JIS Z 8828:2019 粒子径解析―動的光散乱法 | ページ 2

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Z 8828 : 2019 (ISO 22412 : 2017)
μ2 散乱光強度基準粒子径分布をキュムラント展開したときの2次の係数 s−2
ρ 粒子密度 g/cm3
τ 相関時間 s
q 散乱ベクトルの絶対値 nm−1
φ 粒子の体積分率 無次元
ω 角周波数 rad/s

5 測定原理

  流体中に懸濁する粒子は,懸濁する流体分子との相互作用の結果として,ブラウン運動をしている。ブ
ラウン運動に関するストークス−アインシュタインの理論[1]では,非常に低い濃度の平滑な表面をもつ球
の運動は,粒子の大きさとともに,懸濁流体の粘度及び温度によって決まる。したがって,既知の温度及
び粘度の流体中における粒子の運動の測定から,粒子の大きさを決定することができる。
DLS法[2][6]では,粒子の運動を光学的に検出する。懸濁粒子は,可干渉な単色光によって照射される。
運動する懸濁粒子からの散乱光には,粒子の位置の時間的変動で生じた光の変動位相(時間変動位相)が
含まれている。散乱光の時間変動位相は,入射光の位相とのずれか,又は入射光の中心周波数からの周波
数のずれのいずれかと考えることができる。長時間の測定によって,ランダムな粒子の運動は,光学的な
位相のずれか,又は周波数のずれの分布を形成する。これらのずれは,粒子群からの散乱光(ホモダイン
又は自己ビートモード)か,又は入射光の一部を参照光(ヘテロダイン)として用いることで求められる。
装置構成によらず,粒子からの受信した光学的な信号は,粒子の散乱効率に関係し,したがって,散乱光
強度基準である。
この方法で評価される粒子の大きさの上限は,粒子の沈降によって決まり,粒子密度によるが,一般的
には10 μm以下である。
DLS法は,静置している懸濁液に対して開発された。流れと観測軸(方向)とを直交する様に選択する
場合,流動する試料も適切な手法,及び装置構成によって測定できる(附属書C)。
種々の拡散モード,粒子間相互作用,多重散乱及び蛍光は,DLS測定による見掛けの粒子径の算出に本
質的な影響を与える。附属書B参照。

6 装置

  一般的な装置は,次の要素から構成される。
6.1 レーザ 粒子に照射される可干渉性の単色光で,照射及び検出方向によって決まる面に対して直交
する電場成分に分極している(垂直偏光)。どのようなレーザも使用可能である。例えば,ガスレーザ(He-Ne
レーザ,Arレーザ),固体レーザ,半導体励起固体レーザ,及び半導体レーザ。
6.2 光学系 散乱体積に入射するレーザを集光するため,及び散乱光を検出するために使用するレンズ
及び部品。光ファイバは,しばしば検出系及び光伝送用の光学系の一部として使用される。
可干渉な光を使用すると,散乱光と参照光とが干渉し,散乱光の周波数のずれが測定できる。図1のa)
及びb)に示す参照光に対する二つの方法が一般的に用いられている。

