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K 7351 : 2018
6.2 装置の正常動作確認
暗電流値を測定し,製造業者が指定する正常範囲にあることを確認する。
6.3 測定手順
6.3.1 測定条件の設定
次によって,測定に最適な雰囲気,温度,露光時間及び測定時間を決める。
a) 測定雰囲気 不活性ガス1) 又は酸化促進ガス2) の雰囲気を選定する。
注記1 目的に応じて測定中に雰囲気を変更することがある。雰囲気ガスの種類によっては,試料
室の加熱制御に影響を及ぼす場合がある。
注1) 不活性ガスとしては,窒素,アルゴンなどがある。不活性ガス雰囲気での測定では,測定中
に試料が酸化しないため,試料に含まれる過酸化物に応じた酸化状態の検出ができる。
2) 酸化促進ガスとしては,酸素,空気,オゾンガスなどがある。酸化促進ガス雰囲気での測定
では,測定中に試料の酸化を促進させ,その酸化のしにくさなどが評価できる。
b) 測定温度 試料の物理情報(ガラス転移点,融点,分解温度など)を考慮して,測定目的に応じた最
適な温度を設定する。温度制御方法は,次の二つの方法とし,これらを組み合わせて適用することが
できる。
1) 等温測定 あらかじめ試料室を所定の温度にして,測定開始から終了まで所定温度で測定を行う。
2) 昇温測定 低温度(室温付近)から所定の温度まで一定速度(1150 ℃/min程度)で昇温しながら
測定を行う。
c) 露光時間 通常,1秒10秒の積算値とする。発光強度が低い場合は数分間(1分5分)の積算値と
する場合もある。
d) 測定時間 化学発光測定開始から終了までの時間とする。
注記2 不活性ガス雰囲気で測定する場合,5分から1時間程度で発光ピークが得られる場合が多
い。
注記3 酸化促進雰囲気で測定する場合,数時間から数日間となる場合が多い。
6.3.2 バックグラウンドの測定
バックグラウンドの測定は,次による。
a) 測定雰囲気にガスを使う場合は,あらかじめ試料室にガスを流しておく。流量は,試料室の容量に応
じて変化させる。例として,50150 mL/minが望ましい。
b) 等温測定の場合は,試料室を測定温度に設定し,設定温度に安定するまで待つ。昇温測定の場合は,
測定開始温度,昇温速度及び目標温度を設定し,測定開始温度に安定するまで待つ。
c) 露光時間及び測定時間を設定する。測定時間は,実試料測定と同じ時間が望ましい。
d) 温度が安定したら試料室に空の試料容器を入れ,窓板付きの内蓋を閉じ,内部を密閉する。測定雰囲
気にガスを使う場合は,ガス排出口に接続した配管類にガス排出モニタを接続することが望ましい。
e) 測定を開始する。
f) 測定前の発光量に比較して異常に高い発光が観測された場合は,試料容器などに汚れなどが付着して
いる可能性があるため試料室周りの洗浄,試料容器の交換などを行う。
6.3.3 試料測定
a) バックグラウンド測定と同じ測定条件を設定する。
b) 試料容器に試料を入れ,試料容器を試料室内にセットし,窓板付きの内蓋を取り付ける。
c) 測定雰囲気にガスを使う場合は,ガスが確実に排出されていることを確認する。
――――― [JIS K 7351 pdf 6] ―――――
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d) 測定を開始する。
e) 測定終了後,耐熱手袋などを用いて窓板付きの内蓋を開け,試料を取り出す。試料室内及び窓板付き
の内蓋に汚れがある場合は,洗浄する。
f) それぞれの試料の測定データ(発光カウント値,ピーク値,積算値,一定時間後の発光など)を確認
する。
g) 測定データの確認によって目的とする酸化劣化度の評価ができていない場合は,再度,温度条件及び
雰囲気条件を検討し直し,測定を最初から繰り返す。
注記1 測定された化学発光強度は,バックグラウンドを含んでいる。したがって,試料からの化
学発光強度は,化学発光強度の測定値からバックグラウンドを差し引いた強度である。特
に,昇温測定の場合は,温度ごとのバックグラウンドを差し引いた方がよいこともある。
注記2 試料が光を吸収する場合は,未酸化試料の結果をバックグラウンドデータとする場合もあ
る。
7 測定結果の表示
7.1 一般事項
測定温度条件(等温測定又は昇温測定)及び試料室内の雰囲気条件(不活性ガス雰囲気又は酸化促進雰
囲気)を設定して発光強度を測定し,測定結果を表示する。7.2及び7.3に発光強度の経時変化挙動を例示
する。
なお,各種プラスチック材のCL測定の例を附属書B及び附属書Dに,プラスチック以外の物質のCL
測定の例を附属書Gに示す。また,酸化防止剤の濃度が異なるプラスチック材のCL測定の例を附属書C
に示す。さらに,酸化防止剤の濃度及び設定温度が異なるプラスチック材のOITの測定例を附属書E及び
附属書Fにそれぞれ示す。
7.2 不活性ガス雰囲気測定の場合
a) 等温測定 一般的には図2のような発光強度の経時変化を示す。発光量は試料中に存在する過酸化物
由来であり,測定開始時点での酸化劣化度に相当する。発光量はピークに達した後,減少していく。
