JIS K 0119:2008 蛍光X線分析通則 | ページ 2

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を搭載し,容易に持ち運びができるように小形化及び軽量化を図った可搬形装置も使用され,高性能化と
ともに応用分野が広がっている。

5 装置

5.1 装置の構成

  蛍光X線分析装置の基本構成の例を,図1に示す。
X線発生部 試料室 分光・検出・計数部 装置制御部 データ処理部
図1−蛍光X線分析装置の基本構成(例)
装置の各部の構成は,用いる分光方式と一次X線の試料への照射方式とによって異なる。分光方式には,
分光器を用いる波長分散方式と,X線のエネルギーに対し分解能の高い検出器を用いるエネルギー分散方
式とがある。エネルギー分散方式には,通常の照射方式と,一次X線を試料に臨界角以下で照射してX線
の試料表面での全反射現象を利用する全反射方式とがある。通常の照射方式の装置は,試料中の元素の分
析をすることを目的とし,全反射方式の装置は,試料表面の元素分析を行う装置であり,試料表面の汚染
物質の測定などに用いる。装置としては,大形及び卓上形の装置が一般的であるが,可搬形装置もある。
可搬形装置には,携帯形と据置形とがある。また,試料上の指定した位置の分析及び試料の元素マッピン
グ像を得るための装置もある。これらの方法別に,各部の構成及び機能を示す。
a) 波長分散方式 X線発生部は,一次X線を発生させるためのX線管,これに電力を供給する高圧電源
及びその調節などを行うための制御部からなる。試料室では,一次X線を試料に照射して蛍光X線を
発生させる。分光・検出部は,蛍光X線から分析線を選別するための分光器,分析線のX線強度を強
度に比例した電気信号(パルス)に変換するための検出器などからなる。分光器には,ソーラスリッ
トと平面分光素子とを組み合わせた平行法[図2のa)]によるもの及びスリットとわん曲分光素子と
を組み合わせた集中法[図2のb)]によるものがある。検出器には,比例計数管,シンチレーション
計数器などを用いる。分光器及び検出器の配置方式には,一つの分光器を用い分析元素ごとに一つの
検出器を手動又は自動で設定する走査方式と,分析元素ごとにそれぞれの検出器を設定する固定方式
とがある。後者の場合,一つの分光器をもつものと複数の分光器をもつものとがある。計数部は検出
器からのパルスを増幅するための比例増幅器,特定の波高範囲のパルスを選別するための波高分析器
(シングルチャンネル形),パルスを計数するためのスケーラーなどから成る。装置制御部は,X線発
生部及び分光・検出・計数部に制御信号を出力する。データ処理部は,補正などの各種の計算を行う
ためのコンピュータなどからなる。
b) エネルギー分散方式 X線発生部は,X線管のほかにラジオアイソトープ線源を用いる。試料室は,
目的によって大気,ガス置換,真空にすることができる。分光・検出部は,検出器,その前置増幅器
などからなる(図3参照)。検出器には,エネルギー分解能の高い半導体検出器,比例計数管などを用
いる。計数部は,比例増幅器,波高分析器,スケーラー,マルチチャンネル波高分析器などからなる。
マルチチャンネル波高分析器の場合には,波高範囲を区分してチャンネル別に同時にパルスを計数し,
その値をメモリーに記憶させることができる。シングルチャンネル波高分析器の場合も,波高値を走
査して波高分布を測定することができる。データ処理部は,計数部の一部と共用するものが多い。可
搬形蛍光X線分析装置は,装置が小形化されており,試料室を設けないものもある。

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全反射方式においては,X線が物質表面で全反射するようなごく低角度でX線を入射させなければ
ならない。そのため,X線入射角度を精密に制御することができる機構と,平たん度が高い試料台と
が必要である。全反射方式蛍光X線分析装置の構成例を,図4に示す。この例では,X線管から発生
したX線をモノクロメーターで単色化して試料に照射している。
元素マッピング機能をもつ装置は,試料台に試料台制御装置を装備し,試料上の測定位置を制御可能な
構成になっていて,波長分散方式及びエネルギー分散方式のいずれの場合もある。試料台周辺の具体的な
装置構成例を,図5に示す。元素マッピングを行うため,測定径を小さくするための集光素子又はコリメ
ーターを装備している。図5では,試料に照射するX線を絞っている例を示したが,検出側から試料上の
検出する径を小さくする方法もある。
図2−波長分散方式蛍光X線分析装置の構成(例)

