JIS Z 8519:2007 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―非キーボードの入力装置の要求事項 | ページ 5

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Z 8519 : 2007 (ISO 9241-9 : 2000)
附属書A(参考)入力装置の選択,ユーザビリティ試験及び解析
この附属書は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
A.1 序文 この附属書は,この規格の規定部分で記述している基本動作要素についての内容を更に詳細に
補足する。この附属書が目指すのは,入力装置の試験に用いる方法について情報を提供すること,及び試
験機関又は個人によって,試験方法の妥当性向上への研究が進められるように促進することである。
A.2 入力装置の選択基準 どの入力装置を選ぶかは,入力装置を用いる作業と動作環境とで決まる。どの
基本動作要素には,どの入力装置が適切であるかの例を表A.1に示す。使い方に柔軟性がある入力装置及
び使用上の必要に合わせて構成可能な入力装置の場合には,表A.1に示す基本動作要素とそれに適切な入
力装置との対応は変わる場合がある。さらに,適切なソフトウェア(デバイスドライバの改善,ソフトウ
ェアによる機能の実現など)を使用することによっても,表A.1に示す対応は変わる場合がある。
表A.1 作業に適切な入力装置の例
基本動作要素 入力装置
マウス,パック,トラックボール,タブレット,スタイラス,
ポインティング
ライトペン,タッチスクリーン
マウス,パック,ジョイスティック,タブレット,スタイラス,
選択
ライトペン,タッチスクリーン
ドラッグ マウス,パック,タブレット
フリーハンド入力 タブレット
トレース パック,タブレット,スタイラス,ライトペン
A.3 ユーザビリティ試験及び査定
A.3.1 一般 ある特定の状況における効率,有効さ及び満足度を評価するために,ユーザビリティ試験を
行う。
ユーザビリティは,効率,有効さ及び満足度の三つの側面でとらえるものであるから,これらをすべて
同時に考察及び評価するのが適切である。
効率,有効さ及び満足度を評価するための方法例を,附属書BDに記述する。附属書Bには,効率及
び有効さを評価するための試験方法を記述する。附属書Cには満足度を査定するための方法を記述する。
附属書Dでは,生体力学の観点からの評価方法を検討する。
既存の及び新たに設計する入力装置のユーザビリティの側面及び人間工学的な側面を,設計者,製造業
者及びシステムインテグレータが査定するときの助けとなることを,附属書BDは目的としている。こ
れらの査定方法は,ある入力装置がユーザビリティに関する要求事項を満足するかを判定するのにも利用
できる。
入力装置のユーザビリティ試験は,ユーザビリティ試験の手法,統計解析手段及び計測手段に関して適
切な知識をもつ者が行うことが望ましい。被験者を用いて行う試験に関する倫理規則に従うことが望まし
い。

