JIS Z 8519:2007 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―非キーボードの入力装置の要求事項 | ページ 3

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図 14 手のとう(橈)側偏位(矢印で示す方向)
3.5.12 手の到達域(reach envelope) 対象ユーザー群にとって,特定のユーザー位置を基準として到達可
能な最適又は最大空間。
3.5.13 回外(supination) 前腕の外側への回転(外旋)(図15参照)。
図 15 回外(矢印で示す回転)
3.5.14 尺側偏位(ulnar deviation) 手首を起点に,手を小指の方向に曲げる動作(図16を参照)。
図 16 手の尺側偏位(矢印で示す方向)
3.6 ユーザビリティ指標
3.6.1 有効さ(effectiveness) ユーザーが,指定された目的を達成する上での正確さ及び完全さ[JIS Z
8521:1999参照]。

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3.6.2 効率(efficiency) ユーザーが,目的を達成する場合に正確さと完全さに関連して費やした資源[JIS
Z 8521:1999参照]。
3.6.3 満足度(satisfaction) 不快さのないこと,及び製品使用に対しての肯定的な態度[JIS Z 8521:1999
参照]。
3.6.4 ユーザビリティ(usability) ある製品が,指定されたユーザーによって,指定された利用の状況
下で,指定された目的を達成するために用いられる場合の,有効さ,効率及び満足度の度合い[JIS Z
8521:1999参照]。

4. 指針原則

4.1 一般

 この箇条では,すべての入力装置にあてはまり,かつ,6.に規定する要求事項及び推奨事項の
基礎となる人間工学的原則を規定する。
4.1.1 適切性 実施する作業及び対象とする作業環境において効率,有効さ及び満足度を提供する入力装
置を,適切性をもつ入力装置として設計では目指す。
参考 入力装置の適切性はソフトウェアによって高めることができる。

4.2 操作のしやすさの原則

4.2.1  明白さ その入力装置がどの基本動作要素に用いられるかを,すぐに見て分かるように設計する。
4.2.2 予想のつきやすさ 対象ユーザー群の期待に応じて操作及び反応するように入力装置を設計する。
4.2.3 一貫性 類似の使い方をするときに,入力装置が同様の作動及び応答をするように設計する。
4.2.4 適合性 対象とするユーザーの人体寸法的特性及び生体力学的能力に適合するように入力装置を
設計する。
4.2.5 効率 最小限の時間及び労力で働かせることができるように入力装置を設計する。
4.2.6 有効さ ユーザーの作業成績を,正確さ及び完全さの面で向上又は最適化するように入力装置を設
計する。
4.2.7 フィードバック ユーザーの操作に対して装置が応答していることを,即座に知覚及び理解できる
情報をユーザーに与えるように入力装置を設計する。
4.2.8 満足度 不快さがなく,製品の使用に対するユーザーの態度が肯定的に向上するように入力装置を
設計する。

4.3 ユーザーによる制御の原則

4.3.1  応答性 操作に応じた一貫した,正確なフィードバックをユーザーに与えるように入力装置を設計
する。
4.3.2 非妨害性 入力装置そのものが,それ自体の使用を妨害することがないように入力装置を設計する。
例えば,使用時にユーザーの手又は腕が赤外線ビームを遮断したり,装置の移動又は制御操作でケーブル
が邪魔になるなど。
4.3.3 グリップ表面 意図した使用時に操作具の把持部分の偶発的なスリップを防止するように入力装
置の操作具を設計する。
4.3.4 装置へのアクセス 入力装置を握る動作,位置決め及び取扱いを作業成績に悪影響を及ぼさずに迅
速,かつ,容易に実行できるように入力装置を設計する。
備考 装置の位置決めはその装置の設計,ワークステーションの設計及び調節,並びにユーザーの位
置に依存する。

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4.3.5 操作具へのアクセス 入力装置の操作具を,迅速,かつ,容易に位置を見つけ作動できるように入
力装置を設計する。

4.4 生体力学的負荷についての原則

4.4.1  姿勢 ユーザーが中立姿勢から大きく外れずに操作できるように入力装置を設計する。
4.4.2 労力 過剰な労力を伴うことなく操作できるように入力装置を設計する。
4.4.3 ユーザーの訓練 ユーザーに入力装置の正しい使用方法に関する知識を伝え,このような情報を活
用できるように入力装置を設計する。これによって,ユーザーは過剰な労力を回避し,作業成績を向上さ
せることができる。

