JIS Z 8403:1996 製品の品質特性―規格値の決め方通則 | ページ 2

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Z 8403-1996
+(摩耗によるばらつきの平均二乗誤差)
+(環境劣化によるばらつきの平均二乗誤差)
で求める。
(1) 望小特性の場合
1 T T 1 2
2 2 2 2
T = yd dt ya dt+ yn dn
T 0 0 ( 2 1) 1
(2) 普通特性の場合
1 T 1 T 1 2
2
T = ( yd m0 ) 2 dt ( ya m0 ) 2dt+ ( ynm0 ) 2 dn
T 0 T 0 ( 2 1) 1
となる。ただし,Tは設計寿命期間である。実際の計算ではT,yd,ya,及びynについて
特性変化曲線を求めて計算する。で求める。
(3) 望大特性の場合
平均二乗誤差の和
=(劣化によって変化した特性値の逆数の二乗平均)
+(摩耗によって変化した特性値の逆数の二乗平均)
+(温度によって変化した特性値の逆数の二乗平均)
したがって,
T 2 2 2
1 1 1 T 1 1 2 1
2
T= dt dt dn
T yd T 0 ya ( 2 1) 1 yn
0
となる。実際には,T,yd,ya,及びynについて特性変化曲線を求めて計算することにな
る。
手順6 平均二乗誤差の和 瀰 失の計算をする。
手順7 入手コストと平均二乗誤差の和 失とから総合損失LTを求め,経済性の比較を行
う。最も総合損失が小さい候補を採択する。
例1. 普通特性の例 ある精密機械に使用されるプーリを例にして説明する。このプーリの機能は,
外径に巻き付けたロープで直線運動する部品に一定速度を与えることにある。プーリの外径の
ばらつきは機能のばらつきに影響を与える。
手順1 設計で外径の基準値が48mmと決定された。プーリを加工する際の材質として幾つか
考えられる。その中からプラスチックの加工品3種類,アルミニウム加工品1種類,
焼結合金での加工品1種類の合計5種類を候補として選定する。
手順2 5種類の候補に関して出荷後ばらつきについてのデータ及びコストデータを入手す
る。設計上考えられる出荷後のばらつきは,外径の摩耗及び温度変化による熱膨張が
予測される。外径の摩耗については,ロープで移動部品を繰り返し引っ張るためにロ
ープの圧力と擦れによって摩耗が生じる。設計寿命回数時点で外径摩耗量のデータが
集められた。
また,熱膨張による外径変化を知るためにプーリの周囲温度変化の標準偏差及び熱
膨張係数のデータが集められた。附属書1表1が入手したデータである。
機械内部の温度のばらつきの標準偏差 7.5℃である。
手順3 ばらつきによる損失を計算する。この部品に与えられた特性が普通特性であることか

――――― [JIS Z 8403 pdf 6] ―――――

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ら,普通特性の損失関数を選定する。
A0 2
L= 2 T
Δ0
附属書1表1 各品種のばらつき及びコスト
候補(材料) 摩耗量 B (mm) 線膨張係数 b コスト A
(設計寿命回数時点) (10-6 ℃-1) (円)
ABS成形品 0.050 100 100
ガラス入りポリカーボネート成形品 0.015 28 180
ポリアセタール成形品 0.030 81 130
アルミニウム切削品 0.009 23 250
焼結合金+切削品 0.010 12 310
手順4 機能限界0及びそのときの使用者の平均損失A0の値を求める。プーリの半径が変化
すると移動部品の速度も変化し機能障害が発生する。外径が±0.28mm変化すると機能
障害が起きる。したがって,0は0.28となる。顧客が使用しているとき,機能障害
が発生すると,部品の交換,修理が必要となる。部品費,技術料,日当を考えて合計
24 000円の費用が生じると予測される。したがって,A0は24 000円となる。
手順5 平均二乗誤差の和 湎譏湘 には,摩耗による外径の変化及び温度
の変化によるばらつきが考えられる。したがって,摩耗劣化による平均二乗誤差 愀
及び温度変化による平均二乗誤差 えたものになる。
平均二乗誤差の和 愀
(1) 摩耗量の平均二乗誤差 愀 外径の摩耗が使用回数に応じて直線的に変化すると
考えて求める。単位使用回数当たりの摩耗量 拿 設計寿命回数T,設計寿命回数時
点における摩耗量をBとすると,次のようになる。
2
1 T2 B2
2
a=
T0
T
( t) 2 dt=
3
=
3
(2) 温度変化による外径の平均二乗誤差 周囲の温度変化によって生じる。線膨
張係数bに機械内の温度変化の標準偏差 ーリの半径rを乗じて求める。
(b
手順6 損失を附属書1表1のデータをもとに求める。例えばABS成形品の場合は,摩耗によ
る外径変化は0.05と予測され,線膨張係数は0.0001/℃である。
また,機械内の温度変化の標準偏差 桎 されるので,ばらつきによる損
失は
A 2
L= 2 T
Δ0
24 000 .0052
= .0(000 15.7 24) 2 =3543.
(円)
.0282 3
となる。同様に他の候補を計算する。
手順7 ばらつきによる損失L及び入手コストAを合計した総合損失LTをそれぞれの候補につ
いて求めると,附属書1表2のようになる。

