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手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
使用者(この場合は小形コンピュータ組立者)段階 機能限界0=16ms
平均損失A0=24 000+1 200=25
200円
手順2 生産者側の損失Aの推定
使用者段階 破棄による損失A=1 200円
手順4 最小許容値の計算
0=16ms,A0=25 200円,A=1 200円であるから
A×0= 25 2000
= 0A
×16≒73.3 ms
1 200
手順6 最小許容値の決定 以上から,リフレッシュ周期tREFの最小許容値を73msとした。
例4. 壁用吹付け塗料の特性 水性エマルジョンの壁用吹付け塗料は,使用時,水で希釈した塗料を
エアーガンで壁に吹き付ける。吹き付けた塗料がたれると壁面の美観が損なわれ,再施工など
が必要となる。粘度が高ければたれは少なくなるが,ガンで吹きにくくなるなどの弊害が出る。
この塗料は,シェアレートによって粘度が変化する。この性状を利用して吹き付けやすくた
れない塗料にする(参考図1参照。)
たれやすさを示す尺度であるたれ性指数Fを次の式で定める。
YB YA
F=
YA
ここで, YA : 低シェアレート(壁付着直後)のシェアストレス
YB : 高シェアレート(ガン吹付け時)のシェアストレス
であり,このたれ性指数Fは負の値とはならない望小特性である。
また,粘度は次の式で求められる。
Y
シェアストレス
粘度=
シェアレートX
参考図1 シェアレート,シェアストレスとの関係
(1) 望小特性 : 壁用吹付け塗料のたれ性指数(受入側が受入検査をする場合) 作業現場にお
いて塗料をガンで吹き付けるときに,水で希釈するが,たれ性指数Fが大きくてたれやす
いと使用時(施工前)に不良として発見される場合が多い。検討の結果,たれ性指数Fが
8.5以上になると,使用者の50%が不良と考えることが分かっている。
――――― [JIS Z 8403 pdf 31] ―――――
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また,苦情が発生したときの損失は,問題のあることが施工前に発見されるので苦情に
よって発生する費用は少ない。その費用の内容は,代替品運搬費20円/kg,苦情品処理費
40円/kg,施工手待ち労務費200円/kgが考えられ,合計260円/kgになる。工場におけ
る手直しのためのコストは,機能材料を追加して,再度の混練をすることとし,40円/kg
とした。
手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
使用者段階 使用者の段階における機能限界 0=8.5
苦情発生時の費用 A0=260円/kg
手順2 生産者側の損失Aの推定
生産者段階 工場における手直しコスト A=40円/kg
手順4 最大許容値の計算
0=8.5,A0=260円/kg,A=40円/kgであるから
A×0= 40×8.5≒3.33
= 0A 260
手順6 最大許容値の決定 以上から,この製品の最大許容値は,きりがよい数値で
3.3とした。
(2) 望大特性 : 壁用吹付塗料の塗膜の付着強さ(受入側が受入検査をしない場合) たれ性の
ような使用時特性は多くの場合に,使用開始時(施工前)にその不良は分かるが,塗膜の
付着強さのような塗膜物性に関するものは使用後数日経過してから不良が発見され苦情と
なる。この場合の苦情発生による費用は使用前に不良が発見され苦情となる場合よりも大
きくなる。
塗膜の付着強さについて,塗装後に不良が発見され苦情となった場合を試算してみる。
機能限界は,0=25N/cm2である。苦情発生時の費用は個人住宅1軒の再施工を想定す
る。足場費用,材料費用,施工労務費用を考慮し,A0=200万円とした。生産者段階の損
失はこの特性の不良の場合には,手直しでは対応できず,不良品を廃棄して新たに作るこ
とになるので,工場出荷価格を考えて
500kg/軒×500円/kg=25万円/軒
とした。
手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
生産者段階 使用者の段階における機能限界 0=25N/cm2
苦情発生時の損失 A0=200万円/軒