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図3−エネルギー分散方式蛍光X線分析装置の構成(例)

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図4−全反射方式蛍光X線分析装置の構成(例)
図5−マッピング分析装置の構成(例)

5.2 X線発生部

  X線管,高圧電源及び制御部で構成する。必要に応じて単色化のための機構を附属させる。試料中の分
析元素から蛍光X線を発生させるための一次X線源であり,一般的にはX線管を使用する。
注記 ラジオアイソトープ線源又はシンクロトロン放射光を使用する場合もある。
5.2.1 X線管
分析元素の蛍光X線を発生させるために十分なエネルギーをもつ一次X線を発生し,かつ,分析元素に
ついて,測定に適する強度の蛍光X線が得られる容量をもつもの。封入管方式と回転対陰極方式とがある。
a) 封入管方式 ターゲット及びフィラメントが高真空の封入管に密封されている。
b) 回転対陰極方式 ターゲットが高速回転し,冷却されたターゲット面に電子ビームを当てることによ
って強いX線が得られるようになっていて,真空ポンプで排気しながら使う。
5.2.2 単色化機構
分析元素を効果的に励起し,同時にバックグラウンドを小さくするために,X線管からのX線を単色化
する。二次ターゲット方式,一次フィルター方式及びモノクロメーター方式がある。

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5.2.3 高圧電源
X線管に電圧及び電流を供給する。
5.2.4 制御部
X線管に印加する電圧及び電流の制御を行う。構成は,次のとおりである。
a) 管電圧及び管電流の調節器
b) 管電圧及び管電流の安定機構
c) 安全機構

5.3 試料室

  試料の照射面とX線管及び検出器との距離,照射面積などの繰返し性が高くなるような構造とする。試
料回転機構をもつものもある。元素マッピングを行う場合は,測定位置に試料を移動させる試料位置制御
装置を設ける。元素マッピングには,二次元分析,又は三次元分析がある。また,これらの装置では,CCD
カメラなどによって試料の観察及び測定位置の確認をする試料観察機構をもつ場合がある。オンライン用
及び可搬形の装置には,試料室のないものがある。

5.4 分光・検出・計数部

  試料から放射される蛍光X線スペクトルの中から必要な蛍光X線を取り出し,その強度に比例したパル
スに変換し,分析に必要なパルスを分離及び計数する部分である。
5.4.1 波長分散方式
分光器,検出器,比例増幅器,波高分析器,スケーラーなどで構成する。
a) 視野制限装置 試料上の測定領域を制限するものでコリメーター又は集光素子を用いる。それぞれ一
次X線で制限する方式と試料から発生したX線で制限する方式とがある。
1) コリメーター アパーチャーなどを用いて一次X線の照射領域又は検出領域を制限する。
2) 集光素子 X線を集光させて試料上の測定領域を制限する。モノキャピラリー方式,ポリキャピラ
リー方式,わん曲分光素子方式などがある。
b) 分光器 試料から放射される蛍光X線から分析に必要な蛍光X線を取り出すもので,ソーラスリット,
スリット,分光素子及び集光素子とからなる。必要に応じて恒温にできる機構をもたせる。分光器は,
長期にわたり高い繰返し性が保持できる機構とする。
1) ソーラスリット 平面結晶を分光素子とする場合には,ソーラスリットを用いて平行線束とする。
2) スリット 発散X線を分光するために,わん曲分光素子を用いるときには,スリットを用いて集光
する。
3) 分光素子 X線を分光するための素子で,単結晶,人工多層膜,回折格子,ミラーなどがある。材
質は,温度変化及び時間経過に対し安定なものとする。
c) 検出器 蛍光X線強度を,その強度に比例したパルスに変換するためのもので,比例計数管(ガスフ
ロー形及び封入形),シンチレーション計数管などを用いる。
d) 検出器用高圧電源 検出器に印加する電圧を安定に供給する。
e) 線通路 必要に応じて雰囲気を真空,ヘリウム又は窒素に置換する。大気で測定する場合もある。
f) 比例増幅器 検出器からのパルスを一定の割合で増幅する。
g) 波高分析器 比例増幅器の出力信号の波高の差を識別し,エネルギーを選別する。
h) スケーラー パルスを計数する装置で,十分な計数容量をもつ。
5.4.2 エネルギー分散方式
検出器,比例増幅器,マルチチャンネル波高分析器などで構成する。

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