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Z 8402-6 : 1999 (ISO 5725-6 : 1994)
ならない。また試験室を継続的に評価するためには,しばしば多くの試験室を同時に評価しなければなら
ない。このような状況では,共同評価実験が有効である。
共同評価実験を行うことの目的は,それぞれの分析能力の改善を目指して各試験室の結果と他の試験室
の結果とを比較することである。
7.1.2 共同評価実験の定義の前提
測定方法の併行標準偏差は,試験室内での均一な条件の下で行われる測定の不確かさの尺度である。こ
の意味で,それは,JIS Z 8402-1に定義されている併行条件の下での室内精度を表現している。
標準物質が存在する場合のように,測定される特性について,真の値が存在し,かつ値が既知のときは,
試験室のかたよりは,直ちに求めることができる。真の値が未知のときは,かたよりを間接的に求めなけ
ればならない。一つの手段は,その試験室をかたより既知の試験室と比較することである。しかし,この
解決法は,その“参照”試験室の精度とかたよりに強く依存する。
共同評価実験の場合,再現精度は,異なる試験室間で得られた測定結果の一致の度合いを示している。
従って,それは各試験室のかたよりを評価するために用いることができる。共同評価実験で再現精度が求
められたとき,系統的な偏差の大きい試験室は,外れ値のように見えるであろう。
ここでは,測定方法の精度は,あらかじめ求められているものとする。すなわち,併行分散 室間分
散 び再現分散 刀 知であることを意味している。
7.で述べる方法は,試験室のかたよりをチェックすることを主として意図している。6.で述べた方法は,
試験室の併行精度又は中間精度をチェックするために,より効果的である。
7.2 以前に評価されていない試験室による,ある測定方法の使用の評価
7.2.1 試験室の実施要領の評価
ある試験室の一般的な評価基準については,JIS Z 9325を参照のこと。試験室は,GLP(試験室のよい
実施要領,good laboratory practice)に従わなければならないし,満足できるような内部品質管理を行わな
ければならない。内部品質管理の方法は,すでに6.に述べた。
管理のこの部分は,各試験室の通常の作業状況についての査察に基づいているにすぎない。これは,特
別の測定試料の使用や他の試験室の参加を必要とせず,直ちに行うことができる。
対象となる試験室の,ある特定の測定方法の使用について定量的に評価するためには,管理実験を行う
必要がある。これは,その試験室内で標準物質(7.2.3参照)を使用するか,又は優れた試験室(7.2.4参照)
と比較することによって行うことができる。
7.2.2 管理実験に関する一般的な考慮
管理実験を計画するときには,次のような点を考慮すべきである。
a) 実験の測定水準の数 (q) をいくつにするか? この問題は,JIS Z 8402-1の6.3で考慮されている。
b) 各測定水準での反復数 (n) をいくつにするか?
共同評価実験の場合 :
c) 参加試験室数 (p) はいくつになるか?
実験を計画するとき,JIS Z 8402-2の5.及び6.と同様に,JIS Z 8402-1の6.1を考慮に入れることが望ま
しい。
測定試料は,それが共同評価実験の試料であることが分からないようにして試験室に送らなければなら
ない。このようにすることで,その試料が特別な取扱いを受けず,試験室の通常の実施要領で取り扱われ
ることを保証するためである。
7.2.3 標準物質がある場合の測定方法
――――― [JIS Z 8402-6 pdf 31] ―――――
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7.2.3.1 一般
7.2.3.1.1 標準物質が存在する場合には,評価は単一の試験室で行ってもよい。測定方法の精度が既知な
ので,室内精度の評価には併行標準偏差の既知の値を使用し,加えて測定結果と参照値を比較することで,
かたよりが求められる。
実験者が実験結果から高い確率で検出したいと望んでいる試験室間のかたよりの最小値として,検出可
能な試験室のかたより 入することが適切であることがある。
7.2.3.1.2 室内精度を評価するためには,試験室内で繰り返し測定を行う必要がある。
7.2.2に示した考慮の後に,q水準の測定試料が送られ,各測定水準ごとにn回の繰り返し測定が行われる。
結果の解析にはJIS Z 8402-2の7.に示されている方法を用いる。室内精度を評価するには,セル内標準偏
差srを既知の併行標準偏差 爰 較する。容認の基準は,
sr2/ 1− 愀
である。ここで 1− 愀 ‰澁 由度 滿 n−1の 布の (1− 愀 位点である。特に断ら
準 0.05とする。
この不等式は,q個の測定水準のうち約95%について成立するはずである。普通qはそれほど大きくな
いので,このことは,基準(1)が,その試験室におけるq個の測定水準のすべてについて成立しなければな
らないことを意味している。
7.2.3.1.3 かたよりを評価するときは,各測定水準の平均値yを対応する参照値 較する。
1 (n )1
sr2=sR2
