24
K 0155 : 2018
1.2
20 kV
1
0.8 10
0.6
Y
0.4 5
0.2 2
00 000
2 2000 4 000
0 000
4000 6 6000 000 10 000
8 800010000
X
X イオン質量(u)
Y 効率
図C.1−220 kVのポストアクセラレーション電圧でのCrクラスターイオン(上の曲線)
及び炭化水素(下の曲線)の推定検出効率[5]
900
850
800
750
Y
2
700
650
3
600
0 1000 1 1500
500 1 000
500 500 2 2000
000 22500
500
X
X イオン質量(u)
Y MCP電圧(V)
1 動作電圧
2 プラトーの98 %(VN)
3 プラトーの50 %(VT)
図C.2−MCPの動作電圧,VT及びVN
――――― [JIS K 0155 pdf 26] ―――――
25
K 0155 : 2018
附属書D
(参考)
直線性に影響を及ぼす装置因子
D.1 概要
多くの装置は,補正を行うと強度スケールにおいて良い直線性を達成している。しかしながら,このこ
とはいずれの装置も一様に当てはまるとは限らない。同じ設計の装置を同じ測定条件で使用した場合にも,
著しく直線性が失われることもある。研究機関同士の検討では,12CH3+ピークとの相対強度を計測する限
りにおいては,強度スケールの直線性に次の項目に対する顕著な依存性は見られなかった[1]。それは,装
置の形式,測定条件(一次イオン種,一次イオン照射エネルギー及び一次イオンドーズ量),スペクトルの
再現性,カーボン系の汚染量などである。強度スケールの直線性に偏差が生じる幾つかの原因が確認され
ている。そして,それらはD.2以下に概要が示されている。これらは分析者が装置の強度スケールの直線
性が失われた場合に,その原因を調べる手助けとなるもので,直線性の失われる一般的な原因であり,網
羅的なリストとはなっていない。より詳細については参考文献[1]を参照。
D.2 信号の不均一性
式(1)を使った不感時間補正はcMの非線形関数であるために,二次イオン強度が空間的に変動する(例
えば,不均一な試料),時間的に変動する(例えば,試料が損傷を受ける,又は一次ビーム電流の変動)場
合には単純な補正に改良を加えなければならない[7]。5 %の一次イオンビーム電流の変動は,補正された
信号強度において最大で2 %程度の誤差を生むことになる。二次イオン強度が異なる画素で桁違いに変動
するような不均一な試料においては,その誤差が一次イオンビーム電流の変化と比較して大変に大きなも
のとなり得る。時間的に安定した二次イオン強度であるが空間的に不均一な試料においては,特定の二次
イオンに対する不感時間補正された強度を計算する適切な方法としては,各測定画素ごとに式(1)を適用し,
全ての結果を合算する方法である。式(1)の関数形式のために,このピクセルごとの補正法で得られる強度
は,場所による変動を無視した,全体で計測された二次イオン強度を式(1)に当てはめる一般的な方式(し
かし,正確性に欠ける。)よりも大きな値となる。
参照試料のPTFEにおいて信号不均一性のよくある原因の一つは,電子銃の調整不良に起因して帯電中
和が有効に動作していないことである[1]。測定している領域(この部位は帯電している。)とその外側の
境界で試料の表面電位が違っていることに起因した帯電中和の不良は,一次イオンビームを走査している
周辺領域での強度低下を引き起こすことになる。そのことは引出し電場をゆがめることになり,一次イオ
ンビームを走査している周辺領域からの二次イオンを偏向させ,分析管への飛行を妨げている[15]。この
ような現象のために,二次イオン強度が場所的な不均一性に強く依存する要因となる。表面帯電が蓄積す
るにつれて,二次イオン強度も時間依存性をもつことになる。それゆえ,より大きな一次イオンビーム電
流で帯電中和が不十分になり始めると,図6に計算した12CxFy+/13C12Cx−1Fy+同位体比は,各ピクセル又は
各スキャンごとに不感時間補正した値ではなく全測定強度に不感時間補正することによって低くなる。こ
れは,より大きな一次イオンビームでの測定では直線性がより低下する一つの例である。性能を最適化す
るためには,装置の製造業者が提供する手順書に従って帯電中和用の電子銃の調整などをすることである。
その後,新たにデータを測定し,式(1)に従って全体で不感時間補正を行った数値の直線性を計算した。電
子銃の調整前は95 %の直線性に対して一つのパルス当たり0.5カウント以下と直線性が劣っていたが,一
――――― [JIS K 0155 pdf 27] ―――――
26
K 0155 : 2018
方,調整の後はパルス当たり0.9カウントと,非常に改善した結果となった。一次イオンビームの走査領
域の中央25 %からの信号に制限し,試料表面の僅かな帯電の影響がある一次イオンビームを走査している
周辺領域を除いて解析を行うと,その線形性は98 %以上に改善した。
D.3 検出器の暗カウント
検出器の飽和がそれほど影響を受けない領域の小さなcM値においても,線形性から逸脱する装置がある。
これらの逸脱は,一般には,LMのより低い値の方向となっている。この現象は測定時間が長くかかる一次
イオンビーム電流を小さく設定した条件の下でスペクトルを測定するときに発生する場合が多い。これら
のスペクトルはS/N比が低下,一次イオンビーム電流の変動,バックグラウンド強度が増加したときなど
