JIS K 0119:2008 蛍光X線分析通則 | ページ 4

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選別は,次の三つの場合に分かれる。
a) 測定値が管理基準値(A)より大きい場合,基準値以上とする。
b) 測定値が管理基準値(B)より小さい場合,基準値以下とする。
c) 測定値が管理基準値(A)と(B)との間にある場合,測定誤差の影響によって,基準値以上か以下かの判
断ができないため,選別不能とする。

10 定量分析

10.1 定量方法の種類

  蛍光X線分析法による定量分析は,相対分析であり,濃度又は量が既知の試料からの蛍光X線強度と測
定試料からの蛍光X線強度とを比較し,定量を行う。
蛍光X線分析法による定量方法には,検量線に基づく検量線法,内標準法,標準添加法及び検量線を作
成しないファンダメンタルパラメーター法(FP法)がある。
a) 検量線法 検量線用試料を用いて,分析元素の濃度又は量とX線強度との関係を求めて検量線を作成
する。測定試料のX線強度を測定して,検量線から測定試料中の分析元素の濃度又は量を求める。検
量線用試料は,測定試料と組成が類似したものを用いる。この方法において共存元素の影響が無視で
きない場合には,数式によって計算,補正を行う。
b) 内標準法 添加及び混合が容易な試料では,内標準元素を加えて,X線強度に対する試料量及び共存
元素の影響を補正する。一定量の内標準元素を含む濃度既知の試料を検量線用試料として,分析元素
のX線強度と内標準元素のX線強度との比を求めておき,その比と濃度との関係から検量線を作成す
る。測定試料にも検量線用試料と同じ内標準物質を同量加えて,X線強度を測定し,同様にX線強度
比を求めて検量線から濃度を求める。内標準元素のX線強度に代えて散乱X線強度を使用することも
できる。
この方法において,共存元素の影響が無視できない場合には,数式によって計算,補正を行う。
c) 標準添加法 測定試料から等分量を4個以上採取し,1個を除いた残りについて,分析対象元素をそ
れぞれ異なる量添加し,添加しないものも含めて各試料を一定量に調製して,各試料の分析元素のX
線強度を測定する。それぞれに加えた分析元素の量とX線強度とをグラフにプロットし,両者の関係
線を求める。関係線を外挿して,バックグラウンド強度又は成分ゼロ量での強度における分析元素量
を求め,そのマイナス値を試料中の分析元素量とする。この方法は,低濃度の試料に適用され,濃度
とX線強度との関係線が直線で,かつ,バックグラウンド強度又は成分ゼロ量での強度が既知の場合
にだけ適用される。
d) ファンダメンタルパラメーター (FP) 法 試料の組成,厚さ,一次X線のスペクトル分布,質量吸収
係数などの数値から計算して得られた理論X線強度と,測定して得られたX線強度とを対比して逐次
近似法によって測定試料の組成を求める。理論X線強度と測定X線強度との相関は,あらかじめ元素
ごとに組成が既知の試料1点以上で求めておく。この方法は,いったん分析元素ごとの相関を決定し
ておけば,広い濃度範囲にわたって適用できる。標準物質を使用せずに未知試料の定量分析を行うこ
とのできる数少ない技術である。

10.2 定量値の精度

  十分な定量値の精度を得るため,次の事項に留意する。
a) 線強度の統計変動
b) バックグラウンド強度

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c) 装置の安定性
d) 計数値の数え落とし
e) 試料の分析面積の大小及び分析面の状態

10.3 定量値の精確さ

  精確な定量値を得るために,次の事項に留意する。
a) 一定時間ごとに検量線用試料の測定を行い,新たに測定されたX線強度を用いて検量線の校正を行う。
b) 共存元素の影響が無視できないほど大きい場合は,必要に応じて適切な共存元素除去のための前処理,
適切な装置条件の設定又は適切な分析結果の補正を行う。
c) 検量線は,その定量範囲を定め,定量範囲を超えた試料には,その検量線は適用しない。
d) 組成が類似した検量線用試料によって検量線を作成した場合は,試料組成の範囲を定めて適用する。
e) 試料は,試料面が平滑,かつ,平たんで,測定面積及び厚さが十分大きいか,一定になるように調製
する。

