JIS K 0154:2017 表面化学分析―分析試料の準備及び取付けに関する指針 | ページ 2

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を露出させることができる場合もある。

7.3 他の分析手法によって既に分析された試料

  試料が損傷される,又は表面汚染にさらされる場合があるので,試料を他の手法によって分析する前に,
表面化学分析測定をすることが望ましい。例えば,電子顕微鏡で分析した絶縁試料は,帯電を減らすため
にコーティングされている可能性がある。更に,(例えば,走査型電子顕微鏡内で)試料への電子ビーム照
射が,損傷を引き起こす,又は真空中の残留物から表面汚染種の吸着を起こす可能性がある。そのように
試料がコーティングされている,又は事前の分析過程で試料が変化する場合には,その試料は,その後の
表面化学分析に適さなくなる。最初に表面化学分析をすることができないならば,そのような分析は,名
目上同一であるが異なる試料又は試料の異なる領域で行うことが望ましい。

8 試料の汚染源

8.1 器具,手袋,試料台及びこれらの材料

  表面化学分析を行う試料は,分析前に表面が変質することなく分析室内で最適な真空状態を維持できる
よう,汚染されていない器具を用いて調製し,試料台に取り付ける。試料を取り扱う器具は,試料に影響
を与えない材質のものを用いる(例えば,ニッケル製の器具は,シリコンを汚染する。)。器具は,使用前
に純度の高い溶媒で洗浄し,乾燥する。試料が磁場の影響を受けやすい場合は,非磁性の器具を使用する。
器具で不必要に試料の分析面に触れないようにする。
試料を取り扱うときに使用する手袋及びワイパ1)によって,試料表面が汚染される可能性がある。手袋
に付着しているタルク,シリコン化合物及び他の材料による汚染も避けるように注意する。パウダフリー
の手袋は,タルクを含まないため,試料の取扱いに適している。手袋又は他の器具によって不必要に試料
の分析面に触れることを避けなければならない。
試料台及び試料保持に用いる器具によって試料の二次汚染の可能性がある場合は,常に,これらを洗浄
しなければならない。シリコン及び他の流動性及び揮発性のある化学種を含むテープは,使用しないのが
よい。
注1) ワイパとは,汚れを拭き取るための紙又は不織布である。毛羽立ちがなく,繊維くずが出ず,
かつ,水に溶けにくい拭き取り紙が広く使用されている。

8.2 ガスへの暴露

  試料に息を吹きかけると,汚染する場合がある。試料表面から粒子を吹き飛ばす目的,又は試料を清浄
化する目的のために用いるエアゾール缶,又は送気管からの圧縮ガスが,汚染源になるおそれがある。こ
れらの方法を用いると試料から粒子を除去できるが,汚染が問題となる場合には注意が必要であり,この
方法を避けるのがよい。特に圧縮送気管では,油が汚染物質となることが多い。粒子を除去できるフィル
タによって,油及び粒子の量を減らすことができる。ガスの流れによって多くの試料に発生した静電気が,
粒子状物質を引き付けてしまう場合がある。ガスの流れの中でイオン化ノズルを使用することによって,
これらの問題は解消できる可能性がある。

8.3 装置の真空への暴露

  表面分析装置の真空室への試料導入によって,水蒸気,可塑剤,他の揮発性成分などの表面化学種が脱
離する可能性がある。そのような化学種の脱離によって,近くにある試料が二次汚染されたり,真空室の
圧力が増加したりする可能性がある。表面脱離が起こると,検出したい化学種も変化してしまう可能性が
ある。真空室内に残存したガスは,試料表面に吸着し,試料と反応する可能性がある。
試料からの信号の時間変化を観察することによって,好ましくない影響を調査することが可能である。

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例えば,装置をスパッタ深さプロファイルの測定モードに設定し,イオン銃を作動させないで測定する。
分析信号の変化が観測された場合,試料表面が変質したことを考慮しなければならない(例えば,表面化
学種の脱離)。入射ビーム強度の変動又はドリフトが原因で変化することにも注意する必要がある。

