JIS X 20246:2021 ソフトウェア及びシステム技術―ソフトウェア及びシステム開発における作業生産物のレビューのプロセス | ページ 2

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
3.18
テクニカルレビュー(technical review)
技術的に適格な人材のチームが,意図した使用に対する作業生産物の適合性を検査し,仕様及び標準と
の不一致を識別する,作業生産物の形式的な同僚によるレビュー
注釈1 テクニカルレビューでは,代替案の推奨及び様々な代替案の検討も行うことがある。
3.19
ウォークスルー(walkthrough)
執筆者が作業生産物を通じてレビューのメンバーを主導し,参加者は質問をし,かつ,要検討事項とな
り得るものについてコメントをする形式的なレビュー
3.20
作業生産物(work product)
プロセスにおいて人によって作成されるもの
例 プロジェクト計画,要求仕様,設計文書,ソースコード,テスト計画,テスト会議議事録,スケジ

ュール,予算,インシデント報告書注釈1 作業生産物のあるサブセットは更なる作業のベースラインとなり得,また,幾つかの作業生産物はプロジェクトの生産物を形成する。

4 適合性

4.1 意図した用途

  この規格の要求事項は,箇条6及び附属書Aによる。プロジェクト又は組織によっては,この規格で定
義している手法全ての使用は必要ないと認識されることもある。このため,この規格の実践には,通常,
プロジェクト又は組織に適した一連の手法の選択を伴う。組織又は個人がこの規格の規定に適合している
と主張する,二通りの方法がある。組織又は個人は,この規格への完全適合を要求しているのか,又は修
整適合を要求しているのかを主張しなければならない。

4.2 完全適合(Full conformance)

  この規格の箇条6で定義する作業生産物レビュープロセス及びレビューの文書化に関する附属書Aに
おいて,全ての要求事項を満たしていることを証明することによって完全適合を達成する。

4.3 修整適合(Tailored conformance)

  この規格を,完全適合ではないレビュープロセスを制定するための基礎として使用する場合,修整適合
とするアクティビティの部分集合を記録する。この記録したアクティビティの全ての要求事項を満たして
いることを証明することによって,修整適合を達成する。
修整を行う場合,この規格の箇条6に定義するアクティビティに従わないときはいつでも,正当な理由
が(直接的に又は参照によって)与えられなければならない。全ての修整は,リスクの考慮を含め,根拠
とともに記録しなければならない。修整は,関係する利害関係者によって合意されなければならない。

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5 作業生産物レビュー

5.1 概要

  一般的には,欠陥をできるだけ早期に除去し不要な手戻り作業を減らす手段として,作業生産物レビュ
ーが多くのプロジェクトで実施されている。実際には,欠陥検出に加えて様々な目的でレビューが実施さ
れる(C.1.2.1に例を列挙する。)。
レビューは様々な分類があり得る。この規格では,レビューは形式的又は非形式的のいずれかに分類さ
れる。個々人のレビューにおける役割に基づくレビュー作業,レビュー会議における確認項目一覧に基づ
くレビュー作業など,レビューの過程で多くのレビュー手法を使用することがある。
作業生産物レビューを行うための汎用的なプロセス(箇条6で定義)は,幾つかの選択可能な属性(レ
ビュー手法を含む。)をもっている。これによって,利用者は固有の状況に応じて特定のレビュー種別を構
成可能である。これらの属性については,附属書Cに詳細を示す。この汎用的なプロセスの構成によって,
利用者が実際に完全には利用することが不可能な特定の名前付きレビュー種別を選択するのではなく,最
も効果的かつ効率的な方法で,利用者が抱える制約に適合しながら目的に合ったレビューを定義可能であ
る。
歴史的に,文献では,数多くの異なるレビュー種別が定義されているが,特定の属性を強調して違うレ
ビュー種別としているものもある(これらの種別を5.3に列挙しており,特性とレビュー種別との間の関
連付けは,附属書Dに示す。)。例えば,インスペクションとテクニカルレビューとの違いは,単にインス
ペクションがプロセス改善を必要とすることだけともいわれている。