手順2 生産者側の損失Aの推定
生産者段階 工場出荷価 A=25万円/軒
手順4 最小許容値の計算
0=25N/cm2,A0=200万円/軒,A=25万円/軒であるから
A0×0= 200×25≒7.07 N/cm2
=
A 25
手順6 最小許容値の決定 以上から,最小許容値は,きりがよい数値で70N/cm2と
した。
例5. 普通特性 : プラスチック複合材料のフィラー含有率の許容差 プラスチックにフィラーとして
――――― [JIS Z 8403 pdf 32] ―――――
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ガラス繊維,炭素繊維などを混入した複合材料は,機械的特性が向上するので機構部品に用い
る。
フィラーの含有率が基準値より大きくなると,樹脂の流れ特性が低下し外観及び寸法に問題
を生じる。一方,基準値より小さい場合には,機械特性低下のため苦情が発生する。20wt%フ
ィラー入りの材料の場合に,この値は±5%付近にある。今,この複合材料の生産者における価
格を600円/kgとし,これを使用して作られた部品の単価を60円とする。ここで,部品の質
量は15gである。
手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
使用者段階 機能限界 0=5%
平均損失 A0=4 000円/kg(60円/15g)
手順2 生産者側の損失Aの推定
生産者段階 破棄による損失 A : 600円/kg
手順4 許容差の計算
0=5%,A0=4 000円/kg,A=600円/kgであるから
A×0= 600×5≒1.9(%)
= 0A 4 000
手順6 許容差の決定 以上から,この複合材料の許容差は,きりがよい数値で2%とし
た。
例6. 普通特性 : ガラス繊維強化PCの分子量の許容差 カメラ外装に使用されているガラス繊維強
化PCの品質は,分子量で管理されている。分子量が基準値より高い場合には,成形したとき
に成形品の表面にガラス繊維が浮く傾向がある。逆に,分子量が低いと強度が低下する傾向が
ある。組立工程又は使用中に,割れ事故を起こすことがある。このため分子量の値の範囲の機
能限界は±3 000である。
今,ガラス繊維強化PCの生産者における価格を600円/kgとし,これを使用して作られる
製品の単価を100円とする。
手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
使用者段階 機能限界 0=3 000 (分子量の単位)
平均損失 A0=5 000円/kg (100円/製品1個20g)
手順2 生産者側の損失Aの推定
使用者段階 破棄による損失 A=600円/kg
手順4 許容差の計算
0=3 000,A0=5 000円/kg,A=600円/kgであるから
A×0= 600×3 000≒1 039 (分子量の単位)
= 0A 5 000
手順6 許容差の決定 以上から,この用途の分子量の許容差は,きりがよい数値で1 000
とした。
例7. 普通特性 : 衣料用布地の収縮率 衣料用布地の品質特性の一つである収縮率の機能限界はJIS
で±3%と決められている。収縮率が3%を超えるとその布地を使った製品の形態のくずれのた
め苦情が発生する。業者について調査を行った結果,検査段階において管理を行い,手直しを
することが明らかになった。
――――― [JIS Z 8403 pdf 33] ―――――
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生産者の段階において不具合が生じた場合の費用は,再加工代に250円,検査に550円,包
装に425円が必要となる。したがって,Aは次のとおりである。
A=250+550+425=1 225円/反
一方,使用者段階においては縫製業者が収縮率±3%を超えた布地は手直しのため返品となり,
この費用は2 975円/反,さらに,使用者が再利用のために必要な時間を1時間とすれば,1
時間当たりの損失は4 800円となり,使用者(縫製業者)段階における平均損失A0は
A0=2 975+4 800=7 775円/反
と推定される。
手順1 機能限界0及び平均損失A0の推定
使用者段階 機能限界 0=3%
平均損失 A0=7 775円/反
手順2 生産者側の損失Aの推定