8.4 電子,イオン及びX線への暴露

  AES [3], [4]における入射電子フラックス,SIMS [5]におけるイオンフラックス,及び程度は低いが,XPS [6]
におけるX線フラックスは,例えば,試料表面と分析室の残留ガスとの反応が促進することで,分析する
試料に変化を引き起こす。
また,入射フラックスは,試料を部分的に加熱又は分解し,又は加熱及び分解することで,表面の化学
的状態が変化し,場合によっては分析室の真空圧力が上昇し,又は分析室を汚染する。
8.3に示すように,スパッタ深さ方向分析の設定でイオン銃を動作させないことで,望ましくない影響を
調査することができる。
AES,SIMS及びXPSの深さ方向分析に用いる入射イオンビームは,対象の表面を損なうだけではなく,
周囲の表面にも影響を与える。これらの影響は,一次イオンビームが十分に集束していないことで起き,
また,一次イオンビーム由来の中性粒子の衝突によって起こる。
表面分析法において,イオン照射領域に近接した領域を後で分析することは好ましくない。
場合によっては,スパッタされた物質が試料の周囲に付着し,又は分析室に格納している他の試料上に
付着する。

8.5 分析室の汚染

  分析者は,他の試料又は分析室を汚染するような物質に気を付けることが望ましい。
水銀,テルル,セシウム,カリウム,ナトリウム,ひ素,よう素,亜鉛,セレン,りん,硫黄などの高
い蒸気圧の元素は,注意して分析する必要がある。
例えば,ある種の高分子,発泡体及びその他多孔質の物質並びにグリース及び油,液体など他の多くの
物質も高い蒸気圧を示すことがある。
分析室の真空条件を満たすような安定した試料であっても,分析時にプロービングビームを照射した場
合に,試料を変質させ,結果として8.4に示すように分析室を著しく汚染することがある。
表面拡散による試料の汚染は,特に,シリコン化合物[7]及び炭化水素化合物で問題になることがある。
分析室が良好な真空状態であっても,表面拡散による汚染が見つかることがある。SIMSでは,二次イオ
ン引出レンズ又はその他周辺面にスパッタされた原子が,再度スパッタされて試料表面に戻ることがある。
この影響は,二次イオン引出レンズ又は試料近傍の周辺面をなくすことで軽減することがある。
多重イマージョンレンズストリップを使用すること,又はレンズを清掃することが,この影響を軽減す
るのに役立つ。
特に有機物又は14.1に示すようなガス放出しやすい材料を取り扱う場合には,プロービングビームの使
用順序が重要になることがある。

9 試料保管及び搬送

9.1 保管時間

  分析前に試料を保管する場合は,保管中に分析表面が汚染されることがないように注意することが望ま
しい。清浄な実験環境中でも,表面は,AES,XPS,SIMS及びその他の表面に敏感な表面化学分析手法に
よって分析される深さで,すぐに汚染される。

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9.2 保管容器

  試料保管用として選択した容器は,微粒子,液体,ガス又は表面拡散によって試料に汚染を転写しては
ならない。可塑剤(排出されて表面を汚染する可能性がある)のような揮発性種を含む容器は不適当であ
る。分析される試料表面は容器又は他の物に接触しないことが望ましい。内径が試料幅よりも少し大きい
ガラス瓶は表面が接触することなく試料を保持できる。表面との接触が避けられないときは,あらかじめ
分析によって清浄であることが確認されたアルミニウムホイルで包むとよい。
試料の保管にはグローブボックス,真空室及びデシケータのような容器を選択するのがよい。真空デシ
ケーターは普通のデシケーターよりも望ましく,潤滑剤(グリース)及び機械式ポンプオイルは使用しな
いようにする。
注記 同じ容器内に複数の試料を保管すると試料間で相互汚染する可能性がある。

9.3 温度及び湿度

  試料の保管又は搬送時の,温度及び湿度が影響する可能性を考慮することが望ましい。最も有害な影響
は温度上昇に起因する。加えて,低温試料を高湿度下におくことで表面結露を引き起こす可能性がある。

9.4 試料搬送

  制御環境から表面分析装置への試料搬送が可能な特別設計の搬送容器について報告されている[8], [9]。制
御環境はもう一つの真空室,グローブボックス(ドライボックス),グローブバッグ,反応槽又は成膜槽が
考えられる。この制御環境は分析室に直接取り付けることができ,搬送は耐久性のあるバルブを通して行
われる。グローブバッグは分析室に一時的に取り付けることができ,試料が移動搬送された後,グローブ
バッグを取り外し,分析室のフランジに交換する。
試料へのコーティングが適用できる場合には,これによって大気中での搬送が可能になる。コーティン
グは分析室内又はその導入室内で,加熱又は真空引きによって除去される。この方法はひ化ガリウム
(GaAs)の搬送に適用され,成功している[10]。AES又はSIMSで分析する表面は,シリコンに基づく技術 [11]
における多結晶シリコンのように均一な層で覆われている場合がある。この場合,コーティングは測定中
のスパッタリングで除去される。ただし,分析結果におけるアトミックミキシングの影響を考慮する必要
がある。

