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K 0156 : 2018 (ISO 23812 : 2009)
6 測定手順
6.1 深さ軸の正確な校正を行うために,分析試料及びデルタ多層標準物質を同じエネルギー及び入射角
の一次イオンを用いて測定しなければならない。イオン照射条件(エネルギー,入射角,イオン電流及び
走査領域)の設定に対して,スパッタリング率,深さ補正係数及び深さ軸のシフト距離(7.2.3参照)を一
旦決定しておけば,あらかじめ決定した値を深さ軸の決定に用いることができる。スパッタリング率の再
現性の限界によって,深さ軸にはばらつきがあることに注意することが望ましい(6.5参照)。
6.2 二次イオン質量分析計の調節及び最適化に関して,イオンエネルギー,イオン種,イオン電流,二
次イオン極性,一次イオン走査領域,分析領域,一次イオン電流の安定性,試料導入,検出二次イオンな
どの分析条件は,装置に添付されている取扱説明書又は各機関で文書化された手順書に従って設定するの
がよい。
6.3 デルタ多層標準物質のSIMS深さ方向分布は,表面から多層膜と基板との界面近くまで,又は標準
物質に添付される説明書に記載された深さまで測定しなければならない。ただし,イオン照射によって発
生する表面荒れによって上記深さに達する前に二次イオン強度の変化が生じる場合には,表面荒れが生じ
る前に深さ方向分布測定を終えなければならない。
6.4 各デルタ層に対して測定点数が20を超えるように,一次イオン強度,走査領域などの測定条件を決
めなければならない。
6.5 再現性を確かめる測定では,デルタ多層標準物質のSIMS深さ方向分布を3回測定し,分布の繰返
し性を確認しなければならない。各デルタ層に達する時間は分析に要求される正確さで再現しなければな
らない。デルタ多層標準物質のSIMS分布を再現しない場合には,一次イオン電流の変動,走査の均一性
などの項目に対して装置の性能を確認しなければならない。
6.6 分析試料のSIMS深さ方向分布は,デルタ多層標準物質と同じ条件で測定しなければならない。
なお,必要に応じて一次イオン電流及び/又は一次イオン走査領域を変化させることによって,一次イ
オン電流密度を変えてもよい。
7 校正手順
7.1 校正の原理
7.1.1 この規格は,スパッタリングの初期の非定常領域におけるスパッタリング率変化を補正することで
深さ軸の校正をするための式を示す。
7.1.2 スパッタ深さ方向分析によって得られるデルタ層の分布(例を,図1に示す。)は,本来のデルタ
層の層構造とは異なり,スパッタリング率が定常状態に達した後であってもデルタ層のピーク位置シフト
が生じる。アトミックミキシング及びピークの重なりによるピーク位置シフトの見積りを,附属書B及び
附属書Cに記載する。
――――― [JIS K 0156 pdf 6] ―――――
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K 0156 : 2018 (ISO 23812 : 2009)
X 深さ(nm)
Y イオン強度(counts・s−1)
図1−シリコン中のボロンデルタ層のSIMS深さ分布[2]
7.2 標準物質によるスパッタリング率の決定方法
7.2.1 標準物質のスパッタ深さ方向分布(スパッタリング時間に対するイオン強度)によって,標準物質
のデルタ層の位置を決定する。ピーク位置を決定する方法には四つあり,これらの中から一つを採用し,
ピーク位置として決定することができる。
なお,採用する方法ごとに得られるピーク位置は異なり,その結果シフト距離も異なる。このシフト距
離を与える次に示す四つの方法のうち,分析試料の測定データに最も適した方法を選ぶ。
a) デルタ層位置を,デルタ層分布の極大値となる位置とする。
b) デルタ層位置を,デルタ層分布それぞれの半値全幅の中心となる位置とする。
c) デルタ層位置を,式(1)に示すi番目のデルタ層の重心位置(iz)とする。
zbi
zI z
zai
zi zbi (1)
Iz
zai
ここに, z : i 番目とi番目のデルタ層との間で強度が最小となる位置
ai
z : i番目と i 番目のデルタ層との間で強度が最小となる位置
bi
I : 深さzにおけるイオン強度
d) デルタ層位置を,JIS K 0169に規定する手順に基づく式(C.1)の 0zとする。
