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Z 8462-5 : 2011 (ISO 11843-5 : 2008)
xc 正味状態変数の限界値
xd 検出可能な最小正味状態変数値
X 正味状態変数
α X=0における第1種の過誤の確率
β X=xdにおける第2種の過誤の確率
a
確率密度
注記 JIS Z 8462-1:2001の図1は,応答変数の分布及び非線形の検量線を図示している。この規格の図1では,JIS Z
8462-1:2001に示されている応答変数の分布から検量線の傾きを用いて変換された正味状態変数の分布を示す。
図1−基底状態X=0(左)及びxdの状態(右)において推定された正味状態変数の分布
3.4
精度プロファイル(precision profile)
<測定方法の検出能力> 応答変数又は正味状態変数の,標準偏差又は変動係数であり,正味状態変数
の関数で表した数学的記述。
3.5
応答変数,Y(response variable)
実験の結果を表す変数(JIS Z 8101-3:1999の1.2参照)。
注記1 この一般的な定義は,JIS Z 8462シリーズの目的に応じた限定的な表現,すなわち,“状態変
数Zの直接的に観測可能な代用物”と解釈できる。
注記2 応答変数Yは,分析のどのような段階においても確率変数であり,検量線によって変換され
た場合,その精度プロファイルは,正味状態変数の標準偏差σX(X)又は正味状態変数の変動係
数ρX(X)として表される。
――――― [JIS Z 8462-5 pdf 6] ―――――
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Z 8462-5 : 2011 (ISO 11843-5 : 2008)
3.6
応答変数の精度プロファイル(precision profile of response variable)
化学分析工程におけるピペット操作及び測定機器のベースラインノイズのようなランダム性に起因する
不確かさに基づくが,測定機器の不完全さとしてしばしば解釈できるような系統誤差に起因する不確かさ
には基づかない連続プロット。
3.7
正味状態変数,X(net state variable)
状態変数Zと基底状態(ブランク状態)におけるその値z0との差(JIS Z 8462-1:2001の4.参照)。
注記 正味状態変数Xは,検量線が作成される段階においては決定論的な変数であるが,σX(X)又は
ρX(X)として表される正味状態変数の精度プロファイルは,応答変数のランダム性から導かれる。
4 正味状態変数の精度プロファイル
実験的又は理論的な理由によって,精度(SD又はCV)は,正味状態変数Xよりも,むしろ応答変数Y
に結び付けられる。ゆえに,Yの全ての値は,対応するXの値に変換する必要があり,図2に示すように,
精度も同様に変換する必要がある(参考文献[1]及び[2]参照)。
Y /|dY/dX| /X
YのCV YのSD XのSD XのCV
X) X) 堀 X) 堀 X)
図2−応答変数から正味状態変数への不確かさの変換
図3に示すように,検量線の微分の絶対値|dY/dX|を用いれば,応答変数のSD,σY(X)は,正味状態変数の
SD,σXに変換できる。すなわち,σX(X)=σY(X)/|dY/dX|である。また,XのCV,ρX(X)への変換は,次のよう
に定式化される。
Y(X) Y
X(X) = (1)
dY
X
dX
ρY(X)がXの関数として与えられれば,求める量ρX(X)は,式(1)を同様に利用して,Xの関数として記述
できる。絶対値|dY/dX|を使えば,この規格は,単調に減少する検量線にも適用できる。
注記1 検量線が原点を通る直線(Y=aX)である場合,正味状態変数の精度プロファイルρX(X)は,
応答変数の精度プロファイルρY(X)と等しい。Y=aXであれば,Y/X=|dY/dX|=aとなる。
注記2 式(1)は,X=0においては定義されないが,正味状態変数のSD,σX(X) =ρY(X) Y/|dY/dX-]が有
限である限り,変動係数,ρX(X)は,Xが0に近づくに従って無限大に発散することになる。
――――― [JIS Z 8462-5 pdf 7] ―――――
