶の乾燥塗膜のパラメータに基づいて得ることがで
きるように開発したものである。したがって,設計上の“供用”期間に対応する適切な乾燥塗膜厚さを選
択することが重要である。ある塗料配合にある殺生物性活性物質を使用しようとする場合に,既に利用可
能な防汚塗料又は防汚方法の仕様に基づいてその塗料仕様(すなわち,乾燥塗膜厚さなど)を見積もるこ
とができる。
活性物質の溶出速度が水の相対流速(すなわち,船舶の速度)に依存していること,及び停船時の溶出
速度が航行時よりも一般的に低いことはよく知られている。したがって,船舶がほとんど動かない排出シ
ナリオの場合[例 OECDのマリーナや商業港のシナリオ(OECD, 2005)],マスバランス計算法及びラボ
試験法の両方とも,一般に溶出速度をかなり過大評価してしまうことになる。そのような場合は,溶出速
度の適切な補正を行い,排出シナリオにおけるPECの決定を見直すのが実用的なアプローチである。保守
的な補正係数としてマスバランス計算法には2.9を,ラボ試験法には5.4を推奨している(Finnie, 2006:
IPPIC, 2009)。ラボ試験法のほとんどが“リスク評価の使用に不適である”と定義しているが,実験的に溶
出速度を得る場合には使用されることもあり得る。(現在のASTM及びISO法のように)溶出速度がかな
り過大評価される懸念があることから,適切な補正係数の適用が推奨される。

――――― [JIS F 0600-1 pdf 16] ―――――

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F 0600-1 : 2015 (ISO 13073-1 : 2012)
表A.1−殺生物性活性物質の溶出速度推定方法の例
タイプ 方法 特徴
マスバランス ISO 10890 この方法は,殺生物剤溶出の一般的な経
計算法 Modelling of biocide release rate from anti fouling paints by
験モデルであり,防汚塗料から溶出する
mass-balance calculation 殺生物剤の総量は塗料が製造・塗布され
たときに元々あった殺生物剤の量を超
えないという基本的事実に基づくもの
である。この方法では塗料の供用期間全
体にわたる平均溶出速度を計算する。計
算値は塗料の供用期間中の最大平均溶
出速度とみなす。
この方法は殺生物性活性物質を溶出す
るいかなる防汚塗料にも適用できる。
ラボ試験法 ASTM D5108-90 これらの方法は,特定条件下(温度 : 25
±1 ℃,塩分濃度 : 3334ppt,pH : 7.9
Organotin Release Rates of Antifouling Coating Systems in Sea
Water 8.1)での任意の浸水期間(45日間以
ASTM D6442-06 上)にわたって回転円筒試験装置を用い
Standard Test Method for Determination of Copper Release
て溶出速度を測定する,標準化されたラ
ボ試験法である。
Rate From Antifouling Coatings in Substitute Ocean Water
ASTM D6903-07
Test Method for Determination of Organic Biocide Release
回転円筒試験法は当初,有機スズ及び銅
Rate From Antifouling Coatings in Substitute Ocean Water
を測定するために開発されたが,その後
ISO 15181-1 拡張されて様々な有機殺生物性活性物
質を測定するために用いられている。
Determination of release rate of biocides from antifouling
paints−General method for extraction of biocides
ISO 15181-2 これらの規格文書で説明されているよ
うに,溶出速度をかなり過大評価するこ
Determination of release rate of biocides from antifouling
とがあるので,環境リスク評価に用いる
paints−Determination of copper-ion concentration in the
extract and calculation of the release rate 溶出速度を得るためにこれらの方法を
ISO 15181-3 使用するときは注意する。
Calculation of the zinc ethylene-bis (dithiocarbamate) (zineb)
release rate by determination of the concentration of
ethylenethiourea in the extract
ISO 15181-4
Determination of (PTPB)
pyridine-triphenylborane
concentration in the extract and calculation of the release rate
ISO 15181-5
Calculation of the tolylfluanid and dichlofluanid release rate by
determination of the concentration of dimethyltolylsulfamide
(DMST) nd dimethylphenylsulfamide (DMSA) n the extract
ISO 15181-6
Determination of tralopyril release rate by quantification of its
degradation product in the extract

――――― [JIS F 0600-1 pdf 17] ―――――

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表A.1−殺生物性活性物質の溶出速度推定方法の例(続き)
タイプ 方法 特徴
現場計測法 SSCSD Dome Method (Finnie, 2006) 公表された結果では,この手法によって
Measuring in situ copper and organotin release rates using a
現場で測定した溶出速度は,ラボ試験法
dome placed on an immersed painted ship hull で測定したものよりかなり低い数値で
あった。
これらの結果は,上記のラボ試験法では
防汚塗料からの有機スズ及び銅の溶出
速度を過大評価し,結果的に水域環境へ
の環境負荷を過大評価する可能性を示
唆している。

