JIS Z 8706:1980 光高温計による温度測定方法 | ページ 4

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10.6 標準電球の使用
10.6.1 外部光が直射するような場所を避け,操作に差し支えない程度まで暗くした場所で標準電球を点燈
する。恒温の室内で点燈することが望ましいが,点燈電流による発熱で温度が上がりがちであるから注意
を要する。
10.6.2 標準電球のガラス球表面は,きれいでなければならない。特に見定め方向のガラス球面には絶対に
傷つけてはならない。
使用前に呼気を吹きかけ,洗浄したガーゼ又は柔らかい写真レンズ清掃用の鹿皮などでよくふく。表面
が汚れているときは,あらかじめアルコールなどで湿らせたガーゼなどでふきとる。
10.6.3 標準電球は,表6に示した使用温度範囲の最高温度以上で点燈してはならない。一般に最高温度以
下ならば数百時間点燈しても特性に変化はないが,点燈時間はなるべく短くするほうがよい。個個の標準
電球につき,点燈した温度及び時間の記録を残しておくことが望ましい。
10.6.4 標準電球は,所定の温度に達するのにかなりの時間を要する(図6参照)。
備考 室温から所定の輝度温度に1℃以内まで接近した輝度温度に到達させるに要する時間は,定電
流で点燈した場合には,大形真空電球は800℃が27分,1 000℃が17分,1 200℃が8分,1 400℃
が1分,大形ガス入電球は1 000℃が6分,1 200℃が4分,1 400℃が2分程度である。定電圧
電源又は電池で点燈した場合は,過渡時の電流変化を見越して,所定の電流になるように前も
って点燈しておけば,上記の時間はいくぶん短縮できる。定電圧電源では,点燈してから所定
の温度に達するまでの電流の変化は,大形真空電球が1 000℃で0.3A,大形ガス入電球が1 000℃
で0.1A程度である。また,ある温度で使用していた電球を,輝度温度が100℃異なる状態に移
そうとするとき,最終状態に1℃以内まで接近させるに要する時間は,900℃が10分以内,1
000℃,1 100℃が5分以内,1 200℃以上が2分以内である。
10.6.5 補助レンズは,きずや汚れを付けないように注意する。紛失又は他のレンズと混同しないように,
組になった標準電球と一緒に保管する。
10.6.6 輝度合わせを行うとき,高温計電球線条の像の頂部は,図8に拡大して示したとおり,標準電球の
見定め位置すなわち線条の切込みの高さの中央位置に一致させることが必要である。
図8 標準電球線条の見定め位置
10.7 光高温計の校正 標準電球による光高温計の校正は,次の手順で行う。
(1) 校正に先立ち,標準電球,その点燈装置及び点燈回路を点検し,また光路に関係ある部分を十分に清
浄にしておく(10.6.2参照)。
(2) 定められた姿勢に確実に標準電球を支持し(10.4参照),また標準電球の電流が定められた方向に流れ
ることを確める〔10.5参照〕。
(3) 標準電球の見定め方向に,補助レンズ及び光高温計を固定する(10.1参照)。

――――― [JIS Z 8706 pdf 16] ―――――

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なお,附属の補助レンズは,光高温計の対物レンズに極めて近く取り付け,かつ両レンズの光軸を
一致させる。
(4) 標準電球の見定め位置を正しく見定めできるように,光高温計との相対位置を調整する(10.6.6参照)。
(5) 標準電球線条が所定の温度で定常状態に達したことを確めたのち(10.6.4参照),輝度合わせを数回繰
り返し,平均値を計算して器差を求める〔7.4(10)参照〕。
(6) 校正する目盛温度が2点以上のときは,それぞれの温度につき上記の操作で校正する。校正の順序と
しては,低い温度から高い温度に及ぶ順序,及びその反対の順序で同じ温度につき校正を繰り返し,
その平均値から器差を求める。
10.8 標準電球の管理 標準電球の管理は,次のとおり行う。
(1) 標準電球は,ガラス球特にガラス球の正面にきずや汚れを付けるおそれのある取扱いをしてはならな
い。
(2) 標準電球は,機械的なショックを与えないように,振動のない場所に保管する必要がある。
(3) 標準電球の特性の変化を監視するため,1個の電球は常用せずに保管し,他の電球の特性の変化を調
べるときにだけ用いることが望ましい。
(4) 使用温度と使用時間に関係するが,標準電球は少なくも3年に1回は校正することが望ましい。
(5) 標準電球の履歴がわかるように,購入年月日,過去からの全部の校正表,使用年月日と点燈最高温度
及び点燈時間の合計などの記録を保存すること。
参考1.
参考表1 放射率 (波長0.65
物質・状態 温度℃ 放射率
炭素 − 0.850.95
酸化クロム 900 0.81
アルミナ 900 0.18
1 200 0.25
セラミック材 1 500 0.32
1 800 0.38
溶融鉄平均値 1 1001 900 0.4
溶融スラッグ平均値 1 4001 830 0.65
鉄 800 0.98
酸化した固体の鉄
1 200 0.92
酸化していない鉄 1 200 0.37
裸の金属面 − 0.35
溶鋼
酸化膜 − 0.50.8
800 0.96
酸化ニッケル
1 300 0.85
ニッケル − 0.37
溶融 − 0.15
液体 − 0.15
銅 非酸化物
固体 − 0.11
酸化物 − 0.60.8
700 0.46
タングステン 2 000 0.43
3 000 0.41
1 000 0.29
白金 1 300 0.30
1 700 0.32