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a) ホモダイン法 b) ヘテロダイン法 c) 交差相関法
(ホモダイン法同時検出法)
1 レーザ
2 試料
3 検出器
4 相関器又はスペクトルアナライザ
5 ビームスプリッタ
6 レンズ
図1−DLS法の一般的な光学系配置
− ホモダイン法(自己ビート法ともいう。)[図1 a)]では,粒子群からの散乱光を検出器で混合するこ
とで,周波数のずれ(又は位相差)の測定が可能になる。
− ヘテロダイン法[図1 b)]では,散乱光は,入射光の一部と混合される。シフトを起こしていない入
射光は,周波数のずれ(又は位相差)の測定に対する参照光となる。
注記 DLS法では“ヘテロダイン”は,同一光源からの光の散乱光と非散乱(散乱していない)光
との混合と理解されている。DLS法のヘテロダイン法の定義は,例えば,光学干渉法での定
義とは異なる。
− 交差相関法[図1 c)]では,二つのホモダイン法による測定が次のように同時に実施される。二つの
散乱ベクトルの大きさと散乱体積は一致するが,対応する散乱ベクトルは一致しない。そのため,こ
の二つのレーザ光は対応する散乱光のゆらぎパターンを生じる。しかし,それらのゆらぎの相関は理
想的ではない。なぜならば,一方の検出器はもう一方からの散乱光も検出し,多重散乱は全く相関が
ないからである。上記の二つの事象は,単にバックグラウンド成分を増加させるだけであって,時間
依存の信号成分に影響を与えることはない。
6.3 試料ホルダ 試料温度の変動を±0.3 ℃に制御可能なもの。試料温度に関する正確な情報は種々の計
算に必要であるが,どの温度に調整するかは問題ではない。
6.4 光検出器 捕捉された散乱光の強度に比例する出力をもつもの。光電子増倍管又は(アバランシェ)
光ダイオードが一般的に使用される。検出器は,どのような角度でも設置可能である。データ収集は,線
形又は対数間隔で行う。
6.5 信号処理ユニット 時間的に変動する散乱光強度の信号の取り込み,及び入力信号の自己相関関数,
交差相関関数,又はパワースペクトルの出力が可能なもの。この出力は,線形,対数,又は両者を組み合
わせた形で作動するハード的な及び/又はソフト的な相関器によって行われる。
この出力は,懸濁粒子の粒子径を代表する特性周波数又は時間変動位相の分布を含んでいる。検出され
る光子の到達時間には分布がある。このことは,入射光強度が一定であっても,散乱光の信号が変動する
ことを意味する。変動する散乱光強度信号は,これまでに得られた信号に重ねられる。相関分析では,相
関性のない信号は一定であるが,拡散する粒子に関係する信号は指数的に減少する。スペクトル解析では,

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相関性のない信号は,直流成分又はゼロ周波数項で表される。時間変動成分から,DLSの理論を用いて粒
子径分布を決定する。
6.6 計算ユニット 粒子径及び/又は粒子径分布を得るための信号処理が可能なもの。信号処理ユニッ
トとしての機能を併せもつ計算ユニットもある。
− 自己相関解析による計算では,粒子径分布を決めることなく平均粒子径が求められる。しかし,粒子
径分布の算出も可能である。
− 周波数解析による計算では,信号のパワースペクトルを用いて粒子径分布を算出する。
− 交差相関法による計算では,多重散乱の影響を定量化及び最小化することができる。したがって,高
い粒子濃度まで利用可能になる(しかしながら,粒子間相互作用の影響を除くことはできない。)。こ
の方法の欠点は,より複雑な光学系を必要とする点である。
6.7 装置の設置場所 清浄な環境で,過剰な電気ノイズ及び機械的振動がなく,日光が直接当たらない
環境である場所。有機溶剤を懸濁媒に用いる場合,健康及び安全面に関する国内の規制に従い,作業空間
の換気を十分に行う。頻繁な光学系の調整を避けるため,装置は堅固なテーブル又はベンチに設置する。
警告 DLS装置は,眼球に永久的な損傷を与える低出力又は中出力レーザを備えている。レーザビー
ムの光路又は反射光を,決して直接のぞき込んではならない。レーザが動作している場合,高
い反射率の物体がレーザビームの光路内に置かれていないことを確認する。
レーザ放射の安全性に関する国内法規を遵守しなければならない。

