JIS B 6190-10:2018 工作機械試験方法通則―第10部:プロービングシステムの測定性能評価方法 | ページ 3

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B 6190-10 : 2018 (ISO 230-10 : 2016)
注記 静止位置は,パラメータ設定の間に確立された公称位置である。実際の静止位置は,通常,こ
の値とは多少異なる。
3.4.2
最大スキャニングたわみ(maximum scanning deflection)
製造業者が指定したスキャニング測定時のプローブのスタイラスチップの中心に適用できる最大たわみ。
注記 最大スキャニングたわみは,たわみの方向(x,y,z)と共に変化する。
3.4.3
プローブ行き過ぎ制限(probe over-travel limit)
プローブのスタイラスアセンブリに損傷を与えることなく適用できる,静止位置からのプローブスタイ
ラスチップ中心の最大たわみ。
3.4.4
最小スキャニングたわみ(minimum scanning deflection)
スキャニング測定が可能な,静止位置からのスタイラスチップ中心の最小たわみ。
注記 たわみは,スタイラスチップが測定している間表面との接触を維持することを保証するのに十
分な大きさになるようにプログラムする。
3.4.5
スキャニング測定範囲(scanning measurement range)
製造業者が指定した名目上のスキャン線と実際のスキャン線との間の最大許容距離。
注記1 この最大許容距離は,プローブの軸によって異なり,別々に表記されている。例えば,X及
びYは,±0.3 mm,Zは,±0.2 mm。
注記2 スキャニング測定範囲は,次に示す理由から最大スキャニングたわみと最小スキャニングた
わみとの差よりも小さい。
− 工作機械の経路追従誤差に起因する事前に定義した工具経路からの偏差
− 工具経路生成に関する近似値(例えば,曲線を直線で近似するとき)
− 表面に沿った動作に起因するプローブのたわみ(例えば,摩擦,局所的な表面の垂直方
向の凹凸,表面仕上げ)
3.4.6
スタイラスチップ法線方向加速度(stylus tip normal acceleration)
目標表面に垂直な方向のスタイラスチップ中心の加速度。
注記 スタイラスチップの法線方向の加速度は,鋭く変化するスキャニング経路をもつ形態に対する
スキャニング速度を制限すると考えられるため,工作機械の軸から高い加速度が要求される。
スキャニング性能は,主に測定対象の表面に垂直な方向の加速度の影響を受ける。目標スキャ
ン線の方向における機械の位置誤差は,通常,大きな測定誤差にはならない。
3.4.7
補正前チップ中心点(indicated tip centre point)
測定中のスタイラスチップ中心の補正前の位置。
注記 この用語は,“補正前測定点”としても知られている(JIS B 7440-1の2.12参照)。
3.4.8
スキャニング球中心位置の再現性(scanning sphere centre position reproducibility)
最初の測定によって得られた球の中心位置と比較して多数の測定を通して得られた球の中心位置の最大

――――― [JIS B 6190-10 pdf 11] ―――――

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変化。
3.4.9
既定経路スキャニング(pre-defined path scanning)
二つの定義された端点の間のプロービングシステムの動作が,目標スキャン線によって決められるスキ
ャニング方法。
(出典 : JIS B 7440-1の7.5参照)
注記 このスキャニング方法では,プローブシステムからのフィードバックは,プロービングシステ
ムの動作指示には使用しない。

4 一般事項

4.1 測定性能に及ぼすプロービングシステムの影響

  プロービングシステムの測定性能は,限定された小さな空間における工作機械の特性を含んでおり,プ
ローブ単体の仕様から導かれるものではない。工作機械のプロービングシステムの性能に及ぼす主な影響
因子は,次による。
a) 工作機械の繰返し性
b) 工作機械の幾何精度,すなわち,位置決め精度(分解能,バックラッシを含む。),真直度,ロール,
ピッチ,ヨー,軸の直角度など
c) 測定(検出)する表面の汚れ
d) プロービング工具の交換及び再取付けを含むプロービングシステムのプロービング誤差及び繰返し性
e) プロービングシステムのパラメータ設定
f) 運動軸及び主軸のドリフトを含む,工作機械,プロービングシステム,基準器及び工作物/工具への
温度影響
g) 測定中の送り速度及び加速度
h) 行き過ぎ及び行き足らずの距離
i) プロービング信号と工作機械位置検出器の読取りとの間の時間遅れ及び時間遅れ変動
j) プロービングする工作物及び工具の表面
工作物のプロービングの繰返し性は,6.2に従って試験し,プロービング工具取付けの繰返し性は,6.4
に従って試験しなければならない。さらに,工具取付けの繰返し性は,7.3に従って試験しなければならな
い。
工作物のプロービングシステムの性能及び工作機械の幾何精度(限定された小さな空間)の試験は,6.5
及び6.6による。
プロービング信号と工作機械位置検出器の読取りとの間の時間遅れ変動の試験は,6.9で行い,形体寸法
の測定性能試験は,6.10による。
温度影響は,5.2及びJIS B 6190-3に規定する方法を用いて調べるのが最もよい。