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A.3.2 環境 試験を行う場所は,静かで注意をそらすものがない状態が望ましい。理想的には,ユーザビ
リティ研究施設などの専用の場所であることが望ましい。試験の前に少なくとも15分間被験者を試験環境
に順応させるのがよい。試験の実施中には,被験者をこの順応した状態に保っておくことが望ましい。
A.3.3 温熱条件 周囲温度は,2024 ℃の範囲内とし,試験中に温度が2 ℃以上変動しないことが望ま
しい。相対湿度は3070 %の範囲がよい。気流速度は0.15 m/秒よりも小さくすることが望ましい。
A.3.4 照明 周囲の照明は,最大で250+250cos(A)とするのがよい。Aは,ディスプレイの中心点にお
ける接平面と水平面との間のなす角度である。表面反射率の推奨値を,表A.2に示す。
表A.2 表面反射率
対象 反射率
天井 70 %80 %
壁 30 %50 %
床 20 %30 %
じゅう(什)器 20 %50 %
ディスプレイが発光型[陰極線管(CRT)など]の場合には,文字又は背景のうちで輝度の高い方を約
100 cd/m2,他方(低い方)の輝度を35 cd/ m2以上とし,文字と背景との輝度比は最低でも3 : 1を保つこ
とが望ましい。ディスプレイが非発光型[液晶ディスプレイ(LCD),電界ルミネッセンスディスプレイ
(ELD)など]の場合には,文字又は背景の輝度(どちらか高い方)は,文字と背景との輝度比を最低で
も3 : 1に保つ一方で,最低でも35 cd/m2であることが望ましい。照明器具又は窓からの光による目立つグ
レアがディスプレイ上に起こらないことが望ましい。
A.3.5 試験用の作業設備 作業設備は,JIS Z 8515の要求事項すべてに適合することが望ましい。
試験用の作業設備として,次のものを含むのがよい。
a) 座面高さ及び背もたれの角度を調節できるいす(椅子)
b) 高さを調節できる作業台
c) 被験者の水平視線よりも2050°低い範囲に中心の位置を調節できるディスプレイ
d) 原稿台(必要に応じて)
e) フットレスト
f) 十分な作業空間
A.3.6 被験者 入力装置を用いると想定するユーザーに関しての輪郭情報(概要情報)を,試験の立案者
及び/又は実施者に対して提供することが望ましい。被験者は,入力装置を用いると想定するユーザー集
団をできるだけ代表することが望ましい。被験者を選ぶときに,性別,年齢,視覚特性(眼鏡の使用),利
き手,手の大きさ,入力装置の使用経験などのユーザー特性を考慮することが望ましい。
A3.7 試験装置 試験装置は,次の機能を備えていることが望ましい。
a) 視覚刺激の表示
b) 入力操作結果の取り込み及び保存
c) 実験手順の時間的管理
d) 入力操作結果及びエラーの分類整理,印刷又は表示
被験者が用いるディスプレイは,JIS Z 8513の要求事項すべてに適合することが望ましい。試験しよう
とするどの入力装置に対しても,画像を表示するのに同じディスプレイを使用するのがよい。別のディス

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プレイを用いる必要がある場合は,表示極性と表示フォントとをそろえるのがよい。試験の対象となる各
装置で使用するソフトウェアドライバ(ポインタの速度設定)は,統一するのがよい。
A.3.8 試験手順
A.3.8.1 装置の割当て 新しく設計した入力装置は,ユーザー集団によって一般的に受け入れられている
市販の入力装置と比較する形で試験するとよい。
同じ種類であるが設計の異なる二つの装置(大きさ又は形状の異なる二つのマウスなど)又は種類の異
なる二つの装置(マウスとトラックボールなど)の比較をすることが好ましいことがある。このほかに,
種々の基本動作要素に関しての装置の比較が求められることもある。
二つ以上の装置の間で比較試験を実施する場合は,どの被験者も比較する装置すべてを使用して試験を
行うのが望ましい。入力装置にその装置を見分けるためだけのラベルをは(貼)り(例えば,"A","B"な
ど),装置を特定できるロゴ及びラベルはすべて隠すことが望ましい。試験対象装置の提示の順番を工夫す
ることによって,提示順序の影響が打ち消しあうようにすることが望ましい。
A.3.8.2 試験時間 一人の被験者は,一日当たり休憩を含めて4時間以上被験者とならないことが望まし
い。1時間ごとに5分の休憩を入れるとよい。試験時間は,統計的に妥当な量の作業成績結果を得るのに
十分な長さとすることが望ましい。
A.3.8.3 統計処理 適切な検出力及び信頼水準が確保できるような,通常の統計手法を適用する。検定結
果はすべて,有意水準α=0.05で評価することが望ましい。
A.3.8.4 機密性 各個人の試験データに関する機密性を確保することが望ましい。個々の被験者を特定で
きるデータを試験機関から公表しないことが望ましい。