a) 及びb) の場合,統計変動を考慮した適切な平滑化処理を実施することが望ましい。
注記1 これらのデルタ層位置は,アトミックミキシングによって本来のデルタ層の位置からシフト
しているかもしれない。また,シフトの方向はマトリックス元素及び分析元素の相対的なノ
ックオン現象に依存する。シフト量は,一次イオンエネルギー及び入射角に依存する。この
シフトを軽減するには,適切な一次イオンエネルギー及び入射角を選ばなければならない。
アトミックミキシング効果がマトリックス元素と分析元素で同じであると仮定すれば,アト
ミックミキシングによるピークシフトは,附属書Bに示したように見積もることができる。
――――― [JIS K 0156 pdf 7] ―――――
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K 0156 : 2018 (ISO 23812 : 2009)
シリコン中のほう素は,この単純な事例とみなすことができる。附属書Bによれば,一次イ
オンエネルギー1 keV以下の場合において,この差異は1 nm未満に収まっている。
注記2 デルタ層のピークは,重心位置に比べて2倍かそれ以上に及ぶエネルギーに非線形に依存し
た顕著なシフトを示すことが報告されている。隣り合ったピークの重なりが無視できて(7.2.3
の注記1参照),アトミックミキシング効果がマトリックス元素と分析元素で同じである場合,
重心位置は本来のデルタ位置をほぼ示す。
7.2.2 表面からi番目のデルタ層位置へ達するまでのスパッタリング時間をitと定義する(図2参照)。隣
り合うデルタ層位置のスパッタリング時間差 Δtiti ti 1は,表面からi番目のシリコン層をスパッタする
0
のに必要な時間を意味する(ここで, t 0 とする)。i番目の深さを izとし,i番目のシリコン層の厚さ
を zi zi zi 1とする。このとき,i番目の層の平均スパッタリング率を式(2)に示す。
zi
ri (2)
ti
SIMS分析では,測定初期においてイオン収率が変化する。このイオン収率の遷移的な振舞いによって,
最初のデルタ層又は最初の二つのデルタ層の位置は決められない場合がある。このような場合,位置を決
められるデルタ層を使って深さ校正を行うこととする。最初に検出できるデルタ層よりも浅い領域では,
スパッタ深さは表面から最初に検出できるデルタ層までの平均スパッタリング率を使って概算する。
X スパッタリング時間
Y スパッタ深さ
図2−浅い領域におけるスパッタ深さとスパッタリング時間との関係を示す模式図
7.2.3 それぞれのデルタ層の平均スパッタリング率を決定する。一般に,平均スパッタリング率は表面近
Sr)に
傍では大きいが,数ナノメートルをスパッタした後,定常値(定常状態におけるスパッタリング率
達する。n番目の層及びそれよりも深い領域において,irをSrとみなすことができた場合,スパッタリン
グ時間tにおけるスパッタ深さzを式(3)に示す。
――――― [JIS K 0156 pdf 8] ―――――
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K 0156 : 2018 (ISO 23812 : 2009)
n 1
z ri titi 1 rS ttn 1
i 1
n 1
ri titi1 rStn 1rSt z≧ nz
i 1
S
L rSt (3)
n 1
ここに, LS ri titi 1 rStn 1
i 1
n 1
rS
zi 1 (4)
i 1 ri
SLは深さ軸のシフト距離であり,一次イオン電流密度には依存しない。
注記1 短周期の多層デルタ層試料では,測定されたデルタ層分布がお互いに重なることによって,
5.5の条件を満たさないかもしれない。分布の重なりが顕著な場合には測定されたデルタ位置
はその重なりに影響される。しかしながら,重なりの影響を受けたピークシフトは深いデル
タ層では定常値に達する。このため,デルタ層間距離 iz 潭 さ校正に使うことができる。
隣り合ったデルタ層分布のピーク谷比が2よりも大きい場合,深さ校正に3番目又はそれよ
り深いデルタを使うことができる。ピーク谷比が10以上の場合,それぞれの層は独立してい
るとみなすことができる。この場合,最初のデルタ層に達する前にスパッタリングが定常状
態に達していれば,最初のデルタ層も使うことができる。デルタ層分布の重なりによるピー
クシフトの見積りを附属書Cに記載している。
