JIS K 6264-1:2005 加硫ゴム及び熱可塑性ゴム―耐摩耗性の求め方―第1部:ガイド | ページ 2

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Vt : 試験試料の摩耗体積
Vr : 基準試料の摩耗体積

5. 摩耗メカニズム

 ゴムが摩耗するとき,その摩耗形態から,一般的には次のように分類される。
なお,実際の使用環境では,摩耗はこれらの幾つもの摩耗が複合して起こる。摩耗形態は接触圧力,摩
擦速度,温度及び摩耗材の状態などでも変化するので,製品の実際の摩耗との相関を論じる場合は,注意
が必要である。
a) アブレシブ摩耗
b) 凝着摩耗
c) 疲労摩耗
d) ころ状摩耗
備考1. これ以外にも,化学的な腐食摩耗 (corrosive wear) や,流体中での浸食摩耗 (erosive wear) も
考えられる。
2. 摩耗後の状態観察によって,パターン摩耗,粘着摩耗などと分類することもある。

5.1 アブレシブ摩耗

 アブレシブ摩耗は,硬く鋭い突起がゴム表面を大きい摩擦力で引っかくときに生
じる。
アブレシブ摩耗のモデルとして,単純な円すい先端の移動によって試料が取り去られる場合を考えると,
摩耗体積は,次の式(6) で表される。
F L tan (6)
V
π H
ここに, V : 摩耗体積
F : 荷重(付加力)
L : 摩擦距離
θ : 円すいの底角
H : 摩耗される試験片の硬さ
すなわち,摩耗体積Vは荷重(付加力)Fのほかに円すい突起の底角θの正接及び摩擦距離Lに比例し,
試験片の硬さHに反比例する。研磨紙などを相手にした場合,摩耗体積は荷重に対して比例し,摩擦距離
についても,同じ面の繰り返しを伴わない場合は比例すると考えてよい。同じ面の繰返しを伴う場合は,
摩耗くずが研磨紙に移着して目詰まりを起こして摩耗量は低下する。アブレシブ摩耗のモデルを図1に示
す。また,ゴムの摩耗試験の研究では,硬さのほかに他の力学的性質も影響を及ぼす場合が多く,切断時
の応力と切断時の伸びとの積の逆数に比例するという結果も多く見られ,ゴムを含む高分子材料のアブレ
シブ摩耗のときの摩耗体積は,次の式(7) が成り立つと一般にいわれている。
F HL (7)
V
σ ε
ここに, V : 摩耗体積
F : 荷重(付加力)
L : 摩擦距離
μ : 摩擦係数
H : 摩耗される試験片の硬さ
σ : 摩耗される試験片の切断時の応力
ε : 摩耗される試験片の切断時の伸び
また,アブレシブ摩耗時には滑り方向に直角にアブレージョンパターンが生成する場合がある。摩耗に
伴いアブレージョンパターンは相手面の摩擦方向に移動していく。

――――― [JIS K 6264-1 pdf 6] ―――――

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図 1 アブレシブ摩耗のモデル

5.2 凝着摩耗

 凝着摩耗は,お互いに滑らかな摩耗材の面とゴム表面とを摩擦したときに,ゴム材料内
部に微小破壊が生じ,相手面に移着して生じる。
凝着摩耗のモデルを図2に示す。凝着摩耗の摩耗体積はアブレシブ摩耗に比べかなり少ない。天然ゴム
など分子鎖切断の起こりやすいゴムでは,低荷重条件で,粘ちょうな低分子量のゴムが生成され,摩擦面
に移着して,凝着摩耗を示す場合が多い。摩耗くずは,ゴム試料から離脱しても相手面に移着し,すぐに
は排除されず,大きく成長してから系外へ排除される。また,凝着摩耗は繰返し摩擦による分子切断が生
じるので,雰囲気中の酸素による化学的作用の影響も受ける。
図 2 凝着摩耗のモデル

5.3 疲労摩耗

 疲労摩耗は,滑らかな凹凸のある面,例えば,金網などの上を弾性体が滑るとき,摩擦
面が繰返し変形を受けることによって生じる。
この場合の摩耗体積Vの荷重依存性は,次の式(8) が成り立つと一般にいわれている。
V F (8)
ここに, V : 摩耗体積
F : 荷重(付加力)
α : ゴムと試験条件によって決まる定数
(α ≧ 1)
疲労摩耗は,荷重(付加力)の指数乗に比例し,荷重依存性が大きい。

5.4 ころ状摩耗

 ころ状摩耗は,消しゴムにおいて日常的によく見られる。ころ状摩耗くずの生成は,
弾性かつ延性をもち,摩擦係数が高く,比較的引裂き力の低い材料で見られる。さらに,ころは,臨界摩
擦速度及び臨界接触圧力以上でないと生成しない。
ころ状摩耗くずが生成され排除されるまでの過程モデルを,図3の a) d) に示す。

――――― [JIS K 6264-1 pdf 7] ―――――

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c)
a)
b) d)
a) 粒状及びフィルム状の小さな摩耗くずの相手面への移着
b) 摩耗くずの合併,フィルムの巻き込みによるころ状摩耗くずの生成
c) ころ状摩耗くずの分裂
d) 成長した摩耗くずの排除又は一部の粒状及びフィルム状摩耗くずのゴムへの再移着
図 3 ころ状摩耗のモデル

