JIS K 0166:2011 表面化学分析―高エネルギー分解能をもつオージェ電子分光器による元素分析及び化学結合状態分析のためのエネルギー軸の校正方法 | ページ 2

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5 校正方法の概要

  この規格によって分光器を校正するためには,銅及び金の組合せ,又はその代わりに銅及びアルミニウ
ムの組合せからなる標準物質薄片を用いて選択したオージェ電子ピークの測定を行うので,あらかじめこ
れらを入手しておく。これらの標準試料は,実際の分析で用いられる運動エネルギーの高い領域及び低い
領域の端に近いオージェ電子ピークを得るために選ばれたものである。エネルギー軸の直線性を検査する
ためには,中間のエネルギー領域にあるピークを用いる。これらのピークの運動エネルギーは、この目的
に適用できることが十分に立証されており,適切な参照データが公表されている。
作業の構成及び操作手順を,図1に示す。
これら校正の最初の段階については,6.16.5に規定する。初めての校正においては,選択した分光器
設定に対して分光器の動作特性が分からないと仮定する。したがって,6.7によって,Cu M2, 3VV,Cu L3VV
及びAu M5N6, 7N6, 7又はAl KL2, 3L2, 3いずれかの三つのピークの運動エネルギーを一連で測定するが,その
測定を7回繰り返す。これらのデータからピークの運動エネルギーの繰返し性の標準偏差σRが得られる。
この標準偏差には,分光器における電源の安定性,測定試料の位置に対する測定ピークエネルギーの感度
及びピークにおける統計的ノイズ成分が関係している。これらのデータを得るに当たっては,統計的ノイ
ズ成分が比較的小さくなるように,測定条件を規定する必要がある。分光器における電源の安定性及び測
定試料の位置に対する測定ピークエネルギーの感度の寄与は測定する運動エネルギー値によっても変わる
ので,σR測定した三つのピークから得られる繰返し性の標準偏差の最大値を選んでσRに充てる。σRの値
は,試料の位置合せ手順に影響されることがある。6.7.1では,一貫した試料の位置合せ手順を用いること
が要求されており,最終的な校正は,この位置合せ手順を用いた試料の位置で行ったものだけが有効であ
る。
Au M5N6, 7N6, 7ピーク強度は弱い。特に,5 kVの加速電圧では弱く,ピークエネルギーの参照値は5 kV
及び10 kVの加速電圧を用いた場合しか公表されていない。したがって,信号対ノイズ比が不十分な分光
器,2 000 eV以上の運動エネルギーを掃引できない,又は5 kV若しくは10 kVの加速電圧で操作できない
分光器では,代わりにAl KL2, 3L2, 3ピークを用いる。Au M5N6, 7N6, 7ピークを用いることで,02 250 eVの
運動エネルギー範囲が校正可能となり,Al KL2, 3L2, 3ピークを用いた場合は上限が1 550 eVに制限される。
分光器に関する調査では,ピークエネルギーのいかなる測定誤差もピークの運動エネルギーに対してお
おむね比例して増加している。この規格で規定する式は,一般的な状態のときに限って有効である。さら
に,運動エネルギーの測定値と参照値との差が小さく,かつ,運動エネルギーに対して比例して増加する
か,又はそのように近似できるという原則に基づいている。分光器が故障している場合はこの直線性が失
われていることもあるので,中間のエネルギー領域でどの程度の直線性が成立しているかという点につい
て確認する必要がある。検査法を6.7及び6.10に示す。簡便性の観点から,この検査法ではCu L3VVピー
クを用いる。
直線性の検査結果が妥当であるなら,エネルギー軸の校正は,6.11に示す簡単な校正手順が利用できる。
エネルギー軸をどのように校正するかは,実際に分光器がどのように校正されているかに依存するので,
幾つかの作業方法を6.12に示す。また,分析者は,測定する必要のあるピークの運動エネルギーにどの程
度の不確かさを見込むかを考慮しておく必要がある。この規格で用いる幾つかの値を表1に示す。これら
の値は,信頼水準95 %における許容限界±0.2 eV及び±0.3 eVの場合の実例である。表1において校正周
期内における装置変動の許容範囲は重要である。したがって,図1に示すように,校正周期は6.14に示す
分光器変動の測定に基づいて決定する。通常のエネルギーの校正は,適切な校正周期で行うようにする。
ここで,適切な校正周期とは,エネルギー軸の誤差を要求する許容誤差の範囲内に保持できる期間である。