試料が薄膜などの熱伝導速度が早いものは,発光ピークが測定前に現れてしまうこともあるので,こ
の場合は,測定温度を下げるなど測定温度の再検討が必要である。
図2−不活性ガス雰囲気・等温測定時の発光強度経時変化(例)
――――― [JIS K 7351 pdf 7] ―――――
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b) 昇温測定 一般的には図3のような発光強度の経時変化を示す。試料中の過酸化物などの成分が反応
する温度に達したときに発光する。
注記 反応温度が異なる成分が複数含まれる場合,また,試料の結晶化,融解,相分離などの相変
化,粘度変化などによって二つ以上のピークが現れることもある。
発光強度
温度
発光強度
試料室温度
時間
図3−不活性ガス雰囲気・昇温測定時の発光強度経時変化(例)
7.3 酸化促進雰囲気で測定する場合
a) 等温測定 一般的には図4のような発光強度の経時変化を示す。最初の発光ピークは不活性ガス雰囲
気測定と同じ要因である。その後,試料内で生じた過酸化物の生成速度と消滅速度の平衡状態を一定
時間示した後,平衡が崩れて,発光強度が急激に増大する。平衡状態の発光強度は,材料の安定性及
び添加した安定剤の性能を表す。
注記1 OITは,試料の酸化のしやすさや安定剤の効果を表し,熱劣化による寿命予測の指標とし
て用いられる。試料によっては明確な平衡状態を示す前に発光が上昇し始め,その強度が
増大し続けるような場合もある。
図4−酸化促進雰囲気・等温測定時の発光強度経時変化(例)
――――― [JIS K 7351 pdf 8] ―――――
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b) 昇温測定 一般的には,酸化開始温度を測定するケースが多く,図5のような発光強度の経時変化を
示す。
注記2 反応温度が異なる成分が複数含まれる場合や,試料の結晶化,融解,相分離などの相変化
及び粘度変化によって二つ以上のピークが現れることもある。
図5−酸化促進雰囲気・昇温測定時の発光強度経時変化(例)
8 測定結果の記録
測定時は,次の項目を記録しておくことが望ましい。
a) この規格の番号
b) 試験年月日
c) 試験装置(型番など)
d) 試験条件(温度条件,雰囲気など)
e) 試料の情報(例えば,試料種類,添加剤,形状,質量,試料の酸化・熱履歴など)
f) 試料容器の情報(例えば,大きさ,開口面積,材質など)
g) 発光強度の経時変化データ又はグラフ
h) 試料室温度の経時変化データ又はグラフ
i) その他受渡当事者間で協定した事項
――――― [JIS K 7351 pdf 9] ―――――
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附属書A
(参考)
化学発光測定による酸化劣化検出
A.1 酸化劣化及び化学発光の原理
図A.1に様々な発光現象を示す。肉眼で星,蛍などの光を検知することはできるが,光が粒子(フォト
ン)としての挙動を示す微弱発光は検知できない。食品,油,プラスチック,ゴムなどの有機物が酸化及
び/又は劣化の化学反応によって発光する現象を化学発光(CL : Chemiluminescence)と呼ぶ。CL検出法
は材料品質管理,製造工程管理,添加剤効果,製品寿命予測及びリユース・リサイクル品質管理のそれぞ
れのステージにおいて極微量の酸化反応を捉えることができる。
図A.1−様々な物質の発光現象
CL法は光源を必要とせず,真っ暗な試料室中にセットした試料からの光を高感度に捉える方法である。
そのため,その他の光検出装置(例えば,可視紫外分光光度計,赤外分光光度計,蛍光分光光度計など)
と比較して光源による迷光又はバックグラウンド上昇がなく,S/N(シグナル/ノイズ)比が高く高感度
検出が可能となる。
CLの発生要因として,そのほとんどが有機物の酸化反応によって生成される過酸化物由来だと考えら
れている。この有機物が“酸化すると発光する”というメカニズムは,古くから自動酸化機構の一部とし
て知られている。図A.2に自動酸化機構における主要な化学反応部分を示す。
未酸化ポリマー(RH)は,光,熱などの刺激によってアルキルラジカルを生じる。このラジカルは,酸
素と反応して速やかにペルオキシラジカル(ROO・)を生じ,その後過酸化物(ROOH)となる。ROOH
は分解して再びROO・となり,この2分子反応によって高いエネルギー状態の励起カルボニルと活性酸素
の一つである一重項酸素を生じる。これらは励起状態から基底状態に戻るときにエネルギーの差分を光と
して放出するが,これをCLと定義している(反応1)。自動酸化機構におけるこの過程をラッセル機構と
も呼ぶ。このCLを検出することでROOHの生成量,すなわち酸化劣化度を測定する。これがCL法であ
り,測定値は発光量として表される。通常は,試料を加熱することでROOHを分解し,試料内に生成し蓄
――――― [JIS K 7351 pdf 10] ―――――
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