s( y2 )=s2L sr2 (2)
n n
なので容認の基準は,
2 2n 1
|y− 2 R r (3)
n
容認の基準(3)は,q個の測定水準のそれぞれについて適合しなければならない。
n=2のときは,基準(3)は簡単に
2
2 r
|y− 2 R (4)
2
となる。さらに検出可能なかたよりについては,容認の基準が
|y− 一 (5)
と導かれる。
7.2.3.2 例 : コンクリート中のセメント含有量の定量
7.2.3.2.1 背景
セメント含有量はコンクリートの耐久性に影響を及ぼすので重要であり,コンクリートの仕様書にセメ
ント含有量の最小値が示されることがよくある。セメントの含有量は,セメントと骨材及びコンクリート
試料の試料中のカルシウム含有量の測定によって求められる。試験室の評価のために,セメント含有量既
知のコンクリート試料を調製することが可能である。
6つの試験室を評価するために,セメント含有量が425kg/m3の標準物質が調製された。各試験室で,そ
れぞれ2回の測定が行われた。
7.2.3.2.2 オリジナルデータ
表9参照。併行標準偏差と再現標準偏差の値は :
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――――― [JIS Z 8402-6 pdf 32] ―――――
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表9 コンクリートのセメント含有量
試験室i 観測値
y11 y12
1 406 431
2 443 455
3 387 431
4 502 486
5 434 456
6 352 399
7.2.3.2.3 セル平均と範囲の計算
表10参照。
表10 セル平均とセル範囲
試験室 セル平均 範囲
1 418.5 25
2 449 12
3 409 44
4 494 16
5 445 22
6 375.5 47
7.2.3.2.4 室内精度の評価
表10の範囲を,次式により併行標準偏差と比較する。
( yi1yi2 ) 2 1(2
2 ≦ )( )
2 r
ここで, 懿 0.05, 滿 1ならば, 1) =3.841である。
試験室No.6は,外れていることが判った。
(y6 ; 1−y6 ; 2)2=2 209;検定統計量の値=4.31
7.2.3.2.5 かたよりの評価
容認の基準の式(4)から
|y−425|<44.59
となる。
試験室No.4の検定統計量の値は
|y−425|=69
試験室No.6の検定統計量の値は
|y−425|=50.5
従って,これらの2つの試験室には,いずれも満足できないかたよりがある。
7.2.4 標準物質が存在しない測定方法
7.2.4.1 標準物質を入手できないので,評価は,技術の優れた試験室との比較によって行われなければな
らない。評価対象である新たな試験室についての信頼できる結論を得るために,十分な精度とかたよりで
業務を行っている試験室を見いだすことが重要である。
標準物質がある場合と同じように,2つの試験室間の検出可能なかたよりの差 入することが適切な
ことがある。それは実験者が,高い確率で検出したいと望んでいる,2つの試験室によって得られる結果
――――― [JIS Z 8402-6 pdf 33] ―――――
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の期待値間の差の最小値として定義される。
7.2.4.2 測定試料は,両方の試験室に7.2.3.1.2に述べたようにして送り,両方の試験室の室内精度も同様
に評価する。両方の試験室は,各測定水準で同じ個数 (n) の測定結果を得ることが望ましい。
7.2.4.3 測定方法のかたより 問 するときは,2つの試験室のそれぞれの測定水準で平均値を比較する。
一般に,n1を第1の試験室の測定結果の数とし,n2を第2の試験室の測定結果の数とすれば,
1 1 1 1
s(2 y1
y)2
=
2 2L 2
r =2 2
R
2
r 1 (6)
n1 n2 2n1 2n2
なので,容認の基準は,
2
R 2 1 1
| 1y− 2y| 2 2 r 1 (7)
2n1 2n2
となる。容認の基準(7)は,q個の測定水準のそれぞれについて適合しなければならない。
n1=n2=2のときは,基準(7)は簡単に,
2
2 r
| 1y− 2y| 2 2 R (8)
2
となる。
参考 基準(6)(8)で評価できるのは,試験室間のかたよりの差 替 測定方法のかたより
ない。原国際規格のこの部分の冒頭の“測定方法のかたより 問 するとき”という記述は誤
まりで,“試験室間のかたよりの差 問 するとき”が正しい。
と記述している。
また,ISO 5725-6では式(6)の左辺を誤って s2 ( y)1(
y)2(
7.3 以前に承認されている試験室についての継続評価
7.3.1 継続管理実験についての一般的な考慮
以前に承認されている試験室が,引き続き満足すべき技能を維持していることを保証するためには継続
評価が必要であり,訪問査察か,評価実験への参加のいずれかによって行うことが望ましい。どれくらい
の頻度で評価を行うべきかについては,さまざまな因子,例えば,技術的,経済的,及び安全性の因子が
寄与するため,特に定まったルールは決められていない。責任のある権威機関が,その状況に応じて評価
