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用いてもよい。溶媒に含まれる分析対象成分のブランク値は,定量下限値以下が望ましい。
5.3 検量線用標準
検量線用標準は,次のいずれかの方法によって一定期間ごとに調製し,その組成変化を確認の上使用す
る。組成変化が認められる場合は,調製期間を短くする。
5.3.1 標準添加法
この方法は,未使用のサンプラに濃度既知の標準溶液を添加し,これを抽出・分析して検量線を作成す
るものである。検量線の濃度レベルは,添加量を変化させることで調製することができる。
手順は,次による。
a) 各液体成分約100 μg/mLを含む溶液 揮発性の低い物質から順に対象物質約10 mgを正確にひょう量
し100 mLの全量フラスコに入れる。溶媒で100 mLとし,栓をして振り混ぜる。
b) 各液体成分約10 μg/mLを含む溶液 希釈溶媒50 mLを100 mLの全量フラスコに入れる。a) の溶液
を10 mL加える。希釈溶媒で100 mLとし,栓をして振り混ぜる。
c) 標準液体添加サンプラ 未使用のサンプラに標準溶液を注入して,標準液体添加サンプラを調製する。
サンプラを適切な装置(図1)に取り付け,不活性ガスを通過(パージ)3) しながらa) 又はb) の溶
液15 μLを,セプタムを通して注入する。適切な時間経過後,サンプラを取り外し密閉する。
注記 上記の検量線用標準溶液の調製濃度は一例であり,分析する試料濃度に応じて調製濃度範囲を
検討する必要がある。
注3) 用いる溶媒に応じて,パージ条件が異なる。
図1−標準溶液添加装置の例
5.3.2 標準溶液導入法
この方法は,異なる濃度レベルの標準溶液を各々調製し,それらを直接ガスクロマトグラフに導入・分
析して検量線を作成するもので,使用するサンプラの抽出効率が80 %以上であることが確認されている場
合に使用することができる。
手順は,次による。
a) 分析対象成分の濃度に応じ,5.3.1のa)又はb) のいずれかに準じて適切な濃度の検量線用標準溶液を
調製する。
b) 検量線用標準溶液を溶媒で希釈し,適切な濃度系列(例えば,5段階)を調製する。
c) 検量線用標準溶液系列を各々分析用のバイアル瓶に取る。
5.4 吸着剤
吸着剤の種類として,例えば,附属書Cに記載のものがある。製造業者充済みのサンプラが市販され
ており入手可能である。サンプリングに供する量(例えば,300 mg)当たりの吸着剤のブランク値は,通
――――― [JIS A 1968 pdf 6] ―――――
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常,測定するレベルの10 %を超えてはならない。
なお,分析対象成分によっては抽出効率の低いものもあることから,使用する吸着剤の特性について,
事前に把握する必要がある。
6 装置
通常の実験室用器具及び装置を使用する。
6.1 サンプラ
例えば,外径34 mmのガラス管に吸着剤を300 mg程度充したもの。
6.2 シリンジ
0.1 μLまで読取り可能な10 μL精密液体シリンジ。
6.3 サンプリング用ポンプ
ポンプは,EN 1232[2]の条件に合致するか,又は同等のものが望ましい。
6.4 接続管
約90 cmの長さのプラスチック又はゴム管で,ポンプ及びサンプラ,又は(使用する場合)サンプラホ
ルダに隙間なく合致する径をもつものとする。サンプラと接続管の接続部とはクリップで締めることが望
ましい。
これらのサンプラを使用すると汚染を引き起こしたり試料中のVOCの吸着を引き起こす可能性がある
ため,サンプラの上流にこれらの接続具を用いてはならない。
6.5 石けん膜流量計又は他のポンプ校正用器具
流量計は,一次標準にトレーサブルな方法で校正する4)。
注4) 未校正の積算流量計をポンプ流量の校正に使用する場合,数十%の系統誤差が生じることがあ
る。
6.6 ガスクロマトグラフ
水素炎イオン化検出器,光イオン化検出器,質量分析計又は他の適切な検出器付きのガスクロマトグラ
フで,少なくともS/N比5 : 1で0.5 ngのトルエンを検出できるものとする。
ガスクロマトグラフには,各分析対象成分を各々他の成分と分離できるキャピラリーカラムを使用する。
7 ポンプの校正
適切に校正された専用のメータを用いて,実際のサンプリング時と同様にサンプラをつないだ状態でポ
ンプを校正する。校正された流量計の一端は,適切な作動を確保するため,大気圧とする。
8 サンプリング