の場合に生じやすい。最初の二つの項は,12CxFy+/13C12Cx−1Fy+同位体比に対して無作為に影響する(それ
ゆえ,測定結果の直線性には寄与しない。)が,一方,後者の効果(両方のピークのバックグラウンド強度
を増加させる。)はLMをより小さな計算値に導き,ピーク比率を系統的に低下させる原因となる。例えば,
ディスクリミネータの電圧の設定が低過ぎると,MCP検出器における散発的な暗カウントの発生によって
バックグラウンド強度の増加が発生し得る。
D.4 検出器の効率
検出器の効率は,SIMSにおいては直線性に影響する。分析管透過率を一定と仮定したイオン検出の確
率は,二次イオンの質量及び試料の組成に依存する。そして,検出器の設定に強く依存する。これらのパ
ラメータとしては,MCPの印加電圧,ポストアクセラレーション電圧,そして,ディスクリミネータ電圧
の設定などである[5]。しかしながら,検出確率に由来する二次イオン強度への影響は詳しく調べられてい
ない。例えば,多数の二次イオンがMCPに連続的に入射する場合は,一つの二次イオンが検出器に入射
する場合と比べるとパルスハイトが高くなる。ディスクリミネータ電圧が高過ぎる場合,一つの二次イオ
ン入射では多数の二次イオン入射よりも検出効率は低くなる。また,一次イオンパルスに励起された特定
の二次イオンの数はポアソン分布に従い,相対的に弱いピークは相対的に強いピークと比較すると,単一
イオンとして検出器に入射する現象の割合がより多くなる。それゆえ,ディスクリミネータ電圧がうまく
調整されていない装置では,信号強度はイオン強度の関数にはなっているが,その検出器効率は非直線性
を示すことになる。
例えば,MCP印加電圧が低く,かつ,ディスクリミネータ電圧が高い場合には,検出器効率が最も低く
なる。そして,より弱い13C12Cx−1Fy+ピークはより低い二次イオン強度で検出されるために,厳密に調整
されたシステムと比較すると同位体比率は大幅に増加する。この効果はディスクリミネータ電圧を高くし
過ぎた場合の電子分光で観察された信号強度の非直線性に類似している[16]。この効果は重要な問題では
あるが,幸いなことに,頻繁に見かける事象ではない。表1に与えられた推定同位体比に対して,測定さ
れた同位体比を比較することによって,この問題を効果的に診断できる。
最適な検出効率,そして,弱いピークに対する線形性の強度を維持していることを確信するには,MCP
印加電圧,ディスクリミネータ電圧が装置の製造業者のハンドブック,又は参照文献[5]の調整手順に従い
正しく設定することが望ましい。ディスクリミネータ電圧は重大な検出器の暗カウントが発生しない最低
の電圧で操作するのがよい。これらのカウントは一次イオンビームを切った状態でのマススペクトル中の
バックグラウンド強度を測定することで計測可能である。
――――― [JIS K 0155 pdf 28] ―――――
27
K 0155 : 2018
参考文献
[1] Lee J.L.S., Gilmore I.S., Seah M.P. Linearity of the instrumental intensity scale in TOF-SIMS−A VAMAS
interlaboratory study. Surf. Interface Anal. 2012 Jan, 44 (1) p. 1-14
[2] JIS K 0153 表面化学分析−二次イオン質量分析法−スタティック二次イオン質量分析法における相
対イオン強度目盛の繰返し性,再現性及び一定性の確認方法
注記 対応国際規格 : ISO 23830,Surface chemical analysis−Secondary-ion mass spectrometry−
Repeatability and constancy of the relative-intensity scale in static secondary-ion mass spectrometry
[3] JIS K 0154 表面化学分析−分析試料の準備及び取付けに関する指針
注記 対応国際規格 : ISO 18116,Surface chemical analysis−Guidelines for preparation and mounting of
specimens for analysis
[4] Gilmore I.S., & Seah M.P. Electron flood gun damage in the analysis of polymers and organics in time of flight
SIMS. Appl. Surf. Sci. 2002 Feb, 187 (1-2) p. 89-100
[5] Gilmore I.S., & Seah M.P. Ion detection efficiency in SIMS: energy, mass and composition dependencies for
microchannel plates used in mass spectrometers. Int. J. Mass Spectrom. 2000 Oct, 202 (1-3) p. 217-229
[6] ISO 13084,Surface chemical analysis−Secondary-ion mass spectrometry−Calibration of the mass scale for a
time-of-flight secondary-ion mass spectrometer