10 試料の取付手順

10.1 一般手順

  試料はしばしば,受け取ったままの状態で分析する。通常は,表面汚染及び大気からの吸着物は除去せ
ずに分析する。これは,除去作業による試料表面の変質を避けるためである。その場合試料は,試料ホル
ダにクリップ又は止めねじで直接取り付ける。この方法は,AES測定において試料の帯電が懸念される場
合に特に重要であり,クリップは接地電位との電気的な接触を確保する助けになり得る。クリップ又は止
めねじが,分析領域に接触していないこと,及び分析中に入射ビーム及び検出粒子の妨げにならないこと
を確認する必要がある。
一部の試料では,柔らかい金属はく(箔)(例えば,インジウム)に押し付ける,又は粘着テープの粘着
面上に置いて取り付ける方が容易である。この場合,金属はく又はテープを,試料台にクリップ又は止め
ねじで固定する。両面テープを用いる場合は,クリップ又は止めねじで試料台上に固定する必要がないと
いう利点がある。分析する表面が金属はく又はテープに接触していないことを確認する必要がある。全て
のテープについて,真空適合性及び起こり得る試料汚染の可能性を事前に調べておくことが望ましい。こ
れらの方法は,XPS,AES及びスタティックSIMSでは,多くの場合,適用される。しかし,イオンフラ

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ックスがより大きいダイナミックSIMSではあまり採用されない。

10.2 粉体及び微粒子

  粉体及び微粒子は,導電性の基板上に置くことができれば,多くの場合,分析がより容易である。イン
ジウムはくは室温で柔らかく,粉体又は微粒子をはく中に部分的に埋め込むことができるため,よく用い
られる。アルミニウム,銅又は他の金属はくもこの目的のために用いることができるが,これらに固定で
きる粉体及び微粒子はごく僅かである。XPSでは,粘着テープの粘着面に粉体を付けることができる。通
常,ほとんどのXPS装置の真空圧力を保つことができる金属性テープが最適である。どのようなテープを
用いたとしても,真空適合性及び起こり得る試料汚染について事前にテストするのがよい。微粒子の場合,
顕微鏡で観察しながら細い針を使うことで,適切な基板上に置くことができる場合もある。不溶性の微粒
子は,溶液上に浮かべて導電性のフィルタの上に取り出すことができる場合もある。また,微粒子は粘着
テープ又はレプリカ作成用コンパウンド上に移すことも可能である。
多くの粉体は,焼結なしでペレットに成形(錠剤成形)できる。赤外分光で用いられる臭化カリウム板
のように,粉体を板状に圧縮することもできる。得られた表面を清浄な鋭い刃で僅かに削ってから測定す
る。ペレットの使用(錠剤成形)は,XPSにとっては優れた方法であるが,AES及びSIMSではしばしば
試料の帯電を引き起こす。一部の試料では,成形中の加圧又は加温によって変質してしまうおそれがある。

10.3 線材,繊維及びフィラメント

  線材,繊維及びフィラメントの大きさは,分析の際,一次ビームを試料上だけに照射することができな
いほど非常に小さい。結果として,記録された測定スペクトル中には,試料を固定した材料に関する情報
が含まれる場合がある。そのような場合には,不要な信号を最小限にする,又は固定している部材が焦点
から外れるように試料を固定してもよい。例えば,試料を穴の中に固定することが考えられる。また,多
数の線材,繊維及びフィラメントを分析装置の観測視野を埋めるように並べたり,束にしたりしてもよい。
場合によっては,これらの試料を,10.2に示すように,粉体及び微粒子の場合と同じ方法で固定してもよ
い。

10.4 台座を用いた固定

  特に,大きい分析領域をもつ分析装置においては,分析者から試料だけが見えるように,試料を台座に
固定できる場合がある。この方法は,分析領域よりも小さい試料の分析が可能になる。

10.5 分析中の熱損傷の低減

  表面分析中の試料の熱損傷を低減するために,冷却プローブ上に,又は所望の温度で液体若しくは気体
を流して冷却したステージ上に,試料を固定してもよい。試料と試料固定系との間の熱接触が良好である
ことは重要である。粉体のような試料では,錠剤成形することによって,放熱が増加する効果がある。金
属はくで試料を包むことが有効な場合もある。11.4.2及び11.4.3に記載しているように,試料中のエネル
ギー損失を低減することも有効であるが,この場合,データの取得時間が長くなる。