5. 達成の判断基準

 入力装置は,それを用いて行う作業に対してユーザビリティを備えていなければな
らない。ユーザーがある特定の作業で満足すべき作業成績を達成でき,労力及び満足度を受け入れ可能な
レベルに維持できる場合に,入力装置はユーザビリティを備えていると判断する。4.の指針を考慮にいれ,
更に6.の要求事項すべてを満足するだけでなく,6.の推奨事項についても配慮すれば,ユーザビリティを
備えた入力装置を提供できると考える。

6. 設計上の要求事項及び推奨事項

 この箇条では,入力装置の設計上の要求事項及び推奨事項について
規定する。

6.1 入力装置全般についての要求事項及び推奨事項

 入力装置が要求事項に適合しているかを評価する
ための適切な試験方法の種類は,7.による。
6.1.1 操作する体の部位の安定 微細な精度の位置決めに用いる入力装置を設計する場合は,入力装置又
は作業面の上に,指,手,手首又は腕の一部を落ち着かせて,手と動作ポイント間の安定した関係を確保
できるようにしなければならない。
6.1.2 分解能 入力装置は,基本動作要素に必要な精度の達成を助ける分解能をもつように設計すること
が望ましい。
参考 機器全体の分解能は,ハードウェアとソフトウェア両者の組合せで決まる。
6.1.3 配置変更 入力装置の使用に当たってその配置変更が必要な場合は,道具を使用することなく手作
業で配置を変更できるようにしなければならない。
6.1.4 ボタンの設計
6.1.4.1 ボタンの作動 入力装置のボタンが意図した使用時に不用意に作動しないように設計すること
が望ましい。
6.1.4.2 ボタンの形状 ボタンは,その上に指を置くのに,及びボタンを押すのに適した形状とすること
が望ましい。
6.1.4.3 ボタンの押下力 ボタンを作動させるための押し下げ力は,0.51.5 Nの範囲内であることが望
ましい。
備考 ボタンの押下力は,小さすぎてユーザビリティを損なわない範囲で小さいことが望ましい。
6.1.4.4 ボタンの押し下げ量 筋運動感覚フィードバックを与えるようにボタンを設計する場合,ボタン
の押し下げ量は少なくとも0.5 mmであることが望ましい。押し下げ量は6 mmを超えてはならない。
6.1.4.5 不注意によるポインタ移動 入力装置は,不注意なボタン作動によって意図しないポインタ移動
が起こらないように設計することが望ましい。

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6.1.4.6 ボタンのロック ドラッグ,トレース,フリーハンド入力などの基本動作要素を実行するときに
押し下げ続ける必要のあるボタンは,ハードウェア又はソフトウェアによってロックできるように,設計
しなければならない。
6.1.5 利き手の配慮 入力装置はどちらの手でも操作できることが望ましい。又は,右利き用及び左利き
用の機器を利用できることが望ましい。
6.1.6 圧迫箇所 入力装置は,その使用時に不便さ又は能率の低下の原因が,圧迫箇所によって引き起こ
されないように設計することが望ましい。
6.1.7 保持の安定性 グリップ表面は,スリップを防止する上で十分な寸法,形状及び質感とすることが
望ましい。
6.1.8 アクセス 入力装置の設計では,ユーザーの手の到達域の範囲内に入力装置を配置して,利用可能
とすることが望ましい。
6.1.9 配線 入力装置に取り付けるケーブルは,入力装置使用の妨げにならないように配置又は取り付け
ることが望ましい。ケーブルの質量,柔軟性,張り具合及び取付位置,並びにもつれる可能性をケーブル
配線の設計時に考慮することが望ましい。
6.1.10 ポインタの動き 入力装置の動きとディスプレイ上に表示されるポインタの動きとの関係は,左右,
及び上下(又は前後)の方向において,ユーザーの期待と一致するものでなければならない。
6.1.11 フィードバック
6.1.11.1 事象フィードバック ボタンが作動したこと又はデータの入力が完了したことに対してフィー
ドバックを提供しなければならない。
6.1.11.2 信号速度 入力装置から発生した信号は,20 ms以内にシステムへと伝えられることが望ましい。
参考 動作の結果を目で見ながら行う場合は,動作とその目に見える応答との間に遅延があると,ユ
ーザーの作業成績低下の原因になることがある。最大20 msまでの遅延は一般的に感知されな
いので,これによってユーザーの作業成績が低下することはない。感知できる程度の遅延がな
い状況と比較して,ユーザーの作業成績は,遅延が40 msの場合には,10 %,100 msの場合
には50 %それぞれ低下する。
6.1.12 上し(肢)及び頭部の姿勢 手,指,腕,肩及び頭部がそれぞれの自然な無理のない位置から過度
にずれた状態で作業しなくても済むように,入力装置を設計することが望ましい。
6.1.13 形状及び寸法 指先で操作する,又は手で持って若しくは手で握って操作する入力装置は,対象ユ
ーザー群の手の寸法に対応するように設計することが望ましい。
6.1.14 安定性 通常の操作の範囲では,ぐらついて入力操作の正確さが低下しないように,入力装置は十
分な安定性を備えていることが望ましい。
参考 入力装置のすわりが悪く安定していないと,作業成績,快適性及び生体力学的負荷に悪影響を
及ぼす可能性がある。
6.1.15 表面温度 10分以上にわたってユーザーの皮膚が接触する装置表面の温度が40 ℃を超えること
がないことが望ましい。
6.1.16 視差の配慮 目標画像の視差及び屈折変位が生じる場合のある入力装置(ライトペン又はタッチス
クリーンのような)及びソフトウェアアプリケーションは,ユーザーがこれらの光学的特性をもつ目標位
置を感知できるように設計することが望ましい。
6.1.17 質量 平行移動,回転,ボタン作動などの操作時に,入力装置の質量,すなわち慣性によって,装
置操作の正確さが低下しないことが望ましい。