使用者段階 手直しによる損失 A=1 225円/反
手順3 品質水準及び測定能力の検討
工程の品質水準を検討するため得たデータは,
0.94, 0.72, 0.53, 0.69, 1.02
であった。附属書2に従って,基準値を0と考える普通特性の平均二乗誤差VTを算出
する。
1 2 2 2 1
VT= ( y1 y2 yn )= .0(94 2.072 2 .102 2 )=.0639 9 (%2)
n 5
手順4 許容差の計算
0=3%,A0=7 775円,A=1 225円であるから
A×0= 1 225
= 0A
×3≒1.19(%)
7 775
手順5 許容差の検討
A0 7 775
L1= 2
VT × 23
×0.639 9≒553 (円/反)
Δ0
ここでは,現行の損失L1が許容最大損失L2 (=A) よりも十分小さいとみなされるの
で,製品の品質水準は適正と判断する。
手順6 許容差の決定 以上から,この収縮率の許容差は,きりがよい数値で1%とした。
以上の例1.7.にその他の事例を加えて,この規格によって算出したの例をまとめて参考表1に示す。
――――― [JIS Z 8403 pdf 34] ―――――
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参考表1 各種部品の品質特性と決定したの事例
特性値の種類No. 品質特性 生産者側の 機能限界 平均損失 この規格によっ
損失 て算出した値
A 0 A0
望小特性 1. プラスチック軸受の真円度 700円 110 5 000円 41
2. テープレコーダ用カーボン 200円 106圀 6 000円 圀
1.8×105
ファイバ入りプラスチック材フラ
イホイールの電気抵抗
3. 室内用送風機のファンのアンバラ 600円 1 000 l0 000円 245
ンス
4. ドットプリンタのワイヤの先端部 600円 0.5N 10 000円 0.12N
の保持力
5. 壁用塗料たれ性指数 40円/kg 8.5 260円/kg 3.3
(受入検査がある場合)
普通特性 1. 動力伝達用シヤピンの強さ 2 000円 400N 100 000円 57N
(過負荷防止用)
2. 三角定規の直角部分の角度 1 500円 5′ 4 000円 3′
3. 塩化ビニル被覆電線の硬さ 200円 6.0HRM 1 800円 2.0HRM
4. チョークコイル取付け回転トルク 200円 4.0N-mm 5 000円 0.8N-mm
5. 半導体デバイスのDRAMのアクセ 1 200円 25 200円
スタイム (上側) +10ns +2.2ns
(下側) −50ns −11ns
6. 複写機の濃度 (下側) 300円 0.8 34 000円 0.075
7. マイクロスイッチの復帰力 200円 0.2N 1 000円 0.09N
8. 600円/kg
プラスチック複合材料のフィラー 5% 4 000円/kg 1.9%
含有率
9. ガラス繊維強化PCの分子量 600円/kg 3 000 5 000円/kg 1 039
(分子量の単位)
10. 衣料用布地の収縮率 1 225円 3% 7 775円 1.19%
望大特性 1. POM製回転軸の曲げ強さ 100円 10N 6 000円 77N
2. ターンテーブルとスピンドルのは 150円 30N 7 000円 205N
めあい強度
3. シャーシの圧入軸の抜け耐荷重 200円 15N 7 000円 89N
4. タイミングベルト用プーリの溶着 300円 40N 8 000円 207N
強度
5. 接着剤の接着強度 9円/g 25MPa 15円/g 32MPa
6. 半導体デバイスDRAMのリフレッ 1 200円 16ms 25 200円 73.3ms
シュ周期
7. 手提げかばんのハンドル 140円 150N 5 000円 896N
8. 250 000円
壁用吹付け塗料の塗膜の付着強さ 25N/cm2 2 000 000円 70.7N/cm2
――――― [JIS Z 8403 pdf 35] ―――――
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JIS Z 8403:1996の国際規格 ICS 分類一覧
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.01 : 品質一般