5.2 レビュー属性

  次は,実施するレビューの定義に使用するレビュー属性の一覧である。附属書Cでは,各属性の詳細を
示している。
− 目的(C.1.2.1参照)
− 役割(C.1.2.2参照)
− 個々人のレビューの手法(C.1.2.3参照)
− 任意のアクティビティ(C.1.2.4参照)
− レビュアの人数(C.1.2.5参照)
− 計画されたレビューの回数(C.1.2.6参照)
− 形式的な報告作業(C.1.2.7参照)
− 必要とされるトレーニング(C.1.2.8参照)
− レビューの改善(C.1.2.9参照)
− 開始及び終了の基準(C.1.2.10参照)
附属書Fは,様々な作業生産物の種類,及び作業生産物の形式に対するレビュー属性の選択に関する指
針を提供する。

5.3 レビュー種別

  次は,共通で,文献[13]から参照され,かつ,IEEE Std 1028にも見られるレビュー種別のリストである。
附属書Eには,この規格で定義しているアクティビティとIEEE Std 1028-2008の手順との整合を記載して

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いる。また,附属書Dでは,各種別の詳細を説明し,関連する属性を5.2から様々なレビュー種別へ関連
付けている。
− 執筆者確認
− 相棒確認
− 非形式的グループレビュー
− インスペクション
− マイルストーンレビュー
− ペアレビュー
− 同僚との机上確認
− テクニカルレビュー
− ウォークスルー
附属書Gは,特定のソフトウェア及びシステム開発ライフサイクルモデル内における各レビュー種別の
使用例を示している。この規格の利用者は,上記のレビュー種別に限定されない。また,必要に応じて汎
用的なレビュープロセスを適用するために選択した属性に基づき,複数のレビュー種別を混合して使用す
ることも可能である。

6 作業生産物レビュープロセス

6.1 概要

  この作業生産物レビュープロセスは,作業生産物をレビューするためのアクティビティで構成されてい
る(図1参照)。
図1に示すプロセスは,全てそろった作業生産物で実施されるだけでなく,作業生産物のある一部分に
対しても実施することがある。そのような状況では,これらの活動は,作業生産物の全てに対するレビュ
ーを完了するために複数回実施するのが典型的である。したがって,図1に示すプロセスは,単一の作業
生産物に複数回適用され得る。
レビューの 個々人の 要検討事項の 修正作業
計画作業
立上げ レビュー 共有及び分析 及び報告作業
図1−作業生産物レビュープロセス

6.2 目的

  この作業生産物レビュープロセスの目的は,レビュープロセス(形式的及び非形式的の両方)を特定の
状況及び目的に合わせて修整可能とするような,構造化されているが柔軟なフレームワークを提供するこ
とである。

6.3 成果

  作業生産物レビュープロセスの実施が成功した結果としては,次のことが挙げられる。
a) 作業生産物の欠陥及び要検討事項が識別されている。
b) 作業生産物の品質特性が評価されている。
注記 品質特性の一覧は,ISO/IEC 25000シリーズの規格に示されている。

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c) レビュアは,作業生産物に関する知識を得ている。
d) 決定について合意が得られている。
e) 新しいアイデアが生み出されている。
f) 作業生産物の更新が行われている。
g) 参加者が,自分たちの作業慣行の潜在的な改善点を識別している。

6.4 アクティビティ及びタスク

  作業生産物レビューを担当する者は,この作業生産物レビュープロセスについて適用される組織の方針
及び手順に従って,次のアクティビティ及びタスクを実施しなければならない。
6.4.1 計画作業
このアクティビティは,次のタスクで構成されている。
a) レビューの目的,レビューされる作業生産物,評価されるべき品質特性,重点領域,終了基準,標準

などの支援情報,レビューのための労力及び時間枠,並びにこれらを含むレビューの範囲を定義しなければならない。注記1 レビューされる作業生産物は,より大きい作業生産物の一部の場合がある。例1 重点領域には,特定の機能,非機能の属性又は選択されたページがある。b) レビュー特性を識別し,合意しなければならない。

