JIS K 3812:2003 電気泳動分析通則 | ページ 2

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なお,高圧ガス保安法に規定する圧力以下の容器を装置の近くで用いるときにも,容器が転倒しな
いように,壁,実験台などに固定しなければならない。
d) 電気泳動装置の操作に先立ち,配管の接続部,流液路などからガス漏れ及び液漏れがないかどうかを
十分に検査する。
e) 装置の点検及び修理は,電源を切って行う。

10.3 試料の準備

 個別規格で定めた条件に従って試料を準備する。

10.4 操作

10.4.1 分析条件の設定 個別規格で定めた条件に従って,次の項目についてそれぞれの値に調節する。
a) 泳動液の種類
b) 泳動液以外の支持体を用いる場合は,その種類(グラジェントゲルを用いる場合は,ゲルなどの組成
変化の内容)
10.4.2 試料の導入 個別規格で定めた条件に従って,試料を導入する。
10.4.3 通電条件 個別規格で定めた条件に従って,電圧,電流,又は電力の値を調節する。時間的に変化
させる場合は,初期値,変化させた時間,変化率,変化後の値などの各種プログラムを調節する。
供給電源は,電気泳動装置の仕様に指定された電圧,電気容量及び周波数で,電圧変動は10 %以下,
周波数の変動がないこと。
10.4.4 試料成分の検出 試料成分の検出方法は,次による。
a) 泳動中検出法 泳動槽の一部に設けられた検出器によって,電気泳動中に検出する。
b) 泳動後検出法 泳動終了後,支持体上に試料成分を固定し,必要があれば染色し,支持体上を走査し
て検出する。又は,支持体から試料成分を抽出して検出する。
10.4.5 検出結果の記録 検出結果の記録方法は,次による。
a) 泳動中検出法を用いた場合の記録方法は,電気泳動開始直後からの検出時間及びそのときの検出器の
出力を連続的に記録する。
b) 泳動後検出法を用いた場合の記録方法は,分画した泳動液の分画番号と検出器の出力と対応させて記
録する。支持体上を走査する場合は,支持体の一端から他端までの走査時間又は走査距離及びそのと
きの検出器の出力を連続的に記録する。
備考,a) 及びb) で得られた,走査時間又は走査距離と検出器出力の連続的な記録を電気泳動図と呼
ぶ。
10.4.6 記録の整理 記録の整理は,次の事項について行う。
a) 日付及び測定者名
b) 電気泳動装置の製造者名又はその形式記号
c) 試料名及び試料導入量(μl又はml)
d) 泳動液を調製するために用いた試薬の製造業者名及び規格
e) 泳動液の種類
f) 支持体の種類,泳動断面の形状,大きさ及び長さ(μm又はmm)
g) 調節した電圧,電流,又は電力条件
h) 泳動槽温度又は室温(℃)
i) 検出器の種類及び操作条件
j) 化学反応を利用した場合は,反応液,反応試薬の種類,量 (ml) 及び反応条件。
k) その他の必要事項

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11. 定性分析

 10.4.5で記録された電気泳動図において,被検成分の存在によって検出器の出力が変化し
た時間又は距離を測定する。このとき同一条件下で測定した未知成分及び推定成分の測定値 (2),並びに形
状 (3) を比較して行う。この場合,測定値及び形状が同じであっても,必ずしも両者が同一であるとは限
らないので,支持体の種類を変えるなど分離条件を変えて測定するか,又は次の定性手法を併用して確か
める。
a) 異なる検出器の使用
b) 化学反応の利用
c) 質量分析法などの利用
注(1) 測定値とは,10.4.5で得られた検出時間,支持体上の距離,移動速度,移動度などである。
同一日,同一分析条件における一定成分の繰返し分析における値のばらつきは,5 %以下でなけ
ればならない。
(2) 形状とは,10.4.5で得られた支持体上の走査結果の画像によるものである。

