JIS Z 8516:2007 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―作業環境に関する指針 | ページ 3

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Z 8516 : 2007 (ISO 9241-6 : 1999)
7.2.1 全般
7.2.1.1 影響の種類 ここでは,作業場及び作業室内で振動の発生を制限するための指針を提供する。
ユーザー,又はその作業装置に作用する一定レベルの機械的振動は,作業時の健康及び安全性に悪影響
を及ぼす可能性がある。さらに,ユーザーの福利,表示情報の知覚,キーボードなどの制御装置の使用の
障害となることがある。このような悪影響は,次のような形態をとる可能性がある。
a) ユーザーに対する影響
b) 光学装置の視認性に対する影響
c) 操作要素の使用に対する影響
7.2.1.2 ユーザーに対する機械的振動の影響 ユーザーの身体[例えば,脚,でん(臀)部,手,及び頭]
に作用する機械的振動は,評価振動強度に依存して,迷惑な状態,作業の妨害,作業性の低下及び健康障
害を引き起こす可能性がある(ISO 2631-1,ISO 5349-1参照)。光学表示装置の知覚については,一般的に
2 Hz範囲及び眼球の共振範囲(16 Hz32 Hz)の振動が重要である。ある種の振動では,視覚が,最大で
20 %もの低下をもたらす。身体の垂直又は横方向の振動ストレスでは,知覚時間が大幅に増加(最大で
50倍)する可能性が考えられる。
7.2.1.3 光学装置の視認性に対する機械的振動の影響 時間変化しない表示(例えば,印刷した記号)の
知覚に対する振動の影響は,時間変化する表示(例えば,CRT)の知覚とは異なる。時間変化しない表示
の視認性又は可視性が振動から受ける影響は,一般的に時間変化する表示の場合よりも強くない。また,
行で構成されるテキストでは,同じ装置上で表示されるグレイスケール画像の場合よりも劣化する傾向が
高い[Cakir and Cakir (1988) 21]]。視認性に対する機械的振動の影響は,VDTの表示特性(例えば,画面
の表示周波数)にも依存する。身体及び光学表示装置に対して同時に振動励起が加わると,影響は増強さ
れる。
7.2.1.4 操作要素の使用に対する機械的振動の影響 制御及び入力装置(例えば,キーボード及びマウス)
への振動の影響は,作業性(速度及び精度)の低下をもたらす可能性がある。
7.2.2 振動による影響の回避 機械的振動の発生及び伝ぱ(播)は,その発生源において,可能な限りす
べてを回避するか又は低減することが望ましい。
このための最良の手段は,低振動の装置及び作業プロセスを選択することである。励起点及び伝達経路
で,振動を更に抑えるための対策が多数ある。
これらの対策を,個々の要求事項に合わせて適合させることが望ましい。
振動減衰システムを正しく調整しないと,振動が増大する結果になる場合がある。
備考 振動の低減に関する基本的な情報については,ISO 2017,ISO 10846-2,及びEN 1299を参照す
ることが望ましい(VDI 2062 sheet 2及びVDI 3831に例示されている。)。
励起点で振動を十分に低減できない場合は,伝達経路で振動を抑える対策を採用することが望ましい。
必要であれば,ワークステーション又は作業領域全体において,振動の影響を受ける箇所を振動発生源か
ら隔離するのがよい。作業場の設計及び配置には,この点に注意を払うことが望ましい。
この点を配慮すれば,その後に必要な対策を,最も効果的及び経済的に実施することができる。
振動ストレスを完全に回避することができない作業環境の場合は,表示装置の視認性及び制御装置など
の操作要素の使用性が損なわれないように,確実に対策を講じることが望ましい。

8. 電磁界及び静電気に関する指針

8.1 基本事項

 表示装置,特にCRTディスプレイの画質に対する静電気及び磁界,並びに超低周波数

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(ELF)磁界及び電磁界の影響について規定する。例えば,次の影響が考えられる。
− 静磁界(地磁界)は,CRTの表示の均一性に影響を与える。
− あらゆる静磁界は,カラーCRTディスプレイのコンバージェンスに影響を与える。
− 配電システム又はCRTを含む近くの発生源からのELF磁界は,CRTのジッタに影響を与える(ジッ
タについては,JIS Z 8513:1994の5.24を参照。)。
この規格では,表示装置からの情報取り込みに影響を及ぼす可能性のある電界及び電磁界の幾つかの影
響要因(例えば,ジッタ)について規定する。
電界及び電磁界は,表示装置の表示品質及び,作業装置の各所からの信号伝達を損なう可能性がある。
表示装置に対する電磁界の影響は,ひず(歪)み(モアレ)又はジッタとして現れることがある。
画面から発生する静電気によってほこり(挨)が集まり,表示装置の可読性を低下させる場合がある。
(特に相対湿度が低い冬期において,)カーペット,衣服又は調度品に使用されている繊維の摩擦によって
引き起こされる静電気放電は,装置への干渉を起こす場合がある。
適用可能な製品及び環境に関する安全規格によって考慮されている電磁波放射は,可能な限り低く抑え
るように,潜在的な発生源を特定することが望ましい。さらに,幾つかの局所的な潜在的発生源の相互作
用による影響にも配慮することが重要であり,VDTの設計者は,このような局所的な発生源(例えば,送
電線の放射,列車又は市街電車の線路近くの放射,機械類又は電源からの内部放射)及びその相互作用を,
完全には予測できないので,このような局所的な発生源の影響については,必要に応じて当該環境で評価
することが望ましい。