――――― [JIS Z 8706 pdf 17] ―――――

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参考2. この規格における波長の意味
この規格では,この測定方法においての波長は,すべて単一の波長であって0.65 死 地 地
この規格の適用範囲に対しては,実用上のこのような取扱いで十分であるが,厳密な取扱いにおいて必要
なことがらを,参考のため次に示す。
備考 ここでは温度は熱力学温度(K)によって表し,また本文2.の注(1)は適用しないことにする。
1. この測定方法における波長の意味 温度Tの物体の輝度温度が可視域のある波長
ということは,この波長においてこの物体のスペクトル放射輝度が温度Sの完全放射体のスペクトル放射
輝度に等しいということである。すなわち,次の関係が成り立つ。
0
L T V =L S V (1)
ここに L T) : 温度Tの物体のスペクトル放射輝度(1)
V( 比視感度
L
S : 温度Sの完全放射体のスペクトル放射輝度(1)
また 1 1= log e (2)
T S c2
ここに 攀 測定対象のスペクトル放射率
c2 : 0.014 388m・K
注(1) 放射輝度とは,物体の表面から観測方向へのその正射影の単位面積当たり,単位時間に,その
方向へ単位立体角当たりに放出される放射エネルギーをいう。
式(2)は,輝度温度S及びスペクトル放射率 ってこの物体の真温度Tを求める場合(本文8.3.1参照)
や,輝度温度及び真温度を知ってスペクトル放射率を求める場合などに広く用いられる。
一般の光高温計では,単色光の代わりに赤色フィルタを透過した比較的広い波長をもつ光について輝度
温度が目盛られてあり,その目盛によって物体の輝度温度を測定する。したがって,式(2)を使う場合に,
波長としてどのような値を使うべきかが重要な問題となってくる。
光高温計では,赤色フィルタが透過させる各波長の光についてのスペクトル放射輝度の総和が,測定対
象と完全放射体との両者について等しいとするのであるから,式(1)に相当する関係として,次の式(3)が成
り立つ。
0
L TV d= L SV d (3)
0 0
ここに 赤色フィルタのスペクトル透過率
そこで式(2)と同様な関係式を得るために,適当な波長 最
L TV d
0 Le T
=1= (4)
0 0
L SV d L S
0 e
が成り立つような 霰 式(2)に相当する式として
1 1 e
e e (5)
T S c2
が得られ,波長 湘 として,すべての問題を取り扱うことができる。

――――― [JIS Z 8706 pdf 18] ―――――

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これは,光高温計において,赤色フィルタが透過させる各波長の光の輝度の総和について考えた比と等
しい比で表される仮想的な単色光を考えるということであって,白熱体においてはこの波長は必ず存在し,
これを実波効長という。
2. 光高温計の実効波長
2.1 灰色フィルタなしの場合 実効波長は,次の式(6)で与えられる。
1 1
c2
Te S
e
L S
log e
L Te
ただし (6)
0
L SV d
L S 0
L Te 0
L Te V d
0
ここに 実効波長 (
S : 測定対象の実測した輝度温度 (K)
Tc : 測定対象の分布温度(2) (K)
赤色フィルタのスペクトル透過率 (K)
L 温度Sにおける完全放射体のスペクトル放射輝度
S
0
L Te : 温度Tcにおける完全放射体のスペクトル放射輝度
注(2) ある光のスペクトル分布と相対的に等しい(又は相対的に近似する)スペクトル分布をもつ完
全放射体の熱力学温度を,その光の分布温度という。
2.2 灰色フィルタをそう入した場合 実効波長は,次の式(7)で与えられる。
1 1
c2
Tc S
e
Lv S
log e
Lv Tc
ただし (7)
0
L SV d
Lv S 0
Lv Tc 0
L Tc V d
0
ここに 実効波長 (
S : 測定対象の実測した輝度温度 (K)
Tc' : 測定対象の分布温度 (K)
赤色フィルタのスペクトル透過率
灰色フィルタのスペクトル透過率
0
L S : 温度S'における完全放射体のスペクトル放射輝度
L c
T : 温度Tc'における完全放射体のスペクトル放射輝度
2.3 灰色フィルタのそう入により生じる実効波長の変化 式(7)は,次のように書きかえることができる。

――――― [JIS Z 8706 pdf 19] ―――――

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0
L SV d
Lv S S 0
=
0
Lv Tc Tc L Tc V d
0
ただし
0
L SV d
0
S=
0
L SV d
0
及び
0
L Tc V d
0
Tc =
0
L Tc V d
0
ここに S') : 温度S'の完全放射体から出て赤色フィルタを透過した光
に対する灰色フィルタの全透過率
Tc') : 温度Tc'の完全放射体から出て赤色フィルタを透過した光
に対する灰色フィルタの全透過率
もし S') が Tc') に等しければ,式(7)は式(6)と同等であり, 死 地 灰色フィルタ
することによって実効波長は変化しない。
一般には, S') は Tc') に等しくなく,そのとき灰色フィルタをそう入することにより生じる実効波
長の変化は,次の式(8)で与えられる。
e e /
e log e x
ただし (8)
S Tc
Tc
ここに 攀 測定対象の色放射率(3)
注(3) ある物体の輝度とそれと同じ色の放射をする温度の完全放射体の輝度との比をいう。
例 : 測定対象がタングステンのときでSを2 300Kとすると,Tc'はおよそ2 600K,logcecはおよそ−1
であるが,灰色フィルタが良質であれば 齒 波長はおよそその2001,
すなわち0.03 度変化する。
灰色フィルタの質によっては,この23倍の変化を与えるものもある。
3. 実効波長の異なる二つの光高温計で同一物体を測定するときの輝度温度の差異 これは,次の式(9)
で与えられる。

――――― [JIS Z 8706 pdf 20] ―――――

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JIS Z 8706:1980の国際規格 ICS 分類一覧

JIS Z 8706:1980の関連規格と引用規格一覧

規格番号
規格名称
JISZ8710:1993
温度測定方法通則