17
Z 8523 : 2007 (ISO 9241-13 : 1998)
能が異なる,ポインティングデバイスが用意されていないなど,ユーザー・仕事・環境及び技術上の
制約によって推奨事項が必ずしも適用できるとは限らない場合がある。しかし,設計環境が,推奨事
項で言及しているユーザー特性,仕事,又は技術上の特徴に関係すれば,その推奨事項は適用可能と
する。例えば,状態情報をユーザーに提供する場合,本体の8.2の各推奨事項が当てはまるかを検討
することが望ましい。
ある推奨事項が,適用可能であるかを決めるうえで利用できる方法には,次のものがある。
− システム資料の分析
− 資料的根拠
− 観察
− 分析的評価
− 経験的評価
附属書Aの3.では,適用可能かを決める手法について詳しく述べる。
3. 適用可能性手法の解説
3.1 システム資料の分析 システム資料の分析とは,ユーザー向け案内の全般的及び個別的性質を記述
しているすべての文書の分析を指す。それらにはシステム,及びユーザーの要求事項を含んだ設計資料,
操作説明書,ユーザーの手引(ユーザガイド)などが含まれる。例えば,あるアプリケーションに対する
システムの要求事項に基づき,ユーザー主導型のヘルプだけを用意すべきと決める。
3.2 資料的根拠 資料的根拠とは,仕事の要求事項及び特性,作業の流れ,ユーザーの技能,適性,習
慣及び癖,類似システムの設計からの試験データなど,文書化された関連する資料すべてを指す。このよ
うな情報は,ある推奨事項が適用可能かの判定に役立つ情報として利用できる。例えば,タスク分析のデ
ータから,ユーザーがシステムの状態に関する情報を頻繁に必要とすることが分かる。
3.3 観察 観察とは,ユーザー向け案内が観察可能な性質をもつか(例えば,プロンプトが使われてい
る。)を調べることを意味する。観察は,ユーザー向け案内を系統立てて調べ,条件付き推奨事項の適用可
能性に関連する性質の有無を判断できる人であればだれにでも可能である。もともと自明なものだから,
観察結果は別の人間によって直ちに確認できる。
3.4 分析的評価 分析的評価とは,適切な専門家によるユーザー向け案内の性質に関する“有識者的”
判断のことである。この方法は,一般に,他の情報及び知識の文脈の下だけで判断できるような性質の評
価に使われる。他にも,分析的評価は,システムが設計文書の型でだけ存在したり,経験的評価に適した
ユーザー母集団が得られなかったり,時間及び資源に限りがある場合に適切であろう。分析的評価は,あ
る推奨事項が適用可能か,例えば,システム主導型のオンラインヘルプによってユーザーの注意が本来の
仕事からそらされるか,を決定するのに使うことができる。
分析的評価は,ユーザー向け案内にかかわる性質を評価するのに必要な技能及び経験をもつ適切な資格
者ならだれでも行うことができる。これらの性質が人間工学的原理の適用にかかわる場合,専門家はソフ
トウェアでの人間工学の問題を扱うことに通じている必要がある。性質が,作業環境,システム特性その
他の設計の側面にかかわる場合,判定者はその関連領域の専門家である必要がある。
3.5 経験的評価 経験的評価とは,推奨事項の適用可能性を判定するための代表的なユーザーを用いた
試験手続きの適用を指す。この方法は,試作システム又は実システムが利用でき,予想される,又は実際
のユーザー層を代表するユーザーが参加できる場合に最適である。多種の試験手続きを使用できるが,ど
の場合でも,被験者は,ユーザーの母集団を代表するもので,結果をユーザーの集団全体に一般化できる
――――― [JIS Z 8523 pdf 21] ―――――
18
Z 8523 : 2007 (ISO 9241-13 : 1998)
十分な人数とする必要がある。例えば,ユーザーがある項目に関して頻繁にヘルプを求めるかどうかを決
める場合,典型的なユーザーにユーザー向け案内としてオンラインヘルプだけを使いながら代表的な課題
を行わせる経験的評価を行うなどである。
経験的評価は,試験の実施方法及び結果の評価方法に関する適切な技能をもつ者が実施すべきであるこ
とを留意することが望ましい。
4. 適合 ある推奨事項を附属書Aの2.で述べた判定基準に基づいて適用可能と判断した場合,次にその
推奨事項が満たされているか否かを判定する必要がある。適合性は,次に挙げる幾つかの方法を用いて決
定する。
備考 各推奨事項について適合を決めるうえでどの方法が適しているかは,この附属書A表1のチェ
ックリスト中に推奨事項ごとに掲げてある。
− 測定
− 観察
− 資料的根拠
− 分析的評価
− 経験的評価
適用可能性の判定結果は,しばしば適合を判定するうえでも重要であることを注意する。次に種々の適
合判定法について詳しく述べる。
5. 適合手法の解説
5.1 測定 測定とは,ユーザー向け案内の特性に関する何らかの変量を測ること又は算出することを指
す。そのような変量の一例としては,応答時間がある。適合は,測定から得られた値を,推奨事項での値
と比較することで判定する。
5.2 観察 観察とは,例えば,定義された既定値を明示しているか(本体の6.2.7)を確認するなど,あ