――――― [JIS Z 8403 pdf 7] ―――――

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附属書1表2 損失コストの計算事例及び総合損失
単位 円
候補(材料) 損失コスト L コストA 総合損失 LT
ABS成形品 354 100 454
ガラス入りポリカーボネート成形品 31 180 211
ポリアセタール成形品 157 130 287
アルミの切削品 14 250 264
焼結合金 12 310 322
計算結果から,最も総合損失が小さいのはガラス入りポリカーボネート成形品となる。
例2. 望大特性の例 出力+5Vの定電圧電源に使用するアルミニウム電解コンデンサの耐電圧に対
する計算を行う。耐電圧は高いほどよいので望大特性と考える。
手順1 入手可能なアルミニウム電解コンデンサの種類及び初期耐電圧特性は,附属書1表3
のようである。
附属書1表3 コンデンサの種類及耐電圧特性
候補 耐電圧 V0 5V印加時の劣化係数 d×10-5 コスト
(V) (1/h) (円)
A 16 2.230 100
B 25 1.530 120
C 50 0.852 195
D 63 0.701 230
E 100 0.475 305
手順2 選定されたコンデンサの耐電圧特性の変化を考える。使用中,耐電圧の劣化が考えら
れる。劣化係数は印加電圧と定格電圧との比に比例するとし,附属書1表3のように
予測した。
手順3 損失関数を選定する。この特性の場合には,耐電圧は高いほどよいことになるので,
望大特性の損失関数を選定する。
L=A002
手順4 機能限界0及び平均損失A0を求める。機能限界0は,定格の出力電圧+5Vを加え
るのでこの値を用いる。耐電圧がこれより低下するとコンデンサが破壊すると考える。
平均損失A0については,コンデンサが破壊すると電源基板全体を交換しなければなら
ない。そのときの使用者の損失は,部品代を含めたサービス費用となる。その費用を
次のように見積もる。
部品代 定電圧電源プリント基板一式 3000円
修理技術費 5000円
その他諸経費 2500円
合計 10500円
手順5 平均二乗誤差の和 湟 大特性の平均二乗誤差の和 コンデンサ
の劣化耐電圧の逆数の二乗平均で求める。劣化係数d,総使用時間T,初期耐電圧を
V0とすると,次のようになる。
2
1 T 1 1 T 1
2
T = dt= e2dtdt= (e2dT )1
T 0 V0e dt 2
V0 T 0 2
2 dV0 T

――――― [JIS Z 8403 pdf 8] ―――――

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手順6 入手したデータを代入してばらつきによる損失を求める。例えば候補Aの場合を考え
る。初期耐電圧は16V,設計寿命期間Tを5年間とし,1日8時間使用すると考える。
設計寿命時間は9 600時間となる。平均二乗誤差の和
5
2
edT 2 .223 109 600
2 1 e 1 1
T = 2 = 5 =
2 dV0 T 2 .223 10 162 9 600 2051.
となるので,ばらつきによる損失Lは次のようになる。
2 2 1 262 500
L=A0Δ
0 T=10 500 52 = =1 280
2051. 2051.
同様に他の候補についても計算する。
附属書1図1 耐電圧の劣化
手順7 ばらつきによる損失L及び入手コストAの和を求め,総合コストLTとする。計算結果
を附属書1表4に示す。
附属書1表4 計算された総合損失
単位 円
候補 損失コスト L コスト A 総合損失 LT
A 1280 100 1380
B 488 120 608
C 114 195 309
D 71 230 301
E 27 305 333
以上の結果から候補Dを選定すればよいことになる。
望小特性も同様な方法で,製品の品質とコストとのバランスを取るための検討をす
ることができる。

――――― [JIS Z 8403 pdf 9] ―――――

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附属書2 品質水準の検討及び改善方法
1. 適用範囲 この附属書は,製品の品質特性の規格値に関連して,品質水準を検討し改善する方法につ
いて規定する。
2. 用語の定義 この附属書で用いる主な用語の定義及び記号は,規格の本体及び附属書1によるほか,
次のとおりとする。
(1) 動特性 あるシステムにおいて,出力を実現させるための入力信号と出力特性との間の関係をもとに
ばらつきを評価できる特性。これに対して,望小特性・普通特性・望大特性を静特性と呼ぶことがあ
る。例えば,測定器の出力,センサの出力,製品の寸法などである。
(2) 信号因子 システムの出力を変化させるための入力として取り上げたもの。
(3) 誤差因子 システムの特性のばらつきの原因となる条件の代表として取り上げたもの。
(4) N比 ( 特性において、信号のパワーの雑音のパワーに対する比。ここでは,信号パワーを信
号因子の効果の大きさ又は雑音のパワーを誤差因子の効果の大きさとする。静特性の場合にも,便宜
的に平均値の効果又は雑音のパワーを用いてSN比を求めることができる。
(5) 現行の損失 (L1) 現状の品質水準から推定した損失。
(6) 許容最大損失 (L2) 規格限界に等しい特性値をもっている製品から推定した損失。
3. 品質水準の検討 設定されたの値と特性値の現状の平均二乗誤差VTとを損失で比較して,品質水準
の検討を次の手順で行う。
手順1 製品の特性値の現状の平均二乗誤差VTを,特性値yi (i=1,···,n) と基準値m0とから,次の
式によって算出する。
(1) 望小特性の場合
1 2 2 2
VT= ( y1 y2 yn )
n
(2) 普通特性の場合
1
VT= [{( y1m0 ) 2( y2 m0 ) 2 ( yn m0 ) 2}]
n
(3) 望大特性の場合
1 1 1 1
V=
T 21 2 2
n y y2 yn
手順2 VTの値から求めた現行の損失L1及び許容最大損失L2を次の損失関数によって算出する。
(1) 望小特性の場合
A0
L1Δ
= 2
VT
0
A0 2

L=
2
Δ0

――――― [JIS Z 8403 pdf 10] ―――――

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JIS Z 8403:1996の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8403:1996の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8101:1981
品質管理用語
JISZ8103:2019
計測用語