SL値は7.2.1に規定の手順a),b),c) 及びd) に依存し得る。
注記2
7.2.4 n番目m番目のデルタ層を使う場合,z≧ nz におけるデルタ層の認証された深さを参照すること
で, SL及びSrは線形回帰を使って決定しなければならない。
m m m m
2
ti zi ti tizi
i n i n i n i n
LS 2
(pdf 一覧ページ番号 )
m m
2
m n 1 ti ii
i n i n
m m m
m n 1 tizi ti zi
i n i n i n
rS 2
(pdf 一覧ページ番号 )
m m
2
m n 1 t
i ti
i n i n
アトミックミキシングによるシフトに起因する SLの不確かさを,深さ校正の際に考慮しなければならな
い。
7.3 分析試料の深さ軸校正
7.3.1 標準物質で用いたスパッタリング条件での深さ校正
デルタ多層標準物質から決められたスパッタリング率を使って, z≧ nz でのスパッタ深さを校正する場
合,式(7)を用いて行う。この場合,分析試料のスパッタリング条件は標準物質と同じにしなければならな
い。
――――― [JIS K 0156 pdf 9] ―――――
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S
z L rSt (7)
7.3.2 標準物質で用いたスパッタリング率と異なる条件での深さ校正
一次イオン電流密度がk倍だけ標準物質で使われた条件と異なる場合,ほかのスパッタリング条件は変
化しないとしてスパッタ深さを式(8)に示す。
n 1
ti ti 1 tn 1
z kri krS t
i 1 k k k
n 1
ri titi1 rStn 1krSt z≧ nz
i 1
S
L krSt (8)
z≧ nz でのスパッタ深さは,標準物質から決められた SLとSrとを用いて,式(8)によって決定する。
注記 式(8)は,同じ一次イオン電流密度において分析試料のスパッタリング率が標準物質のスパッタ
リング率とk倍異なる場合にも使うことができる。この現象はシリコンの密度が分析試料と標
準物質とで異なる場合に生じる。
7.4 校正深さの標準不確かさ
7.4.1 デルタ層の位置のシフトは,7.2.1に規定するピーク位置の決定方法に依存する。したがって,SLは
用いた方法に依存して異なる。各種ピーク位置の決定方法及び一次イオン条件によるシフト距離の見積り
を,附属書Bに示す。ただし,実際のシフトは,イオン照射条件だけでなくデルタ層の元素にも依存し,
一般的な式は使用できない。ここでは,定義に依存するシフト距離を,LS と表現する。
7.4.2 n番目の層m番目の層のデルタ層を使ってrSを決定するとき,式(7)を使って校正した深さの
100 1( 2 ) %信頼区間を,式(9)に示す。
LS p rSt Tm n ,1 s1 (9)
ここに, T m n,1 は,自由度 n
m ,有意水準 100 %でのスチューデントのt分布表から得ら
れる棄却限界値である。また,1sは標準物質における層の深さの標準不確かさ sRM を用いて,式(10)から
計算する。
1
2 2
m
2 1 1
rS t ti m 2 2 2
1 m n 1in 1 LS p 1 sRM
s1 rS 1 2 ti zi (10)
m n 1 m
1
m m n 1i n rS rS rS
zi zi
i n m n 1in
式(8)に対しては,校正した深さに対する 100 1 2 %信頼区間を,式(11)に示す。
LS p krSt Tm n ,1 s2 (11)
ここに,
――――― [JIS K 0156 pdf 10] ―――――
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JIS K 0156:2018の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 23812:2009(IDT)
JIS K 0156:2018の国際規格 ICS 分類一覧
JIS K 0156:2018の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISK0147-1:2017
- 表面化学分析―用語―第1部:一般用語及び分光法に関する用語
- JISK0169:2012
- 表面化学分析―二次イオン質量分析法―デルタ多層標準物質を用いた深さ分解能パラメータ評価方法