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Z 8402-5 : 2002 (ISO 5725-5 : 1998)
外することなく,外れ値を含むデータから併行精度及び再現精度の標準偏差を計算することができて,
結果がデータ解析者の判断に左右されないロバストなデータ解析方法を規定する。
参考1. 統計的解析では,外れ値の存在など,データ解析上の前提条件が崩れた場合に,その影響の
受けにくさをロバストネス(頑健性)と呼ぶ。この規格では“ロバストな”という言葉を,
“外れ値の影響を受けにくい”いう意味で用いている。
2. “水準を分割しない計画”を,JIS Z 8402-2では“一様水準実験”(1.3の備考2.,1.5,5.1.1,
7.2.7,7.6.1,B.1.8)と称した。また,JIS Z 8402-2の0.3において述べた“(分割法のような)
別な種類の実験計画”は,この部で扱う“水準分割計画”を意味している。
1. 適用範囲
JIS Z 8402のこの部は,
− 標準測定方法の併行標準偏差及び再現標準偏差を求めるための基本的方法に対する代替方法,すなわ
ち,水準分割計画及び不均質物質に関する計画の詳細
− 計算からデータを除外するための外れ値の検定を行うことなく精度評価実験の結果を解析するロバス
トな方法,特にその詳細な適用方法
を規定する。
この規格のこの部は,JIS Z 8402-2の基本的計画よりも場合によっては価値がある代替計画を規定し,
かつ,JIS Z 8402-2の方法よりもデータ解析者の判断に対する依存度合いが小さい併行標準偏差及び再現
標準偏差の推定値を与えるロバストな解析方法を規定することによって,JIS Z 8402-2を補完するもので
ある。
参考 この規格では“ロバストな”という言葉を,“外れ値の影響を受けにくい”という意味で用いて
いる。
備考 この規格の対応国際規格を,次に示す。
なお,対応の程度を表す記号は,ISO/IEC Guide 21に基づき,IDT(一致している),MOD
(修正している),NEQ(同等でない)とする。
ISO 5725-5 : 1998,Accuracy (trueness and precision) f measurement methods and results―Part 5 :
Alternative methods for the determination of the precision of a standard measurement method
(IDT)
2. 引用規格
次に掲げる規格は,この規格に引用されることによって,この規格の規定の一部を構成す
る。これらの引用規格のうちで,発効年を付記してあるものは,記載の年の版だけがこの規格の規定を構
成するものであって,その後の改正版・追補には適用しない。発効年を付記していない引用規格は,その
最新版(追補を含む。)を適用する。
JIS Z 8101-1 統計―用語と記号―第1部 : 確率及び一般統計用語
備考 ISO 3534-1 : 1993 Statistics―Vocabulary and symbols―Part 1 : Probability and general statistical
termsからの引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 8101-2 統計―用語と記号―第2部 : 統計的品質管理用語
備考 ISO 3534-2 : 1993 Statistics―Vocabulary and symbols―Part 2 : Statistical quality controlからの
引用事項は,この規格の該当事項と同等である。
JIS Z 8101-3 統計―用語と記号―第3部 : 実験計画法
備考 ISO/FDIS 3534-3 : 1999 Statistics―Vocabulary and symbols―Part 3 : Design of experimentsが,
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Z 8402-5 : 2002 (ISO 5725-5 : 1998)
この規格と一致している。
JIS Z 8402-1 : 1999 測定方法及び測定結果の精確さ (真度及び精度)―第1部 : 一般的な原理及び定
義
備考 ISO 5725-1 : 1994 Accuracy (trueness and precision) f measurement methods and results―
Part 1 : General principles and definitionsが,この規格と一致している。
JIS Z 8402-2 : 1999 測定方法及び測定結果の精確さ (真度及び精度)―第2部 : 標準測定方法の併行
精度及び再現精度を求めるための基本的方法
備考 ISO 5725-2 : 1994 Accuracy (trueness and precision) f measurement methods and results―
Part 2 : Basic method for the determination of repeatability and reproducibility of a standard
measurement methodが,この規格と一致している。
3. 定義
この規格の目的に合わせ,JIS Z 8101-1,JIS Z 8101-2及びJIS Z 8402-1に定義された用語を
用いる。