分析対象成分又は混合物に適したサンプラ(又はサンプラの組合せ)を選択する。
サンプラは樹脂製の接続具又はゴム管でポンプに接続する。異なる複数の吸着剤を用いる場合は,より
強い吸着剤を含むサンプラをポンプに最も近い位置に接続する。
適切なサンプリング位置を選択し,サンプラを固定する。サンプリング位置の選択については,JIS A
1960及びJIS A 1964に規定がある。
ポンプを始動し,適切な流量に調整する。サンプリング時間は,測定濃度に応じて10分24時間の範
囲で,流量は吸着剤の種類に応じて101 000 mL/minの範囲で,総採取量が安全試料採取量を超えないよ
うに設定・調整する。
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カーボン系吸着剤の多くは,破過容量に対する温度及び流量の影響はほとんどないが,高濃度のVOC
の気体又は高い相対湿度で大きく減少する。表1表4に,実験から求めた推定保持容量及び安全試料採
取量の値を示す。
化合物の安全試料採取量が,表1表4にない場合は推定をする。それ以外の場合は,安全試料採取量
を実験で確認しなければならない。
ポンプを始動したときの時刻,温度,流量又は記録計の値及び必要に応じて温度及び気圧を記録する。
サンプリングの終了時にも流量又は記録計表示を読み,ポンプを停止させ,時刻,必要に応じ温度及び気
圧を記録することが望ましい。
サンプラの両端を適切なキャップ(樹脂製など)でしっかりと密栓する。サンプラには識別のためのラ
ベルを付けることが望ましい。サンプラに直接ラベルを付ける場合,溶剤を含む塗料及びマーカ又は粘着
式ラベルの使用は避ける。
試料を8時間以内に分析しない場合は,清浄でコーティングのない,金属又はガラス製の密閉容器内に
おき,清浄な環境下で保管する。特定の温度・圧力条件に換算した濃度で結果を表す場合は,サンプリン
グ中必要に応じて気温及び気圧計の値を記録する(10.1)。
トラベルブランクは,サンプリングに使用するものと同様のサンプラを用い,サンプリング以外はサン
プリングに使用するサンプラと同様の取扱い手順で処理し,トラベルブランクであることを識別する。
注記 この項目の内容は,JIS A 1960及びJIS A 1964と同等である。
9 手順
9.1 安全上の注意
この規格は,その使用に関する全ての安全性に関して規定してはいない。この規格の使用者は,事前に
適切な健康及び安全性のための手順を確立し,規制条件を決めなければならない。
9.2 抽出及び分析
サンプラから吸着剤を分析用バイアル瓶に取り出し,溶媒を加えて栓をし,泡が出なくなるまで時々振
り混ぜ,試験液とする。溶媒は,吸着剤量に対して適量加えることとし,例えば,やし殻活性炭300 mg
に対しては12 mLの二硫化炭素が適量となる。
VOCのガスクロマトグラフ分析条件を設定する。各種のガスクロマトグラフ用カラムが使用できる。カ
ラムは多くの場合,どのような妨害成分が存在するかによって選択する。一般的な例として,内径0.22 mm,
長さ50 m,ポリジメチルシロキサン又は7 %シアノプロピル,7 %フェニル,86 %メチルシロキサンを固
定相とする,膜厚の大きい(15 μm)溶融シリカ製カラムがある。これらのカラムにあっては,初期ホ
ールド時間を50 ℃で10分間とし,5 ℃/minで50250 ℃まで昇温させる温度プログラムが,一般的な
設定条件となる。
単一のカラムでの保持時間の一致だけで,ピークの同定はできない。
9.3 検量線
検量線用に調製した各標準添加サンプラ(5.3.1)を9.2に従って抽出したもの,又は標準溶液(5.3.2)
をガスクロマトグラフによって分析する。
得られた分析対象成分の質量の対数を横軸に,分析対象成分のピーク面積の対数5) を縦軸にプロットし
て,検量線を作成する。
注5) 校正範囲が1桁以内であるならば,対数をとる必要はない。
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9.4 試料濃度の測定
9.2に従って,試料及び試料ブランクを分析する。ピーク面積を求め,抽出した試料中の分析対象成分の
質量を検量線から読み取る。
9.5 抽出効率の測定
抽出効率は,標準添加サンプラのクロマトグラフのピーク面積又は高さと,標準溶液を直接ガスクロマ
トグラフに注入して測定したピーク面積又は高さを比較して求める。標準サンプラによるピーク面積又は
高さを,標準液を直接注入したときのピーク面積又は高さで除した値が抽出効率となる。