8.2 環境からの影響回避

 画質は,外部からの電界及び電磁界によって許容できないほど損なわれない
ことが望ましい。画像又は文字形状の軌跡依存のひず(歪)み,文字位置の時間依存変動,時間又は軌跡
依存のひず(歪)み及び色ひず(歪)みは,JIS Z 8513で規定している最大値を超える場合がある。
許容できないような画質劣化が,作業場内の他の装置又は外部の電磁界発生源によって引き起こされる
場合がある。作業場内の電磁界によって発生する可能性のある画質劣化を回避するためには,製造業者の
設置の指針に従うことが望ましい。外部電磁界による表示ひず(歪)みは,次の二つの方法で抑制できる。
− 発生源の遮へい(蔽),変更,再配置又は排除
− 機器の遮へい
装置特性の種々の組合せ(遮へい,その他室内での設置方法)及び電磁界の特性(電磁界強度ベクトル,
周波数,電磁界の均一性など)のために,適切な対策を一律に規定することはできない。
次の手段は,外部の静的電磁界及び動的電磁界の影響を防止又は低減することができる。
− 発生源の物理的な遮へい
− 発生源の物理的な分離,再配置又は向きの変更
− 影響を受ける表示装置の遮へい又は改造
商用電力線によって発生する磁界に対する表示装置の耐性は,ディスプレイ技術によって異なる。CRT
ディスプレイの耐性は,その設計技術によって異なる。ほとんどのCRTディスプレイは,0.02 A/mまでの
周囲磁界において,JIS Z 8513の規定に適合する。多くのオフィス内では,磁界の強度がこの値を超える
可能性があるので,ジッタの問題が生じることがある。このような場合は,当該表示装置の向きを変更す
るだけで,問題に十分対処できる。
ある環境で,ある表示装置に望ましくない相互作用がある場合は,問題となる表示装置の設計に,次の
工学的対策が導入されているかどうかを確認することが望ましい。
a) 交流電磁界

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− 回路技術による対策又は収納部の金属遮へい(例えば,収納部内部の蒸着,導電性塗料を用いた表
面塗装及び良好な電気的接続)
− 高透磁率の材料による偏向コイルの遮へい
− 逆渦電流の誘導による電磁界の減衰
EMC試験要求事項(JIS C 61000-4-8参照)は,外部の商用電力周波数で発生する磁界における試験及び
測定技術を規定している。
b) 交流磁界 静電気放電の抑制装置の使用については,JIS C 61000-4-2による。
備考 他のEMC要求事項についても,配慮したほうがよい。
− 表示装置の脱磁
− 表示装置表面の静電気防止処理
既存装置に問題が発生した場合,次の対策が役立つ場合がある。
− 帯電防止の備品(フロアカバー及び家具)
− 湿度の増加(9.2.5参照)

9. 温熱環境に関する指針

9.1 基本事項

 ワークステーションの温熱条件は,ユーザーの快適性及び作業性に直接影響を及ぼす。
作業場にVDTを導入すると熱負荷が追加され,気流も変化する。9.2の目的は,快適性及び健康に対して
悪影響を及ぼす可能性を防止する適切な温熱環境を用意するために,関連する温熱パラメータ及びこれら
のパラメータを人の要求に適応させる方法について記述することである(附属書Dを参照)。
作業場にいる人々に影響を与える関連パラメータは,次による。
− 個人パラメータ
− 衣服の断熱性
− 活動レベル
− 環境パラメータ
− 気温
− 平均放射温度
− 気速
− 湿度
温熱的快適感は,次の要因によって低下することがある。
− 不要な局所冷房
− 冷たい面及び温かい面からの放射の非対称性
− 通風(気速)
− 頭部と足部との間の極端な垂直気温差
− 高過ぎるか又は低過ぎる床面温度
装置内部の発生源又は気候の影響(例えば,太陽熱の増加)を受けた熱放射又は温かい空気によって起
こる局所的な熱蓄積は,作業空間内の装置及びその他の電気的な熱発生源からの熱負荷の慎重な処理を伴
った,適切な温熱条件管理によって回避することが望ましい。
ISO 7730では,温熱的快適感の関連パラメータ間の関係を規定し,一般的な温熱感覚に対する上述のパ
ラメータを組み合わせた一つの測度(PMV指標,PPD指標)を提供するモデルを示している。作業レベル
に関する詳細情報は,ISO 8996に規定しており,衣服の断熱性についての詳細情報は,ISO 9920に規定し