――――― [JIS K 0166 pdf 6] ―――――

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スタート
6.1 標準物質の入手
6.2 標準試料の取付け
6.3 標準試料の清浄化
サーベイスペクトルの記録
6.4 エネルギー軸の校正をする分光器の設定条件の選択
6.5 分光器の操作
6.6 設定
又は仕様変更後の はい
最初の校正か?
6.7 運動エネルギーの繰返し性及び直線性の測定
6.8 運動エネルギーの繰返し性の計算
6.9 参照スペクトルのピークの運動エネルギー値の決定
6.10 エネルギー軸の直線性の点検
いいえ
6.11 通常の校正誤差の決定
6.12 分光器のエネルギー軸の補正
6.13 校正間隔は はい
決めてあるか?
いいえ
6.14 個別の校正ごとの校正時期の決定
決められた校正時まで待って,
次回の校正を行う
図1−校正方法の操作手順

――――― [JIS K 0166 pdf 7] ―――――

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表1−エネルギー軸の校正時の不確かさの見積りにおける各値の計算例
項目 記号 式及び 例 説明
算出元 要求される精確さ 要求される精確さ
(高) (低)
許容限界 eV 使用者選択,
要求する精確さ,及び
±δ 使用者が選択 ±0.2 ±0.3 通常の校正時に取得可
能なスペクトル数によ
って決まる。
繰返し性の標準 初めての校正時に測定
偏差 eV σR 式(1) 0.050 0.050 される分光器の特性値
(6.7参照)。
スペクトル組の 使用者が選択 −
m m=1 m=2 m=1 m=2
測定回数 m=1又は2
校正測定の不確 cl 式(12)又は −
U95 0.185 0.130 0.185 0.130
かさ eV 式(13)
目盛の非直線性 初めての校正時に測定
eV ε2 式(5)又は式(6) 0.050 0.050 0.050 0.050 される分光器の特性値
(6.7参照)。
校正後のエネル −
ギー軸の不確か U95 式(11) 0.192 0.139 0.192 0.139
さ eV
校正周期の内に 設定限界±δを超えな
許容される最大 ±(δ−U95) δ及びU95 ±0.008 ±0.061 ±0.108 ±0.161 いように許容変動範囲
変動 eV を決める。
校正周期の最大 都合のよい校正間隔を
値(0.025eV/月と 選択する。ただし,次
いう定速変動の の条件を満たす。
とき) 月 a)この最大値を超えな
− 6.14参照 0.3 2.4 4.3 6.4
い。b) 4か月を超えな
い。c)突発異状にも対
応できるよう,十分な
余裕をもたせる。
校正周期の選択 観測される変 非実用 −
月 − 動に基づき使 的な選 1 3 4
用者が選択 択肢
注記 不確かさの信頼水準は,95 %。この例は,使用者の選択が,校正の不確かさ及び再校正までの期間に及ぼす影
響を示す。
この規格によって校正すれば,校正直後には測定結果が信頼水準95 %となる不確かさで得られることに
なる。エネルギー軸の誤差は,一般的に時間とともに増大するが,測定の質を決定するために分析(管理)
者が選択した許容限界±δを,次の校正までに超えることがあってはならない。表1の表を完成させるこ
とによって,δの適切な値を定めることができる。分光器の能力に関する知識がほとんど若しくは全くな
い場合,分光器製造業者からのデータがこの点に関して不十分な場合,又は要求精度について明確な指針
をもっていない場合には,表1のδを0.2 eVに設定することから始める。この規格に記載した手順で表の
空欄を埋め,δの値が分光器へ適用可能であるかどうか最終的に確認する。適用できなければ,操作手順
を見直し,U95に関係する項目を一つ以上緩めるか,又はδの値を許容できる範囲内で大きくする。

――――― [JIS K 0166 pdf 8] ―――――

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δが分光器のエネルギー軸の校正における精確さの許容限界であることは重要な点である。その後の測
定では,ピーク幅が広り,計数された統計量の不十分さ,又は帯電効果によって,運動エネルギー値はδ
より大きな不確かさをもつことになる。附属書Dに,そのような不確かさを報告するときの要領を示す。

