JIS Z 8402-1:1999 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第1部:一般的な原理及び定義 | ページ 2

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Z 8402-1 : 1999 (ISO 5725-1 : 1994)
3.5 (採択された)参照値 (accepted reference value) : 次のようにして得られた,比較のために容認さ
れた標準として役立つ値。
a) 科学的原理に基づく理論値又は確定値。
b) ある国家,又は国際機関の実験研究に基づく付与値,又は認証値。
c) 科学又は技術集団の主催する共同実験研究に基づく合意値,又は認証値。
d) ),b),c)のいずれにも拠ることができないときは,その量の期待値,すなわちその測定値の母集団の
平均値。 [JIS Z 8101-2]
3.6 精確さ (accuracy) : 個々の測定結果と採択された参照値との一致の程度。
備考2. 一連の測定結果について考える場合には,精確さ,ばらつきの成分と各測定結果に共通する
系統誤差,すなわち,かたよりの成分との両方の成分で構成される。 [JIS Z 8101-2]
3.7 真度,正確さ (trueness) : 十分多数の測定結果から得られた平均値と,採択された参照値との一致
の程度。
備考3. ふつう真度はかたよりによって表される。
備考4. “trueness” (真度)はこれまで “accuracy of the mean” (平均値の正確さ)と表現されていた。
この表現は推奨しない。 [JIS Z 8101-2]
参考 “十分多数の測定結果 (a large series of test results) から得られた平均値”は,測定結果の期待値
の意味である。
3.8 かたより (bias) : 測定結果の期待値と,採択された参照値との差。
備考5. かたよりは,偶然誤差と対照される系統誤差の全体である。かたよりに寄与する系統誤差は,
一つ以上あることもある。大きなかたよりは,採択された参照値からの大きな系統的な差を
もたらす。 [JIS Z 8101-2]
参考 正負の符号を問題にする場合には,“測定結果の期待値から採択された参照値を引いた値”をか
たよりとする。
3.9 試験室のかたより (laboratory bias) : ある試験室で得られた測定結果の期待値と,採択された参照
値との差。
3.10 測定方法のかたより (bias of the measurement method) : ある測定方法によって(すべての試験室で)
得られる測定結果の期待値と採択された参照値との差。
備考6. 操作上の例であるが,ある化合物の硫黄分の測定を目的とする測定方法で,硫黄の完全な抽
出が行えない場合には,測定方法が負の値のかたよりを持つことになる。同一の方法を用い
る多数の試験室の測定結果の平均値の,採択された参照値からの隔たりによって,測定方法
のかたよりを評価する。測定水準が異なれば,測定方法のかたよりも変化することがある。
3.11 かたよりの試験室成分 (laboratory component of bias) : 試験室のかたよりと,測定方法のかたより
との差。
備考7. かたよりの試験室成分は,その試験室と用いられた測定条件に特有のものであり,測定水準
が異なれば,その値も異なることがある。
備考8. かたよりの試験室成分は,測定結果の全平均に関係し,真の値又は採択された参照値に関係
しない。
3.12 精度 (precision) : 定められた条件の下で繰り返された独立な測定結果の間の一致の程度。
備考9. 精度は偶然誤差の分布のみに依存し,真の値や特定の値には関係しない。
備考10. ふつう精度はその悪さ (imprecision) によって表現され,測定結果の標準偏差として計算され