る観察可能な条件が満たされているか,ユーザー向け案内を調べることを意味する。観察は,ユーザー向
け案内を系統立てて調べ,観察可能な性質に関係する条文が一貫して当てはまっているかを判定できる技
能をもっている人であればだれにでも可能である。観察された性質と推奨事項とを比較して,適合を判定
する。
5.3 資料的根拠 適合の判定法において,資料的根拠とは,条件付き推奨事項に対してユーザー向け案
内が適合しているかに関連する文書情報すべてを指す。そのような情報には,ユーザーの習慣又は癖,試
作品の試験データ,類似システムの試験データなどが含まれる。例えば,類似システムの試験データが,
評価しようとするアプリケーションのユーザー向け案内のヘルプナビゲーション及び制御(本体の10.5)
が,ユーザー及び仕事に適していることを示唆するかもしれない。この場合,基本的に,その推奨事項に
対する類似システムの適合性を決めた資料的根拠を基にして適合性を決定することになる。
5.4 分析的評価 附属書Aの3.4で述べたように,分析的評価とは,適切な専門家によるユーザー向け
案内の性質に関する“有識者的”判断のことである。特にこの方法は,他の情報又は知識の文脈だけで判
断できるような性質の評価に用いる。加えて,分析的評価は,システムが設計文書の型だけで存在したり,
経験的評価用にユーザーの母集団が得られなかったり,時間及び資源に限りがある場合に,適合を査定す
る適切な方法である。例えば,システムの状態が変化した場合,システムがその状態を常に明示する(本
体の7.2.4)かどうかを決定するのに,分析的評価が利用できる。この場合,明示的であるかは判断にかか
――――― [JIS Z 8523 pdf 22] ―――――
19
Z 8523 : 2007 (ISO 9241-13 : 1998)
わる事柄である。
附属書Aの3.4で述べたように,分析的評価は,ユーザー向け案内にかかわる性質を評価するのに必要
な技能及び経験をもつ適切な資格者ならだれでも行うことができる。適合判定法において,専門家は設計
案の適切さ及び使いやすさを確実に判断するのに必要な技能及び知識を併せもつ必要がある。分析的評価
は,設計の筋道の正しさを検証できるが,設計結果の正当性は検証できないことに注意すべきである。正
当性の検証は,経験的評価を通じてだけ実施できる。
5.5 経験的評価 経験的評価とは,推奨事項の適合性を判定するための,代表的なユーザーを用いた試
験手続きの適用を指す。附属書Aの3.5で述べたように,この方法は,試作品又は実際のシステムが利用
でき,想定する又は実際のユーザー層を代表するユーザーが参加できる場合に最も適している。利用でき
る試験手続きには多種あるが,どの場合でも,被験者はユーザー集団を代表するもので,結果をユーザー
集団全体に向けて一般化できる十分な人数とする必要がある。ユーザー向け案内を用いるユーザーの作業
効率を分析することによって,条件付き推奨事項に適合するかを決めることができる。例えば,ユーザー
がエラー状態から回復するのに要する時間を分析することで,エラーメッセージの何が悪いのか,どうす
ればよいのか,エラーの原因が何なのかを伝えているか(本体の9.5.3)を判断できるかもしれない。その
ような試験は,開発過程で(例えば,試作版を作成して)行われることも,システムの設計及び具体化の
後に(例えば,システム評価手法を用いて)行われる場合もある。また,客観的及び主観的なユーザデー
タの両者を基盤として行われる場合もある。ある推奨事項の適合を測る特別な試験を計画する場合もある。
通常は,経験的評価を用いて,そのテスト結果とユーザー向け案内に関するある推奨事項とを比較し,
適合を判定する。しかし,有効性の観点(例えば,ユーザー向け案内が作業効率を向上させる,難しい作
業を少しでも容易にする,又はできない仕事をできるようにすることでユーザーを支援するなどの観点)
から,テスト結果を評価することも必要である。
――――― [JIS Z 8523 pdf 23] ―――――
20
Z 8523 : 2007 (ISO 9241-13 : 1998)
附属書A図1 決定の手順(評価の状況)
6. 手順 あるアプリケーションのユーザー向け案内をこの規格の推奨事項に照らして評価する場合,次
の手順(附属書A図1を参照)で行ってもよい。
6.1 “もし・・・・・の場合”型条件付き推奨事項
a) 適用可能性 条件付き推奨事項は,推奨事項の本文中に(例えば,本体の5.2.2),又は細分箇条の標
題で暗黙に(例えば,本体の10.2),“もし − の場合”型条件をもつ。各条件付き推奨事項では,“も
し − の場合”型条件が成立するかを調べる方法として提案される方法(例えば,本体の9.5.9の場合,
エラーメッセージに添えて,それ以外にどのような入力が可能かを提示するべきかを決めるのには,
資料的根拠,分析的評価,又は経験的評価がふさわしい)を用いて,“もし − の場合”型の推奨事項
が適用できるかを決める。さらに,本体の9.3.2 a)及び9.3.2 b)のように,複数の条件付き推奨事項が
該当する場合,そのうちいずれを選択するかは,提案されている方法によって決めることが望ましい。