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Z 8462-5 : 2011 (ISO 11843-5 : 2008)
図3−検量線の微分の絶対値,|dY/dX|を用いた応答変数のSD,σYの正味状態変数のSD,σXへの変換
5 正味状態変数の限界値及び検出可能な最小値
5.1 一般
次に示す全ての定義は,正味状態変数の確率分布に基づいている。
限界値xcは,次によって定義する。
xc=kcσX(0) (2)
ここに, kc : 確率αに対応した係数
σX(0) : X=0の場合のSD
関係式σX(0)=σY(0)/|dY/dX|が使われた場合,式(2)は,xc=kcσY(0)/|dY/dX|と記述できる。検出可能な最小値
xdは,次によって定義する。
xd=xc+kdσX (xd) (3)
ここに, kd : 確率βに対応した係数
σX(xd) : X=xdの場合のSD(図1参照)
精度プロファイルσX(X)(3.4参照)は,限界値xc及び検出可能な最小値xdのいずれの場合も決定するた
めに必要である。
注記1 正味状態変数が正規分布に従っている場合,確率α=β=5 %に対応する係数は,kc=kd=1.65
である。
注記2 σX(X)が一定であり,[σX(X)=σX]及びkc=kd=1.65という仮定の下では,式(2)及び式(3)は,xc
=1.65 σX及びxd=3.30 σXと簡単に記述できる。
5.2 確率αに関する計算
X=0の場合のSD,つまりσX(0)をσX(xd)の代わりに使うと,xc及びxdの定義は,次の式によって定義す
――――― [JIS Z 8462-5 pdf 8] ―――――
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Z 8462-5 : 2011 (ISO 11843-5 : 2008)
る。
xc=kcσX(0) (4)
xd=(kc+kd)σX(0) (5)
この場合,式(4)は式(2)と同じであり,確率αは一般的な定義に等しい。しかし,確率βは,初期のβと
は異なることがある。この計算においては,全範囲にわたる精度プロファイルσX(X )は必要ではない。
注記 σX(X)が一定であり,[σX(X)=σX]及びkc=kd=1.65であるという仮定の下では,式(4)及び式(5)は,
xc=1.65 σX及びxd=3.30 σXと簡単に記述できる。
5.3 確率βに関する計算
σX(xd)が,5.1にあるσX(0)の代わりに使われた場合,xc及びxdは,次の式によって定義する。
xc=kcσX(xd) (6)
xd=(kc+kd)σX(xd) (7)
この場合,確率βは一般的な定義に等しいが,確率αは初期のαとは異なることがある。
注記 σX(X)が一定であり,[σX(X)=σX]及びkc=kd=1.65であるという仮定の下では,式(6)及び式(7)は,
xc=1.65σX及びxd=3.30σXと簡単に記述できる。
5.4 微分による方法
5.3の定義は,この項で扱う微分法に適用できるという特別な利点がある。式(7)は,次のように表す。
ρX (xd)=σX (xd)/ xd=1/(kc+kd) (8)
この式は,X=xdにおける正味状態変数のCVを表している。式(8)の一つの利点は,検出可能な最小値
xdが,正味状態変数のCVが1/(kc+kd)×100 %となるときの正味状態変数として決定できることにある。
連続な精度プロファイルσX(X )は,xc及びxdを求めるために必要である。
検量線の片対数プロット(Y vs. lgX)の傾き,dY/d lgXは,正味状態変数Xに依存して変化するが,その
傾きは,検出可能な最小値において特別な値を取る。
dY
=.2303(kckd ) (9)
σY (xd )
d lg X X
xd
ここで,左辺は,X=xd (ln 10=2.303)における微分の絶対値,|dY/d lgX|を表している。この式は,検量線
の一般的な性質を表し,検量線の形(線形又は非線形)にかかわらず成り立つ。式(9)の導出を附属書Bに
示す。
注記1 kc=kd=1.65の場合,式(8)は,σX(X)=1/3.30=30 %と記述できる。xdは,CVが30 %となるX