この規格で用いる記号を,附属書Aに示す。
4. 水準分割計画
4.1 水準分割計画の適用
4.1.1 この規格の第2部で述べた水準を分割しない計画(一様水準実験)では,各参加試験室が,各測定
水準について同一試料を2回以上測定しなければならない。この計画では,一つめの測定結果が,同一試
料の次の測定結果に影響してしまうことをオペレータが容認するおそれがある。その場合には精度評価実
験の結果はゆがめられる。すなわち,併行標準偏差σrの推定値は小さくなり,試験室間標準偏差σLの推
定値は大きくなる。水準分割計画では,各参加試験室が,各測定水準について,2個の類似した試料から
採ったサンプルのそれぞれを与えられ,オペレータは両者が同一ではないことを告げられるが,サンプル
の違いの程度については告げられないものとする。このため水準分割計画は,一つめのサンプルの測定結
果がもう一つのサンプルの測定結果に影響をおよぼす危険性を減らして,標準測定方法の併行標準偏差及
び再現標準偏差を求める方法といえる。
4.1.2 水準分割実験の一つの測定水準で得たデータを用いて,片方のサンプルのデータに対して類似した
もう一方のサンプルのデータをプロットすることによってグラフを描くことができる。例を図1に示す。
このようなグラフは,試験室の中でほかと比べてかたよりが大きな試験室を特定することに役立つ。これ
は,大きい試験室のかたよりの原因を追及し,その是正措置をとる場合に役立つ。
4.1.3 測定方法の併行標準偏差及び再現標準偏差は,一般にサンプルの測定水準に依存する。例えば,測
定結果が化学分析によって得たある成分の含有率である場合,その成分の含有率が増加すれば,併行標準
偏差及び再現標準偏差も大きくなるのが普通である。水準分割実験では,ある実験水準で使用する二つの
類似試料は,同じような併行標準偏差及び再現標準偏差を与えることが期待される程度に類似していなけ
ればならない。水準分割計画では,ある実験水準に使用する二つのサンプルがほぼ同一水準の測定結果を
与えれば十分であり,二つのサンプルが大きく異なるように計画しても得るところはない。
化学分析においては,対象とする成分を含むマトリックスが精度に影響することが多い。したがって,
水準分割実験では,各測定水準について類似したマトリックスの二つのサンプルが必要である。十分類似
したサンプルは,対象成分を少量添加することによって得られることがある。サンプルが天然物又は工業
製品の場合,水準分割実験に使用するために十分類似したサンプルを得ることが困難な場合がある。この
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場合は,同一製品の二つのバッチを使用することが一つの解決策であろう。忘れてならないのは,水準分
割実験においてサンプルを選択する目的は,オペレータに同一であることを期待させないサンプルを提供
することである。
4.2 水準分割計画のレイアウト
4.2.1 表1に水準分割計画のレイアウトを示す。
p箇所の各参加試験室はq個の測定水準ごとに二つのサンプルを測定する。
ある測定水準の二つのサンプルをa及びbで表し,aは一方の試料から採ったサンプルを,bはもう一方
の類似試料のサンプルを意味する。
4.2.2 水準分割実験のデータを
yijk
で表すが,ここで,
添字iは試験室を意味し(i=1,2,...,p)。
添字jは測定水準を意味し( j=1,2,...,q)。
添字kはサンプルを意味する(k=a又はb)。
4.3 水準分割実験の構成
4.3.1 水準分割実験の計画に当たっては,JIS Z 8402-1の6.の記述を参照されたい。
JIS Z 8402-1の6.3には,実験に参加する試験室数を求めるための式(一般にAで表される値を含む式)
が多数示されている。水準分割実験においてこれに対応する式は,次のとおりである。
備考 これらの式はJIS Z 8402-1 6.3.2.2.の備考24. に示す方法によって導いた。
併行標準偏差及び再現標準偏差の推定値の不確かさを評価するため,次の値を計算する。
併行精度については
Ar=1.96 1/[ 2( p1) ] (1)
であり,γ=σR /σrとおくとき再現精度については
2 2 4
AR=1.96 [{[1+2(γ −1) ] +1}]/[8γ ( p
1) ] (2)
である。
繰返し数nが2の場合,JIS Z 8402-1のpが,ここではp−1になることがあるという点を除けば,JIS Z
8402-1の式(9)及び式(10)は上の式(1)及び式(2)と同じであることが分かる。この差は小さいので,JIS Z
8402-1の表1,図B.1及び図B.2を用いて,水準分割実験における併行標準偏差及び再現標準偏差の推定
値の不確かさを評価することができる。
水準分割実験において,測定方法のかたよりの推定値の不確かさを評価するため,n=2としてJIS Z
8402-1の式(13)で定義される値Aを計算し(又はJIS Z 8402-1の表2を用いて),その値をJIS Z 8402-1
の規定に従って利用する。
水準分割実験において,試験室のかたよりの推定値の不確かさを評価するため,n=2としてJIS Z 8402-1
の式(16)で定義される値AWを計算する。水準分割実験における繰返し回数は実際には2であるから,繰
返し数を増やすことによって試験室のかたよりの推定値の不確かさを小さくすることはできない(この不
確かさを小さくする必要がある場合は,水準を分割しない計画を適用するのがよい)。
4.3.2 水準分割実験の構成の詳細については,JIS Z 8402-2の5.及び6.の規定によるものとする。JIS Z