10.4 半定量分析

  10.3に規定した事項の処置が不十分なために,精確さの低い定量値しか得られない分析又は精確さの高
い定量値を必要としない分析は,半定量分析と呼び,定量分析に含めてもよい。測定結果には,半定量分
析である旨を記載する。

10.5 検出下限の求め方

  検出下限は,ブランク試料強度又はバックグラウンド強度の標準偏差の3倍の強度に相当する濃度とす
る。ブランク試料は,組成が同じで目的成分を含まないものが望ましい。ブランク試料がない場合は,検
量線から濃度ゼロの位置の強度 (N)を求め,強度 (N)の平方根 (N)の3倍を検出下限としてもよい。
検出下限は,測定時間の長さによって変わるため,検出下限の表示には,測定時間を明示する必要があ
る。

11 膜厚測定

  蛍光X線分析法による膜厚測定は,膜の質量厚さ(単位面積当たりの質量)と蛍光X線強度との関係を
検量線とする定量方法である。膜の組成が一定で,膜厚測定の限界厚さよりも薄い場合に,膜試料の膜厚
を測定することができる。ただし,蛍光X線分析法によって測定される膜厚は,形状膜厚(長さ)ではな
く質量膜厚である。蛍光X線分析法で求めた質量膜厚を,膜の密度で除せば,形状膜厚に変換できる。
a) 測定方法 測定には,次の方法がある。
1) 直接法 膜を構成する元素の蛍光X線強度を測定し,膜厚既知の検量線用試料で作成した膜厚とX
線強度との検量線から,膜厚を求める。
2) 吸収法 膜の下地素材から発生した蛍光X線強度の膜による減衰を測定し,膜厚既知の検量線用試
料で作成した膜厚とX線強度との検量線から,膜厚を求める。直接法と吸収法とを組み合わせた方
法で膜厚を測定する場合がある。
3) P法 FP法を用いて膜厚及び組成を同時に求める方法で,検量線法を適用するのが困難な,多層
膜及び多元系の膜厚測定で,有効である。ただし,各層に存在する元素の種類があらかじめ分かっ
ている必要がある。
b) 試料調製 薄膜試料の調製に当たり,留意すべき点は,次のとおりである。
1) 試料は,膜厚及び組成が均一となるように調製する。
2) 表面処理材,フィルムなどの試料は,切断機,打ち抜き機などで所定の形状に成形する。

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3) 試料は,ジグなどを用いて容器に固定し,測定面に凹凸が起こらないようにする。
4) 照射時に試料が平たんとなるように,必要に応じて裏打ち材で補強しておく。
裏打ち材は,分析元素を含まず,バックグラウンドの少ないものを選ぶ。

12 元素マッピング

  一次X線の照射領域を微小な領域に制限するか,又は試料からの二次X線をコリメーターなどで視野制
限し,試料位置制御装置を用いて,試料を走査しながら各位置の蛍光X線情報を取り込むことによって,
元素分布を示す画像を得ることができる。元素マッピングは,次の事項に留意して実施する。
a) 元素分布画像の位置分解能は,一次X線照射領域の大きさ,元素分布画像の画素数及び走査範囲によ
って決まるため,これらの条件を考慮して測定を実施する。
b) 元素マッピング時の一画素当たりの測定時間は,通常の測定に比べて短くなるため,X線強度の統計
変動を考慮に入れて十分な測定時間に設定する。
c) 元素マッピングに用いる蛍光X線は,できるだけ共存元素の重なりのないピークを選択する。
d) 試料の組成が大きく変わる場所では,散乱X線の強度変化がコントラストとして現れることがあるの
で注意する。

13 測定結果の整理

  測定結果には,次の事項のうち必要なものを記載する。
a) 測定年月日
b) 測定者
c) 装置の名称及び形式
d) 試料名
e) 分析元素及びスペクトルの種類
f) スペクトルの波長又はエネルギー
g) 試料調製方法
1) 研磨剤及び研磨方法
2) 粉砕方法及び粒度
3) 乾燥方法及び乾燥時間
4) 成形圧力及び加圧時間
5) 結合剤の名称
6) 融解剤の種類及び融解条件
7) 分離法又は濃縮法
h) 測定方法及びその条件
1) 線管の種類
2) 線管ターゲットの種類
3) 線管窓材及び厚さ
4) 線管作動条件
5) ラジオアイソトープ線源の種類及び線量
6) 一次フィルターの種類及び厚さ
7) 二次フィルターの種類及び厚さ