6. 摩耗試験のタイプ及び試験装置

 ゴムの摩耗試験には多くの装置があるが,大部分がアブレシブ摩耗
を評価するものが多く,タイヤのトレッド材料を評価するためなどに考案されている。試験装置は,硬く
てとがった研磨材を固定した硬く粗い摩耗材を使う装置と,細かい粉体の摩耗材をそのまま自由に動かす
ような装置に分類される。粉体の摩耗材は,試験片の摩擦表面に介在する場合に使われ,コンベヤベルト,
ライニングなどの摩耗に適用される。タイヤの摩耗は粉体の摩耗材による摩耗に,硬く粗い摩耗材との摩
耗が複合されて生じる例である。
摩耗試験装置をゴム試験片と摩耗材とが摩擦される形態で分類すると,次の a) ) に分類され,その
模式図を図4に示す。
a) 研磨布を巻き付けた回転するドラム上に試験片が接する場合。
b) 円盤状の摩耗材の平面部にゴム試験片が押し付けられ,摩耗材が回転する場合。
c) 研磨輪と円盤状のゴム試験片が互いに円周上で接し,いずれか一方又は両方が回転する場合。
d) 回転する円柱ゴム試験片表面に金属刃が接する場合。
e) 研磨輪の円周と円盤状のゴム試験片の平面部が接し,ゴム試験片が回転し,研磨輪が従属して回転す
る場合。
f) 研磨輪平面部と円盤状ゴム試験片の円周とが接し,スリップしながら回転する場合。
g) シート状の摩耗材表面をゴム試験片が多方向に往復する,又は,固定したゴム試験片上をシート状の
摩耗材が多方向に移動する場合。
h) 円筒装置内部で円柱状ゴム試験片と粉砕石とが回転する場合。
i) 研磨輪と円柱状ゴム試験片とがお互い平面で接し,両方ともが回転する場合。
各種ゴム摩耗試験機について,特徴及び分類をまとめると表2となる。

――――― [JIS K 6264-1 pdf 8] ―――――

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a) b)
c) d)
e) f)
g) h)
i)
図 4 試験装置の分類

――――― [JIS K 6264-1 pdf 9] ―――――

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表 2 各種ゴム摩耗試験の特徴
概要 試験片 摩耗材 運動 スリ 接触 試験装 試験方法の
ップ 形態 置の分 規格
率 (1) 類
(図4
参照)
DIN摩耗 研磨布を巻き付けた回転ドラム円柱 研磨布 ドラムが 100 連続 a) JIS K 6264-2
試験 の摩耗面に,試験片を一定の力で 回転,試 % ISO 4649
押し付け,摩耗させる。 験片が水
主に,タイヤやベルトなどの摩 平移動
耗評価に用いられる。
ウイリア 垂直に立てた研磨輪若しくは研正方形 研磨輪 摩耗材が 100 連続 b) JIS K 6264-2
ムス摩耗 磨布又は研磨紙をはり付けた円板状 研磨布 回転 %
試験(デュ盤の平面部に,その中心から等距 研磨紙
ポン式,グ離に,水平のアームに固定された
ラッセル 2個の試験片を,一定の力で押し
式ともい 付け,摩耗材を回転させて面と面
われる。)との摩擦で試験片を摩耗させる。
主に,タイヤや靴底などの摩耗
評価に用いられる。
アクロン 輪
円盤状試験片の円周面を,一定の 研磨輪 試験片が 可変 断続 c) JIS K 6264-2
摩耗試験 (円盤)
力で研磨輪の円周面に押し付け, 回転,研
両者の回転軸に一定の角度を与 磨輪は従
え,試験片を回転させて研磨輪と 属して回
の摩擦で試験片を摩耗させる。 転
主に,タイヤや靴底などの摩耗
評価に用いられる。
改良ラン 輪
平行な軸を中心に,相互に独立し 研磨輪 試験片, 可変 断続 c) JIS K 6264-2
ボーン摩 て回転する円盤状の試験片と研(円盤) 研磨輪が
耗試験 磨輪とを円周面で押し付け,両者 独立に回
の表面速度の差から試験片を摩 転
耗させる。
主に,タイヤ,靴底,ベルトな
どの摩耗評価に用いられる。
ピコ摩耗 円盤
試験片に垂直に,試験片の中心を 金属 試験片が 100 断続 d) JIS K 6264-2
試験 挟んで平行に固定された2枚の 2枚刃 回転 %
刃を一定の力で試験片上に押し
当て,水平に置かれた試験片を一
定回転数ごとに正逆2方向に回
転させて試験片を摩耗させる。
主に,タイヤや一般的なゴムの
摩耗評価に用いられる。
テーバー シート
回転する試験片上に,一対の研磨 研磨輪 試験片が 固定 断続 e) JIS K 6264-2
摩耗試験 輪(又は研磨紙を巻き付けた輪) 研磨紙 回転,研
を一定の力で押し付けて,研磨輪 磨輪が従
によって試験片を摩耗させる。 属回転
主に,硬質ゴムなどの摩耗評価
に用いられる。

――――― [JIS K 6264-1 pdf 10] ―――――

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