このような該当する複数の条件付き推奨事項がある場合は,チェックリスト中で,“及び/又は”論理
――――― [JIS Z 8523 pdf 24] ―――――
21
Z 8523 : 2007 (ISO 9241-13 : 1998)
接続詞でも表示している。
b) 適合 a)で適用すると決めたすべての条件付き推奨事項に対し,提示している方法によって適合の検
討を行う(もし,本体の9.5.9が適用可能であれば,エラーメッセージに入れるべき選択肢を観察によ
って決める。)。
6.2 他の条件付き推奨事項
a) 適用可能性 “もし − の場合”型でない条件付き推奨事項は,一般にどのようなユーザー向け案内
にも当てはまる。しかし,推奨事項の箇条の多くは(例えば,本体の10.2 システム主導型ヘルプ),
そのような特徴を備えているユーザー向け案内にだけ適用可能である。すなわち,システム主導型ヘ
ルプを含むユーザー向け案内の場合,本体の10.2の推奨事項が適用可能である(決定手法としては,
附属書Aの6.1と同様に指摘された方法を用いる。)。
b) 適合 a)で適用可能性が決まった“もし − の場合”型でない推奨事項では,附属書Aの6.1 b)に述
べたような推奨事項への適合に関する情報が必要である。例えば,ユーザーの入力に対するシステム
の応答時間が適切か(本体7.2.9)を決定するうえでは,分析的評価又は経験的評価の両方とも適して
いる。推奨事項に従わない正当な理由がある場合には,その理由及び選択した設計案は,この規格の
読者にとって興味深いものである。
上記の手順を適用する手助けとして,適用可能性及び適合のチェックリストを附属書A表1に記載する。
7. チェックリスト
備考 この規格のユーザーは,チェックリストの意図した用途に用いるのであれば附属書中のチェッ
クリストを自由に複製してよい。また,記入完了したチェックリストを公表してもよい。
附属書A表1のチェックリストは,ユーザー向け案内を扱う設計者及び評価者がこの規格中の各条件付
き推奨事項の適用可能性との適合を決定する場際の補助となることを意図したものである。このチェック
リストは,この規格中のすべての推奨事項の縮約版を含み,適用可能性を決定するうえでの助けとなる論
理的構造を提供する。条件付き推奨事項の多くは,複数の代替的解決案を認めている。チェックリストで
は,そのような相互依存性を,論理接続詞を表す“及び”,“又は”という語で記述している。この記述は,
箇条中の条件付き推奨事項についてだけ行い,箇条間の関係については記述しない(箇条には,その箇条
に適用可能な度合いに応じて固有の“及び”が付けられているとみなす。)。いずれか一つだけを採用する
必要がない場合には,“及び/又は”論理接続詞を用いている。
7.1 チェックリストの説明
7.1.1 推奨事項の列 チェックリストの第一列は,縮約版の条件付き推奨事項を含み,論理接続詞で結ば
れ,細分箇条ごとに分かれている。各条件付き推奨事項には,細分箇条の番号を付けているので,ユーザ
ーは,各条件付き推奨事項の全文を容易に参照することができる。
7.1.2 適用可能性の列 この中の先頭の二つの列は,適用可能かどうかの結果を,可否欄にチェックマー
クで示し記録するようになっている。さらに,各条件付き推奨事項に対して適用できるかを調べるにはど
の方法が適切かを示すとともに,設計者,評価者が用いた方法にチェックマークを付ける列を提供する。
ある推奨事項の適用可能性を調べるのに適切ではない方法の欄に網掛けを施して使いやすくしてある。適
用の可能性を調べる方法の記号は,
− S=システム文書の分析
− D=資料的根拠
− O=観察
――――― [JIS Z 8523 pdf 25] ―――――
次のページ PDF 26
JIS Z 8523:2007の引用国際規格 ISO 一覧
- ISO 9241-13:1998(IDT)
JIS Z 8523:2007の国際規格 ICS 分類一覧
- 35 : 情報技術.事務機械 > 35.180 : IT端末設備及びその他の周辺設備
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.180 : 人間工学
JIS Z 8523:2007の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISZ8522:2006
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―情報の提示
- JISZ8524:1999
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―メニュー対話
- JISZ8525:2000
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―コマンド対話
- JISZ8526:2006
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―直接操作対話
- JISZ8527:2002
- 人間工学―視覚表示装置を用いるオフィス作業―書式記入対話