11 試料帯電を低減する方法

11.1 概要

  導電性が不十分な試料にとって試料帯電は,重大な問題となる。通常,入射X線よりも,入射電子ビー
ム又はイオンビームによる帯電の方が影響は大きい。XPSにおける帯電は,通常,大面積照射型又は非単
色化X線よりも,集束型単色化X線を用いた場合の方が深刻である。試料表面が不均質又はビーム照射が
集中する場合には,帯電量が分析領域内で異なることがある。

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11.2 導電性材料によるマスク,グリッド,ラッピング又はコーティング

  導電性材料のマスク,グリッド,ラッピング又はコーティングを用いて絶縁試料を覆うことで,可能な
限り分析領域付近で接地することができる。グリッドは表面の僅かに上に懸架[12]してもよい。金属はくの
ラッピングも同様の目的に使える。AESの場合,一次電子ビームを偏向させ得る又は分析を乱し得る程度
の(散乱された電子及びイオンからの)電荷の蓄積を避けるために,試料の直接の分析領域ではない絶縁
領域を覆うことは重要である。スパッタリングがマスク,グリッド又はラッピングと併せて用いられると
きは常に,分析領域上に被覆材料がスパッタされていないことを確かめることが望ましい。イオン銃作動
中にはグリッドが移動し,その後分析中には元に戻るような可動性グリッド[13]が報告されている。接地す
る導電性の経路を分析点の近くに設けるために,コロイド状銀,銀エポキシ又はコロイド状グラファイト
のような材料が使用できる。ただし,溶剤からのガスの放出が問題を起こす可能性があることに注意が必
要である。試料に薄く導電層をコーティングして,更にそのコーティング層をスパッタリングで取り除く
ことが有用な場合もあるが,試料の最表層についての情報は一般に失われる。この方法は,クレータの壁
が電気的に絶縁性を保ったままのときに帯電を再現する可能性があるものの,スパッタ深さ方向分析に利
用できる。コーティングを,マスク又はラッピングと組み合わせることが有効な場合もある。

11.3 フラッドガン

  XPSの場合,非導電性の試料の帯電を減少させるために,試料の近くにあるフィラメントからの低エネ
ルギー電子が利用できる。従来型のX線源で使用されている窓材も,帯電を抑える電子源として作用する
場合がある。SIMSの場合,絶縁体分析時の帯電現象に電子及びイオンの光学系の相対位置が影響を与え
る可能性がある[14], [15]。正イオンSIMS深さ方向分析には,イオンビームと同等か,又はそれ以上の電流密
度の集束電子ビームの使用が必要である。負イオンの一次ビームも使用できる。

11.4 電子ビーム及びイオンビーム

11.4.1 AESでの一次ビームの入射角
二次電子放出効率及び入射ビーム電流密度は,一次電子ビームの入射角の関数である。試料表面に対し
て,平行に近い入射は二次電子放出効率を増加させる。したがって,平たんな試料のAES分析時の帯電を
減少させるためには一般的に試料表面に対して,平行に近い入射がより望ましい[16][18]。
11.4.2 AES及びSIMSでの一次ビームのエネルギー
AESの場合,二次電子放出効率は一次電子ビームのエネルギーの関数でもある。試料の帯電を減少させ
るために,二次電子放出効率が1よりも大きな一次エネルギーを選択することが,一般的により望ましい。
層構造の試料に対しては,入射電子ビームのエネルギーを増加させることで分析される層の下にある導電
層まで侵入させ,帯電の減少を達成できる可能性がある。導電層が適切に接地されていれば帯電中和でき
る可能性がある。SIMSの場合,入射イオンのエネルギーが試料の帯電に影響する[14]。
11.4.3 AES及びSIMSでの一次ビームの電流密度
AES及びSIMSにおいて,試料の帯電は,一次電子又は一次イオンビームの電流密度を減少させること
によって軽減される。電流密度の減少は,全電流を減少させること,ビームの焦点をぼかすこと,又は試
料表面の一部でのビームの走査若しくは入射角度を変えることによって達成できる。
11.4.4 AESでの電子ビームとイオンビームとの併用
試料が深さ方向に均一のとき,AESにおける帯電は分析中に試料を正イオンでスパッタリングすること
で軽減することができる場合がある。それらイオンの正電荷は一般的に,一次電子ビームによって生成さ
れる負電荷を部分的に中和する。12.9に示すように,イオンビームによって誘起される表面組成の変化を
考慮しなければならない。

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JIS K 0154:2017の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 18116:2005(IDT)

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