10 計算
10.1 分析対象成分の質量濃度
次の式(1)によって,試料空気中の分析対象成分の質量濃度を算出する。
mf mb
m 1 000 (1)
V D
ここに, ρm : 試料空気中の分析対象成分の質量濃度(μg/m3)
mf : サンプリングしたサンプラ中の分析対象成分の質量
(μg)
mb : ブランクサンプラ中の分析対象成分の質量(μg)
V : 試料採取量(L)
D : 抽出効率
注記1 mf及びmbの単位がmgのとき,結果として得られる濃度ρmの単位はmg/m3となる。
注記2 特定の条件に換算した濃度を表示する場合(例えば,23 ℃で101.3 kPa)の濃度は,次の式
(2)を用いる。
1013. T 273
c m (2)
P 296
ここに, ρc : 特定の条件に換算した試料空気中の分析対象成分の濃
度(μg/m3)
P : 試料空気の実際の圧力(kPa)
T : 試料空気の実際の温度(℃)
10.2 分析対象成分の体積比濃度
次の式(3)によって,空気中の分析対象成分の体積比濃度を算出する(ppb)。
243. 1013. T 273
v m (3)
M P 296
ここに, ρv : 採取試料中の分析対象成分の体積比濃度(ppb)
24.3 : 23 ℃,101.3 kPa時のモル体積
M : 分析対象成分の分子量
11 妨害
ガスクロマトグラフ分析において,分析対象成分の保持時間が近接する有機成分は妨害となる可能性が
ある。ガスクロマトグラフの適切なカラムの選択及び条件設定によって,妨害は最小限に抑えられる。
吸着剤として活性炭を用いる場合,高湿度条件下では水分の吸着が考えられることから,サンプリング
場所の相対湿度が60 %以上のときは,過塩素酸マグネシウムなどを充した除湿管を使用することが望ま
しい。
オゾン及び窒素酸化物は分析対象成分と反応する可能性があるため,試料空気中にこれらの成分が多量
――――― [JIS A 1968 pdf 9] ―――――
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に含まれると想定される場合には,サンプリング量はできるだけ減らすようにする。
12 分析特性
この規格の手順で試験した場合の,分析特性(総合的な不確かさ,精度,保存安定性,及びブランクレ
ベル)を把握する必要がある。
13 試験報告書
試験報告書は,少なくとも次の情報を含めなければならない。
a) 試料内容の明確な識別
b) この規格番号及び参照した他の補足規格
c) サンプリングの場所及び時間並びに吸引空気量
d) 必要な場合は,気圧及び気温
e) 試験結果
f) 測定中に観察された特記事項
g) この規格若しくは参照した規格に含まれない操作,又は任意とみなされる操作
14 品質管理
適切なレベルの品質管理を行うことが望ましい(参考文献[3])。
トラベルブランクのピーク面積値が,分析対象成分の通常値の10 %以下ならば許容される。また,操作
ブランク6) との比較によって,保管状態を管理することが望ましい。
注6) 未使用のサンプラについて,抽出・分析を行ったもの。
表1−Charcoal(300 mg)の20 ℃における推定保持容量及び安全試料採取量(SSV)
有機化合物 沸点 蒸気圧 保持容量 SSV SSV/g
℃ kPa(25 ℃) L L L/g
プロパン −42 − 10 5 15
ブタン −0.5 − 900 450 600
ペンタン 35 56 2.7×104 1.3×104 4.3×104
ヘキサン 69 16 1.5×106 7.5×105 2.5×106
ベンゼン 80 10.1 3.4×105 1.7×105 5.6×105
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JIS A 1968:2015の国際規格 ICS 分類一覧
- 13 : 環境.健康予防.安全 > 13.040 : 気質 > 13.040.20 : 雰囲気
JIS A 1968:2015の関連規格と引用規格一覧
- 規格番号
- 規格名称
- JISA1960:2015
- 室内空気のサンプリング方法通則
- JISA1964:2015
- 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)のサンプリング方法
- JISA1966:2015
- 室内空気中の揮発性有機化合物(VOC)の吸着捕集・加熱脱離・キャピラリーガスクロマトグラフィーによるサンプリング及び分析―ポンプサンプリング