4.2 測定単位

  この規格では,全ての長さ寸法及び偏差は,ミリメートルで表す。全ての角度寸法は,度(°)で表す。
通常,角度偏差は,比で表すが,場合によっては,マイクロラジアン又は秒(″)を使用してもよい。次の
関係は,角度偏差又は公差の単位の変換に用いるのが望ましい。
0.010/1 000=10 μrad≒2″

――――― [JIS B 6190-10 pdf 12] ―――――

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4.3 JIS B 6190-1の参照

  この規格を適用するために,特に試験前の工作機械の据付けについてJIS B 6190-1を参照するのが望ま
しい。

4.4 推奨する測定器及び試験装置

  箇条5箇条7に規定する試験に記載されている測定器は,例として示す。同じ量が測定でき,同等の
測定不確かさをもつ他の測定器を使用してもよい。変位計の分解能は,0.001又はそれよりもよくなければ
ならない。

4.5 試験前の機械の状態

  測定を開始する前に,工作機械の幾何精度は,関係する規格,例えば,JIS B 6190-1,JIS B 6190-2,JIS
B 6190-3,JIS B 6336-1などに従って評価しておかなければならない。
プローブの構成及びパラメータ設定の手順は,その製造業者の指定する条件に従って行わなければなら
ない。

4.6 試験の順序

  この規格に規定する試験の順序は,実際の試験の順序を規定するものではない。箇条5箇条7に規定
する試験は,一つだけ,又はいずれかと組み合わせて行ってもよい。

4.7 実施する試験

  機械を試験する場合には,この規格に規定されている全ての試験を実施する必要はなく,また,可能で
もない。試験が受入目的に要求される場合には,製造業者と協定して,関心ある試験を選ぶことは使用者
に任されている。これらの試験は,機械を発注するときに明確にしなければならない。実施する試験を指
定することなく,また,関係する経費に関する協定もなく受入試験としてこの規格を参照するだけでは,
どんな契約当事者にとっても拘束力があるとはみなすことができない。

4.8 試験の不確かさの発生源

  この規格に規定する試験を実施して,“測定器”としてのプロービングシステムの特性を明らかにする。
したがって,JIS B 6190規格群の他の部に規定されている試験とは根本的に異なる。例えば,数値制御工
作機械の位置決めの繰返し性を試験する場合に,その目的は,規定された繰返し条件下で指定した工作機
械の特性の繰返し性を決定することである。この規格は,具体的な測定システム,すなわち,プロービン
グシステム自身の性能を決定することに焦点を当てていることを考慮しなければならない。そのため,こ
の規格は,ISO/TR 230-9に記載されているような測定不確かさの成分よりもむしろ,試験の不確かさの成
分を推定するために行う。ISO/TS 23165から貴重な情報を得ることができる。
プロービングシステム測定性能試験のための測定不確かさの主な要因は,次のとおりである。
− 基準器の校正の不確かさ,例えば,適用できる場合には,基準リング又は基準球
− 適用できる場合には,基準リングのアライメント
− 適用できる場合には,基準器の取付け具
− 製造業者の環境温度指針の範囲外の温度で測定するとき,熱的に誘発された誤差の補正(5.1に従って
実施)
注記 製造業者の指針に従った温度で試験を実施する場合,又は環境温度指針が与えられていない場
合には,試験の結果は,試験中のプロービングシステムの計量特性を適切に表す。したがって,
試験の不確かさには影響しない。
− 測定時間中の環境温度変動誤差(ETVE又はドリフト),製造業者の環境温度指針を超える実際の試験
環境による測定の繰返し性

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4.9 試験結果の報告

  試験に関連するパラメータとして,次の事項を含めて報告しなければならない。
a) 工作機械の特定
b) 測定ソフトウエアの特定
c) プローブ又はセンサの特定
d) スタイラスシステムの部品及び長さの特定
e) プローブのスイッチング力の設定(適用できる場合)
f) プローブ又はセンサの位置及び向き(工作機械の設計上,固定できない場合)
g) 測定に用いた基準器又は工具の種類,寸法及び特定
h) 工作機械の測定空間内の基準器の位置(適用できる場合)
i) プローブのパラメータ設定中及び試験中の送り速度
j) プローブのパラメータ設定中及び試験中のプロービング距離
k) プロービング点数及びその分布
l) プログラムした主軸速度(適用できる場合)
m) 関係する機械の温度及び周囲温度
n) 暖機運転サイクル

5 熱影響

5.1 一般

  JIS B 0680は,寸法測定のための標準温度を20 ℃と規定している。したがって,測定器及び測定対象
は,20 ℃に保たれた環境と平衡になっているのが望ましい。環境温度が20 ℃以外の場合は,結果を20 ℃
に対応させるために測定システムと測定対象との間の見掛けの差分温度膨張(NDE)補正を行わなければ
ならない。工作機械の通常の運転で使われている組込み形のNDE補正は使用しなければならない。測定
のために追加するNDE補正は,機械の位置センサの熱変形補正に使用してはならない。