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る。標準偏差が大きいと,精度が低いという。
備考11. “独立な測定結果”とは,同一もしくは類似した測定対象物の過去の結果の影響を受けない
測定結果のことをいう。精度の大きさは繰返しに関して定められた条件に依存する。併行条
件,再現条件は繰返しに関する両極の条件である。 [JIS Z 8101-2]
参考 “独立な測定結果”は同一試料に対する測定結果であることが「定められた条件」の中で示さ
れる。
3.13 併行精度,繰返し精度 (repeatability) : 併行条件による測定結果の精度。 [JIS Z 8101-2]
3.14 併行条件 (repeatability conditions) : 同一と見なせるような測定試料について,同じ方法を用い,同
じ試験室で,同じオペレータが,同じ装置を用いて,短時間のうちに独立な測定結果を得る測定の条件。
[JIS Z 8101-2]
3.15 併行標準偏差 (repeatability standard deviation) : 併行条件で得られた測定結果の標準偏差。
備考12. 併行標準偏差は,併行条件の下での測定結果の分布のばらつきの尺度である。
備考13. 同じように併行分散,併行変動係数も定義され,併行条件の下での測定結果の分布のばらつ
きの尺度として用いられる。 [JIS Z 8101-2]
3.16 併行許容差 (repeatability limit) : 併行条件で得られた二つの測定結果の差の絶対値が,その値以下
になることが95%の確率で期待される値。
備考14. 記号にrを用いる。 [JIS Z 8101-2]
参考 3.13「併行精度」は概念を,3.15「併行標準偏差」は尺度を,3.16「併行許容差」は比較の基準
として用いられる限界をそれぞれ表し,用語を使い分けている。概念を表す場合にrepeatability
を「繰返し性」と呼ぶことがある。
3.17 (室間)再現精度 (reproducibility) : 再現条件による測定結果の精度。 [JIS Z 8101-2]
3.18 (室間)再現条件 (reproducibility conditions) : 同一と見なせるような測定試料について,同じ
方法を用い,異なる試験室で,異なるオペレータが,異なる装置を用いて,独立な測定結果を得る測定の
条件。 [JIS Z 8101-2]
3.19 (室間)再現標準偏差 (reproducibility standard deviation) : 再現条件で得られた測定結果の標準偏
差。
備考15. 再現標準偏差は,再現条件の下での測定結果の分布のばらつきの尺度である。
備考16. 同じように(室間)再現分散,(室間)再現変動係数も定義され,再現条件の下での測定結果
の分布のばらつきの尺度として用いられる。 [JIS Z 8101-2]
3.20 (室間)再現許容差 (reproducibility limit) : 再現条件で得られた二つの測定結果の差の絶対値が,
その値以下になることが95%の確率で期待される値。
備考17. 記号にRを用いる。 [JIS Z 8101-2]
参考 3.17「再現精度」は概念を3.19「再現標準偏差」は尺度を,3.20「再現許容差」は比較の基準と
して用いられる限界をそれぞれ表し,用語を使い分けている。概念を表す場合にreproducibility
を「再現性」とよぶことがある。
3.21 外れ値,異常値 (outlier) : 一組の値のうち,他の値と不整合な値。
備考18. この規格の第2部に,真度と精度の評価実験で外れ値を識別するための統計的検定法と有意水
準が定められている。
3.22 共同評価実験 (collaborative assessment experiment) : 同一試料,同じ標準測定方法による,各試験
室の測定能力を評価するための多施設共同実験。

――――― [JIS Z 8402-1 pdf 7] ―――――

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参考 同一試料は,4.3で規定されている。
備考19. 3.16と3.20の定義は,測定結果が連続量(計量値)である場合に適用される。測定結果が離散
量(計数値)であるか,または丸められた値である場合は,上に定義された併行許容差と再
現許容差とは,二つの測定結果の差の絶対値が,その値以下になることが95%以上の確率で
期待される値の最小値となる。
備考20. 3.8から3.11,3.15,3.16,3.19及び3.20の定義は,実際には値が未知である理論値を定義の文
に含んでいる。実際には,再現標準偏差,併行標準偏差,及びかたよりの値は(この規格の
第2部と第4部に示される)実験で求められるが,これらは統計的に表現するとそれぞれの推
定値であり,誤差を含んでいる。したがって許容差r及びRの確率は正確には95%にならな
いことがある。多数の試験室が精度評価実験に参加するならば,この確率は95%に近くなる
が,参加試験室数が30未満であると95%からかなり逸脱するおそれがある。これは避けられ
ないが,これらの許容差の本来の目的は,測定結果の差がその測定方法に固有の確率的な不
確かさに基づくのか否かを判定する道具として用いることであるから,実際上の有用性を深
刻に損なうことはない。併行許容差rや再現許容差Rを超える測定結果の差は,疑わしいと
する。
参考 3.6から3.10の定義文に含まれる「採択された参照値」は「真の値」とすべきである。「真度」,
「かたより」は概念上,真の値から測られなければならない。すなわち真の値から測られた「真
度」,「かたより」は“真の”「真度」,「かたより」である。また,3.6から3.10の定義のような
参照値から測られた「真度」,「かたより」は「真度」,「かたより」の“推定値”である。実際
に用いられる値は推定値であるが,推定値でもって概念を定義することは適切ではない。例え
ば「かたよりのない測定方法」と「かたよりの推定値が0である測定方法」では表現される意
味が異なってくる。また推定値は推定の技術に依存するため,推定値を用いた定義は技術の進
歩に対して一貫性を持たないという問題もある。
備考21. 記号rとRは既に他の目的で一般に使われている。すなわちJIS Z 8101-1では,rは相関係数
の記号として,R(やW)は一連の観測値の範囲の記号として推奨されている。しかしこれ
らの記号が規格の中で用いられ,誤解を招くおそれがある場合には併行許容差rや再現許容
差Rと言葉を補って用いられれば,混乱を生じることはない。