――――― [JIS F 0600-1 pdf 18] ―――――

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F 0600-1 : 2015 (ISO 13073-1 : 2012)
附属書B
(規定)
船舶の防汚方法で使用する有機殺生物性活性物質に対する
環境リスク評価のリスクキャラクタリゼーションプロセスの詳細
B.1 はじめに
この附属書では,船舶の防汚方法で使用する有機殺生物性活性物質に対する環境リスク評価の意思決定
プロセスを規定する(図B.1参照)。このプロセスは,海洋環境保護のために適切な環境リスク評価を実施
することを目的としている。
B.2 段階的アプローチ
B.2.1 評価プロセスの開始及び終了
リスクキャラクタリゼーションプロセスは段階1(Tier 1)から始まり,段階2(Tier 2)のレベル2(Level
2)に向けて段階的に進む。評価プロセスの最後に全ての殺生物性活性物質が“リスク懸念”,“比較的低リ
スク”又は“低リスク”と定義されるまで,各段階の評価基準に基づいて段階1,段階2のレベル1及び
段階2のレベル2の順で評価を行う。
B.2.2 段階システム
この附属書の段階システムは段階1及び段階2の2段階から成る。
殺生物性活性物質が段階1の評価基準を満たしていない場合は,その物質が海洋環境に悪影響を及ぼす
可能性があることを意味し,段階2で追加試験が要求される。段階2に進むのに必要な最低要件として,
魚類及び水生無脊椎動物における生物濃縮係数(BCF)の最高値が2 000未満でなければならない。
注記 段階2のレベル2を除き,このBCFの代わりにオクタノール水分配係数(log POW)によって
近似されたBCF(BCFp)を使用できる。
B.2.3 レベル制
この附属書におけるレベル制とは,段階2を完了させるための二つのステージに分けて行う殺生物性活
性物質の評価のことをいう。
レベル1からレベル2への段階的評価を行う。レベル1で評価された物質に対して,防汚方法を評価実
施日以降使用できるように,あらかじめ期間を設定しておくことが望ましい。この期間(以下,保留期間
という。)中に,評価を受ける者はレベル2における評価を受けるためのデータを整備作成するものとする。
殺生物性活性物質が環境に悪影響をもたらさないように,その生産量(輸入量を含む。),使用量などの
数量データに対応して保留期間を設定してもよい。
B.3 段階1
B.3.1 データ及び情報の要件
段階1で必要なデータ及び情報は,次のとおり。
a) 暴露試験によって推定される魚類又は水生無脊椎動物の生物濃縮係数(BCF),若しくはlog POWによ
って近似されたBCF(BCFp)
b) シミュレーション生分解性試験の結果から推定した半減期
c) 次の全ての一次分解性試験の結果及びそれから推定される半減期

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− 加水分解性試験
− 光分解性試験
− 海水中生分解性試験
d) 次の全ての水生生物の急性毒性試験結果(LC50及び/又はEC50)
− 魚類
− 無脊椎動物
− 藻類
e) 魚類又は水生無脊椎動物の最も敏感な種の慢性毒性試験結果(NOEC,LOEC及び/又はMATC)
f) 分解性試験時の初期投与後の分解プロセスにおける殺生物性活性
g) ECSW及びその計算法
h) アセスメント係数及びその根拠
i) PNECSW及びその計算法
j) 各環境媒体のPECSW/PNECSW
これらのデータを得るための既存の試験方法を,附属書Eに示す。
B.3.2 評価基準
段階1において,全ての評価基準(表B.1)を満たす殺生物性活性物質は,“低リスク”と評価する。
表B.1−段階1の評価基準
生物濃縮性 魚類及び水生無脊椎動物における生物濃縮係数(BCF)の最高値が100未満
分解性 分解性試験から計算した究極分解の半減期が15日未満及び殺生物性活性の消失が見られる。
リスク比 PECSW/PNECSWが1未満
注記1 究極分解は,一連の表層水混合分解シミュレーション試験で定めている無機化を意味する。一次分解は,殺
生物性活性物質の変化を意味する。
注記2 物質がOECD TG 301シリーズで定義している“易分解性”と判明している場合,上記の分解の半減期の評価
基準を満たすとみなされる。
B.3.3 評価
物質がB.3.2の評価基準を満たし,かつ“低リスク”と評価される場合,その殺生物性活性物質を使用
する防汚方法の海洋環境への生態リスクは低いとみなされ,評価は完了する。
物質が“低リスク”と評価されない場合,段階2のレベル1に進み,追加データ及び情報による評価を
継続する。
B.4 段階2のレベル1
B.4.1 必要な追加データ及び情報
段階2のレベル1では,段階1で得たデータに加え,次のデータ及び情報が必要である。
a) 追加の慢性毒性データによるPNECの見直し
b) OC
− KOCを求めるための吸着/脱着スクリーニング試験
次のデータを得るための試験法は附属書Eに記載されている。
さらに,BCFp[log POWによって近似された魚類又は水生無脊椎動物の生物濃縮係数(BCF)]を暴露試
験からの推定によるBCFの代わりに使用できる。

――――― [JIS F 0600-1 pdf 20] ―――――

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