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8) 二次ターゲットの種類
9) 線通路の雰囲気
10) 試料室,試料セルの窓材及び厚さ
11) マスクの種類及び径
12) 分析径
13) 分析部位
14) 試料回転の有無
15) 分光素子
16) 光学系の条件
17) 試料照射角,取り出し角及び視射角
18) 波高分析器の条件
19) 計数回路の種類
20) 検出器の種類
i) 定量方法の種類
j) 検量線用試料の名称
k) 検量線作成結果
1) 検量線の式
2) 精確さ
3) 濃度範囲
4) 補正の有無
l) 定量結果
m) 個別規格のある場合には,その事項
n) その他,必要な事項

14 データの質の管理

  データの質は,日常の装置管理,測定前の事前準備,試料の前処理などに大きく左右される。そこで,
データの質を管理するための測定を,定期的又は測定の前に実施する。検量線用試料及び装置校正用試料
は,均質で安定なことが前提である。
a) 繰返し性の確認及び検量線の校正 測定の前に検量線用試料又は装置校正用試料を測定し,測定値(強
度)とその繰返し性とを確認する。分析内容によっては,検量線を校正する。校正は,1点の試料で
補正する場合,2点で補正する場合など,要求される分析の精確さに合わせて行う。さらに,一日の
中でも一定時間ごと,又は一定測定ごとに検量線の校正を実施する場合もある。
b) ブランクの測定 ガラスビード又は成形助剤を用いる場合には,試薬及び操作からの汚染が考えられ
るため,試料を含まない操作ブランク試料を測定する必要がある。試料と組成が異なるブランクの場
合には,目的元素の感度が異なる可能性があるので,濃度の算出には注意を要する。
c) 定期的な装置性能の確認 装置性能を維持するために,定期的に確認のための測定を実施する。測定
に当たってはすべての検出器,分光素子及びX線管球を考慮する。測定項目としては,ピーク位置(2
θ又はエネルギー),ピーク位置での分解能,波高分析器の波形,ピーク強度の繰返し性などがある。
これらが所定の範囲内に入っていることを確認し,問題のある場合には,装置の点検整備を行う。点
検整備後は,再度,装置性能確認のための測定を行う。確認のための測定結果は,記録として残す。

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15 装置の点検

  点検を必要とする事項は,装置によって異なるが,主な事項を次に示す。
a) 波長分散方式
1) 電源電圧
2) 線通路の減圧又はガス置換
3) 線管の印加電圧及び電流
4) 線発生部の安全機構
5) 冷却装置の作動状況
6) 分光器の設定条件
7) 検出器の作動状況
8) 計数部の作動状況
9) データ処理・計算機能
10) 漏えいX線のレベル
b) エネルギー分散方式
1) 電源電圧
2) 線通路の減圧又はガス置換
3) 線管の印加電圧及び電流,又はラジオアイソトープの種類
4) 線発生部又は放射線発生部の安全機構
5) 一次フィルター,二次フィルター及び二次ターゲットの効果
6) 冷却装置の作動状況
7) 検出器の作動状況又は液化窒素の残量
8) 検出器用高電圧電源
9) 波高分析器及び信号処理機能
10) データ処理・計算機能
11) 漏えいX線又は漏えい放射線のレベル
c) 全反射方式
1) 電源電圧
2) 線通路の減圧又はガス置換
3) 線管の印加電圧及び電流
4) 線発生部の安全機構
5) 冷却装置の作動状況
6) 分光器の設定状況
7) 検出器の作動状況又は液化窒素の残量
8) 検出器用高電圧電源
9) 波高分析器及び信号処理機能
10) 試料位置制御機構
11) データ処理・計算機能
12) 漏えいX線又は漏えい放射線のレベル

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