[7] Stephan T., Zehnpfenning J., Benninghoven A. Correction of dead time effects in time-of-flight mass
spectrometry. J. Vac. Sci. Technol. A. 1994 Mar-Apr, 12 (2) p. 405-410
[8] Keenan M.R., Smentkowski V.S., Ohlhausen J.A., Kotula P.G. Mitigating dead-time effects during multivariate
analysis of TOF-SIMS spectral images. Surf. Interface Anal. 2008 Feb, 40 (2) p. 97-106
[9] Lee J.L.S., Gilmore I.S., Fletcher I.W., Seah M.P. Multivariate image analysis strategies for TOF-SIMS images
with topography. Surf. Interface Anal. 2009 Aug, 41 (8) p. 653-665
[10] Gilmore I.S., & Seah M.P. Static SIMS: A Study of Damage using Polymers. Surf. Interface Anal. 1996 Oct, 24
(11) p. 746-762
[11] Gilmore I.S., & Seah M.P. Investigating the Difficulty of Eliminating Flood Gun Damage in TOF-SIMS. Appl.
Surf. Sci. 2003 Jan, 203-204 pp. 600-604
[12] Gilmore I.S., & Seah M.P. Static SIMS: Towards Unfragmented Mass Spectra−The G-SIMS Procedure. Appl.
Surf. Sci. 2000 July, 161 (3-4) p. 465-480
[13] Gilmore I.S., & Seah M.P. G-SIMS of Crystallisable Organics. Appl. Surf. Sci. 2003 Jan, 203-204 pp. 551-555
[14] Seah M.P. Quantitative Analysis−Detectors, Repeatability and Reproducibility. VAM Bulletin. 1993, 10 pp.
23-25
[15] Shard A.G., Lee J.L.S., Gilmore I.S., Jerome S. Lateral Charging Effects in SIMS Imaging, presented at the 6th
European Workshop on Secondary Ion Mass Spectrometry, Muenster, Germany, September 2008
[16] Seah M.P., Gilmore I.S., Spencer S.J. Signal Linearity in XPS counting systems. Journal of Electron
Spectroscopy. 1999 July, 104 (1-3) p. 73-89
――――― [JIS K 0155 pdf 29] ―――――
28
K 0155 : 2018
K0
7
附属書JA
15
(参考)
5 : 2
JISと対応国際規格との対比表
018
ISO 17862:2013,Surface chemical analysis−Secondary ion mass spectrometry−
JIS K 0155:2018 表面化学分析−二次イオン質量分析法−単一イオン計数飛行
時間形質量分析器における強度軸の線形性 Linearity of intensity scale in single ion counting time-of-flight mass analysers
(I) JISの規定 (II)国際 (III)国際規格の規定 (V) JISと国際規格との技術的差
(IV) JISと国際規格との技術的差異の箇条ごと
規格番号 の評価及びその内容 異の理由及び今後の対策
箇条番号 内容 箇条番号 内容 箇条ごと 技術的差異の内容
及び題名 の評価
附属書B 帯電中和の設定 附属書B 帯電中和の設定につ 変更 ISO規格では規定となっているが,ISO規格改訂時に提案する。
(参考) いて規定 JISでは内容から参考とした。
附属書C イオン検出器の設 附属書C イオン検出器の設定 変更 ISO規格では規定となっているが,ISO規格改訂時に提案する。
(参考) 定 について規定 JISでは内容から参考とした。
JISと国際規格との対応の程度の全体評価 : ISO 17862:2013,MOD
注記1 箇条ごとの評価欄の用語の意味は,次による。
− 変更 国際規格の規定内容を変更している。
注記2 JISと国際規格との対応の程度の全体評価欄の記号の意味は,次による。
− MOD 国際規格を修正している。
JIS K 0155:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 17862:2013(MOD)