JIS A 1965:2015 室内及び試験チャンバー内空気中揮発性有機化合物のTenax TA(R)吸着剤を用いたポンプサンプリング,加熱脱離及びMS又はMS-FIDを用いたガスクロマトグラフィーによる定量 | ページ 3

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カラムによって分離し,FID及びMS,又はMSだけで検出する。MSは化合物の同定及び定量ともに用い
てもよい。FIDは化合物の定量にだけ限定的に使用する。
FID及びMSの両方を分析に使用する場合は,同一のガスクロマトグラフにこれらの検出器を装着して
もよいし,異なるガスクロマトグラフに装着してもよい。後者の場合は,比較可能なクロマトグラムを作
成するために,同じ試料注入方法及び分離条件を使用する。
FIDを用いて定量を行う場合は,一連の試料ごとに,濃度が異なる検量線用混合標準溶液,又は少なく
とも一つのレベルの検量線用混合標準溶液を分析して,機器の性能を確認する。
MSを用いて定量を行う場合は,一連の試料ごとに,少なくとも3種類の,可能な場合は5種類又は7
種類の濃度の検量線用混合標準溶液を分析して,検量線を更新する。また,同位体標識化合物を内部標準
物質に用いて,サンプリングと分析の精度管理とを行うことができる。

9.2 加熱脱離

  オクタデカンの脱離効率が95 %以上となるように,脱離時間及び脱離ガス流量を設定する。脱離効率の
決め方についてはJIS A 1966による。
冷却トラップ及びTenax TA 200 mg250 mg含有サンプラを用いたVOC分析の脱離条件の一例を次に
示す。

− 脱離温度 260 ℃280 ℃
− Tenax TAとは異なる吸着剤の捕集管を使用する場合は,脱離温度を考慮する必要がある(JIS A 1966
及び附属書Dに従ってVVOC及びSVOCを定量的に分析するため。)。異なる脱離温度を使用した場
合は試験報告書に記載する。
− 脱離時間 5 min15 min
− 脱離ガス流量 30 mL/min50 mL/min
− 冷却トラップの高温度 260 ℃300 ℃
− 冷却トラップの低温度 −30 ℃20 ℃
− 冷却トラップ吸着剤 Tenax TA
− トランスファーライン温度 150 ℃225 ℃
− スプリット比 サンプラと冷却トラップ,及び冷却トラップと分析カラム(該当する場
合)のスプリット比は,予想される空気中の濃度によって決まる(加熱
脱離装置の取扱説明書を参照)。
注記 より揮発性の高いVVOCにあっては,上記条件では冷却トラップから破過することもあり,そ
の場合,定量は困難である(VVOC及びSVOCの定量分析については附属書Dを参照。)。広範
囲にわたる化合物を分析するための吸着剤及び分析条件はD.6.1に示す。

9.3 昇温条件

  沸点及び極性が大きく異なる物質を分析するときは,最短時間で十分な分離ができる昇温条件を設定す
る必要がある。

9.4 サンプラの分析

  サンプリングを実施したサンプラは,サンプリングから4週間以内に分析することが望ましい。トラベ
ルブランク及び品質確認のための標準液体添加サンプラは,サンプルと前後して分析する。VOCを質量ス
ペクトルで定性し,FID又はMSで検出したクロマトグラムで定量する。

――――― [JIS A 1965 pdf 11] ―――――

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10 個々のVOCの同定

  標準物質による定量を意図しない個々のVOCを同定するために,スキャンモードの質量スペクトルで
サンプルを分析する。検出される各VOCの同定は,全イオンクロマトグラムを用いて,純粋な化合物の
質量スペクトル又は市販の質量スペクトルライブラリーとの比較によって行う。使用者が作成したライブ
ラリーを用いてもよい。サンプル中の化合物の保持時間と検量線に用いた化合物の保持時間が一つのカラ
ムで一致しただけでは,確実に同定したことにはならない。
可能な限り多くの化合物,少なくとも,代表的な10本の大きなピーク又は2 μg/m3以上の濃度の場合に
ついて同定する。
これまでの経験から,室内空気及び建築材料からよく放散されるVOCのリストを附属書Aに示す。同
定したVOCのクロマトグラムピーク面積の合計が,n-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの範囲で溶出し
たFID又はMSで検出したクロマトグラムの全ピーク面積の少なくとも2/3に達したときは,満足できる
同定といえる。
MS操作で,選択イオン検出(以下,SIMという。)モードも用いてもよい。SIMモード又はスキャンモ
ードのどちらを使用するかは,両者の相違を認識している操作者が判断する。