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ている。

9.2 温熱的快適感の関連パラメータ

9.2.1  活動及び衣服 すべての人が同じ衣服を着用して同じ活動をする場合であっても,個人差があるた
め,すべての人が満足する温熱環境を提供することはできない。したがって,各人が温熱環境又は当人の
パラメータの一部を調整することによって,各人の熱平衡をある程度制御できるようにすることが望まし
い。
9.2.2 温度 許容可能な作用温度(すなわち,気温及び気速,並びに平均放射温度を組み合わせた影響を
表すためのパラメータ)は,主に個人の活動レベル及び衣服に依存する。さらに,温熱的快適感は,放射
温度の非対称性,すなわち周辺の面の放射温度差に依存する。
オフィス内のVDTワークステーションでは,作用温度を気温及びある点における平均放射温度の単純
な平均値と仮定してよい。断熱性のよい窓及び壁をもつ建物内部で,装置及び照明からの局所的な熱発生
源がない場合には,気温及び平均放射温度は等しいとみなしてよい。
放射温度の許容不可能な非対称性の発生原因となるのは,冷たい若しくは温かい,大きな垂直面(例え
ば,冬の断熱性の悪い窓から差し込む直射日光)又は温かい若しくは冷たい水平面(例えば,加熱又は冷
却状態の天井)である。人は,温かい天井及び冷たい垂直面に最も敏感である。小さな窓又は断熱のよい
窓及び壁をもつ建物内部では,一般的に放射温度非対称性が問題になることはない。
VDTを使用する作業室内では,次の要因のうち一つ又はそれ以上が原因となって,垂直温度差が大きく
なり過ぎる場合がある。
− 加熱,冷却又は換気システムによって引き起こされる不均一な垂直気温分布
− 装置の熱放出によって引き起こされる不均一な垂直気温分布
− 冷たい面に沿って床方向に向かう冷たい気流
9.2.3 気速 気速は,全般的な温熱感覚に影響を与える。ほとんどの場合,これが原因で気流を感じるこ
ともある。この気流感覚は,平均気速に加えて,気速の変動(乱流)及び気温によって影響を受ける。気
速は,空調又は換気システム及び冷たい面(床方向に向かう気流)が原因で生じる。
空調又は換気システムの設計では,通常の衣服を着用して作業する人は,足首及び首の周囲の気流に最
も敏感であるという点を必要に応じて考慮することが望ましい。
9.2.4 床面温度 床温度と気温(高過ぎる又は低過ぎる)との差が著しい場合(特に,じかに接触する場
合)には,温熱の不快が起こる可能性がある。ただし,VDTワークステーションのユーザーが履物を着用
している条件下では,床面温度の重要性が低くなる。
9.2.5 湿度 湿度の増加は,作用温度の上昇と類似の効果をもたらすので,温熱的不快感は,湿度によっ
ても影響を受ける。ただし,中程度の範囲(すなわち,2026 ℃)の温度条件下における椅座作業では,
湿度の影響は全く問題ない。
この温度範囲では,相対湿度が10%増加した場合の不快感の変化は,0.3Kの作用温度の上昇がもたらす
影響よりも小さい。
参考 温度差を扱う場合は,1 Kは1 ℃と考えてよい。
湿度が低過ぎると,粘膜が乾燥する危険性がある。さらに,コンタクトレンズを使用している人は,目
の不快を感じることがある。
良好な空気環境を得るために湿度を制限することが必要であり,湿度が高過ぎる場合,冷たい面上に結
露及びかびの発生の危険性がある。

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10. 空間構成及び作業場のレイアウトに関する指針

 5.9.は,VDTを用いるオフィス作業の人間工学的
要求事項の一部として,環境に関する重要な要求事項を規定している。空間構成及び作業場のレイアウト
は,各事項について良好な作業性に重要な影響を与える。例えば,音及び騒音による作業性は,騒音の発
生源が人又はオフィス及びビルディングシステム・設備であるかにかかわりなく,特定の作業及び予想さ
れるユーザーに要求される音響特性のレベルに関連して,その発生源を適切に区分することによる。
作業組織及びグループ
社会心理学的要素
空間構成及び作業場のレイアウト 動線及び経路探索
人工照明及び自然光
音及び騒音
図 2 空間構成及び作業場のレイアウト : 基準としての重要項目
さらに,作業場の問題は多岐にわたる場合がある。したがって,一つだけの事項(例えば,VDTだけの
グレア防止のためにワークステーションの場所を選択する。)をとらえる部分的な解決案ではなく,多くの
事項及びその考えられる相互作用について配慮する総合的な解決案が必要である。ある特定のオフィス環
境では,異なる事項において許容可能なトレードオフによる総合的な解決案を作成するために,5.9.で規
定している環境に関する留意事項を同時に配慮することが望ましい。
JIS Z 8501で規定している人間工学的に設計された作業システムの基本的な目標を達成するために,特
定のワークステーション又は作業場で実施すべき対策を組み合わせることが望ましい。考慮すべき基準の
重要項目を図2に示す。空間構成及び作業場のレイアウトでは,図2に示すすべての基準を考慮に入れる
のがよい。

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