8402-2に示されている繰返し数nは,水準分割計画における水準の分割数(すなわち2)としてもよい。
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Z 8402-5 : 2002 (ISO 5725-5 : 1998)
サンプルaからのサンプルを参加試験室にランダムに割り当て,次に改めてランダムにサンプルbから
のサンプルを参加試験室に割り当てる。
水準分割実験においては,データ報告の際に,統計の専門家にとって,各測定水準についてサンプルa
から得られた結果と,サンプルbから得られた結果を区別できるようになっている必要がある。(2種の)
サンプルにそれが可能となるようにラベル付けをするが,このことが参加試験室に分からないように注意
をする。
表 1 水準分割計画のデータ照合用の推奨様式
4.4 統計的モデル
4.4.1 この規格のこの部において使用する基本モデルは,JIS Z 8402-1 5.の式(1)によって与えられる。
JIS Z 8402-1 5.では,測定方法の精確さ(真度と精度)を推定する場合,各測定結果を三つの成分の和で
あると仮定することが有用であると述べている。
(pdf 一覧ページ番号 )
yijk=mj+Bij+eijk
ここで,それぞれの測定サンプルについて,
mj : 測定水準 j=1,...,qにおける一般平均(期待値)
Bij : 試験室 i=1,...,p,測定水準 j=1,...,qにおける併行条件の
下でのかたよりの試験室成分
eijk : 試験室i,測定水準jにおける併行条件の下での測定結果 k=
1,...,nに伴う偶然誤差
である。
4.4.2 水準分割実験の場合,このモデルは次の式で表される。
(pdf 一覧ページ番号 )
yijk=mjk+Bij+eijk
4.4.1の式(3)と唯一異なる点は,mjkに添字kが追加され,これが,式(4)の一般平均が測定水準jにおけ
るa又はbのどちらのサンプル(k=1又は2)についてのものかを表す。
Bijに添字kが存在しないことは,試験室iにおけるかたよりが,個々の測定水準においてはサンプルが
a,bのいずれであるかに依存しないことを表す。これが二つのサンプルが類似していることが重要である
ことの理由である。
参考 以下ではaのサンプルについてはk=1ではなくk=aと,bのサンプルについてはk=bと表し
ている。
4.4.3 セル平均値を次のとおり定義する。
(pdf 一覧ページ番号 )
yij=( yija+yijb )/ 2
更に,セル差を,次のとおり定義する。
――――― [JIS Z 8402-5 pdf 9] ―――――
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(pdf 一覧ページ番号 )
Dij=yija−yijb
4.4.4 水準分割実験の水準jにおける一般平均を,次のとおり定義する。
mj=(mja+mjb )/2 (7)
4.5 水準分割実験データの統計的解析
4.5.1 データを表1に示した表に記入する。試験室と測定水準の各組合せをこの表における“セル”とい
い,各セルには2個のデータyijaとyijbが入る。
セル差Dijを計算してこれを表2に示した表に記入する。この解析方法では,各セル差を,
a−b
のように計算し,値が負の場合にはマイナス記号をつけることが必要である。
セル平均値yijを計算してこれを表3に示した表に記入する。
4.5.2 表1のセルで測定結果が欠けている場合(例えば,サンプルを損なった,又は,後述の外れ値の検
定結果に従ってデータを除外した場合),対応する表2及び表3のセルはともに空白とする。
4.5.3 実験の各測定水準jについて,表2のj列におけるセル差の平均値Djと標準偏差sDjを計算する。
Dj= Dij p (8)
2
sDj= (Dij−Dj )( p−1) (9)
ここで,Σは試験室i=1,...,pについての総計を表す。
表2に空白のセルがある場合,pは表2のj列の空白でないセルの個数となり,総計も空白でないセル
について計算する。
4.5.4 実験の各測定水準jについて,次の式を用いて表3のj列におけるセル平均値の平均値yjと標準偏
差syjを計算する。
yj= yijp (10)
2
syj= ( p−1)
( yij−yj ) (11)
ここで,Σは試験室i=1,...,pについての総計を表す。
表3に空白のセルがある場合,pは表3のj列の空白でないセルの個数となり,総計も空白でないセル
について計算する。
4.5.5 表2,表3及び4.5.3と4.5.4において計算した統計量を用いて,4.6の方法によってデータの一致
性と外れ値について吟味する。除外されるデータがあれば,統計量を計算し直す。
4.5.6 次の式を用いて,併行標準偏差srjと再現標準偏差sRjを計算する。
rjs
s= Dj 2 (12)
2 2 2
2
sRj =syj +srj (13)
4.5.7 srjとsRjが平均値yjに依存するか否かを調べ,もし依存する場合は,JIS Z 8402-2 7.5の方法によ
って関数関係を求める。
表 2 水準分割計画のセル差の表の推奨様式
――――― [JIS Z 8402-5 pdf 10] ―――――
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- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用
- JISZ8101-3:1999
- 統計―用語と記号―第3部:実験計画法