11 サンプリングした空気中の分析対象成分の濃度

11.1 概要

  同定した化合物について,標準物質の入手が可能な場合は,各々個別の感度を用いて定量する。その他
の場合はトルエン換算によって定量する。同定されない化合物の定量については,トルエンの感度を用い
て行う。

11.2 VOC

  化合物固有の感度,及び分析対象成分に対するFID及びMSの直線性は,分析システムを標準物質で校
正することによって求められる(5.5,5.6.3,5.6.4,5.6.5及び5.6.6を参照)。直線領域において少なくと
も3種類の濃度(5種類又は7種類の異なる濃度による検量線の方が望ましい。)による校正を行わなけれ
ばならない。検量線は最も低い試料濃度よりさらに低い濃度から作製する。
個々のVOCのピーク面積は,注入した化合物の質量に比例する。各化合物について,注入した分析対
象成分の質量と一致したピーク面積との関係を式に表す。直線を描く検量線の傾きが,対象VOCの感度
となる。
AST=bST×mST+CST (1)
ここに, AST : クロマトグラムにおける,分析対象成分のピーク面積
bST : 検量線の傾き(感度)
mST : 分析対象成分の質量(ng)
CST : 検量線の切片(検量線が原点を通る場合は,CST=0)
サンプル中の分析対象成分の質量(mf : ng)は,分析対象成分のピーク面積及び感度を用いて計算する。
AA
mf CA (2)
bST
ここに, mf : サンプル中の分析対象成分の量(ng)
AA : クロマトグラムにおける,サンプル中の分析対象成分のピー
ク面積
bST : 検量線の傾き(感度)
CA : 検量線の切片(検量線が原点を通る場合は,CA=0)
ブランクサンプラーについても同様な操作で定量を行う。

――――― [JIS A 1965 pdf 12] ―――――

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サンプリング空気中の同定したVOC質量濃度の計算は,次の式による。
mA mb
ρA (3)
V
ここに, ρA : サンプリング空気中の分析対象成分濃度(μg/m3)
mA : サンプリングしたサンプラ中の分析対象成分の質量(ng)
mb : ブランクサンプラ中の分析対象成分の質量(ng)
V : サンプリング量(L)
必要な場合,101.3 kPa,23 ℃における濃度への換算は,次の式による。
1013. (T 273)
ρA
ρA,101.3,29 6 (4)
P 296
ここに, ρA,101.3,296 : 101.3 kPa,23 ℃における分析対象成分の濃度(μg/m3)
P : サンプリング時の気圧(kPa)
T : サンプリング時の気温(℃)
サンプル中の同定されない化合物は,トルエンの感度を用いて定量する。

11.3 TVOC

  TVOCの濃度は,次のとおり求める。
MSで検出したクロマトグラムにおけるn-ヘキサンからn-ヘキサデカンまでの,全ピーク面積を対象と
する。トルエンの感度を用いて,クロマトグラムピーク面積を,トルエンの質量単位に換算する。式(3)に
よって,サンプル空気中のTVOC濃度を計算する。バックグラウンドの影響を考慮するため同じ手法にて
ブランクチューブのTVOC濃度を計算し,サンプルのTVOC濃度より差し引いて結果を求める。
この目的のためにMSを使用するときは,TVOC-MSの操作パラメータを適切に設定する場合もある。
適切な設定ができない場合,FIDを使用することが望ましい。
注記1 TVOC-MSの操作パラメータを適切に設定することは,TVOCとして得られる結果の互換性
を向上させるためである。
注記2 トルエン相当量で表されたTVOCは,混合物に含まれる個々の化合物の感度がトルエンとは
大幅に異なることがあるため,半定量的である。