例2 レビュー特性には,レビューアクティビティ,役割,労力,個々人のレビューの手法,確認項目一覧などが含まれる。注記2 レビュー特性を識別し合意する責任は,通常,C.1.2.2で定義しているレビューリーダ,管理及びレビュー調整役の役割に含まれる。

c) レビュー参加者は,期待される役割とともに識別され,合意されなければならない。
6.4.2 レビューの立上げ
このアクティビティは,次のタスクで構成されている。
a) 必要なレビュー資料をレビュー参加者に配付しなければならない。

例 レビュー資料には,作業生産物,確認項目一覧,レビュー指針,ベースライン仕様書などが含まれるが,これらに限定されない。b) レビューリーダは,レビュー参加者にレビューの範囲及び特性を伝えなければならない。c) レビューリーダは,各レビュー参加者に役割,責任及び重点を伝えなければならない。d) 執筆者(又は執筆者相当の知識をもつ者)は,レビュー対象の作業生産物を説明してもよい。

      注記1 タスクb),c),及びd)はレビュー概要の説明会議で行うことがある。
注記2 レビュー概要の説明会議を開催するかどうかの決定は,典型的には,レビュアの次のよう
な要因に依存する。
− 以前に形式的なレビューに参加したか,又は形式的なレビューの訓練を受けたかどう
か。
− 使用するレビュープロセスを知っていて,理解しているかどうか。
− その目的(例えば,要検討事項の文書化なのか,解決策の提案なのか)を理解してい
るかどうか。

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X 20246 : 2021 (ISO/IEC 20246 : 2017)
− 割り当てられた役割の概念,その役割に要求されること,要検討事項の分類体系,レ
ビュープロセスで使用される書式及びツール(附属書I参照)に精通しているかどう
か。
− 作業生産物又はその前後関係に関する追加の背景情報を必要とするかどうか。
e) レビュアのためのトレーニングを手配してもよい。
6.4.3 個々人のレビュー
このアクティビティは,次のタスクで構成されている。
a) 各レビュアは,作業生産物の要検討事項を識別するためにレビューを実施しなければならない。
注記1 要検討事項は,通常,要検討事項ログ(A.2に記載する。)に記録され,重要度の観点から分類
される。
注記2 要検討事項は,変更の提案が裏付けとなることがある。
6.4.4 要検討事項の共有及び分析
このアクティビティは,次のタスクで構成されている。
a) 識別された要検討事項は伝達しなければならない。
注記1 レビュー会議が開催される場合,要検討事項は会議で表明されるか,又は照合及び優先順
位付けのために会議の前に送付されることがある。
注記2 レビュー会議が開催されない場合,通常,要検討事項は分析を実施する個人に送付される。
b) 以前に識別された要検討事項及びこのアクティビティ中に識別された新しい要検討事項は,その後の
対処に基づく状態を割り当てるために分析しなければならない。
例1 要検討事項の状態の典型的な例は,“却下”,“注意すべき要検討事項はあるが対処は不要”,
及び“対処すべき要検討事項”である。
c) 要検討事項は,その状態に基づいて,適切な個人又はチームに割り当てなければならない。
注記3 非形式的レビューでは,要検討事項の割当て及び状態を文書化する必要はない。
例2 これには,作業生産物の執筆者,又は(組織全体の標準などの補助書類に関連する要検討事
項の場合)レビューに参加している個人(又はチーム)以外への要検討事項の割当てを含む
ことがある。
d) レビュー対象の作業生産物の品質特性は評価されなければならず,その品質特性は,他の関連する基
準と一緒にレビューの意思決定に使用しなければならない。
例3 レビューの意思決定を行うために使用される関連基準には,利用可能な時間又は予算を含め
ることがある。
例4 レビューの意思決定として,レビューされた作業生産物が,“現状のまま使用される”,“識別
された要検討事項に基づいて更新されて使用される”,“改訂され再レビューされる”,“破棄
される”などが含まれる。最終的に,レビューの意思決定が作業生産物を破棄することであ
る場合,全ての要検討事項の状態を適切に更新する必要がある。
注記4 このアクティビティのタスクは,個人(レビュー対象の作業生産物の執筆者など),一人のレビ
ュア,複数のレビュアによって実施されたり,レビュー会議の一環として実施されたりする。

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