12. 定量分析

 10.4.5で記録された電気泳動図において,検出器の出力が被検成分の存在によって類似ガ
ウス曲線を描いて変化したとき(これをピークと呼ぶ。)に,このピークの面積は被検成分の濃度に比例す
る。したがって,これを用いて次のいずれかの方法によって被検成分の定量を行う。

12.1 絶対検量線法

 被検成分の純品の既知量を段階的に導入し,ピーク面積(又はピーク高さ)を記録
する。次に成分量を横軸に,ピーク面積(又はピーク高さ)を縦軸に取って図2のように検量線を作成す
る。同一条件のもとで試料を導入し,検出,記録し,ピーク面積(又はピーク高さ)から検量線によって
被検成分の量を求め,試料中の成分量を算出する。この方法は,全測定操作を厳密に一定条件のもとで行
なう。
y


又ク
は面
ピ積




X
成分量
図 2 検量線

12.2 内部標準法

 被検成分の純物質 (X) の既知量 (MX) に内部標準物質 (S) の既知量 (MS) を添加し
た混合試料の電気泳動図を記録し,X及びSのピーク面積(それぞれAX及びAS)を測定する。横軸にMX
とMSとの比(MX/MS) をとり,縦軸にAXとASとの比(AX/AS)をとって,図3のような関係線を作成する。

――――― [JIS K 3812 pdf 7] ―――――

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y
Ax
As
X
Mx
Ms
図 3 内部標準法による検量線
試料の既知量 (m) に対して,内部標準物質の既知量 (n) を検量線の範囲内に入るように適切に加えて
均一に混合し,内部標準物質のピーク面積が検量線作成の際とほぼ同じ大きさになるように導入量を加減
し,同一条件の下で電気泳動図を記録する。
泳動図から被検成分と内部標準物質とのピーク面積の比y= (A'X/A'S) を求め,次に関係線から試料成分
量 (M'X) と内部標準物質量 (M'S) との比x=M'X/M'Sを求めて,次の式によって試料成分量の含有率C (%)
を算出する。ピーク面積の代わりにピーク高さを用いてもよい。
x n
C= 100
m
ここに, C : 含有量 (%)
x : 試料成分量と内部標準物質量との比
m : 試料の既知量
n : 内部標準物質の既知量
内部標準物質には,そのピークが,被検成分のそれと完全に分離するが,なるべく近くなるような物質
が望ましい。

12.3 被検成分追加法

 原試料の電気泳動図から被検成分A及び他の任意の成分Bのピーク面積又は高さ
a1及びb1を求める。次に試料の一定量Wに成分Aの純物質の既知量ΔWAを加え,再び同一条件下で電気
泳動図を記録し,成分A及びBのピーク面積a2及びb2を求めて次の式によって成分Aの含有率C (%) を
算出する。ピーク面積の代わりにピーク高さを用いてもよい。
C= (WA/W) ×100=[ΔWA/(a2/b2・b1/a1−1)W]×100
ここに, C : 成分Aの含有量 (%)
a1 : はじめに測定した成分Aのピーク面積
b1 : はじめに測定した成分Bのピーク面積
a2 : 試料の一定量に成分Aの既知量を加えたときの成分Aのピー
ク面積
b2 : 試料の一定量に成分Aの既知量を加えたときの成分Bのピー
ク面積
ΔWA : 成分Aの純物質の既知量
W : 成分Aを加えたときの試料の量
ΔWAの量は,a2/a1の値が1.22.0の間に入るように加えることが望ましい。

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13. 分離性能の評価方法

 分離性能の評価方法は,ゾーン電気泳動の場合には,適切な対照物質について
の理論段数及び分離度によって行う。

13.1 理論段数 (N)

 理論段数Nによって分離効率を表す。理論段数は電気泳動図において対照物質の検
出時間又は距離及びピーク幅から次の式によって求める。
N=16 (tS /W)2=5.54 (tS /W1/2)2
ここに, N : 理論段数
tS : 対照物質の検出時間又は距離
W : ピーク幅(時間又は距離単位)
W1/2 : ピーク半値幅(ピーク高さが1/2時のピーク幅,時間又は距離
単位)