5.2 環境温度変動誤差(ETVE)試験

  ETVE試験{JIS B 6190-3の箇条5[環境温度変動誤差(ETVE)試験]参照}は,プローブの評価試験
に先立って行わなければならない。ETVE試験の時間は,受渡当事者間で協定するのが望ましく,かつ,
予想されるプロービング時間を含めるのが望ましい。
ETVE試験は,機械に及ぼす環境温度変化の影響を明らかにすることを意図したものであって,機械の
比較のために使用してはならない。
工作機械又はプロービングシステムの製造業者は,指定どおりのプロービングシステム性能が達成でき
る温度環境を明らかにしなければならない。使用者は,責任をもってプロービング作業のために許容でき
る温度環境を提供しなければならない。ただし,プロービングシステムの製造業者が提供するガイドライ
ンに従っている場合,又はガイドラインが提供されていない場合は,仕様に従ってプロービングする責任
は,工作機械又はプロービングシステムの製造業者にある。
プロービング機能を既存の機械に追加する場合には,温度環境の仕様は,受渡当事者間で協定する。
ETVE試験は,数回,球,リング又は平面をプロービングし,球若しくは円の中心座標又は平面の位置
の変化を評価しなければならない。この試験は,通常のプロービングシステムの試験時間と同等の時間を
かけて行うのが望ましい。
結果の表示は,JIS B 6190-3の5.3(結果の説明)による。

――――― [JIS B 6190-10 pdf 14] ―――――

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5.3 他の熱変形試験

  プロービングシステムを,機械加工のすぐ後に又は途中で用いる場合は,工作機械,特に主軸冷却の影
響を考慮しなければならない。そのような場合に,温度変動誤差試験は,主軸及び/又は軸の暖機運転,
例えば,測定の前に代表的な運転を実施した後に行わなければならない。温度変動誤差試験のために実施
しなければならない工作機械の運動(例えば,主軸速度,運動の期間,運動軸,送り速度)は,受渡当事
者間で協定し,かつ,工作機械の代表的な運転を考慮しなければならない。
箇条6及び箇条7に規定する個々の性能試験は,受渡当事者間で協定し,機械加工運転に対応する代表
的な運動を行った後に実施したほうがよい。

6 工作物のプロービング

6.1 一般

  マシニングセンタで工作物をプロービングするときに用いるプローブは,通常,主軸に取り付ける。プ
ロービングする場合の多くは,MCSに対してWCSを適切に特定できるようにするために,スタイラスチ
ップの中心を主軸の軸平均線上に配置するのがよい。それ以外の用途,例えば,二つの名目上平行な加工
面の間の距離の測定,穴又はボスの直径の測定を行う場合には,スタイラスチップオフセットがあるとプ
ロービング誤差が大きな誤差成分になる可能性があることから,それを避けるために,MCSに対して主軸
のオリエンテーションがプロービング中に変化することがないように注意するのが望ましい。
試験を実施する前に,製造業者の指示に従ってスタイラスチップの中心を調整しなければならない。こ
の調整手順は,プローブに接続するスタイラスシステムを変えるたびに行わなければならない。また,取
付け状態が異なると,スタイラスチップの中心位置が変化する可能性があるために,同じスタイラスチッ
プを分解して組み立て直した場合も同様に調整する。
プロービングシステムのパラメータ設定は,製造業者の指示に従って実施し,スタイラスチップが中心
にくるように調整した後に続けて行わなければならない。製造業者の説明書には,“プロービングシステム
の校正”という表現でプロービングシステムのパラメータ設定について記載しているものがあるが,この
表現は適切ではなく,使わないのが望ましい。
この規格に規定する試験は,プロービングシステムが工作機械のZ軸方向運動と一致していて,かつ,
スタイラスチップの中心が主軸の軸平均線と一致していると仮定し,さらに,Z軸運動に名目上平行であ
ると仮定して行う。傾斜又は割出ヘッドを用いる場合には,どの向きに対してもプロービングシステムの
パラメータ設定を行わなければならない。そのようなパラメータ設定については,JIS B 7440-5を参照す
ることを推奨する。
指定した測定空間内で,適用できる場合には,どこに基準器を取り付けるかは使用者が自由に決定する。
ただし,基準器は,プロービングシステムのパラメータ設定に使用した位置に定置してはならない。
プロービングシステムのスイッチング力による基準器の変形を避けるために,基準器は十分剛性が高く
なるように取り付け,固定するのが望ましい。工作機械で使用するプローブのスイッチング力は,ひずみ
ゲージ式のスイッチングプローブの0.020 N程度から,通常のスイッチングプローブの数Nまで様々であ
る。一般に,Z軸方向のスイッチング力は,X軸方向及びY軸方向のスイッチング力よりもかなり大きい。

6.2 プロービングの繰返し性

6.2.1  一般
マシニングセンタ用の一般的な工作物プロービングシステムは,機上に載せたままで簡単なインプロセ
ス測定をしたり,機械加工した後の工作物を速やかに測定したりすることを意図している。通常,そのよ

――――― [JIS B 6190-10 pdf 15] ―――――

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