の頻度を決定すべきであろう。
継続評価は,同時に多くの試験室が評価されなければならない状況をしばしば引き起こす。この状況で
は,技術の優れた試験室との比較は奨められない。これは,最良の試験室であっても,その試験室自身も
チェックされなければならないためである。この状況では,共同評価実験を行うことが必要である。
7.3.2 試験室の実施要領の評価
試験室の実施要領の実態は7.2.1に述べた訪問査察によって評価される。
7.3.3 標準物質がある場合の測定方法
JIS Z 8402-4に述べられている方法を,試験室の継続評価に相応して適用することができる。
7.3.4 標準物質が存在しない測定方法
7.3.4.1 一般
7.3.4.1.1 標準物質を入手できないので,各試験室の評価は,複数の試験室が参加する共同評価実験に基
づいて行われる。
評価実験の計画は,精度実験の計画に非常によく似ているので,JIS Z 8402-1及びJIS Z 8402-2に記述
――――― [JIS Z 8402-6 pdf 34] ―――――
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されている多くの検討すべき事項が適用される。その目的が,それぞれの試験室を個々に評価することで
あるので,測定水準ごとの反復数の選定は,7.2.2に述べた一つの試験室の状況と同様である。
その目的が評価であるため,参加する試験室の数が精度評価実験の場合よりも少なくてもよい。例えば,
国家を代表して参加する試験室に限って行われる実験などは,手続きから明らかであろう。参加試験室の
数の減少は,試験室間の系統的な偏差を減少することにはならない,ということが特に重要であり,この
ような場合に,外れ試験室を明らかにできないという危険性が増加するかもしれない。
7.3.4.1.2 7.2.2に示した考慮の後に,q個の測定水準の測定試料を,p個の試験室に送付し,各測定水準
でn回の測定が行われる。その結果を評価するときには,JIS Z 8402-2の7.に示されている方法を用いる。
これは欠測値や測定結果の追加が起こりうるために,セル内のデータ数が異なるかもしれないからである。
室内精度は,6.に述べたように,試験室ごとに評価される。
7.3.4.1.3 かたよりの総合評価については,各測定水準ごとに再現分散を計算する(JIS Z 8402-2, 7.5参照)。
sR2=sL2+sr2 (9)
ここで
p
2L 1
s= ni( yiy) 2 sr2/n (10)
p 1 i=1
そして,
p
1 in
n= (11)
p i=1
である。
室間分散sL2は既知の室間分散 較される。
容認の基準は,
ns2L sr2 1(2
() )
2L 2 ≦
(pdf 一覧ページ番号 )
n r
である。ここで 1− 愀 ‰澁 由度 滿 p−1の 布の (1− 愀 位点である。特に断
水準 0.05とする。
もし,容認の基準(12)に適合するならば,室間分散sL2は容認でき,問題としている測定水準について,
すべての試験室が満足すべき精確な結果を得たと結論することができる。
基準が適合しないときには,グラッブズの検定統計量を計算することで,最も外れている結果を見つけ,
そこで問題となる試験室からの測定結果を除外し,残った (p−1) 試験室について再び分散を推定する。
もし修正した分散が,基準(12)を満足しているならば, (p−1) 試験室は承認される。そうでなければ,グ
ラッブズの検定の統計量を再計算し,必要ならばこの手順を数回繰り返す。JIS Z 8402-2に述べられたよ
うにグラッブズの検定は,繰り返して適用するのには適していない。従って,多くの外れ値があるときは,
全ての測定水準について,全てのデータを検査したほうがよい。もし,一つもしくは複数の試験室が,そ
れぞれ複数の測定水準で偏差が大きいときには,これらの試験室は大きすぎるかたよりを伴って測定作業
をしていると結論することができる。もし,その偏差が,一つの測定水準だけで見出されるならば,それ
はその測定試料の不規則性を調査するための十分な理由となる。もし,その偏差が,さまざまな試験室で,
又さまざまな測定水準で生じているならば,それらの偏差は,おそらく評価実験に欠陥があったことによ
るものであろう。そのときは,評価実験の一つ一つの部分について,可能ならば説明を見いだせるように,
――――― [JIS Z 8402-6 pdf 35] ―――――
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JIS Z 8402-6:1999の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 5725-6:1994(IDT)
JIS Z 8402-6:1999の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.020 : 度量衡及び測定一般
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 8402-6:1999の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用