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Z 8519 : 2007 (ISO 9241-9 : 2000)
附属書B(参考)効率及び有効性の試験
この附属書は,本体に関連する事柄を補足するもので,規定の一部ではない。
B.1 序文 この附属書は,既存の又は新しい入力装置の効率及び有効さを評価するための作業成績試験の
方法について説明する。入力装置の試験に用いる方法について情報を提供すること,及び試験機関又は個
人によって,試験方法の妥当性向上への研究が進められるように促進することを,この附属書は目指して
いる。
試験ではスループットの測定を行う。すべての入力装置及びそれらのすべての使用状況を,単一の作業
成績試験手順だけでは扱えないので,この附属書は複数の試験手順を記述する。
B.2 手順の概要 入力装置の試験は,その装置を用いると想定する作業を対象として実施することが望ま
しい。この附属書に含まれている試験は,次の基本動作要素を評価するように設計されている。
− ポインティング
− 選択
− ドラッグ
− トレース
− フリーハンド入力
装置を用いると想定する作業にすべての基本動作要素が必要不可欠であると判断されない限り,入力装
置の試験を基本動作要素すべてについて行う必要はない(表A.1を参照)。しかしながら,複数の入力装置
を適切に比較するには,どの入力装置にも同じ試験方法をそれぞれ適用する必要がある。
試験システムに使用するソフトウェアによって,被験者の作業性が妨害されないことが望ましい。例え
ば,ネットワークに接続したシステムを用いる場合には,着信メールの通知を無効にすることが望ましい。
B.3 特別な訓練 新しい設計の入力装置に被験者がなじんでいない可能性がある場合,信頼性の高い作業
性試験を実施するためには,事前に被験者の訓練が必要になることがある。訓練を必要とする場合,被験
者の作業速度及び正確さが十分に向上するまで,各被験者に入力装置の使用法を習得させることが望まし
い。安定した習熟効果が得られるように,被験者には十分な練習時間を与えることが望ましい。安定した
習熟効果が得られたかどうかを,統計的な手続き[例えば,ダンカンの多重範囲検定(Duncans Range test)]
によって検証するとよい。
各被験者には,試験の開始に先立って統一した指示を与えておくとよい。その指示に,できるだけ早く
かつ正確な動作に努めること,及び誤りに気付いても修正せずそのままにしておくことを含めるとよい。
B.4 基本動作要素の特定及び選択 試験対象の入力装置を用いて行うと想定した作業に対して,どの基本
動作要素(A.2を参照)が当てはまるかを特定することが望ましい。さらに,作業の詳しい種類及び条件
を選択するとよい(表B.1を参照)。

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Z 8519 : 2007 (ISO 9241-9 : 2000)
表B.1 作業及び条件の種類
作業 条件
移動 単一方向(x又はy方向)
往復方向(x又はy方向)
任意の方向(すべての角度)
フィードバック及び 位置に関する視覚的フィードバックの有無
プロンプト 視覚的プロンプトの有無
目標地点到達に関するフィードバックの有無
目標地点到達 目標地点到達をユーザーが自分でシステムに知らせる手動型
ユーザーのポインティングが規定の範囲内にあるかで自動判別
B.5 入力装置のスループット計算
B.5.1 目標幅(w) 目標幅とは,ディスプレイ上に表示される目標の幅のことである。
備考 選択,ポインティング又はドラッグ作業の場合,移動の方向に沿って目標幅を測定する。
トレース作業の場合は,移動の方向に対して垂直に目標幅を測定する。
B.5.1.1 実効目標幅(we) 実効目標幅とは,ポインティング・タッピング試験において,被験者がポイ
ントした点群の広がり幅である。実効目標幅は,次の式によって求める。
we=4.133sx
ここに,sx : 被験者がポイントした点群の座標位置の標準偏差である(座標位置
は,移動の方向に沿って取る,すなわち,水平タッピング試験の場
合はx軸座標)。
B.5.1.2 困難さ指標(ID) 困難さ指標は,その作業で必要なユーザー動作の正確さを,ビットを単位と
して表したものである。選択,ポインティング又はドラッグ作業の場合は,次の式によって求める。
d w
ID log 2
w
トレース作業の場合は,次の式によって求める。
d
ID
w
ここに, ID : 困難さ指標
d : 目標までの距離
w : 目標幅 選択,ポインティング又はドラッグ作業の場合は移動
の方向に沿って測った目標の幅であり,トレース作業の場合は,
移動の方向に対して垂直に測ったトレース経路の幅である。
B.5.1.3 実効困難さ指標 実効困難さ指標は,作業を終えて結果として達成したユーザーの正確さを,ビ
ットを単位として,測定したものであり,次のいずれか一つとして表される。
選択,ポインティング又はドラッグ作業の場合は,次の式によって求める。
d we
IDe log 2
we
トレース作業の場合は,次の式によって求める。
d
IDe
we

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