13.2 分離度 (RS)

 隣接する二つの成分の分離度RSを次の式によって求める。
RS=2 (tS2−tS1) / (W1+W2)
ここに, RS : 隣接する二つの成分の分離度
tS1 : 隣接する二つの成分のうちの一つの検出時間又は距離
tS2 : 隣接する二つの成分のうちのもう一つの検出時間又は距離
W1 : 隣接する二つの成分のうちの一つのピーク幅(時間又は距離単
位)
W2 : 隣接する二つの成分のうちのもう一つのピーク幅(時間又は距
離単位)

――――― [JIS K 3812 pdf 9] ―――――

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附属書(規定) 用語の定義
用語 定義
電気泳動移動速度 試料成分分子又は粒子が,一定時間内に移動した見掛けの距離。電荷をもたない分
velocity
electrophoretic 子又は粒子でも,電気浸透が存在する場合は電気浸透流速に等しい移動速度を示
す。
電気泳動移動度 電気泳動による泳動液中の分子又は粒子の移動速度を,その場の電場の強さで除し
mobility
electrophoretic て得られる値。電気浸透が存在するときは,電気浸透移動度がゼロの状態に補正す
る。
泳動液 試料分子又は粒子を成分分離に適した性状とするための溶液で,適当な電気伝導
性,イオン強度,pHなどをもち,泳動の種類によって緩衝液,酸,塩基,両性電
(electrophoresis) arrier solution
解質溶液又はそれらの混合溶液を適宜用いる。
グラジェントゲル(又はこう電気泳動支持体としての合成高分子ゲルのうち,ゲル密度が連続的に変化するよう
配ゲル) 調製したもの。たん白質などの生体高分子の分離能を広い分子量範囲で向上させる
pore gradient gel ために用いる。
後続液 等速電気泳動において用いられる溶液で,分離したい試料成分イオンと同符号で,
terminating solution かつ,どの試料成分イオンよりも移動度の小さいイオンを含むもの。通常,溶液中
の反対符号のイオンとしては,先行液と同じものが選択される。
先行液 等速電気泳動において用いられる溶液で,分離したい試料成分イオンと同符号(正,
leading solution 負)で,かつ,どの試料成分イオンよりも電気泳動移動度の大きいイオンを含むも
の。通常、溶液中の反対符号のイオンとしては,移動度の小さいものが選択される。
層 等速電気泳動において各種イオンが互いに界面を保ったまま分離されているとき、
layer これらのイオンの界面と界面の間に存在する領域。
ゾーン 試料成分分子又は粒子が泳動液と混じりあいながら,かつ局在している場合の領
zone 域。
ゾーン電気泳動 泳動液の組成が泳動槽全体にわたって均一(したがって泳動液中の電位こう配も均
zone electrophoresis 一)な条件で,試料成分分子又は粒子を細いゾーンとして導入し,移動させながら
互いに重ならないゾーンとして分離する電気泳動。
電気泳動 水溶液中で電場をかけたとき,電荷をもつ化学種及び粒子が電荷と反対符号の電極
electrophoresis 方向へ移動する現象。
電気浸透 管の長さ方向に電場がかかって泳動槽内面又は支持体表面と泳動液との間に生じ
electro-osmosis る電気二重層の可動部分の電荷が泳動槽又は支持体分子の電荷と同符号の電極方
向へ移動するときに,粘性で泳動液も移動する現象。
電気浸透移動度 電気浸透流速を電場の強さで除して得られる値。
electro-osmotic mobility

――――― [JIS K 3812 pdf 10] ―――――

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JIS K 3812:2003の国際規格 ICS 分類一覧

JIS K 3812:2003の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISK0050:2019
化学分析方法通則
JISK0213:2014
分析化学用語(電気化学部門)
JISK8001:2017
試薬試験方法通則
JISR3503:1994
化学分析用ガラス器具
JISZ8103:2019
計測用語