7 試料作製

7.1 概要

  分散媒中に粒子を十分分散させた試料を用いることが望ましい。超音波,ろ過などの分散手順は,結果
に影響を与えるため,その分散手順を報告しなければならない。分散媒は,次の要件を満たす。
a) 測定波長域で十分に透明で(吸収がなく),蛍光を発しない。
b) 粒子状の不純物を含まない。
c) 粒子状物質の溶解,膨潤又は凝集が起きない。
d) 粒子状物質とは十分に異なる既知の屈折率をもつ。
e) 使用される測定温度範囲において,粘度は±2 %の範囲で既知である。
注記 平均粒子径 xDLS は,粘度ηに直接,逆比例するので,DLS
x の不確かさは常にηの不確かさよ
り大きい。
f) バックグラウンドの散乱は,装置の取扱説明書に記載された値より,低い(これは,分散媒だけでの
カウントレート,及び測定部に試料又は溶媒が存在しない場合のカウントレートを測定することで確
認できる。前者の場合,少なくとも試料より1桁少ないことが推奨され,一方,後者では,装置のバ
ックグラウンド値以下であることが望まれる。)。
二重層の形成は,流体力学径に重大な影響を及ぼす。拡散二重層又は電気二重層を圧縮できるほど高い
イオン強度をもつ分散媒を用いると,DLSによる測定結果と電子顕微鏡による測定結果との間でよりよい
一致が得られる。伝導度を1 mS/cmにすれば,通常,流体力学径と顕微鏡で測定した径とは一致するよう
になる。特に,二重層を圧縮する方法は,微小な粒子で有効である。
水が分散媒として多く用いられる。新しくイオン交換され,ろ過(孔径0.2 μmのろ材)された水を用い
ることが推奨される。二重層厚さを減少させるために,イオン性の添加物(すなわち,濃度10 mmol/L=
0.6 g/Lの塩化ナトリウム)を添加してもよい。しかしながら,イオン強度の調整が試料を不安定にしない

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か,又は添加物が試料と反応しないかを,あらかじめ検討しておく必要がある(塩素イオンと銀イオンと
の関係など)。

7.2 限界濃度

  DLSの測定範囲における粒子濃度の下限は,粒子径,検出器の感度などの因子の他に,測定体積中にあ
る粒子の数によって決まる。
懸濁粒子を含む試料からの散乱光強度(カウントレート又はISとして表現される。)は,分散媒だけの
場合に得られる信号の10倍以上であることが望ましい。散乱光強度比が10より小さい場合,粒子の質量
分率が低いか,又は粒子径分布が非常に広いかのいずれかであり,結果のばらつきが大きく,精度も低く
なる。
報告されている粒子径に影響を与えることなく測定できる分散粒子の最大濃度は,粒子間相互作用及び
多重散乱によって決まる。濃度限界は希釈によって経験的に決めることが望ましい(附属書B参照)。

7.3 適切な濃度の確認

  装置が異なると,異なる光学観測角及び光学配置が採用されている。ここに示す目視及び確認の方法は
一般的なものであるが,特定の装置の操作に対しても適用できる。
次のような目視及び確認を推奨する。
a) 試料を装置に設置する前に目視で検査する。低濃度の試料はほとんど透明である。高濃度では,乳白
又は不透明である。
b) 試料は事前に装置に入れ,試料の温度を確実に一定値にする。カウントレート又は信号値を確認する。
次のいずれかの操作によって,カウントレート又は信号値を調整できる。
− 受光検出器の開口を変える(検出器の可干渉度も変える。)。
− 受光検出器のゲインを調整する。
− レーザ光源に印加する電力を調整(限定的な調整)する。
− 減光フィルタをレーザ光源の前又は検出器の前に用いる。
c) 自己相関法による相関関数解析を用いる装置では,適切に設定された相関計を用いて,切片値1)が装
置メーカによって定められた値より大きいかを確認する。その値が低いことは,調整の悪い光学系,
多重散乱,又は散乱光の非常に弱い試料による。非常に弱い散乱光しか得られない試料では,検出器
の開口を広げる必要があるが,可干渉性が失われるので注意が必要である。大きい粒子に関しては,
適切な粒子数を含むように測定体積を増やす必要があることがある。測定体積の増加も切片値を減少
させる原因となる。予想より低い切片値は,試料の吸収及び蛍光に起因することもある。今まで示し
た要因の全てが切片値を減少させるので,原因を明確にするためには更なる試験を必要とする。
注1) 相関時間0における値
d) 異なる粒子濃度で実施された測定結果は,測定の不確かさの範囲内で一致することが望ましい。濃度
の増加に伴って粒子径が減少することは,かなりの量の多重散乱,及び希釈剤と元の分散液との粘度
の違いによって起こる分散液の粘度変化及び/又は粒子の協同拡散(附属書B参照)を示唆している。
異なる粒子濃度での測定結果は,無限希釈への外挿法によって粒子径を推定することにも利用される。
直径が500 nmより小さい粒子で体積分率φ=10−510−4の試料は,上の要求事項(適切な粒子濃度
条件)を満たしている。多分散粒子及び/又は粒子径が大きい粒子の場合には,受光検出器の制限視
野又は入射レーザ光のビーム径を大きくし,散乱体積を大きくしなければ,全ての要求事項を満たす
濃度を見い出せないこともある。このような場合,測定される切片値は,要求事項c)を満たさなくな
ることがある。1 μm以上の粒子では,要求事項c)及びd)は,特殊な場合にだけ成立する。