6 エネルギー軸の目盛の校正手順

6.1 標準物質の入手

  運動エネルギー範囲を2 050 eVまでスキャンでき,5 keV又は10 keVのビームエネルギーを用いること
ができる分光器の校正のためには,銅及び金の試料を用いる。その他の分光器では,銅及びアルミニウム
を使う。これらの試料には,少なくとも99.8 %の純度の多結晶体金属で,大きさ10 mm×10 mm,厚さ0.1
mm0.2 mmのはくの形状のものを用いるのがよい。
試料の清浄化が必要な場合は,銅は1 %硝酸に少し浸した後に蒸留水ですすぐとよい。銅の試料を2,3
日以上空気中に放置した場合は,上記の硝酸に浸すことによって6.3で規定する試料の清浄化が容易にで
きる。

6.2 標準試料の取付け

  銅及び金の組合せ,又は銅及びアルミニウムの組合せからなる試料を,同一のホルダ又は別のホルダに,
止めねじ又は他の金属的手段で電気的な導通を確保して固定する。両面粘着テープは用いない。
注記 試料を取り付けるホルダの材料としては,非磁性材料で,かつ,放出ガスの少ない材料を用い
る必要がある。磁性の強い材料を用いると一次電子線の照射位置が移動したり,又は検出信号
が減少する場合がある。亜鉛を含む合金,黄銅などのホルダ,止めねじ,座金などを用いて,
更に加熱した場合,黄銅などから亜鉛が蒸発して分析室などを汚すため,特に注意が必要であ
る。測定試料として,これらの材料を分析する場合にも,同様の注意が必要である。

6.3 標準試料の清浄化

  超高真空にして,イオンスパッタリングによって表面汚染を取り除き,試料を清浄化する。目安は,サ
ーベイスペクトルで酸素及び炭素のオージェ電子ピークが最も強い金属ピークの高さの2 %以下になるよ
うにする。それぞれの試料についてサーベイスペクトル(ワイドスキャン)をとり,存在すべき純元素の
ピークだけであることを確かめる。ここで必要とされる真空度は,6.11が終了するまで,又は一日(どち
らか早い方)に,酸素及び炭素のピーク高さが金属の最も強いピークの3 %を超えないことである。
この規格に関係する全ての測定は,一日で終わらせる。一日を超える場合には,その日の始めごとに試
料の清浄さを確認する。
注記1 試料清浄化に適切な希ガスイオンスパッタリング条件は,5 keVのアルゴンイオンでは1 cm2
当たり30 μAで1分間である。
注記2 汚染の影響は,一般的に金が最も小さく,アルミニウムが最も大きい。
AESサーベイスペクトルの例を,図2に示す。

――――― [JIS K 0166 pdf 9] ―――――

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カウント/0
運動エネルギー(eV)
図2−ΔE/E一定モードで測定した清浄化された銅,金及びアルミニウムのダイレクトサーベイスペクトル

6.4 エネルギー軸の校正をする分光器の設定条件の選択

  エネルギー軸の校正をする分光器の条件設定をする。パスエネルギー,減速比,スリット,レンズ調整
など,校正が必要なアナライザ設定のそれぞれの組合せごとに6.46.14に示す校正手順を繰り返す。こ
れらの設定値は,分光器校正の日誌に記録する。
注記 分光器及びその回路デザインには,様々な種類がある。ある一つの組合せで校正したレンズの
調整,スリット及びパスエネルギーの値はそれ以外の組合せに対しては必ずしも有効ではない。
大多数の分析者は,ある一つの最適な組合せの条件で正確な測定を行う。したがって,この条
件での校正が必要とされる。どのような校正も実際に設定した組合せに対してだけ有効である。

6.5 分光器の操作

重要−高い計数率[3] 又は不適切な検出器の電圧[3], [4] は,ピークのひずみ(歪)を引き起こし,誤ったピー
クエネルギーの値を与える原因になる。
金の試料を使うときは電子ビームの加速電圧を5 kV又は10 kVとし,もしアルミニウムの試料を用いる
ときは5 kV10 kVの範囲内とする。分光器製造業者の説明書又は試験機関の手順書によって分光器を操
作する。分光器は,ベーキングの後で十分に冷えた状態にする。計数率,分光器の掃引速度及びその他の
分光器製造業者が規定したパラメータについて,分光器製造業者が推奨する範囲内で操作していることを

――――― [JIS K 0166 pdf 10] ―――――

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JIS K 0166:2011の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 17974:2002(MOD)

JIS K 0166:2011の国際規格 ICS 分類一覧

JIS K 0166:2011の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISK0147:2004
表面化学分析―用語