11.4 TVOCの範囲外で検出されるVVOC及びSVOC

  室内空気中に存在したり,建築材料から試験チャンバー内空気中に放出され可能性のあるその他の有機
化合物に関する情報を得るためには,VOCを測定するだけでなく,VVOC及びSVOC,すなわち,n-ヘキ
サンの前及びn-ヘキサデカンの後でそれぞれ溶出された有機化合物に関する何らかの情報を知る必要があ
る(附属書D参照)。

12 性能特性

  事前に,ISO/IEC Guide 98-3 [14]に従って,この規格の性能特性を求めるのがよい。この場合,少なく
とも次の事項を含み,不確かさの要因を推定することが望ましい。
a) サンプリング :
1) 流量
2) 時間
3) 温度
4) 気圧
5) サンプリング効率

――――― [JIS A 1965 pdf 13] ―――――

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b) サンプリングの妥当性 :
1) 測定方法及び安定性
2) ブランクサンプラの均一性
c) 脱離効率
d) 検量線 :
1) 標準物質
2) 検量線のばらつき
e) 分析 :
1) 繰返し精度
2) ブランクサンプラの汚染レベル
f) 環境の影響 :
1) サンプリング時の温度
2) サンプリング時の湿度
3) 妨害物質
g) 現場再現性
h) チャンバーの技術管理 :
1) 換気量
2) 試料の準備
測定方法の正確さ及び繰返し性は重要な要素であり,結果及び意図した目的に対する方法の適合性を評
価するために,求めなければならない。μg/m3レベルの既知濃度空気が確実に発生できる場合は,VOC測
定方法の精確さを求めることができる。ただし,これは比較的困難であるため,ほとんどの研究者は一定
(濃度)の空気を繰り返しサンプリングし,測定方法の繰返し性だけを求めている。
室内空気中の塩素化ブタジエンの研究において,測定結果の不確かさの評価が,ISO/IEC Guide 98-3 [14]
に基づいて行われた。体積比0.6×10−9レベルのヘキサクロロブタジエン測定における合成相対不確かさ
は±12 %であり,拡張相対不確かさ(95 %信頼区間)は±23 %であった[4]。
6成分のVOCを含むボンベ空気から,無極性炭化水素をサンプリングした繰返し性が,参考文献[5]に
報告されている。Tenax TAの繰返し性は2 Lサンプリングの場合で10 %以下であり,0.5 Lサンプリング
の場合で12 %であった。
注記 建築材料の放散試験において,内装材料及び製品からのVOC放散に関して研究を行っている
試験所間の差異を評価するため,試験所間比較が行われこの結果報告が参考文献[6][7]にある。

13 報告

  報告書には,少なくとも次の情報が含まれていなければならない。
a) 測定の目的
b) サンプリング場所の説明
c) サンプリングの日時
d) サンプリング条件(温度及び相対湿度)
e) 引用規格
f) サンプリング方法の詳細な記述

――――― [JIS A 1965 pdf 14] ―――――

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g) 分析手法の詳細な記述
h) 分析方法の検出限界
i) 同定された化合物の濃度。CAS番号,使用した計算及び検量線の原理を含む。
j) 測定値の不確かさ
結果はトルエン相当量で表したTVOC-FID又はTVOC-MS濃度で補足することができる。

14 品質管理

  次の事項を含む適切なレベルの品質管理を実施しなければならない。
− 8.5に従ってトラベルブランクを用意する。
− サンプラのブランクレベルは,ピーク面積が分析対象成分の典型的なピーク面積の10 %以下であれば
よい。
− JIS A 1966に規定しているようにVOCの脱離効率は決定することができ,95 %以上でなければならな
い。
− バックアップ用サンプラ,又はSSVよりも少なく,かつ,異なるサンプリング空気量を使用すること
によって,完全に捕集されていることを確認することができる。
− 同一試料のサンプリングと分析を行うことなど,測定方法の繰返し性を確認する。
− n-ヘキサンからn-ヘキサデカンの炭化水素の回収率は95 %以上でなければならない。変動係数は15 %
以下であることが望ましい。

――――― [JIS A 1965 pdf 15] ―――――

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JIS A 1965:2015の引用国際規格 ISO 一覧

  • ISO 16000-6:2011(MOD)

JIS A 1965:2015の国際規格 ICS 分類一覧

JIS A 1965:2015の関連規格と引用規格一覧