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6.1.18 ゲイン 間接ポインティングを行う入力装置(すなわち,入力装置がそのときどこをポイントして
いるかは,システムからの表示を介して与えられる。)のゲインは,作業に適した大きさであること,及び
その大きさをユーザーが調節できることが望ましい。
6.1.19 スループット 間接ポインティング,選択及びドラッグ操作に使用する入力装置は,それらの操作
に求められる正確さの範囲内で,表1に示すスループットをユーザーが達成できるように設計することが
望ましい。入力装置は,操作する手(手首)及び指の筋肉の機能発揮を妨げないことが望ましい。
表 1 手(手首)及び指で制御する入力装置のスループット例
コントローラ スループット
ビット/秒
指 3
手(手首) 2
6.1.20 保守性 装置の清掃又は調節をユーザーが特殊な工具を用いなくとも行えるように,入力装置を設
計しなければならない。

6.2 特定の入力装置に関する要求事項及び推奨事項

6.2.1  マウス
6.2.1.1 センサ位置 運動感知ポイント(標準的なマウスの下側に収められている回転ボールなど)は,
たなごころ(掌)の下ではなく,指の下に来るように配置することが望ましい。
備考 指には親指を含む。
6.2.1.2 ボタンの操作 装置の所定の使用時に,手の自然な姿勢から過度の偏移を起こすことなく指をボ
タンに触れて作動できるように,装置を設計するのがよい。
備考 “過度”とは,例えば操作の正確さを損なう,筋肉の痛みを引き起こすなどをいう。
6.2.1.3 ボタンの作動 ボタンを作動させる動きが,ポインティング,トレースなどのマウスの操作を妨
げないこと望ましい。
6.2.1.4 分解能の一貫性 マウスの分解能は,作業面上の装置の位置及びディスプレイ上のポインタ位置
の双方に依存しないことが望ましい。
備考 マウスの分解能は,ソフトウェア又はユーザーによって変更できることが多い。
6.2.2 パック
6.2.2.1 ボタンの操作 装置の通常の使用時に手の自然な姿勢からの過度の偏移を起こすことなく指を
ボタンに触れて作動できるように,装置を設計するのがよい(6.2.1.2の備考を参照)。
ボタンの接触表面は,ボタンの変位方向及び屈曲時の指の動きに対して垂直であることが望ましい。
6.2.2.2 ボタンの作動 意図しない動きを引き起こすことなく,パックのボタンを押すことができるのが
よい。
6.2.2.3 焦点板ウィンドウ 焦点板ウィンドウは,適切な視認性が確保されるように十分に透明,かつ,
収差のないことが望ましい。
6.2.2.4 焦点板の位置 焦点板ウィンドウは,ユーザーが頭部を15°以上も極端に動かす(屈曲)必要な
く操作できるように,パック上に配置し設計することが望ましい。
6.2.2.5 滑り出しの防止 パックを傾斜面の上で使用する場合にも,ユーザーが意図しないのに滑り出す
ことがないように適切な抵抗を備えていることが望ましい。

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JIS Z 8519:2007の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 9241-9:2000(IDT)

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JIS Z 8519:2007の関連規格と引用規格一覧