4. 精確さ評価実験に関する定義の実際的な意味

4.1 標準測定方法

4.1.1  同じように測定を行うために,測定方法を標準化しておかなければならない。その標準化された方
法によって全ての測定を実施する。これは測定がどのように実施されるかについて,十分詳細に記載した
文書があることを意味しており,測定試料がどのように採取・調製されるかについての記述も含まれてい
ることが望ましい。
4.1.2 文書化された測定方法があるということは,その測定方法を確立することに責任を持つ機関がある
ということを意味している。
備考22. 標準測定方法は6.2においてさらに詳細に規定される。

4.2 精確さ評価実験

4.2.1  精確さ(真度及び精度)の値は,その目的のために特に設立された専門パネルの下で組織された参
加試験室によって報告された一連の測定結果から求められることが望ましい。

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そのような共同実験は「精確さ評価実験」と呼ばれる。精確さ評価実験を限定された目的に応じて「精
度評価実験」又は「真度評価実験」と呼んでもよい。その目的が真度を求めることならば,精度評価実験
は事前に完了しているか又は同時に実施されなければならない。
実験で得られた精確さの推定値は,その標準測定方法によって実施される測定に対してのみ有効である
ことを常に表記することが望ましい。
4.2.2 精確さ評価実験は,しばしば標準測定方法の適切さを実用的に評価する試験と考えることができる。
標準化の主な目的の一つは,使用者(試験室)間の違いをできるだけ除去することであり,精確さ評価実
験によって得られたデータは,この目的がどの程度効果的に達成されているかを表している。試験室内分
散(第7節参照)や試験室平均に際立った違いがあれば,標準測定方法がまだ十分に詳細でなく,改善で
きることを意味しているかもしれない。その場合,このことを追加検討の要求とともに規格作成機関へ報
告することが望ましい。

4.3 同一試料(同一と見なせるような状態の測定試料)

4.3.1  精確さ評価実験では,規定された製品の規定された試料又は試験片は異なった場所,異なった国,
あるいは異なった大陸であっても,実験本部から多数の試験室に送付される。これらの試験室における測
定が,同一と見なせるような状態の試料で実施されなければならないと述べている併行条件の定義 (3.14)
は,測定が実際に行われる時期について言及している。これを達成するため,2つの異なった条件を満足
しなければならない。
a) サンプルはそれぞれの試験室に発送されたときほぼ同一とみなせるような状態でなければならない。
b) それらは輸送中及び実際に測定が実施されるまでの期間が異なった時間間隔に対して,上記の状態が
保たれなければならない。
精確さ評価実験を計画・実施するとき,両方の条件は注意深く守られなければならない。
備考23. 試料の選択は6.4でさらに詳細に規定する。