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全ての試料調製方法(分散媒,粒子濃度及び分散手順)は,記録することが望ましい(推奨する試料調
製方法を,附属書Dに示す。)。

8 測定手順

  測定手順は,次による。
a) 装置の電源を入れ,暖気運転をする。通常,レーザの強度が安定し,試料ホルダが規定の温度に達す
るまで15分間30分間が必要である。
注記 多くの場合,測定した温度での溶媒の粘度が既知であるので,温度を調整することよりも一
定の温度で測定することが重要である。
b) 分散媒だけを満たした測定セルに由来する散乱光のカウントレート又は信号値が低く,粒子の混入を
示す激しいゆらぎがないことを確認したほうがよい。カウントレート又は信号値が高いと,セル壁面
の汚れ又は不均一性の可能性がある。バックグラウンド除去を行う装置の場合,使用する分散媒のバ
ックグラウンド信号を測定し,保存する。
c) 試料を目視し,粒子,糸くず,繊維,その他の異物の存在の有無を確認する。異物がある場合には,
試料調製をやり直す。
d) 適切かつ清浄な測定セルに必要量の試料を入れる。使い捨て(例えば,プラスチック製)又は再利用
可能な(例えば,光学測定用ガラス製又は石英製)測定セルとする。使い捨てプラスチックセルと比
較して,ガラスセルは,セルを通った光が散乱するとき,光の屈折が少なく,そのため実際の観察角
度が検出器と入射光との間の幾何学的角度と等しくなるという利点をもつ。測定セルの材質は,分散
媒及び粒子に対して化学的に安定でなければならない。試料の注入前に,フィルタでろ過した脱イオ
ン水又は非水系の分散液を測定する場合はその溶媒でセルを洗浄する。不純物が残る場合には,穏和
な界面活性剤又は光学セル用の洗浄剤を使用してもよい。ろ過した脱イオン水で数回セルをすすいで,
残った界面活性剤を取り除く。セルを逆さにして,水分を取り除く。セルに蓋をして,必要なときま
で清浄に保管する。
水及び溶媒をろ過するフィルタの孔径は,目的に応じて適切なものを使用する。理想的には,測定
する最も小さい粒子より小さい孔径が望ましい。
ガラスセルの代わりに使い捨てのプラスチックセル[例えば,ポリメタクリル酸メチル(PMMA)
製又はポリスチレン製]を使用することもできる。プラスチックセルの壁面はきず付きやすく,ガラ
ス又は石英の光学品質には及ばない。そのため,使い捨てプラスチック製セルは弱い散乱光の試料に
は用いないほうがよく,壁面のダストを除去するための洗浄は,懸濁溶媒でのすすぎ及び/又は粒子
を含まない気流を用いるのがよい。セルの面を素手で触ったり,又はセル表面をきず付ける材質(光
学用ペーパー又はティシュペーパーを含む。)で拭いたりしないように注意する。
試料を入れたセルを装置に入れる又は測定プローブを試料に入れる。温度が一定になるまで待つ。
温度は既知で,測定中の温度変化は±0.5 ℃であることが望ましい。
セル内に温度センサをもたない装置のための別の方法は,室温を測定し,その室温±0.3 ℃に試料
ホルダを調整する。試料の温度が室温になるまで待ち,試料ホルダに挿入後,直ちに測定する,又は
装置の試料ホルダの温度から±0.3 ℃に温度調整した浴槽内で試料を入れたセルを同じ温度になるま
で放置する。この場合,装置に挿入する前にセルの外側を乾燥させる。
試料の温度が試料ホルダの温度と一致していないと,水に分散した試料の粒子径の不確かさは,1 ℃
当たり約2 %である。

――――― [JIS Z 8828 pdf 10] ―――――

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JIS Z 8828:2019の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 22412:2017(IDT)

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