として確定できる。
注記2 kc=kd=1.65の場合,式(9)は,次のように表す。
dY σY (xd )
= (10)
d lg X X
xd
.0132
ここで,定数0.132は,1/(3.3×2.303)である。
6 例
6.1 一般
6.2及び6.3は,応答変数のSD又はCVとして表された精度プロファイル(3.4参照)を推定する方法に
焦点を絞る。目的の量σX(X)は,箇条4に示すように,応答変数のSD又はCVの連続曲線から変換できる。
6.4の例は,競合ELISA(エライザ)への微分による方法の適用である。6.4においては,競合ELISAの
――――― [JIS Z 8462-5 pdf 9] ―――――
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Z 8462-5 : 2011 (ISO 11843-5 : 2008)
検量線は,通常,非線形であるが,検出可能な最小値の周囲においては,線形の仮定が有効であることが
示される。
6.2 不確かさの伝ぱ(播)則
17α-ヒドロキシプロゲステロンの競合ELISAを例に挙げる。この化学分析系の実験手順を図4に示す。
この分析は,96ウェル(穴)のマイクロプレートで行われる。検量線はマイクロプレートごとに作成され,
サンプル(分析試料)の実際の化学分析は,同一マイクロプレート中の異なったウェルで行われる。ここ
では,プレート内不確かさが検討される。
この競合ELISAの不確かさは,基本的にはサンプルと標識抗原との競合反応に起因する。応答変数Y(こ
こでは,吸光度測定値)は,マイクロプレートのウェルの表面に固定された抗体(抗血清)と結合する標
識抗原の量に比例する(参考文献[1]参照)。
G
Y B
X G
ここに, X : サンプルの量(正味状態変数)
G : 標識抗原の量
B : 抗体の量
不確かさの伝ぱ(播)則(参考文献[3]参照)をこの化学分析の手順に応用することによって,応答変数
YのCVの2乗が次のように導かれる(参考文献[1]参照)。
2
2 X2 2 2 2 2 σW
Y (X) = G +rX )+rB +rS +
2 +(r (11)
(X G) Y
ここに, X : サンプルの量(正味状態変数)
Y : 吸光度測定値(応答変数)。検量線の式で置き換えるこ
とができる。
G : 標識抗原の量(0.1 最一
rX : 分注したサンプルの体積のCV(0.9 %)
rG : 分注した標識抗原の体積のCV(0.9 %)
rB : 分注した抗血清の体積のCV(1.9 %)
rS : (2/3)×[分注した発色性基質溶液の体積のCV
(0.6 %)]。2/3は,ピペットの容量誤差をマイクロプレ
ートのウェルの表面で起こる色素生成の誤差に変換す
るために使われる係数である。
σW : マイクロプレートのウェル間の吸光度のSD(0.002
absorbance)。プレート内不確かさである限り,一定であ
る。
化学分析の目的成分量の精度σX(X)は,図2に示すように,式(11)から計算できる。
――――― [JIS Z 8462-5 pdf 10] ―――――
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JIS Z 8462-5:2011の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 11843-5:2008(IDT)
JIS Z 8462-5:2011の国際規格 ICS 分類一覧
- 17 : 度量衡及び測定.物理的現象 > 17.020 : 度量衡及び測定一般
- 03 : サービス.経営組織,管理及び品質.行政.運輸.社会学. > 03.120 : 品質 > 03.120.30 : 統計的方法の応用
JIS Z 8462-5:2011の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8101-1:2015
- 統計―用語及び記号―第1部:一般統計用語及び確率で用いられる用語
- JISZ8101-2:2015
- 統計―用語及び記号―第2部:統計の応用
- JISZ8402-1:1999
- 測定方法及び測定結果の精確さ(真度及び精度)―第1部:一般的な原理及び定義