4.4 短い時間間隔

4.4.1  併行条件の定義 (3.14) によれば,併行精度を求めるための測定は操作条件が一定のもとになされ
なければならない;すなわち,測定が実施されている間,0.3で列挙したような因子が一定であることが望
ましい。特に,個々の測定ごとに必須でないかぎり,測定の間装置を再校正しないことが望ましい。実際,
併行条件下での測定は,一定であることを常に保証できない環境的因子のような,これらの因子の変化を
最小にするため,可能な限り短い時間間隔で実施することが望ましい。
4.4.2 測定間の時間間隔に影響するかもしれない第2の考慮すべき事項もある。それは,測定結果が独立
であると仮定することである。もし以前の結果が次の測定結果に影響する(併行分散の推定値が減少する)
ことが懸念されるならば,同一のものであるとオペレータに分からない様に別の番号をつけた試料を用意
する必要があるかもしれない。これらの試料が測定される順番に関する指示書が出され,おそらく,その
順番は全ての「同一」試料が一緒に測定されないようにランダム化されているであろう。これは,その一
連の測定が短時間に全て完了するような性質の測定でないかぎり,繰り返し測定にかかる時間が短い時間
間隔の目的を損なうことになることを意味しているかもしれない。常識に勝るものはない。
4.5 参加試験室
4.5.1 この規格の第1部の基本的な仮定は,標準測定方法において併行精度は,標準手順を適用している
すべての試験室では少なくとも近似的には等しく,その結果すべての試験室に適用できる共通で平均的な
併行標準偏差の値を設定しうる,ということである。一方,併行条件の下で一連の測定を実施することに
よって,どの試験室でもその測定方法についての各々の併行標準偏差を推定し,共通の標準の値に対して

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Z 8402-1 : 1999 (ISO 5725-1 : 1994)
それをチェックすることが可能である。この手順はこの規格の第6部において扱う。
4.5.2 理論上,3.83.20に定義された値は,その測定方法を実施するすべての試験室に対して適用され
る。実際には,これらは試験室の母集団からのサンプル(試験室)について求められている。このサンプ
ル(試験室)の選択の詳細は6.3に述べる。6.3で指示している試験室の数及び実施される測定の回数が守
られていれば,真度及び精度の推定値は満足できるはずである。しかし,その後参加している試験室が,
標準測定方法を使用するすべての試験室の真の代表ではなかったり,あるいは代表しなくなったことが明
らかになった場合には,測定をやり直さなければならない。
参考 試験室全体を母集団として,共同実験に参加した試験室をサンプルとよんでいる。

4.6 測定条件

4.6.1  試験室内で得られる観測値のばらつきに寄与する因子は0.3に列挙されている。環境条件の変化及
び測定間の装置の再校正による影響を含む異なった時間に行われる測定では,それらの因子は,時間,オ
ペレータ,及び装置として与えられるかもしれない。併行条件の下では,すべての因子を一定に保って測
定が実施され,再現条件の下では,異なった試験室で測定が実施される。試験室が異なると,すべての因
子が異なるだけでなく,試験室の管理及び維持,測定の安定性のチェックなどの差異による付加的な影響
も異なる。
4.6.2 同一の試験室内で測定が実施されるが,時間,オペレータ,装置のうち,一つ以上の因子が変化す
る中間条件を考慮することは場合によっては有効であろう。測定方法の精度の設定において,適切な測定
条件(すなわち,前述の3つの因子を一定とするか否かなど)を定めることは非常に重要である。
なお,一つの因子に起因する変化の大きさは測定方法に依存するであろう。例えば化学分析においては,
オペレータ及び時間の因子が支配的であり,同様に微量分析では装置及び環境が,物理試験では装置及び
校正が支配的であろう。

5. 統計モデル

5.1 基本モデル

  測定方法の精確さ(真度と精度)を推定するために,測定結果yを(1)式に示す3つの成分の和として仮
定しておくことは有用である。
y=m+B+e (1)
ここで,試験の対象となる試料について,
mは一般平均(期待値);
Bは併行条件の下でのかたよりの試験室成分;
eは併行条件の下で,一つ一つの測定に伴う偶然誤差
を示す。
5.1.1 一般平均m
5.1.1.1 一般平均mは測定水準(測定試料の水準)を表す。ある化学成分の異なった純度の試料,又は異
なった試料(例えば,異なったタイプの鉄鋼)は異なった測定水準に対応する。多くの技術的な状況にお
いて,測定水準は測定方法ごとに定められるものであり,(測定方法に依存しない)真の値の概念は当ては
まらない。しかし,滴定される溶液の真の濃度のように,測定の真の値 艟 が成り立つ状況もあり得
る。測定水準mは必ずしも真の値 死 地

――――― [JIS Z 8402-1 pdf 10] ―――――

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  • ISO 5725-1:1994(IDT)

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